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ホーチョン&チャーリーのミッドナイト・ティーチイン

 新聞各紙を見ると、東京国際映画祭の総評が掲載されている。
ワタシは朝日と読売で総評を読んだけど、コンペ部門と全体に関しては朝日が好意的な文章で読売が批判的(記事がウェブにないので図書館等でチェックを)と真逆。でも、庶民的でお祭り好きそうな読売が批判的で、お堅い朝日が肯定的に捉えたのはちょっと意外だったな。ワタシの意見としては…、偉い人ばかりが目立つようじゃダメだろ(ローゼ〇閣下、アナタのことですよ!あと現チェアマンと元チェアマンも) というわけで、読売の論調に同意。

 そんな両紙とも意義を認めていたのが、東京国際名物となった「アジアの風」部門。
ホントは香港や中華電影だけじゃなく、国際の常連であるマレーシアのヤスミン・アハマドや韓国のキム・ギヨンの作品も観てみたい。自分が地方在住じゃなければ、せっせと通っていたのに違いない。だけどアタシは悲しき地方在住の電影迷というマイノリティ…(泣)。
 回を重ねるごとに充実している部門なんだから、そろそろ地方巡回上映を企画してもいいのではないでしょうか。そうしないとアジア映画の地位はもちろん、東京国際の知名度も上がらないんじゃないの?どうかご検討をお願いします、ディレクターの石坂さんに前ディレクターのテルオカさん。

 しょっぱなから話題がずれて申し訳ない。本題です。
 先に挙げたヤスミンさんと共に東京国際アジアの風名物となったのが、我らが美肌監督パン・ホーチョン。グリーンカーペットを歩き、2回の作品上映では必ずティーチインを行って、ついでに新宿でさかなクン帽子を買ってみたりして、すっかり年中行事と化した東京国際を今年も楽しんでいるかのように思えた。うらやましいぜ。
 コンペや特別招待作品、日本映画ある視点部門などに比べてウェブやメディアで紹介される機会が少ないこの部門だけど、ホーチョンがさかなクン帽子を、カメラマンのチャーリー・ラム(参考としてこの記事を)がキツネのマフリャーをして臨んだ2回目のティーチインの様子はムービーウォーカーで紹介されていた。…やっぱり、昼間の上映の方が盛り上がるってことか、なんて思ってみる。

 もっとも、ワタシが『些細なこと』を観たのは、最初に上映された日曜のレイトショー。ティーチインが行われたのも11時過ぎていたし、終電を気にして帰られたお客さんも多かったから、取材にも来られないわけか。そんな時のためにティーチインをメモっておいたので、毎年恒例のティーチイン採録。

 まずは、この7編のオムニバス映画ががデビュー7年目の7作品目であること、過去に自分が出版した短編集から選んだこと、同席したチャーリーさんが『AV』以降ずっとカメラを回しているということが紹介された。それに続いて客席からの質問開始。

 Q:この映画を短編集にした理由は何か。
 ホーチョン:自分の会社で製作したので、資金が全然足りなかったから。いろんな人に登場してもらえたけど、それでもお金がなかった。

 ちょっと最後の方の言葉の記憶があやふや。でも「金が足りない」と言っていたことは確か。…しかし、今気づいたんだが、今年国際で観た映画5本のうち、3本が低予算で製作されているんだよな。

 次の質問は実際にワタシがしたもの。ネタバレ質問でホントに申し訳ない。 

 Q:7作品の中で一番印象深かったのが『おかっぱ頭の阿慧』だった。この作品の舞台背景はどうやら90年代初頭のようだが、もしかして監督の青春期にかぶるのではないか?
 ホ:その通り。自分でも全作品のうちこれが一番気にいっている。実際、自分もダニー・チャンの大ファンだったから、彼が死んだ時は本当にショックだった。さらにこの作品のヒロイン、阿慧は自分の青春期がモデルになっている。当時のボクも大切なことは自分で決められず、他人に意見を求めて判断していたんだ。

この質問をして、そしてこの答えを聞いて、ホーチョンが一層身近に思えちゃいましたよ。

 Q:初めて観た『イザベラ』が気に入って、毎年楽しみにしている。でも、日本では配給がつかないのはなぜ?あと、『阿慧』で歌われたダニー・チャンの歌がよかった。
 ホ:配給権が売れている作品はいくつかあるのだが、販売の関係でストップしているらしい。例えば『AV』は(販売契約まで?)売れたのだが、その後、止まってしまって進んでいない。天宮さんがもうすぐ女優を辞めてしまうらしいので、残念だ。

 人気があるのになぜか一般公開されない、ということは、齊藤敦子さんによる石坂ディレクターのインタビュー(from河北新報シネマblog)でも言われていた。独立系の配給会社が(無名の作品を一般に紹介する)冒険をしなくなったという背景もあるらしい。映画公開が二極化しているとはいえ、東京あたりでは面白いものを探している人がいないわけはないのだから、是非とも公開してほしいんだけどねー。FFCの特集上映(観たかったよー)をしたあのシネマートでもやってくれない、というのも残念。
 天宮さんがAVを引退するのは、今回初めて知った次第。まーアタシ女子だから、AV情報なんてチェックしないもん。アクセス解析で見つけたAV系サイトからリンクされても、そっちに飛ぶこともないもんな―。
 「歌」については、後ほど関連する質問が登場するので、そこで改めて。

  Qチャーリーさんに質問。昼間の『生きていく日々』同様に、この作品も早撮りをしたというが、その苦労はどんなもの?
 チャーリー:『天水圍』は10日間で撮ったが、この作品は12日間で撮った。撮影に関しては、監督も熱心に取り組んでくれたので、トラブルはなかったよ。
 ホ:本当は撮影に時間をかけたいんだ。でも予算もないから、どうもそうならない。

 現在の香港映画がいかに低予算・短期間撮影で撮られているのかというのがよくわかる。お金に関しては電影協会やアジア各国のクリエーターズファンドなどから資金が出るらしいけど、それでも充分なものじゃないのね。もっとも『天水圍』の出資者があまりにも意外な人だった(fromキネ旬最新号)のには驚かされたけど。
 お次もネタバレ質問。

 Q:『チャージ』について。
 娼婦とセックスした後、チャッピーが彼女の携帯電話にパスワードを打ち込む場面で、妙に切ない音楽を流していたのが、あれはアリなのか?あの音楽があったから、こっちまで切なくなってしまい、チャッピーの心情に何か変化があったと思ってしまった。
 ホ:あの場面では、取引としてのセックスが終わった後、男が彼女を助けたいと思うようになった。そこで、音楽をつけて変化を出したんだ。

 本来は笑って済ませられる場面なのに、あえて切なさを出す。一見ベタだけど、演出としては間違っていない。ラストのチャッピーが妙にいい男と化していたしね。

 Q:今回は短編だったが、長編と短編ではどっちが撮りやすいか?そして、今後はどっちを撮りたいか?
 ホ:ボク自身は短編が好き。今回は7つの短編を撮ったが、それは長編を7本撮ったくらいエネルギーを消耗した。長編を撮る時には、ひとつのジャンルにこだわるのでなく、いろんな要素を含んだものが作っていて楽しい。

 もともと短編から出てきた人だもんね。『夏休みの宿題』は面白かったし。
 ここから後半は短編話で盛り上がる。

 ホ:短編を撮り始めたきっかけは母親だった。彼女は歌って踊るのが好きで、ボクや兄弟にその姿をビデオに撮れって強要してたんだ。それが嫌で別のものを撮っていて、後に短編を撮るようになった。ボクの作品には歌って踊る場面(『イザベラ』や『阿慧』など)が出てくるのは、その当時のすりこみかな。
 そのころの短編を集めて、イタリアの映画祭で上映したらウケたんだ。香港でも上映したんだけど、来年はそれを持ってくるよ。

 その短編集とは、ちょうど香港亞洲電影節で上映したばかりだった作品のことかな?
 昨年からティーチイン時の“次回予告”が恒例となっているみたいだけど、長編もよろしくねー(^.^)。

 ティーチインの最後は、ホーチョン&チャーリーが語る香港映画への思い。

  ホ:香港映画を中国へ売ろうとするとつまらなくなるから、自分の映画を売るつもりはない。だから、セックスや殺し屋など、中国では絶対できないことをいろいろやったんだ。ちなみに『祝日』で「中国のたんぱく質記念日」って記念日が出てきたけど、あれはウソだよ(笑)。
 チ:この映画はセックスに殺人にホラーと、いろんな要素が入った作品になって面白かったね。
 ホ:そうそう、えぢがやってたあの“公共マナー”は自分もやっているんだ。だからボクも道徳心のある人間だよ(笑)。

 公共マナーはともかく(苦笑)、彼もまた、現在の香港映画の状況を憂いているのね。地元に愛される映画を作るなら、やっぱり大陸市場なんて狙わずに、根気よくやりたいことを続けていかなきゃいけないのかな。まぁ、そんな彼を愛し、支持してくれる人だっているのだから、今後の活躍が楽しみだ。と、どっかで書いたことを繰り返してスマン。

 恒例のスペシャルプレゼント、3名にポスターがもらえました。めでたくその1人になりました。質問できただけで満足だったけど、これまた嬉しかった。この日は朝から嬉しいことばかりで、とにかく幸せだった。

 いつも来てくれてありがとう。来年も作品が決まったら、また観に行くからよろしくねー。
あと、どこかで「パン・ホーチョン作品日本公開誘致委員会」なんてーのが結成されたら、喜んで参加させていただきますよー。

 以上、この記事をもって、今年の東京国際映画祭報告を終了いたします。失礼しましたっ!
 さーて、次からはレッドクリフ祭りだー、わはははは(爆)。

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コメント

もとはしさん、Q&Aの詳細ありがとうございました。来年2月に《智勇三熊》見にいかねばと思っていましたがTIFFに来てくれるんですね。そんな話は21日には出ませんでした。夜の部のほうが充実してますよ~
http://hk.myblog.yahoo.com/hocheungpang/article?mid=2872
に《智勇三熊》のこと載ってます。
香港でのQ&Aでカメラマンと化したチャップのブログにも
http://hk.myblog.yahoo.com/tochapman1999/article?mid=25922

投稿: Kumi | 2008.10.30 00:25

《智勇三熊》、来年香港で一般上映されるのですね!
昨年の『出エジプト記』の時のティーチインの状況を知らないので(その時に『些細なこと』を持ってくるって言ったんだろうか?)、これがホントに次回予告になっているかどうかわからないのですが、「来年は短編集かも」とは言ってました。
『夏休みの宿題』はTIFFで上映済みですので、これからセレクションして、世界の映画祭を巡回させるのかな?
 しかし、ホーチョンのさかなクン帽子&チャーリーのきつねマフリャー姿を21日にも観たかったです…。

投稿: もとはし | 2008.11.02 01:43

去年の《出埃及記》のQ&Aでは《破事兒》ではチャップの全裸があります、といった程度でした
私がプロデューサー女史を見かけ話をした際に「来年(2008年)のTIFFは《破事兒》ですか?」ときいたら「そうだ」とのことだったのです。
東京でも《智勇三熊》が見たいのは当然なのですが長編を撮ってほしいし、特に不是兄弟のミューズともいうべき梁洛施で撮ってほしい、「ハムナプトラ3」がなければイザベラはどのお話のどの役だっただろうとかと思っているのでした。

投稿: Kumi | 2008.11.02 11:24

ワタシも長編の新作が観たいです。
この冬は秋生さん特集上映で『イザベラ』がまた日本で観られるようですが、ホーチョンにはまたイザベラを起用して撮ってもらいたいとワタシも思います。
短編集に出ていたらどの役だったのだろう。『祝日』のイーソンの彼女だったら思わず眉間にしわが寄ってしまいそうですが(苦笑)、『ジュニア』の新米殺し屋別ヴァージョンなんてのが面白いかな、などと考えてみました。

投稿: もとはし | 2008.11.06 22:37

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