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プロテージ/偽りの絆(2007/香港)

 すでにVCDを持っていたけど、字幕で見たかったのでイー・トンシン映画祭にて鑑賞。
2年前の旅行中に零食皇后様をうっとりさせたポスターデザインとはうって変わって、豪華スターが繰り広げるへヴィでダークな社会派作品だった…。

 ニック(彦祖)は麻薬の売人クワン(アンディ)のもとで働いているが、実は麻薬捜査課の潜入捜査官。クワンは先天性の糖尿病という持病を持ち、身重の妻(ユンれんれん)は高血圧、下の娘は心臓病で手術を必要としていた。自らと娘の治療費のために、クワンは麻薬を売りさばいており、彼に信頼されたニックは後継者として仕事を教え込まれていた。
 ある日、ニックは向かいのフラットに住むフェン(張静初)とその娘と知り合い、親しくなる。あまりにも貧しい親子のために、ニックは食事を分けてやる。ニックはフェンにひかれ始めるが、彼女が麻薬中毒に冒されていることに気づく。彼女は夫(古天楽)と別居していたのだが、その夫も麻薬中毒であり、彼女の前に現れては付きまとうようになる。
 ニックの手はずで、麻薬捜査課はクワンの工場を襲撃することにする。しかし、海賊版DVDの工場をマークしていた税関に誤認でニックが逮捕されたことで工場の存在がばれ、クワンは家族でタイに逃げることになる。ニックもそれに同行することになり、彼は麻薬製造の現場を見て、現実を知る。
 ニックの留守中、フェンは夫に親子ともども監禁され、ますます麻薬におぼれていく。そして、フェンはオーバードーズにより、命を落としてしまう…。

 かつて「覚せい剤やめますか、それとも人間やめますか」という公共広告機構のCMがあったが、この映画を観ていてそれを思い出した。泣きじゃくる子供をよそに、母親が注射器を腕にあてる映像は、子供心に怖かった。その恐怖心があるから、覚せい剤をはじめとする麻薬が恐ろしくてしょうがないし、その思いは今でも変わらない。もう全編にわたって公共広告機構のCMのような映画である。それをトップクラスの俳優たちを起用して撮ってしまうトンシンさんは違う意味で恐ろしい。

 麻薬販売のからくりは、まるで現代社会の縮図だ。自らと家族を救うために麻薬を売りさばくクワンは麻薬の味を知らず、その麻薬におぼれるフェンと夫は、貧困から抜け出せない。タイ奥地で少数民族によって栽培される麻薬から、ディーラーはひたすら利益をむしりとり、栽培者たちの利益はほんのわずか。あくどいやつらにはフェアトレードなんて理念は当然ないに違いない(そりゃそうだ)。あんなケシ畑、花はきれいだけど根こそぎむしりとって、ちゃんと食べられるものの栽培に充てればいいのに、と根が単純なワタシは考えてしまうのだが、そう行かないのが世の中の摂理であり、トンシンさんが描き出す厳しさである。

 なんで麻薬なんてものがこの世の中にあるのだろう。それはニックが最初と最後でつぶやくように、寂しさを埋め合わせたい人の慰めなのかもしれない。でも、そこまで人は孤独なのか。フェンにはあんなにかわいい娘がいたのに、それでも麻薬がやめられなかったのは、やはり彼女の夫が言うように、もともとフェンがジャンキーだったからなのだろうか、それとも別の理由があったのだろうか。そんなことを考えてしまう。

 アンディの老けっぷり、地獄の淵を覗き込んでは悩める彦祖、ひたすら薄幸の道を進んでいるような張静初、いっちゃってる古天楽、それぞれが熱演。それぞれスターであるはずなのに、輝きを封印してしまっている。男優たちの仕事は円熟期に入ってきているのか。
 本当に久々に見たれんれん。可憐だった彼女が今やママか…と、妊娠したままアンディの妻を演じる姿を見ると、彼女と同年代のワタシもついつい感慨にふけってしまう。彼女が最も輝いていた90年代に快作や傑作を量産してきたピーターさんがこの映画をプロデュースしたと思えばなおさらだ。彼がトンシンさんをサポートすることで、へヴィな社会派映画を人々にアピールし、問題意識を持ってもらうと狙っていたなら、この映画は成功していると思うのだが…。それでもケルヴィンとジルの事件のようなは起こってしまうのであり、麻薬とそれに係わる悲劇が決してなくならないものであるのであるんだよな、と思うのだった。

 と、こっちも凹んだまま感想を終わるのであった。

 原題&英題:門徒(protege)
監督&脚本&出演:イー・トンシン 製作:ピーター・チャン 音楽:ピーター・カム アクション指導:チン・カーロッ 美術:ハイ・チョンマン
出演:アンディ・ラウ ダニエル・ウー チャン・チンチュー ルイス・クー アニタ・ユン 

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