« 些細なこと(2007/香港) | トップページ | スペシャルメンションって、要するに次点? »

ビューティフル・クレイジー(2008/台湾)

ビューティフル・クレイジー(2008/台湾)
オリジナルポスター。うまく撮れずスマン。

 映画祭は発見の場である。毎年国際に来るたびに、どうも香港映画ばかり優先して観てしまうのだが、やっぱりめったに観られない台湾の若手の映画も観てみたい。そんなふうに思ったのと、ちょうど時間もあいていたので、チケットを取ったのがこの『ビューティフル・クレイジー』だった。
 ちなみにこの映画の監督の前作で、3年前の国際で上映された『チョコレート・ラップ』は未見。

 ジャ・ジャンクー作品でお馴染、半野喜弘氏が手掛けた音楽がゆったり流れるオープニング、未成熟な体を制服のブラウスときわどい長さのスカートに包み、晩夏のひまわり畑をさまよう少女エンジェル(エンジェル・ヤオ)が現れる。その物憂げな表情が、この映画を象徴しているかのようだ。

 現在。小歩(エミヤ・リー)はルームメイトの親友アミ(リャオ・チエンホイ)に、高校生時代の親友だったエンジェルとの思い出と別れを語る。
 2年前の過去。小歩がたばこを吸っている時、それを奪い合って喧嘩になったことがきっかけで、二人は絶交した。それより前、二人で洞窟に隠れ家を作ってはたばこを吸ったり踊ったり、小歩がエンジェルにお気に入りの映画『プルートで朝食を』のあらすじを聞かせてあげたりして、友情を深めていた。ところが、公園の大きなブランコの上でいつものように小歩が映画の話をしている時、エンジェルはスカートの下に手を入れて自らを愛撫し、小歩の手を取ってそこに触れさせようとする。

 エンジェルは父親と二人暮らし。元ボクサーで、今はでっぷりと太ってしまった彼女の父親は、家に閉じこもりきりで一歩も動かない。学校から帰っても二人は会話も少なく、彼女は一言声をかけるだけでさっさと出かけてしまう。家にいるのを避けるようにエンジェルは次々と付き合う男を取り換えた。高校の頃は自分の父親と同じ年代の“ブラザー”と呼ばれる男と付き合い、時には電車の中でレイプするような男にも平気で抱かれた。

 現在。小歩とアミはいろいろなところへ出掛ける。ある日、海岸沿いのプールに出かけたら、すでに水が抜かれていた。それでも構わず、小歩はプールで泳ぎまわり、二人で水平線を眺め、雷の音を聞く。
 小歩には今、ボクサーの恋人がいて、3人で遊園地に出かけた。その時、彼はアミを見て、高校時代に彼が一目ぼれした後ろ姿の少女と同一人物であることに気付く。それ以来、彼とアミは急接近する。アミの誕生日、ケーキを持って彼女のアパートに急ぐ小歩は、彼氏がアミにケーキを渡している場面に遭遇する。アパートの屋上に上がり、二人で食べるはずのケーキをやけ食いする小歩。
 3人で夕食を取ろうとしたある夜、彼氏は来なかった。一寸の間、アミが席を外すと、待ち構えていた彼に愛を告白される。小歩は、二人の仲がすでに深くなっていることに勘付いていた。彼女はアミを問い詰め、彼と寝たのかと尋ねる。アミが肯定すると、彼女はアミにキスをして部屋から立ち去った。

 2年たっても、エンジェルの家の状況は変わらない。いつものように出かけた彼女は、鍵を忘れてしまったことに気付く。父親を呼んで鍵を持ってきてもらおうとするが、持ってきてもらえない。いくら父を呼んでも、返事ひとつくれない。キレた彼女はアパートの壁をよじ登って開け放たれた父親の部屋の窓から入り、彼を罵倒しながら開けっ放しの窓をテープで固定してしまう。彼女が去った後、父はそのままの姿で涙を流す。
 絶望のあまり、夜の街をさまようエンジェルは、ブラザーに電話して、昔行ったことのあるアイスクリームショップに連れて行ってくれるようにねだる。しかし、別の女性と不倫しているブラザーにとって、エンジェルとのことは過去のことだった。店にたどりついたエンジェルは、そこでアミと出会う。アミもまたこの店を知っていた。実は、ブラザーはアミの父親だったのだ。小歩や男たち、そして父親から愛を求めてやまなかったエンジェルと、小歩を裏切ったことで彼女から愛を奪い去られたアミ。青春のカオスに放り込まれた二人の少女は、どうしようもない気持ちで夜の街に取り残されていた…。
 
 一見しての印象は、この監督、多分岩井俊二好きだろーなーってこと。映像はともかく、雰囲気が似てるかなって思ったので。
 しかし、物語が入り組んでいる…。過去と現在が混在するこの構成は、ティーチインによると「時間、記憶、愛は人間の中にどうあるのかということを撮ってみた。それが3人の登場人物の中にどう残るかということをやりたかった」(by李監督)とのこと。まぁ、考えるより、感じる映画ってことですわね。

 ティーチインには李監督のほか、エンジェル役のエンジェル・ヤオ、アミ役のリャオ・チエンホイも参加。会場では千慧ちゃんの人気が高かったな(日本でデビューしたいらしいです)。二人はこれがデビュー作だそうで、小歩役のエミヤ・リーも含めたこの3人は、撮影前には監督とディスカッションを重ね、それぞれ自分の経験を各自の役柄に重ねたというらしい。まるでブエノスでのレスリーを彷彿とさせるような(と思った)自由奔放さをもったファム・ファタルのエンジェル、友情に愛を求める小歩、そんな彼女を陰で支えながらも、話が進むごとに存在感も行動力も広がるアミ。この3人のキャラクターが豊かなものに仕上がったのは、監督(千慧ちゃんには「先生」と呼ばれていた)と彼女たちの信頼関係がしっかり築かれていたからなのか。特に興味深かったのはアミとエンジェル各々の父親との関係に、やはり父子家庭で育ったというエンジェルと父親を亡くしているという千慧ちゃんのそれぞれの思いがあったというところ。友情に焦点を置くとかすみがちな家族関係描写だけど、エンジェル親子の間に横たわる冷淡さ(実際のエンジェルの親子関係はそうじゃないそうで、演じるのに抵抗があったらしい)、アミ親子の間にある親しみが見事に対照的であり、映画の中でも際立って見えた。
タイプの違うお嬢さんだけど、今後の活躍には期待かな。

 原題は乱れた青春ではなく、混沌とした青春という意味らしい。
 恋愛と友情は別に考えたいけど、恋人も友人も手放したくない気持ち。
 最近の台湾映画は、女子の濃密な友情を同性愛的に描くけど、そう描くことで人間関係の濃密さと青春の危うさを照らし出そうとしているのだろうか。
そこを聞きたかったんだけど、時間切れで聞けなかった。残念。
 
原題:亂青春
監督&脚本&編集:リー・チーユエン 音楽:半野喜弘 撮影:レナード・ヘルムリッチ
出演:エンジェル・ヤオ エミヤ・リー リャオ・チエンホイ カオ・ピンチュアン チアン・ハオ リー・ユアンイー グレン・チン

|

« 些細なこと(2007/香港) | トップページ | スペシャルメンションって、要するに次点? »

台湾映画」カテゴリの記事

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/14197/42914402

この記事へのトラックバック一覧です: ビューティフル・クレイジー(2008/台湾):

« 些細なこと(2007/香港) | トップページ | スペシャルメンションって、要するに次点? »