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初恋の想い出(2005/中国)

 東京で『放・逐』上映が始まった日の朝、ワタシはこの『初恋の想い出』を観た。

 この映画は大好きな『山の郵便配達』の監督、フォ・ジェンチイが手がけた作品だが、これより先に東京・中国映画週間で新作の『愚公移山』を観た時、これまで以上に大きなスケールや大作を手がけても変わらない真摯な映画作りに感心はしたけれど、政府がらみのこういうイベント(こらこら!)でかかるこの映画自体、所詮はプロパガンダだよな、と思って多少がっかりしていた。それもあって、このところ香港より中国映画の公開が増えているのに、寂しさを感じているのであった。
 そんな愚痴はとりあえず置いといて、本題へ行こうっと。

 舞台は中国東北部の架空の街・東林。
 1970年代、この街にある公社(多分)の子弟が住む官舎に暮らす屈然(ヴィッキー)と侯嘉(陸毅)は幼馴染。ある日、遊んでいた侯嘉が呼び出されて帰宅すると、そこには廊下に座り込んだ母親がいた。そして、侯嘉は父親が死んだことを知る。
 80年代半ば、二人は高校生へと成長していた。優等生の侯嘉は父親の死以来脚が不自由になった母親の面倒を見ていた。彼は地元の東林大に進むことを決めたが、成績がイマイチな屈然も一緒の大学に行くことを望む。二人は自然と愛し合うようになっていた。しかし、そんな二人の姿を見た侯嘉の母親は、屈然と付き合うなと告げ、恐ろしいことを息子に打ち明ける。父親の死は自殺で、それには同じ会社の上司だった屈然の父親が関わっていた、と…。翌日、約束していた屈然と高校の同級生たちとの卒業旅行の集合場所に、侯嘉は現れなかった。
 同じ街にいながら、大学は離れ離れになった二人。屈然は、自分の父と侯嘉の父との間の因縁を知る。そんな時、彼女は『ロミオとジュリエット』を読み、主人公の境遇に自分たちを重ねる。家同士は憎みあっても、自分たちの愛は変わらない。そう思った二人は深く愛し合うようになる。侯嘉の母親は「あの子を選ぶか私を選ぶか決めなさい」と息子に迫るが、彼は不自由な身体でここまで自分を育ててくれた母親を見捨てることもできず、葛藤に苦しむ。屈然も侯嘉の父を自死に追い込んだ父を憎み、卒業後に街を出たいというが、父親は同意しない。やがて、二人は死を考えるようになり、地下旅館で初体験をして、睡眠薬で自殺しようとする。しかし、死をためらった侯嘉が屈然をとめ、不審に思った旅館の支配人が両方の家族を呼び出したことで未遂に終わる。屈然の父は侯嘉をなじり、両家の亀裂は決定的なものとなる。かつて侯嘉の父は若い女性と不倫をしていたが、それに悩んで関係を清算したかった女性が上司の屈然に相談したところ、レイプされたと言えば負担が少ないと判断して告発してしまったことがこの悲劇の始まりだった。侯嘉の母は夫に不倫された悔しさを抱きつつ、息子を同じような運命にさせてはいけないと思って、屈然との交際に反対したのだった。
 90年代前期。大学卒業後、侯嘉はボストンに留学し、屈然は地元の企業に就職した。家には兄夫婦が同居しているが、屈然は父への反抗から同じ食卓につこうとしない。ご飯を持って自分の部屋に引きこもり、侯嘉から届いたエアメールを読みふける日々が続く。最初のうちこそ、頻繁に連絡を取り合っていたが、そのうちに二人の連絡は途切れるようになる。二人とも、お互いが変わってしまったのではないかと思うようになり、それを確かめるのが怖かったのだ。やがて、侯嘉の母親がバリアフリーのマンションに越していく。そして、屈然が侯嘉の帰国を知った時、別れてから7年が過ぎていた。
 屈然の父親がガンに冒される。それを知った彼女は、父のガンは自分が迷惑をかけたからだと思い、侯嘉を避けるようになる。そして、彼女は家族の世話をして生きることを誓う。余命わずかな父親は侯嘉を呼び出し、彼の父の死の真相を告白して、この世を去る。
 二人が30代半ばに差し掛かったある年の2月14日、侯嘉はブライダルショップで屈然と再会し、お互いがまだ独身だということを知る。そして、侯嘉は屈然に結婚を申し込むが…。

 この映画のことを最初に知ったのは、朝日新聞で沢木耕太郎さんの「銀の街から」(from [どらく])を読んでからだった。この月イチエッセイは気づいたときだけ読んでいるだけなのだが、沢木さんが珍しく中国映画を取り上げていたので気づいた次第。
 沢木耕太郎さん曰く、この物語は“生き残ってしまったロミオとジュリエット”の物語だという。 
 恋愛にほとんど障害がなくなったともいえる現代(特に民主主義国)でも、この物語が今もなお色あせないのは、恋愛は障害があってもいっそう燃え上がるものであるからであるのだが、社会主義国にして、家族を尊ぶ民族である中国のロミジュリたち―屈然と侯嘉は、恋愛に燃えあがった若い頃に、自由恋愛を良しとしない風潮と家族の情に翻弄される。しかし、彼らが歳を重ねていくごとに、国は改革開放にはしり、民主的ではないにしろある程度の自由恋愛も容認されていくのに、決して結ばれることはなく、家族に償うようになっていく。20代、30代と進むに連れ、一時的な恋愛の情熱よりも、死ぬまでの付き合いとなる家族が大事になってくる。そして、お互いはもう人生の伴侶を決めているのかも、という小さな疑いが彼らを決別させるものの、偶然というべきか、気がつかずなのか、二人ともまだシングルでいた。駆け落ちだってしてもよかったのである。でも、それができなかった。それは家族も自分を愛してくれていたから。そして、30代になった中国のロミジュリは2月14日に結婚衣裳を着て写真を撮るものの、これで彼らがハッピーエンドになったというわけではない。それは、ドレスを着ても顔を曇らせたままの屈然が、やがて目の周りを真っ黒にしながら涙を流し、無理やり笑顔を作ろうとしても、どこか心から幸せそうには見えないという表情をしていることから窺える。もしかしたら、この映画の後で二人は本当に結婚したのかもしれないが、そこからまた物語が始まる、ということだってわかるからだ。
 初恋は決して実るものではない。いくら初恋の人と結ばれても、あの頃とはきっと全然違う。
 この映画を見終わって、そんなことを思った。同じ“初恋”ものでも、『初恋のきた道』があまり好きでないのは、もしかしてこういう気持ちがあるからじゃないかと思う。

 ヴィッキーはいつもの元気いっぱいな演技を封印し、10代から30代半ばまで、愛と情の間でゆれる女心を好演。上海国際映画祭女優賞受賞も伊達じゃない。でも、個人的にはおてんば演技の方が好きだ…といっても、もうそんな役どころが出来ないお年頃?
 なかなかにハンサムな陸毅は、『ジャスミンの花』にかぶるようでかぶらないキャラだったような。この手の初恋ものに登場する大陸男優では、『初恋』の学校の先生とか、『スカイ・オブ・ラブ』の[イ冬]大為とか『故郷の香り』の郭暁冬とか、どーも垢抜けないけど「ぶさ」とも言い難い、実にビミョーな男優ばかりだったので、それが感情移入を妨げるような気がしてならないんだけど、そんな彼らよりはいいとしても、どっか中途半端な印象を受けるのはなぜなんだ。これがリウイエや陳坤だったらまた違う気がするんだが。

 あと、気になったのが時代と舞台設定もろもろ。
 もしかして、架空の地方都市にしたのはわざとか?ロケはハルピンで行われたらしく、春に舞う綿毛や、石造りの重厚な建物は素敵だったけど。舞台を架空にしたから、文革末期の荒廃した雰囲気もなく、屈然の着る木綿の服にセンスの悪さが感じられないのか。『陽もまた昇る』でも、70年代後半の田舎でそういう服は着ないのでは?と思ったところがあったけど、もしかして両作品とも、服の着こなしでフィクションを強調しているのか?

原題(英題):情人結
監督:フオ・ジェンチイ
出演:ヴィッキー・チャオ ルー・イー

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コメント

こんばんは。先日お邪魔したふじたと申します。
「エグザイル」観て参りました。
行ったのが平日昼間だったせいか、お客さんにやたらとおじいちゃんが多くて(しかもそれが上映中に徘徊するので)少々驚きましたが、でも胸に迫るいい映画でした。
リッチー・レンが若かりし頃のユン・ピョウに見えて仕方なかったのは近視のせいでしょうか。

ところで来年2月頃に香港に行こうかと計画しています。初めての香港なので、宿からどこにしたらいいのかさっぱりわかりません。評判を聞くとカオルーンホテルがいいのかなぁとか思うのですが・・・。ネットと本と格闘中です。

投稿: ふじた | 2008.12.15 21:56

ご覧になられたのですね。
平日でも盛況で何よりです。
これで胸を張って地元映画館にリクエストできるぞ!
リッチーはよく岸谷五朗似と言われますが、ユン・ピョウさんに似ているというのは初耳でした。

九龍飯店には泊まったことがないのですが、よく聞くのが以前に比べてサービスが落ちたということ。
サービスを気にしなければ、BPインターナショナルやスタンフォード・ヒルビューなどが安くていいと思います(それでも以前よりは上がっているはずです)。
この夏は尖東のラマダ・カオルーンに泊まりましたが、ここはちょっと部屋が狭かったです。もっとも、ほとんど寝に帰るような状態だったので、そんなに気にしませんでしたが。

投稿: もとはし | 2008.12.18 00:01

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