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スナイパー:(2008/香港)

 最近、非常にいいペースで作品を発表しているダンテ・ラム監督。
公開順序は前後するものの、ニコとニックさんのダブル主演で執念を持って追う者とハンデを背負いながら追われる者の攻防を描いた《証人》(しまった!まだ感想が書けてない!いずれアップします)や、先月香港で公開されたリッチー&りよん主演の《火龍》、そして《証人》の主演コンビが再び激突する続編が公開待機と、ここ数年の彼の作品はハードアクションものが多い。もちろん、やろうと思えば『ツインズ・エフェクト』『ティラミス』や『スイート・ムーンライト』のようなアイドル映画もできる人なんだろうけど、お師匠であるゴードン・チャンさんと一緒に組んだ『ビースト・コップス 野獣刑事』を面白く観た自分からすれば、こういう路線がお好きなのはわかるのであった。もちろん、今の香港映画の流れが、男性的なハードアクションを主流にしているからっていう事情もあるのだろうけどね。

 この『スナイパー』は、そんなダンテさんのハードアクション路線の幕開けを告げるのにふさわしい作品…に、本来はなるはずだったのに、2年前のえぢのあの事件のおかげで香港公開が1年間延期となった曰くつきの作品。あの事件についてはもう考えたくもないんだけど、倫理的にはコンサバな香港芸能界だから、その処分も仕方ないのかと思った次第。
 しかし、また後で改めて描こうと思うけど、この映画、売りは決してそれだけじゃないんじゃないの?…というわけで、話を始めよう。

 新界で逃亡犯を見事に仕留めた警官のOJ(えぢ)は、SDUの隊長フォン(リッチー)に射撃の腕を認められ、入隊が決まる。
狙撃手として頭角を現していく彼は、フォンですら成し得なかった距離500mの狙撃を成し遂げた伝説の男・凌靖(黄曉明)の存在を知る。凌靖はフォンをもしのぐ狙撃能力を持っていたが、4年前にタオ(高捷)という男が起こした銀行強盗事件で、命令を無視して誤射し、人質を死なせてしまったことで服役していたのである。
 服役を終えた凌靖は、自分をはめたのはライバルだったフォンだと思い込んで、彼と警察に復讐を誓う。まずはタオを載せた護送車を狙撃し、彼らを街に放つ。緊急事態の中、凌靖を超えたいと願うOJは何度もフォンに請願するが、それも認めてもらえず…。

 香港映画のハードアクションといえば、いうまでもなくガンアクション。いわずと知れた“バイオレンスの詩人”様を排出した土地ですからねー。
しかし、最近のハードアクションはトーさん作品に観られるように、撃ちあいはすっきり短め、もしくは撃ちあいなし(!)という流れ。
そんな状況に慣れきっていたせいか、この映画で久々に激しいガンアクションが展開されてもうものすごかった。90分以下の上映時間中、7割くらいが撃ちあいで、観客のテンション高めに持っていかれたような気がする。しかも撃ちあっているのは、長距離狙撃用のでっかい特殊ロングライフル(?)だもんねえ。だからラストはずんずん来たよ。
 そんなんだからねー、全編これもうすっかり硝煙漂うハードボイルドな男の世界です。高村薫さんの小説『わが手に拳銃を(&李歐も…か?)』の主人公のガンマニアっぷりを想像しちゃうくらいっす。おかげで訓練シーンはやたらと力入りまくっていたしねえ。SDUの隊員たちは二の腕さらして啓徳機場跡地で延々と射撃しまくってたし。…んー、それでも「きゃー(はぁと)」って感じにはなれなかった。香港映画にはホモソーシャルな空気を持つものが少なくないけど、そういう空気を一片も感じることができなかったしね。いや、それがないからダメってわけじゃないし、それが発揮されるのは監督の腕とキャストのノリノリな演技次第だって思っているからね。

 『大事件』の悪役以来、すっかりアクションものが定着してしまった感のあるリッチー。登場シーンを観た朋友が「…リッチー、すっかりおじさんになっちゃったねー」とガッカリしていたけど、そこを除けばまあまあカッコいいかな。でも、ここのところずっとアクションかサスペンスものが続いているので、たまにはジングル・マー監督と一緒にやっていた頃のベタなラブコメ(これも香港では少なくなっている感がある)みたいな役どころが観たいんだけどなあ。
 映画では『女帝』に続いて二度めのシャオミン。2年前の某すまステで「次世代アジアンスタートップ10」に大陸から唯一ランクインしていた彼、日本でのブレイクは『新・上海グランド』だったとのことだけど、…うちのほうじゃまだ韓流が強すぎるので観たことも聞いたこともないよー。うん、確かに美形。しかも悪役が似合う系の美形。でも、なんとなく物足りない。最近は香港映画に大陸俳優が出演する時、だいたいの男優が脇役、しかも悪役ばっかりだからなのか、みんな美形を引っぱってくるんだよねえ。なんてったってリウ・イエという先達もいるし。美形で悪役も好きではあるんだけど、 なんとなく面白味にかける。同じ美形悪役でも、彦祖が演じるとものすごく魅力的なのに、なんでなんだろうか…。ってそりゃ単なる香港びいきだからなんだけど。
 そんなヒイキの香港人のはずであるえぢ。…なんか、ステロタイプでこれまた物足りない。イニD同じ月の頃はけっこう好感触だったのだけど、なんかまた立ち位置が初期の頃に戻っていないかい?って感じ。成長するどころかたい(中略)って感じなんだけど。まあ、確かに削ろうと思えば削れたキャラなんだろうけど、ラストに大きく関わる人物だったら、カットできないのはやむをえないな。でも、いつものえぢが最後の姿(でもなさそうだけどね)ってのはホントに物足りないのである。

 そんなわけで、全体的に物足りなさを感じちゃったんだけど、この気持ちを払拭するなら、やっぱり《証人》を見直して新たに感想を書かなきゃ気がすまないかな?

原題:神槍手
製作&監督:ダンテ・ラム 脚本:ジャック・ン 撮影:チャン・マンホー アクション指導&出演:トン・ワイ 音楽:ヘンリー・ライ
出演:リッチー・レン ホアン・シャオミン エディソン・チャン ミッシェル・イエ ボウイ・ラム リウ・カイチー カオ・ジエ(ジャック・カオ)

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