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2010年6月

冷たい雨に撃て、約束の銃弾を(2009/フランス=香港)

 最初に、トーさんからかなり遠いところより話を始めたい。

 ずいぶん前からあちこちで言っているが、ワタシは、このところ社会派ドラマの快作が多いNHKの土曜ドラマのファンである。
生ぬるい民放ドラマが苦手だということもあるのだが、件のシリーズには企業買収やら公安の暗躍&テロ犯罪やら脱税やらの身近とはいえないテーマが多く、それを語るのに、ハードボイルドかつフィルムノワール的な手法を使うのは非常に適切だと思っている。おそらくスタッフにその手の映画がお好きな方もいれば、香港映画好きもいるんじゃないかといつも観ていて思うのだけど、実際どうなんだろう?聞いてみたいぞ。

 そして、フィルムノワールの本場といえばやはりフランス。
 最近、トーさんがお好きだというフレンチノワール界の巨匠、ジャン・ピエール・メルヴィルの初期作品『海の沈黙』(ギャングものではなくて第二次大戦下を舞台にしたレジスタンス系作品)を観たのだが、これが見事にいい雰囲気で、確かにトーさんはお好きかも知れないなあと思った次第。メルヴィルは昨年のフィルメックスで特集されていて、ほぼ全作品が上映されたそうだけど、もっと早く観ておきたかった気がする(といっても、田舎暮らしにとっちゃ、それ目当てで東京の映画祭に通うのは非常にきつかったりするんだけどね>蛇足)。

 そのフランスで、香港映画の評価が高いのは昔から有名な話。今年こそ出品作はなかったものの、このところトーさんの作品はほぼ毎年、カンヌに出品されていた。だから、フランスから彼の元に合作映画の話が来るのは、よく考えれば不思議なことではなかったのである。
 そんなわけでトーさんが初めて欧米人を主人公にして撮った(外国人の主役はこれで2人目のはず。一人めは言うまでもなく、『フルタイムキラー』のソリマチさん…)『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』こと《復仇》を観た次第。

 フランスでシェフとして暮らす初老の男、フランシス・コステロ(ジョニー・アリディ)。彼の元に、中国人会計士と結婚してマカオに住む愛娘のアイリーン(シルヴィ・テステュー)が家族ともども襲撃され、瀕死の重傷を負ったという知らせが届く。マカオに飛び、変わり果てた姿になったアイリーンと対面した彼は、娘から襲撃犯は3人いたこと、そのうちの1人は耳にけがをしたことを知る。
 ホテルに戻ったコステロは、そこで隙のない3人の男―クワイ(秋生さん)、フェイ(林雪)、チュウ(カートン)と出会う。彼らはボスのファン(ヤムヤム)の命令で、ボスの情婦と通じている部下を殺してきたところだった。かつて殺し屋だったコステロは、この3人の男たちに自分と同じにおいをかぎつけ、一緒に3人の襲撃犯を探すように依頼する。アイリーンの家で手がかりを探しながら、コステロは彼らにパスタを振る舞う。
 クワイの従兄弟トニー(フォン・ツイファン)から武器を調達してもらい、襲撃犯たちが香港の海鮮街にいることをつきとめた4人は、早速香港へ渡る。夜のキャンプ場で襲撃犯と対面した彼らは激しく撃ちあうが、そこでコステロは被弾してしまう。医師の元に担ぎこまれて応急処置を受けた彼は、記憶障害を起こしてしまった。実は彼が殺し屋だった頃に頭に銃弾を受け、それがもとで定期的な記憶障害を生じるようになってしまっていたのだ。さらに不運なことに、コステロの娘の家族を襲った3人は、実は同じボスのファンの命令を受けていたのであったのだ。
 記憶を失ったコステロの義理を感じた3人は、ファンを裏切ることを決意し、3人の襲撃犯を仕留める。当然これに腹を立てたファンは、ターゲットをクワイたちに向けた…!

 即興演出っぽいにおいは残っているものの、法國スタッフの要請に応じて作られた、ちゃーんとした脚本が存在するというこの映画は、それであっても『やりび(ザ・ミッション)』や『放・逐(エグザイル/絆)』の香りがぷんぷんする。それ以外にも、雨の香港の夜の場面は『文雀(スリ)』みたいだよなーとか、フォン・ツイフォンやミッシェル・イエ(クワイの愛人・ビッグママ)の登場には、プロデュース作だけど『意外』みたいだよなーと、どっかで見たような場面の続出であった。とにかくセルフオマージュ満載。これが王家衛だったら、なんだよまたかよ、やりすぎだよなーとへそを曲げるところなんだが(これでも一応王家衛ファンですが、何か?)、トーさんの作品ではさすがにそうは思わない。それが様式美として完成されているのはもちろんあるし、これは他の監督にはちょっとやそっとじゃ真似できないだろう!と自信を持って作っているように感じられるからだ。

 で、キャスト。
 アリディさんは、常にトレンチコートに白シャツで、最後までこのスタイル。見事にトーさんワールドの住人と化している。おまけに意外と若々しい。60歳を超えているとは思えないし、ダンディ。ロック好きな秋生さんが「実は(彼を)知らなかった」と言ったのと同じく、ワタシも知らなかったんだけど(法國電影をあまり観ないからね)、当初のアラン・ドロンよりは彼をキャスティングしたことで成功の確率がぐんと上がったんだと思う。
 ただ、それでも、いつもの皆さんを観ていた方が楽しかったかなー。コステロが復讐を誓うストーリーラインよりも、やりびから続く“男同士の熱きぶつかり合い”もとい“男同士の楽しきじゃれ合い”をここでも見せる秋生さんたちの姿を見た方が楽しい♪なんて思っちゃったし、コステロメインだからとはいえ、秋生さんたちが途中退場するのは非常に惜しかったもんね。ま、それでも最後までヤムヤムは残ったから(これもお約束)、アリディさんとヤムヤムの対決でなんとか気を取り直したけどね。

 とまあ、ちょっと厳しいことも言ってみたけど、トーさんの新たなチャレンジとなった本作にはやっぱり満足している。そして、トーさん映画を知らない方には、入門編としてもぴったりな作品だと思うので、多くの人に観てもらいたいな、と思う。
 地元に来たら、確実に観るからねー。一応上映も決定しているみたいだから、期待してますよ、フォーラムさん!

原題(英題):復仇(Vengeance)
製作:ミシェル&ロラン・ペタン 製作&監督:ジョニー・トー 製作&脚本:ワイ・カーファイ 撮影:チェン・シウキョン 音楽:ロー・ターヨウ 編集:デヴィッド・リチャードソン
出演:ジョニー・アリディ アンソニー・ウォン シルヴィ・テステュー ラム・シュー ラム・カートン チョン・シウファイ マギー・シュウ フォン・ツイファン ミッシェル・イエ サイモン・ヤム 

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《奪標》(2008/香港)

 ヴェエエエエエエエェエエエエエエェエエエエエエェエ。
 足球世界盃(以下世足)は薄ーく楽しもうと思っていたけど、それでもブブゼラが気になる今日この頃です。すいません。
 そんなふうに世の中が世足で盛り上がりまくる中、こんな映画を最近観た。
 これは同じスポーツイベントでも2年前の北京奥運会を意識して作られた作品。たぶん。

 1936年、中国はこの年初めて、オリンピックに代表団を送り込むことになった。各競技はもちろんのこと、中国武術を世界で初めてこの大会で披露することに決まったため、武術の使い手たちは、誰もが五輪参加を夢見ていた。中央國術館の館長・張之江(于榮光)は全国の各派から使い手を選抜することに決定した。
 お調子者の張鳳(ディッキー)と生真面目な関樹寶(謝苗)は張館長の元で蟷螂拳学んで育ってきた親友同士。彼らは代表団を派遣する金がないと知るや、館員たちと力をあわせて金策に回ることにする。二人とも、オリンピックで武術を披露したいと考え、日々研鑽しあっていた。
 張鳳は同じ國術館に所属して、陸上選手として優秀な成績を上げている雁羚(黄翠如)のことが好きだった。彼女とともにオリンピック代表団に入ることを切望していたが、ある日、雁羚は國術館にやってきた俊足の陸上選手李森との勝負に敗れ、頚椎を傷めるしまう。医者の診断では、これ以上激しい運動をすると、命にもかかわるとまでいわれてしまう。張鳳は彼女の完治を信じて、樹寶とともに武術の代表選考会に臨む。対立する一派との熾烈な争いを勝ち抜いてきた二人だが、最終選考は流派無差別の演武。しかも二人でその残りの座を争わなければならなくなって…。

 監督の徐小明さんって、台湾の監督じゃなかったっけ?と思ったが、これは同姓同名の別人らしい。武術指導者にして驕陽電影のプロデューサーで、監督はかなり久々らしいです。(wikipedia参照)
 この電影公司は日本公開作品も多く、ちょうど一緒に購入していたジョー&秋生さんの《蕩寇》もプロデュースしておりました。

 監督さんが武術指導者だし、さらに主演がかつて「ポスト星仔」と呼ばれたディッキー・チョンなので、アクション&お笑い多めの娯楽作なのかしら?と思いきや、意外にマジメな作品だったのでビックリ。普通、こういう歴史的事実も、香港でならもっと涙あり笑いありの娯楽大作に仕立てるんじゃないかなーという気があるのだが、そうじゃなかったので拍子抜けしてしまったわ。
 ま、娯楽的な要素としては、張館長の妹弟子でやはり武術の達人である女性が登場したり、蟷螂拳の一派に対抗する鷹爪拳の一派が登場して、覇を競い合ったりするなどもあったけど、なんか中途半端だった気がする。あとは、ヒロインの雁羚の使い方がかわいそうでねー。彼女は悲劇的な最期を遂げるんだけど、お涙話にする必要はなかったんじゃないかな、と思った次第。彼女のことがあって、結局張鳳は…だったんだけど、無理やりでもいいからハッピーエンドにしちゃったらよかったと思う。
 ※意見には個人差があります。

 

 実はこの作品で初めて顔を見たディッキー。
 なぜかワタシはこれまで彼の主演作に出会ってきませんでした。
 故・飯島愛小姐がゲストされたことで知られるドラマ『西遊記』は日本でもソフト化されているから(上に出してます)、見ようと思えば観られたはずなのに。
 先にも書いたように、かつて彼は90年代にポスト周星馳と呼ばれたコメディアンだったらしいんだけど、その後人気ががた落ちし、先に書いた『西遊記』で再ブレイクしたものの、どうも(日本では)知名度を上げられずに今に至るとのことなので、ワタシが知らないのはしょうがないのかな。むしろ、彼のお師匠を演じていた于榮光さんの方が御馴染であるのだから、しょうがないのだろうけど。
 後の俳優さんはほとんど知らないなあ。おそらく、TVドラマで活躍している俳優さんなんだろうけどね。
 アクションは、ディッキーはもちろん頑張っていたんだけど、関樹寶を演じた謝苗さんの動きが彼以上にシャープだった。おそらく、本格的にやっている方なんだろうなあと思うんだけど、はたしてどうなんだろう。

 ところで、ディッキーは若い頃にトニーと共演していたらしい。彼がコメディアンとして頭角を現し、トニーがバリバリのアイドルだった1993年に製作された《正牌韋小寶之奉旨溝女》がその作品。これを教えてもらい、早速観たので、近日中に感想をアップ。
(実は東京で観た《復仇》こと『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』の感想もまだだったことを思い出した。これも早いところ書かねば!)

英題:Champions
製作&監督&原案&脚本&中国伝統武術指導:チョイ・シウミン 武術指導:江道海 音響:キンソン・ツァン
出演:ディッキー・チョン 謝 苗 黄翠如 呉天楡 ユー・ロングアン

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Feliz aniversario,Tony!

 Voce espara para trabalhar no futuro.

 事情により当日アップはかないませんでしたが、昨日は梁朝偉先生48歳のお誕生日でした。
 ちなみに今年は世界盃に便乗して、ポルトガル語でメッセージ書いてみました。
 ついでにブブゼラ鳴らしてお祝いする?ヴェエエエエエエエェエエエエエエェエエエエエエェエ。

 まあ、それはいいとして、いやあ、48歳ですよ!年男ですよ!ほんでもって around fiftyじゃないすか!
 いや、そういう自分もaround…なんだが、まあ棚に上げておこう。>こらこら

 先日、ついに大陸版Twitterこと微博も始められた我らがとにおさん(某所での愛称をここでも使わせていただきます。「トニーさん」とか「トニさん」という呼称がイマイチ使いずらかったけど、なぜかこれはしっくり来たもんで)、あっという間に15万フォロワーを突破したものの、ワタシは登録しただけでなんもしてません(爆)。それならば英語でいいからTwitterのほうにしてくれればいいのに、簡体字キライなのに、などと贅沢な文句を言ってみたりする。中国語学習者にしては珍しい体質ですんません。
(注:微博は繁体字表示もできます。念のために)

 そんなとにお先生も、昨日は香港でカリーナ姐さんやお母様たちとお誕生日を祝われたようで。《一代宗師》が撮影とも撮了ともいろんな噂を聞く中、なかなかお目見えしないだけあって、お元気そうで何よりです。相変わらず、日本の端っこから応援しておりますよ。

 で、今年誕生日記念に観る予定の映画は、1993年製作の《正牌韋小寶之奉旨溝女》 金庸の『鹿鼎記』の主人公で、トニーのTV時代の当たり役であるお調子者の若者、韋小寶が現代にタイムスリップして大騒動を巻き起こす、てな感じの超軽コメディ。共演はディッキー・チョンとヴェロニカ・イップ。湿気じめじめで鬱になりやすい梅雨時にはピッタリな作品であることを願おう。
 感想は近い…もとい、熱くて早いうちに(笑)。今感想を2本溜めているもので。

Tony_ent2007_1

 最新の写真は微博を参照していただくということで、今年のお誕生日写真はこれ。
単に最近写真をもらってくるのをさぼっているだけです。すんまそん。

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メッセージ・イン・ザ・ボトル From 香港

 本日、テレ東の午後のロードショーで『ゴージャス(玻璃樽)』が放映されたことをTwitterで知る。

 未だにアクションスターとしての評価だけしかされていない(と思う)成龍さんだが、1999年に公開されたこの映画では、原案に岸西(アイヴィ・ホー)さんを、ヒロインにすーちー、共演にトニーを迎えた、まさに英題通りの“ゴージャス”な作品だけど、全体的に見れば確かにやっぱりアクション映画(苦笑)。三大明星共演のアクションラブコメディといった趣で売られた劇場版ポスターとはうって変わって、いつもの成龍さんを前面に出した日本版DVDジャケットをみればそれがわかるかと。

 決して成功作ではないのかもしれないけど、これはこれで捨てがたい1作。
それはトニーが出ているからってわけじゃなくて、今や日本公開も数少なくなった香港製お気楽ラブコメとしてみれば、結構いい線いってるからだ。
 確かこの映画の少し前に公開された、ケヴィン・コスナーの『メッセージ・イン・ア・ボトル』をパク…いや、オマージュを捧げながら(ってホントか?)、大富豪と天真爛漫な女性の恋という点で『プリティ・ウーマン』的要素も加え、ヒロインの愛が主人公を癒すという王道を貫いて、幕切れもいい味わい。

 そして、この映画は香港映画初心者から中級者にはかなりおススメ。
成龍さんやトニーのようなビッグスターの肩の抜けた演技も、今やアジアン・クールビューティーとなったすーちーのかわいらしさももちろんいいけど、じっと脇に目を凝らすと、いろんな人が出てくる出てくる!誰が出てくるかはまたあとで書くけど、こういう点でも非常に楽しめる作品。これで香港俳優を覚えると、いろんな作品を観る機会もドカンと増えること間違いなしなのである。

 あとは、以前書いたこと(上のリンク参照)とダブるのでパス。
実は日本語吹替版が未見なので、いつか観てみたいんだけど、もうレンタルにはならんでなくてねえ。それがちょっと残念。そんなわけで今回は手持ちのVCDで鑑賞したのであった。

 そんなわけで、いろんな記事を書くのを後回しにして、こっちを先に書いてしまったのであった(笑)。ええ、おかげで足球世界盃もぶっ飛ばしてます。ほんまにすいません(爆)。

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『冷たい雨(後略)』観ました

『冷たい雨(後略)』観ました
今週末は上京中。
第一目的はなんとか成功したので、新宿でトーさんの『復仇』を観た。
感想はまた後ほど。

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紐約紐約我愛你♪

 注・今回の題名は中国語(繁体字)フォントで作成したため、一部ウェブから見えにくくなっております。なお、題名は《玫瑰玫瑰我愛你》のパロディです。

 関東&関西方面が『冷たい雨(後略)』で盛り上がる中、とーほぐに住むワタクシは『ニューヨーク、アイラブユー』を観に行っていた。
   これはパリ20区を舞台にしたオムニバス映画『パリ、ジュテーム』(2006、中華圏からはクリストファー・ドイルが監督として参加)を企画したプロデューサーが、今度はNYを舞台に世界各地から監督を招集して作り上げたオムニバス映画(全11話)の第2弾。

 多種多様な人種が暮らしているこの街にふさわしく、監督もキャストも前作より多国籍に及び、バラエティに富んでいた。日本では岩井俊二監督が、オーランド・ブルームとクリスティーナ・リッチを主演に迎え(第3話)、これで初めて英語映画を撮ったことが話題になっていたけど、中華圏からは監督に姜文さん、キャストにはマギーQ(彼女はベトナム人と米国人のミックスだけど、香港で活躍していたわけだから勝手に中華明星に認定)とすーちーが参加しているので、実は思ったより中華度が高かったりする。そんなわけで、ここで取り上げた次第。
 実はこれ、香港からの帰りの飛行機の中で観たのだが、8話目まで観て「すーちーまだー?」といってたら着陸態勢に入っていた。だから感想は全部観なけりゃ書けなかったんだよね。

 スリの青年ベン(ヘイデン・クリステンセン)と作家の男(イーサン・ホーク…だったと思った)がなぜか同じタクシーに乗り合わせてしまうオープニングから、マンハッタン先端部に近いトライベッカ(近年はデニーロ先生主催のトライベッカ映画祭で有名に)舞台を移した第1話で、いきなり姜文さんが監督。
 大学教授ギャリー(アンディ・ガルシア)の財布を抜き取ったベンは、そこに挟まれていた女性の写真に心をひかれる。そして街中でその女性モリー(レイチェル・ビルソン)を見かけた彼が後をつけると、モリーはカフェでギャリーを待っていた。実はこの二人は不倫の関係。ベンは彼女に近づいてあの手この手で口説こうとするが、そこに現れたギャリーに、財布をすった仕返しをされてしまう。
 最初観たときは姜文作品だとは全然気づかなかったんだけど、ベンの吸っている煙草が中国製で、それを見たギャリーが「ワタシは中国語が話せるよ」とか言っててきとーに(笑)話していたから、まーちょっとしたお遊びをしたな姜文さん、と思った次第。 。
 この話は、後半の取られた財布とモリーの恋心をめぐってベンとギャリーが応酬しあう場面がすっごくテンポがよくて面白かった。こんな小粋な感じ、今後彼が中華圏で作るであろう新作にも出てくれれば嬉しいな。

 マギーQが登場するのは、フランスの俳優兼映画監督、イヴァン・アタルが演出したソーホーが舞台の第4話(ちなみにイヴァンは同じ舞台でもう1話撮っている)。
夜のレストランの前で、イーサン演じる作家の男が彼女にすっかり魅了され、エロトーク全開の彼に話しかけられてしまったけど、実は…という役どころ。他愛もないエピソードだけど、イーサンと並んで煙草をふかすアンニュイな彼女は画面に映える。中華電影ではなかなか見られないセクシーさも醸しだしていたけど、…それでももーちょっと色気がほしいかな、ってこれはあくまでも個人的な意見ですよ(笑)。
 ついでに書いておこう。イヴァンって『ラッシュアワー3』に出ていたって?…あー、もしかして、あの見せどころが全然ないパリの刑事か。いやあ、言われてやっと思い出したよ。言われなきゃ全然気づかなかったよ。

 ところでこの映画、ただ話を10話並べたわけじゃなくて、各話の間にはインターミッションが入る。これをつなぐのは若きビデオアーティストのゾーイ(エミリー・オハナ)。つまり各話の場面はゾーイが街を歩いて拾い集めたという設定になる。それもあるので、インターミッションにはそれぞれの話の登場人物が出会ったりするわけである。マギーも8話と9話をつなぐインターミッションに登場し、チャイナタウンのランドリーにセクスィーランジェリーの洗濯を依頼したり、広東語(これが意外とうまくなかったのだが、もっとしゃべれなかったっけ?)を話していたりする。 

 そのチャイナタウンが舞台になった第9話を撮ったのが、ドイツ生まれのトルコ移民であるファティ・アキン監督。彼はドイツに暮らすトルコ移民の姿を描いた『愛より強く』『そして、私たちは愛に帰る』で世界的に注目されたそうだけど、ごめん、ノーチェックだった。しかも彼、まだ若い。ちょっとビックリ。
 このエピソードで、やっとすーちーが登場。
 病を抱え、トルコからやってきた画家(ウグル・ユーゼル。トルコを代表する俳優にして映画監督だとか)がそこで出逢ったのが、すーちー演じる漢方薬局の店員。彼女に魅了された画家は、最後の作品のモデルになってほしいとすーちーに依頼するのだけど、彼女はなんともいえずに返事を濁す。ある日、思い切って画家のアトリエを訪ねた彼女は、画家が描いた自分の肖像を見つけ、彼が目を描かずに亡くなってしまったことを知る。そこで彼女がとった行動は…。
 物語的にはこれまたありきたり(オリエンタルビューティーに心奪われる初老の男性という設定がいかにもベタ)なんだけど、この役どころをありがちなツーイーじゃなくてすーちーに振ったのは大正解。この映画でのマギーとすーちーは、同じ中華女優でも見事に好対照であり、役どころも適材適所。美しくメイクしたマギーと同じくらい、ほぼすっぴん(多分)でラフなカッコのすーちーは魅力的。彼女は『トランスポーター』でハリウッドに進出したわけだけど、その前にホウちゃんの『ミレニアム・マンボ』に主演したことから欧米で有名になったというので、なんとなく納得。あと、これを観て気づいたのは、よくよく観ると全然似ているとは思わないのだが、ちょっとした瞬間に見ると、彼女が某ひん○ゅうマジシャン山田な…じゃなかった、仲間由紀恵嬢に似ているといわれるのはこれまたなんとなくわかるな、と思った次第。
 ところでアキン監督、中華電影お好きなようです(fromプロダクションノート)。だからすーちーを使えたのは嬉しかったんじゃないかなあ。

 第11話の後のエピローグ。画家と永遠の別れを経験したすーちーは、まるで画家の代わりに風景を残すかのごとく、街の写真を撮り始める。そこで彼女はゾーイと出会い、街と愛の思い出をシェアする。彼女の気持ちを受け取ったゾーイは、これまで撮ってきたフィルムを編集し、NYの街にそれを投影する。この街に生まれた愛が街の人々に降り注がれ、やがて映画は幸せな終幕を迎える。
 観終わって、ステキな気分になれる映画であった。 

 ところでこのプロジェクトの第3弾は、なんと上海を舞台にした“Shanghai,I love you”とのこと。
これまた再び、ちょっとビックリ。今ちょうど上海万博が行われているとはいえ、やっぱり同じように上海を舞台にした多国籍なラブストーリーが展開されるのかな。
そして、舞台が舞台だから、アジア圏の監督やキャストが招集されるんだろうけど、…さすがにまだこのプロジェクトは動いていないよね。
別のプロジェクトだけど、都市を舞台にしたオムニバス短編映画としては『TOKYO!』もあるんだけど、香港でこういうのってできないかなあ。もしできるとしたら、誰に何をやってもらいたいかなあ。ちょっと考えてみる。もちろん企画を持ち込むわけじゃないし、単なるお遊びでね。

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カンフーサイボーグ(2009/香港)

 連休に『ブエノスアイレス』を観に行った時、エンドクレジットでセントロ・デジタル・ピクチャーズの名前を見つけてビックリしたのは、先にも書いた通り
セントロがこの映画の製作をサポートした時は、多分会社が立ち上がって間もない頃だったんじゃないかなと思っている。そして1年後、セントロは香港映画で初めてCGを取り入れた『風雲』を手がけて名を揚げた(んだと思う)。その後は『少林サッカー』『カンフーハッスル』等も手がけ、実写版映画『ゲゲゲの鬼太郎』2作でも多国籍に渡るCGチームの一角を担っていたっけ。
 で、『カンフーハッスル』といえば、かの作品のプロデュースに関わっていたのが、我らのジェフ・ラウ。
 王家衛の盟友でありながら、その作風はまったく正反対。徹頭徹尾笑わせるエンターテインメント作品を輩出する彼が、セントロと再びタッグを組み、ついに大陸に進出(!)して作り上げた抱腹絶倒のSF映画が、この『カンフーサイボーグ』である。

 時は西暦2046年(!)、舞台はそのわりにあまり発達していない中国の片田舎の街。
この街を守る公安警察隊長の徐大春(胡軍)は、高度科学技術センターの林主任(とっつぁん)から、極秘のミッションを命じられる。高科技中心が新たに生み出した、人工頭脳を持つアンドロイドK1(方力申)を配下に置き、彼が人間社会にどれだけ適応できるかテストしてほしいというものだった。高性能のアンドロイドである彼はその能力を駆使して目覚しい活躍(多分)を見せ、大春の部下の素梅(スン・リー)はK1に恋愛感情を抱いていく。幼馴染であり、彼女にほのかな思いを寄せていた大春はそれを快く思わなかったが、K1には恋愛感情はプログラミングされていない。それでも素梅とK1は親密になっていくのであった。
 ある日、林主任は2人に新たなミッションを命じる。K1と同時に開発されたアンドロイドのK88、通称陳龍(呉京)が突然コントロール不能に陥り、殺人を犯して逃亡したのだ。二人はK88の居場所を突き止めるが、身の危機を感じた彼は激しく抵抗する。K88はK1とほぼ同じ防御と変形能力を持っていたが、ただ一つ違ったのは、戦闘用にカンフーをプログラミングされていたことだった。巨大ロボットに変形したK1とK88は激しい戦闘を繰り広げるが、それに大春が巻き込まれてしまい…!

 …えーと、ここまであらすじを書きましたが、お気づきの方はいるかと思います。
主人公の一人はアンドロイドで、サイボーグじゃありません(笑)。
「チョと待て!サイボーグとアンドロイドって違うのか?だって韓国映画に『僕の彼女はサイボーグ』ってあったじゃない?」といわれそうですが、アンドロイドとサイボーグは全然違います。『サイボーグ009』が好きなワタシがいうのだから間違いないです(笑)。
 ※追記・サイボーグとアンドロイドの違いについてはコメントいただきました。多謝。

 で、結論を言います。タイトルは間違っていません。ちゃんとサイボーグは登場します。と、これだけ言っておきます(笑)。それがだれかはさすがに言わないけど、あらすじを読んでもらえれば容易に判断してもらえるかと。←ややネタバレ気味にて失礼。

 ストーリーはよくありがち。だから見どころは、必然的にCGとタイトルにもなっているカンフーになる。これが本領を発揮するのが、K1が出動して大活躍?する中盤から。最初の出動場面はお笑い(しかも胡軍が担当)気味で使われていたけど、K88が登場して宿命の対決を繰り広げるあたりから、CGはグッと派手になる。某トランスフォーマーほどゴチャゴチャしておらず、わりといい感じに使われていたんじゃないかと思う。ゲームっぽいといえばそれまでなんだけどね。
 カンフーは当然呉京が担当。んー、これはもうちょっとじっくり観たかったなあ。思ったより出番少なかったんだよね。でも、久々に彼のアクションがじっくり見られたので、あんなんでも一応満足しとります。あまくてしーましぇーん。
 ちなみに胡軍はあまり戦いません。いや、別に趙雲やってアクションしつくしたってわけじゃないよ、きっと。

 そういえば胡軍は珍しくお笑い担当。
というよりも、ジェフ・ラウ作品に出てしまえば、どんなにシリアスな作品で熱演している演技派俳優もたちまちコメディアンと化してしまうからね。トニーとかレスリーとかトニーとか(笑)。一番ウケたのは、林主任からK88を処理するために渡されたiPodならぬiGun(2046年設定なのに、形は変わらないのかよ)を使いこなせなくて、なぜか『月亮代表我的心』ばっかり流れてしまうというギャグか。
 アンドロイドのK1を演じる水泳王子方力申。…なんかずいぶん久々にスクリーンで顔を見たやうな。まー、イケメンではあっても好みではないし、どっかつるっとした印象があったので、アンドロイド役としては適切かも。でも、思い入れできないのよね。むしろ呉京のK88の方がカッコいいじゃん♪なんですけど、好みとしては。
 ヒロインのスン・リー。フォーフォー以来ですね。あかぬけないメガネっ子(でも取るとかわいい)というのはこの手のSFにお約束。…ってそうか?しかし、彼女の妹の素清(甘薇)がひどいキャラだったなー。彼女もかわいいのに、髪ボッサボサのがさつキャラ。
 ヒロインに思いを寄せる理科教師ロナチェンの出番の意味は?とも思ったが、大陸演員ばっかじゃアレだから、彼はやっぱり必要か。ま、エリックとっつぁんや家英哥(♪お~んり~ゆ~)がいればそれでいい…と言ってもまたいけない。 

 そんなわけでざっくり書いてみたけど、大陸舞台でもコテコテの香港喜劇は成り立つものなんだな、と最終的には思ったりした。いずれにしろ、久々に大笑いできた香港映画であった。日本語字幕でもちゃんと観たかったなー。

原題&英題:機器侠(KUNGFU CYBORG:METALLIC ATTRACTION)
監督&脚本:ジェフ・ラウ 特撮&CG:セントロ・デジタル・ピクチャーズ
出演:フー・ジュン スン・リー アレックス・フォン(方力申) ロナルド・チェン ウー・ジン カン・ウェイ ロー・カーイン エリック・ツァン

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