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ラスト・ソルジャー(2010/中国)

 今年は成龍さんが日本に紹介されて30周年だかのメモリアルイヤーらしく、BSで80年代の人気作品が公開されたり、劇場公開作も『ダブル・ミッション』『ベスト・キッド』、そしてこの『ラスト・ソルジャー』と3本あって、成龍迷には実に嬉しい年だったのだろうなあと思う。
 確かに、彼の絶頂期である80年代の作品はそれなりに面白かった。アクションもてんこ盛りでユーモアもいい。香港映画界自体も絶好調だった、まさにこの時代ならではの名作群である。
 だからこそワタシは、成龍さんにあの時のまま時を止めてほしくないと思うのだが、残念ながら日本の一般マスコミは彼のことをこの時代で定型づけてしまったような感じがする。だから来日してインタビューを聞いても、聞かれることや要求されることがいつも同じなので、どうも…というのは、いつも書いている“ジャッキー・チェン・ジレンマ”なのでこれ以上は書かない。

 閑話休題。さて、劇場公開作のしんがりを務めるこの映画、先の2作(といっても実は『ダブル・ミッション』は未見)と違うのは、中国を舞台にした中国映画であることなのだ。しかも、香港の資本が入っていながら完全に大陸メイン、監督もこれが第1作となる新人である。まるで最近の成龍さんの政治的シフトを表しているなあ、なんてちょっと揶揄しそうになったけど、共演が宏くんこと王力宏なので観ないわけにはいかない!

 時は春秋戦国時代。梁国と衛国の間では、激しい戦が行われていた。
 屍累々な戦地の中に立ち上がったのは、衛国軍でたった一人生き残った中年の兵士(成龍さん)。その中で彼が見つけたのは、まだ息のある負傷した梁国の若き将軍(宏くん)。農民の出である兵士は、将軍を捕虜にして国に帰れば、広い畑がもらえると喜び、将軍を人質にして戦場を抜け出す。息を吹き返した将軍は、自分が敵国の兵士に拉致されたのに驚くが、傷が完全に癒えてなかったため、彼のなすがままにされるしかなかった。
 しかし、衛国軍は決して全滅したわけではなかった。将軍を目の仇にしている衛国の皇太子(ユ・スンジュン)が、将軍の生存を確認して彼を殺そうと追いかけ始めていた。追っ手の存在を確認した将軍と兵士は、皇太子たちと戦うことになるのだが、実は将軍と皇太子の間には思いも寄らぬ秘密が隠されていた…!

 笑って飛び回って「挺好的(最高だ)」を連発する成龍さん。これだけ見ればいつもの彼であるし、日本でも強調される面である。
しかし、そうであってもやはり彼は変わった。そのきっかけは『新宿事件』を撮りきったことからなのだろうか?
  ここ数年の彼が、主演作でも若手をたてる位置に立ってくるようになったのは今さら言わなくてもいいのだが、それでもあくまでも彼がヒーローであり、若い女性をヒロインにして自らラブロマンスを演じたりするのは相変わらずだった。(但し大陸資本が入ってくる最近作だと『プロジェクトBB』の高圓圓や『新宿事件』のジンレイ&ファン・ビンビンなどの大陸女優がお相手だったっけ)
 今回の映画の特徴としては、主演二人が対等の立場にあることと、ラストの意外な展開であるかな。そして、女性が出てないわけじゃないけど、突出した存在ではない。最初のうちこそ、成龍さんが「敵国の将軍を捕えて手柄を立てたい兵士」で、宏くんが「逃亡したいが負傷がひどくて彼を頼りにせざるを得ない将軍」なので、立場的には成龍さんが圧倒的に有利である。しかし、将軍を狙う同じ国の人間があらわれ、意外な事実がわかる頃には、二人の立場は対等となる。そしてラスト、兵士は将軍を殺さず、平和を彼に託す。そして…という展開なのである。ラストも含めてこういう流れは、珍しいのではないだろうか?物語的にも非常に考えられているなと思った次第。
 ただ、そうであってもやっぱり惜しいと思うのは、うーん、なんだろうな。脚本と監督はまだ本数をこなしていない大陸の監督らしいので、あまり厳しいことは言えないけど、大陸主体で作られた映画の限界なのかなとか、よく考えれば『英雄』のテーマにもダブってどっかデジャヴ感じちゃうんだよなと思わせられるところなのかしら。
 
 この映画の成龍さんはものすごいヒーローではない。ただの農民出身の中年兵士である。だけど成龍さんなので、その平凡さは消えてしまう。まあ案外、それが狙いなんだろうけどね。もう少し若いときに演じていたら、もっとヒーロー感を漂わせていただだろうから、今の年代で演じることが挺好、ってことなのかな。
 宏くんの将軍はもちろんカッコよかったけど、彼こそヒーローっぽさがあってもよかった気がする。ああいう姿での登場だったからしょうがない気がするのだが、その分クライマックスシーンが引き立つと考えたらいいのだろうか?
 彼らを追いかける皇太子を演じたのは、韓国のシンガー、ユ・スンジュン。すっとした顔立ちとか、無駄脱ぎせずともご立派な二の腕がいかにも大韓明星という感じだったが、もちろん惹かれるってことはなかった。
 あとは于榮光とか盧惠光とか探したり、ある場面で孔子とその弟子っぽい賢者の皆さんを見つけてちょっと笑ったりしたくらいかな。

 ちょっと全体的に厳しい意見になったけど、成龍さん映画は米国製より中華のほうが断然面白いと思っているので、ついついあれこれ言ってしまいたくなるのよね。
でもあまり大陸寄りになるのも、いろんな意味でマイナスになるのかもしれないと思うのは、考えすぎかしら。

 今後観たいのは、やっぱりジェイシーとの親子共演。ジェイシーが日本で全然知名度がないのもあるけど(一般的な意味でね)、もう共演しても問題ないと思うよ。

原題(英題):大兵小将(Little Big Soldier)
脚本&監督&編集:ディン・シェン 製作&原作&出演:ジャッキー・チェン
出演:ワン・リーホン ユ・スンジュン ユー・ロングァン ロー・ワイコン

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コメント

 ご無沙汰してます。沖野@八戸です。

 この作品は11月後半に渋谷の渋東シネタワーで見てきました。フォーラム・グループでの上映予定もあると聞いてましたが待てませんでした。

 まぁ戦わずに逃げまくるジャッキーというのも面白かったわけですが、じゃぁ他の面々のアクションが凄かったかと言われればちょっとなぁというのが率直な感想です。早回しやコマ落としも使ってそれっぽく見せようとはしてましたが、全部分かってしまう私の目はごまかせませんよ(ヲヒヲヒ)。

 エンドロールのNGシーンで「この金額じゃ死ねない」「もっと手当を増やせ~」というシーンには苦笑。何も考えずに見れば笑えるけど、「おいおいハリウッドの拝金主義にそこまで毒されたのか?」と、ついスクリーンに突っ込みを入れてしまいましたよ。素直に笑えない年になってきたのかなぁ。

 公開2週目に入った渋谷で、観客は6割くらいの入り。往年のジャッキー・ファンといっては失礼かもしれないけど年齢層が私も含めて高めなのが気になりました。でもちょっと目に入った子供達が大声で笑って見てたのが何とも心地良い2時間でした。

 ということで(?)、来年も香港を中心とした中華圏の映画普及に努めて参りましょう!

投稿: 沖野 雅之 | 2010.12.29 21:14

沖野さん、年を越えて旧正月を迎えてしまったレスで申し訳ありません。今年もよろしくお願いいたしますm(__)m。

怒涛の成龍映画祭、最近もベスト・キッドのブルーレイ発売でプロモーションがあったようですが(さすがに本人は来てないけど)、往年の作品と今の傾向を比べると、結構感慨深いところがありますね。今後彼はどこに向かうのかなと思ったりしますが。一度ジェイシーとがっぷり組んでほしい気はします。無理かもしれないけど。

そんでもって今は、やっぱりド兄さんの葉問2部作が早く地元で観たいです。もうちょっと踏んばっていきたいもんです。

投稿: もとはし | 2011.02.03 23:21

 ども、沖野@八戸です。

 新宿武蔵野間で公開中の葉問2、HPで5000人までのカウントダウンをしてますがなかなか一気には減りませんね。新宿でも厳しいのかなぁと心配してます。ということで今度の連休を利用して新宿で見てきます。フォーラム八戸の支配人によると仙台では上映予定になってるけど他の地域では未定とのこと。要は仙台での入りを見て判断するということですね。この状況を新宿武蔵野館の支配人にも電話で伝え、フォーラムの長沢社長に盛岡や八戸でも上映するよう働きかけてもらってます。私も来月また社長に会うのでプッシュしておきます。

 シネマート六本木で5月に公開されるドニーの「処刑剣」も、現時点ではフォーラム・グループでの上映予定は無いという悲しい回答でした・・。

投稿: 沖野 雅之 | 2011.02.05 12:18

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