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政治と文化と、映画のボーダーレス

 どもー、東京国際ぶっ飛ばし中でーす。サーセン(←若者男子か>我)
 久々のエントリなのに、今回は愚痴系です。ああ、「怒らない・妬まない・愚痴らない」の、いわゆる「三毒追放(byカツマカズヨ)」には程遠いぜ…。とほほ。

 さて、この週末は本祭よりも、「東京・中国映画週間」に出陣した中華趣味な同志も数多かったみたいだけど、twitterでのつぶやきやいつも見ているblog記事などを拝見したところによると、『花木蘭(ムーラン)』のイベントは不手際ばっかりでフッテージ上映もあっという間、さらにゲストへの質疑応答もできずにたったの30分で終わっただとか、昨日のオープニングセレモニーの後に上映された『建国大業』は睡眠鑑賞していた人が多かったなど(今だから言っちゃうが、実はワタシも昨年の『愚公移山』、ちょっと睡眠鑑賞したよ…)、観ていなくてもおいおいと思ってしまうようなことが続発だったんですねー(苦笑)。やっぱり、行ってそれを体験すればよかったかしら、なんて顰蹙なことを言ったらあかんね。

 さて、『建国大業』といえば、先日の読売新聞国際欄「ワールドビュー」(ネットでは読めません)に、「スター頼み 愛国教育」という見出しで、『建国大業』が紹介されましたよ。
 以下、ちょっと要約しますね。

 建国60周年を記念し製作された愛国映画の『建国大業』が大ヒット。これまでの退屈な愛国映画とは違い、アンディやツーイーら中華圏を代表する約100人もの人気スターや著名監督を集めて出演させている。北京の映画館は80年代生まれ(以下「80後」)のホワイトカラーの女性グループやカップルであふれかえり、映画は彼ら若い世代を取り込むために、大スターのカメオ出演や大役にイケメン俳優を起用している。 従来のお堅い愛国映画にありがちだった威厳よりも人間味あふれる演出にも光を当てた。
 大ヒットに気をよくした映画会社は、2年後の共産党創立90周年にあわせ、「80後」の若手スターを集めた『建党大業』も企画している。若い世代の愛国教育への利用を狙っており、共産党筋は「利用できるものは何でも使う。興行的に成功すれば一石二鳥」と自信満々。
 政権にとっては、社会主義に変わって、愛国・愛党のナショナリズムが統治イデオロギーとなっている。しかし、社会の不公正が広がる中では、スターたちにとっても、新たなイデオロギーを支え続ける役は荷が重いに違いない。

 この映画、当初トニーにも出演オファーが来たらしい。受けなくて正解だったと思うよー。
いくら彼がざっくり分けると「中国人」であっても、これは出演するにはどうか…って感じだったんじゃないかな。実際、これを観に行った友人も、「政治映画は疲れます…(笑)」とメールしてくれましたもの。
 映画好きとしての考えは、映画はその国のイデオロギーとは切り離して、独立したエンターテインメントとして楽しむのはいうまでもないことということにつきる。だけど、共産党側からはっきりそう言われてしまうと、頭痛がするほど悩んでしまい、「おーい中国共産党!映画をプロパガンダに利用するなよー」といいたい。この露骨さって、いったいどーよ。
 脇に逸れるけど、かつて韓流ブームが起きた時、アンチの人たちはかの国の政治姿勢をネタにそれを攻撃したものだけど、韓流に馴染めない身としても、そういう攻撃はどうなんだ?と思ったことがある。しかし、たった1本のドラマのせいで、それまで堅実に評価されてきた韓国映画の価値が下がり(どーでもいい映画の輸入も増えたからね)、今やあのブームはなんだったのかという状態だもんな。捏造と言われても、ブームって恐ろしいもんだ。

 話を元に戻して、政治と文化はきっちり分けられて然るべきである。それをわかっていたのが、かつての張藝謀や陳凱歌のような「第五世代」の監督たちだったのではないのだろうか。15年から20年くらい前だと、それがたとえ政権が良しとしないものであっても、彼らは自分たちが描きたいものを映画にぶちこみ、政府にとがめられても作品を作っていく後進たちの良い手本となっていったのだろうから。
 でも、今大陸での映画の状況は、その頃とはすっかり変わってしまった。「第五世代」もエンタメ作品を作り出すようになり、その作品からは強烈なメッセージが伝わりにくくなってきた気がする。そして、映画が人気を呼ぶに連れ、大きな権力がそれを利用するようになる…というのは、今までの歴史にもあったような気がするし、「政権」を「テレビ局」に変えれば、日本でこれが当てはまるような気がしてならない…ってこれはちょっと言い過ぎね。スマン。政治と一緒にしちゃいけないけど、日本のマスコミの堕ちっぷりも、どうしようもないと思うからな。

 そういう流れがあるから、共産党が映画をプロパガンダとして利用することとあわせ、そーゆー映画にアンディや成龍さんたち香港明星が出てしまうのにもイラッとさせられた次第。
 このことについて、大陸から来た方はどう思っているのかなと思い、中国語教室に新聞記事のコピーを持って行って、我的老師にも呼んでもらってしばらく討論した。こんな感じ。

 老師説:「ああ、こんなのは珍しくないですよ。共産党は昔からメディアを駆使してプロパガンダをやってきましたからね。でも、今わざわざ『愛国教育』を謳っても、普通の人たちはしらけるばかりですよ。こういうことをやりだしたってことは、今の国の状況に党が危機感を感じているのかもしれません」
 我説:「でも老師、成龍や華仔は香港返還前から中国よりの発言をしてきていて、最近それがますます強くなっているような気がするんですよ。それもあってこの映画に出たんじゃないかって気もするんですが?」
 老師:「いや、それはないでしょう。きっとお金の問題ですよ。たとえ本人が共産党を支持していなくても、お金が絡んでしまえば、やっぱりそうなっちゃいますよ。中国人ってそうですから」
 我:「うう、やっぱり『世道就是銭(世の中は金だ)』ですか…(笑)。ところで、愛国ってすなわち政府を愛するってことにつながるんじゃないかと思うんですが、どうですか?」
 老師:「それなら、香港映画はどうですか?武侠片では昔から愛国が叫ばれてきたじゃないですか?あれこそが愛国主義ですよ。中国での愛国は愛政府ではないですよ」
 我:「うーん…。日本でも以前の政府が教育に愛国心を盛り込もうとしてましたけど、どーも愛国心と聞くと嫌な気分になっちゃうんですよ。もし戦争になったら、若者がまた『国のために死ねるか?』と強要されそうで、それを愛国心というのならイヤだなと。あ、ワタシはもちろん日本好きですよ」
 老師:「中国人における愛国心というのは、実際のところ、中国のここがよくない、それなら日本の方がずっといいっていうことかな」
 我:「(それはほんとに愛国心なのか?)ふーむ。やっぱり違うみたいですね、微妙に」

 (注・意見には個人差があります。このことだけに関するコメントはお避け下さい)

 この後は、ちょっと政治的にヤバイ話へと展開していったので以下省略(反中いちげんさんネットワーカーさんたちに絡まれたくないので)。
 とりとめのない会話だけど、老師が中国を離れてかなり経つこともあって、彼は結構冷静にかの国を見つめていることがわかる。お金のためと言い切られると身も蓋もないけど、それも致し方ないのかもしれないのかな、という気もした。
 いずれにしろ、ちょっとほとぼりが冷めたら、実物を観てみたい気がする。たとえプロパガンダであっても、作品としての出来も気になるからね。
 
 さて、この流れでもうひとつ。毎度お馴染みの河北新報映画祭レポートにあった、アジアの風ディレクター石坂健治さんのコメント。
 個人的に高い信頼を持っている、映画評論家齋藤敦子さんによる国際映画祭レポート。齋藤さん自身が欧州映画と同じくらいアジア映画を重要視しているようなので、各映画祭の開催時期にはこのコラムを読むのを楽しみにしている。
 昨年に続いて登場した石坂さんのお得意は中東&中央アジア地域だそうで、着任3年目の今年のラインナップは見事に“石坂カラー”に染められたなーと、ちょっとシニカルに考えちゃうのだけど、それでも決して東アジア圏を無視しているわけではなく、むしろ同じ中華圏や東南アジアとのボーダーレス化に注目してほしいといっているようにとった。
 まぁ、それが本来の映画祭のあり方であるんだろうな、とは思うんだけど、近年映画祭で上映された作品の一般上映のチャンスがますます減っているので、その点ではちょい不満かな。一般の配給会社さんに期待したくても、すぐ倒産したなんだりで不安定なところがあるからな…。やっぱり、今後は映画祭も含めて、現地で気になると思ったらすぐ観ないことには、二度と観られるチャンスがなくなるってことなのだろうか。

 今週末でいよいよ映画祭もクロージングだけど、アン・ホイ姐さんの天水圍二部作TVシリーズ、マレーシア&香港合作の『心の魔』、そして一見中国産だが、実はしっかり香港だったという『カンフーサイボーグ(えーっ、広東語版上映だったの!)』の評判がよかったとのことで、それはなにより。これらの作品が必ずしも日本で一般上映されるとは限らないのが残念だけど、ワタシもちゃんと観る機会を作らなきゃな、と思った次第。
 でも、コンペの『台北に舞う雪』はすでに日本公開決定なのね…。やっぱり日本資本が入ると違うよなー。*タメイキ*

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