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言えない秘密(2007/台湾)

 台北で生まれたジェイが思春期を送っていた淡水は、ワタシにとってもまた思い出の地である。台北からバスで1時間ほど北に行ったところにある淡水河口にあるこの街は、日本統治以前にスペインが統治したころの歴史的建造物が残っており、“東洋のヴェネチア”と呼ばれている…なんていうウソっぱちなガイドブック的紹介はおいといて、私的バリバリで書いてしまえば、この淡水はワタシが生まれて初めて住んだ海外の街なのである。
 なにせ留学していたのもかなーり前(四捨五入したら20年前だよ、おい!)なので、数年前に久々に行ったらかなり変わっていたのだけど、数年前の台湾旅行で久々に行ってみて、川岸に立って河口を見ると、天気のいい日に蝦巻とラムネを買ってそこでボーっとしていた初秋の土曜の午後を思い出したのであった。ああ、あのころに戻りたいなぁ…、と思ってももう戻ってこない。
 ジェイの初監督作品『言えない秘密』を見た時、やっぱり台湾留学の時を思い出してしまったのはいうまでもない。それもあって、観た後に妙な切なさがあったのかもしれない。

 1999年秋、淡水。父親(秋生さん)が教師を務める淡江芸術学院に転校してきた葉湘倫(ジェイ)は、もうすぐ取り壊されるという演奏室から聞こえてくるピアノの音に心を奪われた。それを弾いていた路小雨(ルンメイ)と知り合った彼は、たちまち恋に落ちた。聞いたことのないこの曲の題名を彼女に尋ねると、「誰にも言えない秘密よ」と教えてくれない。
 湘倫は、学院で一番のピアニスト、“ピアノ王子”こと宇豪(宇豪)とのピアノバトルに挑戦する。見事勝った彼は宇豪から楽譜を譲り受ける。それは、サン・サーンスの『白鳥』で、小雨が欲しがっていたものだった。
 小雨が喘息持ちだったことを知った湘倫は、父親の助言に従って、彼女が休むたびにリンゴを持って行った。リンゴが15個たまったある日、やっと出席した小雨と湘倫は夜に演奏室で待ち合わせする約束をした。しかしその夜、やってきたのは湘倫に思いを寄せていたチンイー(アリス・ツォン)だった。その現場を小雨に目撃されて以来、小雨は湘倫の目の前から姿を消す。
 そして5カ月後の卒業式の日。音楽科の卒業生の代表として、湘倫は卒業式でサン・サーンスの『白鳥』を弾く。ホールの入口に小雨を見つけた彼は、演奏を放り投げて彼女を追いかける。やっと彼女を捕まえた湘倫だったが、父が愕然とした顔をして自分たちを見つめていたのに気づく…。

 旧館の外型となった紅毛城、湘倫と小雨がデートする淡水河のほとり、昔と全く変わらない淡水の老街、とにかくみんな懐かしい。おまけにルンメイは『藍色夏恋』出演後、ワタシが半年間留学していた大学のフランス語学科に在学していたというし、まさにワタシが観なくてどうする、という作品(ごめん、オーバーすぎるね)。惜しむらくは、当時すでに大学生だったってこともあって、ジェイの出身校である淡江高中を見にいったことがないこと。でもね、この高中の制服はあの映画ほどオシャレじゃなかったよ。どっちかといえば、『恋恋風塵』の主人公たちが着ていた、味もそっけもない色(確かベージュかライトブルーだった記憶がある)のワイシャツを着ていたような…。スマン、なんせ前世紀の記憶なもんで(ってまたオーバーなことを)。
 こんな高校時代をジェイが過ごしていたのか、というのは別として、かつて高校生だったワタシたちはもちろん、現役の高校生にも共感してもらえる(実は鑑賞時、後ろの高校生が大泣きしながらこれを観ていた。一緒に来た子に「アタシこれ、すっごく観たかったの!」と言っていたのも聞いたぞ)青春映画だった。もっともテイストとしては『藍色』や話題の《海角七号》(観たい観たい観たい!)のようなストレートな新世代台湾青春映画、と見せかけながら、実は『時をかける少女』(ネタバレに近いので反転)ばりの変化球をクライマックスで投げるところがジェイらしいというか。
 ビル・コンの協力を得たこともあり、香港からは若き脚本家クリスティン・トーとナイスなコーディネイトで楽しませてくれるドーラ・ン、台湾の二大大御所リー・ピンビンに杜篤之(この人の名前、つい「もり・あつゆき」と日本語で読みたくなる)と豪華スタッフを従えながらも、香港や大陸(やもちろん日本)との合作ではなく台湾で作り上げたというのは一種ののこだわりなのだろう。中華圏、いやアジアのスターでありながらも、やはり地盤は台湾にありたい、という彼の気持ちが見える、なんて考えてしまうのはちょっと深読みしすぎかな。

 先に挙げたドーラさんがコーディネイトした「淡江芸術学院」の制服がよく似合うジェイ。もうすぐ30歳だっつーのに、この似合いっぷりは反則に近いぞ。いつもながらのシャイなキャラクター&親孝行キャラだけど、結局アタシ(もちろんそれ以外の人もね)が彼に求めるのはそーゆーキャラなので没問題。
 それにもまして可愛らしかったのう、ルンメイちゃんは(爆)。もうおねーさん、彼女にココロつかまれちゃいましたよ。さすがパンフレットで我らが野崎先生が大絶賛していただけあるよ。ああ、『時の流れの中で』と『遠い道のり』が観たいよ。でも台湾映画の特集上映はとーほぐの田舎まで来ないんだよね。
 もちろん、これが映画デビュー作というアリス小姐もかわうい。香港映画にも出て順調にキャリアを重ねているようで、どこかで見かけたらぜひ手を振ってあげたい。
 さらにお素敵だったのは再びジェイとコンビを組んだ秋生父さん!『陽もまた昇る』の♪ブンガワン~ソロ~にちょっとやられ気味だったので、ここでも歌ってくれるのよね、と思ってたら、歌やギターはもちろん、ダンスまで踊ってくれるじゃんか!なんて大サービスしてくれるんだ秋生さん、落ちたらいったいどうするんだ自分!…でもこの人は15年前に人肉饅頭作(以下略)、というフレーズがよぎって正気に戻る。ってそんなことで覚めるなよ。
 あとはいつもながらの南拳メンバー。ピアノ王子の宇豪はもちろん、悪ガキの弾頭ともども適材適所の演技が楽しかったねー。はて、“不機嫌な要潤”ことイケメンギタリスト張傑はいずこ?と思いきや、細ぶち眼鏡をかけた地味ーなCDショップのオーナーで笑った。でも要潤本人もあーゆー役似合いそう。Laraちゃんが出てなかったのはわかる気がするけど、もしかして挿入歌を歌ってなかった?エンドクレジットで確認できなかったな。

 この後はネタバレ感想になるので、キャストデータの後に書きます。 

原題(英題):不能説的・秘密(secret)
監督&原作&音楽&出演:ジェイ・チョウ 製作:ビル・コン 脚本:クリスティン・トー 撮影:リー・ピンビン 衣装:ドーラ・ン 音楽:テルザック・ヤンパン 録音:トゥー・ドゥーチー
出演:グイ・ルンメイ アンソニー・ウォン アリス・ツォン ソン・ダントウ ジャン・ユーハオ チャン・チェ ホアン・ジュンラン

ここから先はネタバレです↓ 

 ここからネタバレです。未見の人は飛ばしてね。

 …しかし、小雨の抱えていた秘密は、彼女が過去の人間であるってことはある程度予想できたけど、てっきり“ピアノの精霊(=つまり、中国語でいう「鬼」?)”なんじゃないかとトンチンカンなことを思ったのよね。
 そして“時をかける音楽”の秘密も、うっかりしゃべらなきゃいいのに。
 でも、そうすれば話が進まないのか。
 あと、気になる描写はいくつかあるんだけど、それはワタシたちの想像でつなげなきゃいけないのね。たとえば、20年前からずっといる用務員のお兄ちゃんの身体が不自由になったのは、激しくいじめられていた小雨をかばってボコボコにされたのではないかとか、実は父親と小雨の母親の間にはまた別の秘密があるんじゃないかとか、ラストで79年に跳んだ湘倫はどうやってその年の芸術学院に在籍することができたのかとか。
 でも、これって下手したらタイムパラドックスになりやしないか?その矛盾を解決するために、あえて語ろうとしなかったのかもしれないな。

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