« スナイパー:(2008/香港) | トップページ | 《証人》(2008/香港) »

独断と偏見による、ゼロ年代の香港映画10本

 5月12日は、このblogの元サイト「funkin' for HONGKONG」の9歳のお誕生日でした。
くしくも、ニコ&セシの2番目のお子ちゃん、Quintusくんが生まれた日!
2002年から始めて、あっという間にここまできてしまいましたよ…。しかも思いっきり、当日更新できなかったし…。
 最近はすっかりblogメインに加え、つぶやいてばっかでこっちもあっちも更新がままならないけど、マイペースで取り組んでいきたい次第。
これに懲りず、今後もお付き合いお願いいたします。m(_ _)m

 あ、さて、ちょうど先週お誕生日を迎え、これでなにもやらんのも淋しいので(カンヌ追っかけも今年はここではやらないからね)、題名のような企画を挙げてみた次第。

 この10年間、香港映画や香港芸能界をとりまく環境はガラッと変わった。香港明星のハリウッド進出に加え、米国でのワイヤーアクションブーム、大陸との合作の増加、王家衛やジョニー・トーの欧州での高評価(しかし日本でもそうかというと、残念ながら一部の映画ファンのみにしか認知されていない)、無間道三部作のハリウッドリメイクとその逆パターン(コネクテッド)、芸能界の数々のスキャンダル、そして、80年代から香港映画を支えてきたレスリーや梅姐がこの世を去ってしまったこと…。90年代に洋画とのシェアが逆転してしまった以降、それが再逆転するかどうかはわからないが、大陸との合作ラッシュを経た今、また香港映画に変化が起こりそうな予感がする。
その変化をよい方向に期待しているのである。

 そこで、ちょうどきりもいいので、2000年代の香港映画を振り返ったついでに、「香港映画を観てみたいけど、どういうのがいいのかわからない」という初心者や「香港映画ってジャッキー・チェンにサモハンでしょ」なんて未だに思い込んでいる人々(こういう人に限って映画観ない人か。まあいいや、ははは)に勝手にオススメしたいゼロ年代香港映画を10本ピックアップしてみた。
 日本未公開&未ソフト化作品も何本か混じっているけど、それには目をつぶってもらって、何かの偶然でここにたどり着いた方には、是非観てもらいたいなーという作品。で、さすがに「ベスト」とはつけませんでした(笑)。そこまで仰々しくは言えないからね。
 「なんでこの作品?」とか「アレが入ってないの?」という意見があるかもしれませんが、ご了承を。何かあったらコメントいただければと思います。では、いってみましょ。

花様年華(2000) 監督/王家衛 出演/トニー・レオン マギー・チャン

 そういえば、ちょうど今頃だったっけ。カンヌの公式サイトを毎朝チェックして、この映画の情報を追っかけていたのは。
閉会式の翌朝のラジオで「CannesのBest ActorはTony Leung!」と聞いて、一瞬わが耳を疑ったけど、ホントにそうだったのはかぎりなく嬉しかった。
そして、映画自体も非常によい出来で、王家衛らしさがいい方向に出ていた作品。いや、悪い方向に出た作品ももちろんあるけど、『欲望の翼』『楽園の瑕』、そして『ブエノスアイレス』のような心をぐっと鷲掴みする作品があるのだから、「スカしてるじゃん」とか「製作に時間かけすぎ」とか揶揄されても、やっぱり追っかけはやめられないんだよね。     

少林サッカー(2001) 監督&出演/チャウ・シンチー

 この映画で満を持して世界デビューを遂げた感がある、90年代の喜劇王こと星仔。その登場は遅すぎたくらいじゃないか?と思ったけど、生涯小学生かよってくらいなお下劣ネタをかましながらもセンスあるウィットとユーモアをかましてくれる。
 これまたやめられないのだが、彼もまた日本では不当な評価をされてしまってないか?おバカな部分とこの映画のテーマである突拍子な一発ギャグしかウケてない感じ。
 そして、さらにセンスないスピンオフ(と呼ぶのも忌まわしい…)『少林ラクロス』には携わらないでほしかったよ…。あと、某ハリウッドのなんとかレボリューションにも。

インファナル・アフェア(2002) 監督/アンドリュー・ラウ&アラン・マック 出演/トニー・レオン アンディ・ラウ アンソニー・ウォン エリック・ツァン 他豪華キャスト

 ゼロ年代香港映画でベストをあげろといわれたら、やっぱりこれかなあ。暴力やガンアクションばかりではない、知的でスリリングで東洋的なハードボイルド。香港映画界で脂の乗り切った実力派俳優たちがベストをつくした演技合戦。この映画が香港内外の映画やドラマに与えた影響は数知れず(日本でいえば、もろにパクッていた某インスパイア・アンフェアから、うまい使い方で思わずにやりとさせられたNHKの某土曜ドラマまで。参考としてこの真ん中へん)。
 しかし、そのリメイクもやはりいい作品になったかと言えば、必ずしもそうでなかったのはいうまでもない…。ああ、スコのバカ。リメイクを作った時に語ってくれた、彼の香港映画観には非常にガッカリさせられたよ。
 あれ以来、彼にはちょっと不信感を抱いている。好きな人、申し訳ない。

忘れえぬ想い(2003)監督/イー・トンシン 出演/セシリア・チャン ラウ・チンワン ルイス・クー

 ゼロ年代の邦画には、「泣ける映画」というのがやたらと流行った。何本か観たのだが、どうも自分が大人になってしまったからか、その映画の出来があんまりにも…だったせいか(好きな監督の作品もあったのに!)、なんでこんなの流行るねん、ぬるい出来だなあ、と思ったものであった。語られる物語も使い古された感じだったし、同じ時期に某冬のなんちゃらにはじまる韓流が大量に押し寄せていたのもなにか関係あるかも。しかし、この韓流が及ぼした影響は…ってグチになるから以下強制終了。
 それにひきかえ、この映画。泣ける邦画や韓流ドラマのようなジャンルに似てはいるけど、実はぜんぜん似ていない。愛する者を失ってしまったら、意地でも立ち直らなきゃいけない。その姿が他人からどんなにイタいと思われても、逝ってしまった者への思いを抱きながら、必死に生きていかなければならない。そのたくましさが香港の街の中で描かれ、街と人の温かさが、生き残った者を癒して救う。これこそ泣かずにいられようか!

ワンナイト・イン・モンコック(2004) 監督/イー・トンシン 出演/ダニエル・ウー セシリア・チャン

 上の『忘れえぬ想い』に通ずるテーマはあれども、闇の世界に身を沈めたものに降りかかる悲劇をこれでもかこれでもかと語っていく、トンシンさんのダーク路線時代の幕開けを告げる作品。不法移民(本作)、麻薬(門徒)、日本への密航(新宿事件)…。香港人だけでなく、大陸の人々にも目を向けて、中国や香港でなくても起こりうることとして描かれるこれらの作品群は、目をそむけたいけど、目が離せない。

頭文字D THE MOVIE(2005) 監督/アンドリュー・ラウ&アラン・マック 出演/ジェイ・チョウ 鈴木 杏 アンソニー・ウォン チャン・シウチョン チャップマン・トー

『セブンソード』とこれで迷ったけど、無間道チームの果敢なチャレンジっぷりと、ジェイ・チョウの堂々たるスクリーンデビューを評価したい作品。熱狂的なファンが多い原作らしく、ファンから観れば「なにこれ?」っていわれそうなところは多少あるんだろうけど、日本ならアニメで済ましてしまうことを、ちゃーんと実写で、しかも日本ロケでやったのはえらい。ジェイの起用もいい感じであったし、よくよく観れば捨てがたい味がある。
 でも、この映画以降の日港コラボって、あまり思い浮かばないんだけど…。いくら某エイベが躍起になっているとはいえ。 

イザベラ(2006) 監督/パン・ホーチョン 出演/チャップマン・トー イザベラ・リョン

 やっと日本でソフト化された、日本の香港電影迷のアイドル(笑)パン・ホーチョンの代表作。
“第二の王家衛”なーんてスカした紹介のされ方をしているけど、王家衛というより香港のクドカンといった方が馴染めると思うよ、やっぱり。ふざけた題材をおかしな視点で撮ったり、セックスネタやう○こ○んこネタも過度に盛り込んでいるのに、決してお下品にはならない。なんか男子中学生がそのままおっきくなって映画監督になった感じだ。そんな感じがクドカン作品に相通じると勝手に思っている。
 だけど、この作品は下品でもなければひねってもいない。“もしかしたら親子かもしれない”男女の出会いと愛の交流、そして別れ。性と生と愛と死が返還直前のマカオに鮮烈に描き出され、切ないファドの歌声がそのムードを盛りたてる。ここまでロマンティックな作品が彼に作れるとは思わなかっただけあって、大好きな1作になった。
 ま、これはあくまでもホーチョンの引き出しのひとつ。ひねくれた視点の恋愛ものも、ホラー(しかもスプラッタ!)で家族を語ることもできるトリッキーな彼が、もうちょっと国際的に注目されれば嬉しい気がする。

エグザイル/絆(2007) 監督/ジョニー・トー 出演/アンソニー・ウォン ン・ジャンユー ロイ・チョン ラム・シュー ニック・チョン サイモン・ヤム

 ゼロ年代香港映画は、トーさんの時代でもあった。
さまざまなジャンルの映画を大量生産しながら、自らがこだわるスタイルを時間をかけて作り上げる。映画作家としては理想的よね。そんな趣味が見事に炸裂していたのが、この1作。
 本来なら日本で2001年に公開された『やりび』を挙げるべきなんだろうけど、製作年代が微妙にずれるし、趣味をおしまくった挙句にストーリーを置いてきぼりにしてああなった(笑)ってのが微笑ましかったので、こっちをチョイス。

生きていく日々(2008) 監督/アン・ホイ 出演/パウ・ヘイチン ジュノ・リョン

 生活格差や経済不況で打ちひしがれる現代日本。しかし、香港のそれは予想以上に深刻である。天高く伸びる高層マンション地である天水圍は、貧困や暴力の問題が顕在化している、21世紀の“悲情城市”。しかし、そんな社会問題を抱えながらも、シングルマザーは隣人のおばあさんを気にかけながらせっせと働き、彼女が育てた息子は、その日々を一見無気力に生きながらもすくすくと育ち、ちゃんと明日を見据えている。悲しみを感じながらも、未来には絶望せず、ささやかな日々を穏やかに暮らしていく。こんな視点で社会問題を浮き彫りにし、なおかつ声高にテーマを叫ばない作りは、実は意外と過激なんじゃないかなと思う。そんなことを感じたので、これはアン・ホイ監督作の中でも一番好きな作品になった。「格差が…」とか「下流化…」なんて言ってるのがなんだかバカらしくなるよ、これを観ると。

《葉問》(2008) 監督/ウィルソン・イップ 出演/ドニー・イェン リン・ホン サイモン・ヤム ラム・カートン

 香港映画といえばやはりカンフー。しかし、ただ戦って敵を倒すだけじゃ能がないし、レジェンド級の李小龍とは違う路線をいかなきゃ飽きられる。それに大陸の力を借りることもできれば、もっとバリエーションも広がるでしょう?というわけで、フォーフォー(SPIRIT)が生まれ、王家衛が《一代宗師》を企画し、それと同じテーマのこの映画が生まれた。…と、考えるべきか?
 でも、ウィルソンさん&ド兄さんの名コンビで先にこの作品が登場したのは、ある意味《一代宗師》にとってはラッキーだったんじゃないかと思う。それはやはり、ドニーさんのアクションの確かさはもちろんだけど、歴史アクションとしてやるべきことをやってくれたから、それと違うものを目指す(はず)の《一代宗師》から、アクションという重い枷が外れたんじゃないか、なんて思ったから。だって王家衛だもん。単純明快な勧善懲悪劇では終わらないよ。
 ともかく、この《葉問》は、歴史アクションとしての役割をしっかりやってくれたということで、ゼロ年代香港映画の1本に入れることにした。

 こうやって10本を選び出してみると、どうしても男性的な作品が多くなってしまう。傾向としてこれはしょうがないのかな、と思うしかないのか。
ただ、いま世界で一番男たちをカッコよく描いてくれるのは、やっぱり香港映画だと思うのは確か。それが先頭に立ってくれることで、実はジャンルとして多彩だということにもっと多くの人に気づいてほしい。まあ、確かにここ数年の映画には恋愛ものやコメディが不足している感があるけど、その手のジャンルも決してなくならないわけじゃないし(なんといってもローカル受けで一番稼いでいるのがコメディだからね)、ようやく地元に根ざしつつ良質で面白い作品を再び作り上げ始めた香港映画の、これからの10年を大いに期待したいのであった。

 さて、次に書くネタは何にしようかな…。カンヌで書くネタはないし、《復仇》の地元上映がめでたく決まっても、こっちにいつ来るかわからないし、チーリンの月9は主役のステキなあの方のおかげで、見る意(以下強制終了)。

|

« スナイパー:(2008/香港) | トップページ | 《証人》(2008/香港) »

コラム(中華芸能)」カテゴリの記事

香港映画」カテゴリの記事

コメント

9才のお誕生日、おめでとうございます♪
文句なしの素敵なピックアップ♪

3本見てないのがあるので、
機会があれば見たいです(見れないのもあるけど)。

「イザベラ」でマカオに行きたくなってから数年、
やっと来週からマカオに行ってきます!
中華電影好きとしては、マカオで必見っていうところあるのかなぁ。
ご存じでしたら教えてください♪

投稿: tomozo | 2010.05.18 23:57

tomozoさん、ありがとうございます♪
これで台湾や大陸の作品を入れちゃうと選ぶのが難しくなるのですが、日本公開された作品はいいものが多いので、案外楽でした。といっても、公開作品がガクッと減っちゃったからなー。
アンドリュー&アラン組とトンシンさんの作品が各2本入っちゃってひいきっぽくなりましたが、カラーの違う作品を選んでバランスを取ったつもりです。あと気がつけば、成龍さんとベニー・チャンさん、そして元UFO組の作品が入っていないんですね。ファンの人、ホントにすみません。

マカオ行かれるんですか!いいなあ~。
3年前に行って昼飯完食できなかった時以来行ってないので、いつかリベンジ訪問したいです。
おすすめですが『イザベラ』に出てきた、聖ポール天主堂の横にある脇道は、チャッピーとイザベラが夜遊びして叫びまわる場面に出てきていました。たしか(恋人巷という名前の道があったような気がする)
あとは『放・逐』が全面的にマカオロケなのですが、どこで撮ったかはちょっと調べきれていません(泣)。
この2作品が定番でしょうね。

投稿: もとはし | 2010.05.21 06:48

ほんとに、公開作品が少なくて残念です。
私なんかまだ都心部なので見れる方にもかかわらず、それでも減ってるし〜。
今思うと、去年なんかまだ公開作が多かった方ですよね。

マカオ情報ありがとうございます。すみません、無茶ぶりで(笑)

放・逐もそういえば、マカオでしたね〜。先日見た、「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」もマカオみたいです。でも、やっぱりどこがどこだか(苦笑)。

たぶん食べることメインになりそうですが、ロケ地みつかるといいなぁ。

投稿: tomozo | 2010.05.21 10:09

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/14197/48385602

この記事へのトラックバック一覧です: 独断と偏見による、ゼロ年代の香港映画10本:

« スナイパー:(2008/香港) | トップページ | 《証人》(2008/香港) »