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K-20 怪盗二十面相・伝(2008/日本)

 今年は金城くん迷にとっては、嬉しいことこの上ない1年だったんじゃないかな。
春には『死神の精度(香港タイトル:甜言蜜雨)』、秋には『赤壁』、それに続いてこの『K-20』と、主演映画が3本も公開されたんだもんね。
 東京が水没したり、地球が滅ぼされたりというパニックものばかりでダークなこのお正月映画の中、銀幕でも景気の悪い話は見たくないもんね、肩の力を抜いて楽しみたいな、とオアシスの主題歌を口ずさみながら観に行った。

 舞台は第二次大戦が回避され、戦争が終結したパラレルワールドの日本にある“帝都”。
 そこでは全盛期からの華族制が守られていたために、人々の生活格差が激しく、職業や結婚が制限される社会と化していた。1949年、帝都では怪盗二十面相という義賊が出現し、華族の金品が盗み出されるという事件が多発していた。
 遠藤平吉(金城くん)は下層庶民の一番の娯楽である、グランドサーカスの花形軽業師。サーカスと鳩(!)をこよなく愛する彼は、病気で苦しむ団長の南部先生(小日向文世)を助けたいという一心で、ゴシップ雑誌の記者(鹿賀丈史)の仕事の依頼―二十面相を追う華族の探偵・明智小五郎(トロさん)と羽柴財閥の令嬢葉子(マツタカ)の結納の儀を写真に収めること―を引き受ける。
 しかし当日、羽柴財閥のビルの屋上で彼がカメラのシャッターを切ると、ビルの下層階に仕掛けられた爆弾が爆発。その混乱の最中、平吉を見つけた明智の弟子小林少年(本郷奏多)に二十面相だと指摘されたことで、彼は軍警に逮捕されてしまう。二十面相の罠にはめられたと気づいた平吉は無実を訴えるが、当然警察は聞く耳を持たない。
 平吉は刑務所に護送される途中で、サーカスでからくりを担当する相棒の源治(國村さん)とその泥棒仲間に助けられる。自分が逮捕された後、サーカスは解散させられ、可愛がっていた弟分(今井悠貴)がふきっさらしの野原で親のいない子供たちと一緒に暮らしていた。それを見た平吉は、自らの汚名を晴らし、子供たちを助けるために、二十面相への復讐を誓う。そして、泥棒たちの間に伝わる秘伝書を元に、源治とその妻(高嶋礼子)たちの協力を得て自らを鍛え始める。
 鍛錬の途中、平吉は二十面相に襲われた葉子を助ける。それがもとで、葉子と明智を自分の計画に巻き込むことになる。その過程で二十面相は羽柴家所蔵の『バベルの塔』の模写を狙っているとされていたが、本当の目的は葉子の祖父が生前興味を持っていた、ニコラ・テスラ考案の巨大電磁波発生装置を入手することではないのか、ということに平吉は気づく。その謎を解く鍵が、『バベルの塔』に隠されていたのだが…。

 実はアタクシ、怪人二十面相ものも、少年探偵ものもちゃんと通っておりません。
 だってホームズ派だったもん♪乱歩のその他の作品も映像作品でしか触れてないからねぇ。
 なんてーことはさておき、この映画で描かれるのは、怪人二十面相の誕生という「エピソード1」的な物語なのだが、…んー、正直言ってパラレルワールドにしちゃったことで、これは乱歩の二十面相とは別物なのでは?と思わせられるところもあるんじゃないかな、と思った。
 なによりも、本当の二十面相の正体があまりにもあっけなくわかってしまうのと、そのあとの物語を乱歩の正伝とすり合わせていくのは、あの結末ではかなり強引なのでは?と思わせられちゃったからである。確かに原作は乱歩自身じゃないにしろ、『サーカスの怪人』でほのめかされたという、二十面相はサーカス団員の過去を持っていたという設定を忠実に守っていたというからこそ(「ダ・ヴィンチ」12月号、北村想さんインタビューより)、原作は未読にしろ、ホントにその結末でいいのかなーという気持ちにさせられたもんで。

 筋書きに対する感想はここまで。次は映画自体について。
 監督こそ、これが約15年ぶりの劇場映画となる岩手出身の佐藤嗣麻子さん(この方、TVドラマの脚本家として知られるけど、監督デビュー作は日英合作の『ヴァージニア』。『エコエコアザラク』の最初の映画版を観てます)だけど、スタッフはほとんど、あの『三丁目の夕日』二部作の人たち。
 …うわ、実はあの映画は超苦手。だって、最新VFXで昭和30年代東京の姿を画面に見せられても、ワタシゃその時代を全然知らないし、きれいなだけで陰の部分が見えないし、なにしろ“昭和礼賛主義”が気に入らないもん。だから、同じことをやられたらやだなぁと思ったけど、さすがに監督が違えば演出方針も変わるわけで、上海ロケも効果的に使い(おお、お馴染のあの街角だ!と心の中で喜んだぜ)、アクション主体で見せた演出(嗣麻子さん曰く、平吉が駆使するアクションはワイヤーじゃなくて、映画『YAMAKASI』で知られる、フレンチワイヤーアクションことバルクールという技らしい。eiga.comより)をうまくサポートしていたので、それは評価したい。まぁ、こちらは完全に架空の都市だからね。街特有の汚さや暗闇がないのはしょうがないのね。
 でも、そういうスチームパンクな冒険活劇性を前面に押し出したので、ゴシック的ムードの漂う乱歩作品とはまた違う雰囲気になってしまったのが、乱歩がお好きな人にとっては残念なんじゃないかな、って気もする次第。

 そういうおどろおどろしさを払拭した作りになったからこそ、金城くんが起用されたんじゃないか、などとも思ってみたりする。あくまでアクション映画として割り切るってことでね。
 彼も出ている映画のスケールがでっかくなってきている(特に中華圏)ので、本人としても余裕があって、かなり自由に演じていたように感じた。でも、『赤壁』に続いてまたしても鳩使いってのはとにかく笑うしかない。これは偶然らしいんだけどね。
 今ではさすがに彼も『不夜城』の劉健一や『リターナー』のミヤモトのように、自らの出自をイメージさせるようなキャラクターを演じることはなくなって、ここではしっかり日本の下層庶民を演じていた。そういう役どころでは、ホントにフツーの日本人俳優と同じ扱われ方をされていて、その映画もわざわざここで取り上げなくてもいいか、とも思ったんだけど、今回は脇役に中華電影と縁の深い俳優さんが多かったので、そっちに注目。

 まずはなんといっても『ハードボイルド』でユンファと戦う殺し屋を演じた國村さん!
彼はこれ以外にも未公開ながら何本か香港映画に出ているというのが嬉しい。そんな彼が金城くんとコンビを組むんだから当然ウーさん話で盛り上がるんだろうと思ったら、実際そうだったというのがいい(from eiga.com)。この二人は見ていて楽しく、源治夫婦を主人公にスピンオフを作ってほしいなんて思っちゃうくらい(こらこら)。
 そーいえば問題作『少林ラクロス』にも出ていたよ、のトロさん。中華電影でのキャリアは説明不要ですね。立ち位置としては今回も敵役です、とネタバレにならない程度に言っておこう。トロさんの明智?土曜ワイド劇場的じゃないし、ミスキャストでは?とか最初は思ったけど、キザすれすれのキャラだからああなるのもわかるかな。でも、平吉が変装した明智のボケ気味演技は、20年くらい前にトロさんが“マヌケな動物”と称されていた役を演じた某刑事ドラマを思い出させてくれて面白かったよ(苦笑)。

 中華がらみ以外では、冒険活劇のヒロインに年齢は関係ないということを証明してくれたマツタカちゃん(天然演技が嫌味になりませんな)、気風の良さが魅力的な礼子姐さんの女性陣がよかった。しかし、張傑…じゃなかった、要潤の出番はあれだけかよ!今度は是非、金城くんの弟役としてリベンジを!(うそうそ)

監督&脚本:佐藤嗣麻子 原作:北村 想 音楽:佐藤直紀 脚本&VFX協力:山崎 貴
出演:金城 武 松 たか子 仲村トオル 國村 準 高島礼子 益岡 徹 鹿賀丈史 

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