《明明》(2006/香港=中国)
“ひとり香港電影天堂inみちのく”の第2弾は、香港MTV界の女王ことスージー・アウ(區雪兒)監督の長編監督デビュー作《明明》。
この映画は2年前にもにかるさんのblogで紹介されて、そこで興味を持って購入したんだけど、今回は主演男優が二人とも『ブラッドブラザーズ・天堂口』(我的感想はこちら)に出演していることと、ベニチオがラウちんに似ているなら(from《我要成名》)、中越典子嬢も周迅に似ているじゃないかー、ってことが観る決め手になった。
顔面相似形つながりで観るものを決めるってどうなんだアタシ。
香港と大陸の裏社会で生き抜く明明(周迅)は、ストールについた大きなビーズを飛ばして敵を倒す女侠客。香港の裏社会のボス、猫哥(ジェフ・チャン)も、彼女には一目置いていた。
ある日、彼女は猫哥に案内された地下カジノで賭けボクサーとして戦っていたD(彦祖)と出会い、たちまち恋に落ちる。Dもまた彼女に一目惚れし、二人は激しく愛し合う。明明がDに欲しいものを聞くと、彼は「500万ドルが欲しい。ハルピンに行きたいんだ」と言う。
明明は猫哥から500万ドルを強奪し、彼が大切にしている木箱も一緒に奪ったことから猫哥の手下に追われることになる。愛するDは香港から姿を消していた。明明は自分を慕うチンピラの阿土(トニーくん)に金を預けて逃走するが、すれ違った少女・ナナ(周迅)を巻き添えにすることをとっさに思いつき、木箱を持って香港から上海へとひとり高飛びする。
赤毛のナナは明明に瓜二つで、しかもDのガールフレンドだった。阿土は彼女を明明と勘違いしたまま、失踪したDを探すことにする。事情を察したナナは真実を言わぬまま、阿土と行動を共にする。占い師(クリスティ)の見立てによると、Dが上海にいることがわかり、二人は船で上海に行く。
ハルピンに行きたがっていたDはなぜ上海にいたのか?実は、Dは幼少時上海で暮らしていて、幼い頃に父親の手によって母親が殺されるところを見ていた。しかし、それからあとの記憶が曖昧であり、その事の顛末を知りたがっていた。その秘密はなぜか、かつて猫哥の手にあり、今は明明が持っていた木箱に隠されていたのだ…。
同じオサレ派映画作家でも、王家衛は女が失踪して、男がその影を追う。
でも、さすがに女性監督だけあって、消えた男を女が追いかける。江湖を渡り歩き、つわものどもと対等にやりあう女侠客も、惚れた男はとことん愛し抜き、追い求める。
物語の基本はベタで、それに加えてどこに行くのかわからない展開を見せ、最後の最後で明かされるDの“母を訪ねて幾千里(?)”の顛末はあまりにも衝撃的で、明明とDの愛の行方なんかどうでもいいくらいに吹っ飛んでしまったけど、こんなに支離滅裂でもなぜか許せてしまう映画。アンチ王家衛派が彼の作品に対してよくいう“スカした感じ”がこの映画にはないからかしら?
MTVの女王と呼ばれる所以か、アクションシーンはVFXがバリバリ(予告でしか観ていないが、『シン・シティ』や『300』みたいな撮り方してるな、と思った。あくまでイメージね)でマンガっぽい。イメージショットもてんこ盛りだし。そういう画作りだけじゃ疲れるけど、ちゃんと緩急をつけた映像を構成していたから、独りよがり感もあまりなかったし。
周迅も彦祖も美形に撮られていて、よかった~。このカップルといえば『夜宴』だけど、あっちよりも100倍(オーバー?)いい。ラブシーンもエロティックだしね。特に周迅はタイトルロールを張っているだけあって、彼女の持つコケティッシュさが十二分に発揮されていた。コテコテの大陸電影じゃ、彼女を黒社会の女チンピラにしようなんてこと、思いつきもしないだろうしね。クールな外見に熱情を秘めた黒の明明、初見は乙女でもかなりサバサバしている赤のナナ、メイクやキャラクター造型はもちろんだけど、それぞれの演じ分けもよかった。あと、驚いたのはナナの話す広東語が彼女自身のセリフであること!明明が北京語オンリーだから「しょーがねぇなぁ、周迅、大陸の人だもんな」と諦めていたんだけど、感心しましたよ。この使い分けは演出意図かな?彼女も香港の特別居民になるようなので、これからは香港映画への出演が増えるのだろうか?大作じゃなくていいから、この映画みたいな、才能のある若手映画監督とタッグを組んでもらいたい。
彦祖には長髪が似合わないと思っていたけど、こういう長髪なら結構イケるのね。しかし、相変わらずいい身体をしているよ…。惚れないけどさ(爆)。そういえば上海のシーンでは上海語を話していたねー。器用なヤツだ。
これが香港映画初出演になる?トニーくんの好演は新鮮な驚き。これまた自分自身でしゃべっている広東語がどこまで不自然なのかはよくわからないけど、ちゃんと香港のチンピラとして街に馴染んでいたし、ナナを明明と思いこんだまま行動を共にしつつ、ナナに明明へのかなわぬ想いを重ね、行動や言葉ににじませていっているように感じたよ。うーん、純情くんがよく似合うよ、台湾のトニーくんには。
そして、トニーくんと違った意味で驚いたのが、台湾の“情歌王子”張信哲さんの演じた黒社会のボス。杖をつき、プールで泳ぐこのボスは、自分の宝物を奪った明明を追い詰めて殺さんとしている残酷さを持っているのに、なぜこんなに軽やかでキレイな声をしているのだろうと思ったら、それが…!と、謎に気づいたときは大いに驚いた。もう一回観たくなったけど、できれば日本語でその謎を解説してもらいたい気もする。あーでも日本版DVDは無理なんだろうな。こりゃ自学自習せねば。
ええ、こういうセンスの香港映画も「あり」でせう。
でもスージーさん、2作目もこのパターンだと飽きられますよー。
新作ではまた違った驚きが観てみたいです。今後も頑張ってね。
製作&監督&脚本:スージー・アウ 音楽:アンソニー・ウォン(黄耀明)&ヴェロニカ・リー@人山人海
出演:ジョウ・シュン ダニエル・ウー トニー・ヤン クリスティ・ヨン ジェフ・チャン
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