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《情義我心知》(2005/香港)

 久々にちゃんとした香港映画の近作が観たくなったので、借りたDVDを鑑賞。
チーム無間道のアンドリューさんが製作を、アランさんと共に無間道三部作の脚本を書いたフェリックスさんが監督でもコンビを組み、『頭文字D』の日本ロケの合間を縫って(としか思えない)東京全面ロケを敢行した《情義我心知》である。

 李子俊(リヨン)は軽度の発達障害を持っていて、香港で兄夫婦と一緒に暮らしている。兄と一緒に東京に旅行しに来たが、新宿の雑踏ではぐれてしまう。そんな彼が出会ったのは小学校の時同期だったと語る香港人の黄海(チャッピー)。彼は歌舞伎町でポン引きをしていたのだが、せっかく集めたロシア人女性たちに逃げられてしまう。歌舞伎町を仕切るヤクザの菅野(二反田雅澄)は怒り心頭で、黄海に多額の借金を負わせる。困り果てた黄海は自分のボスであるクラブのママ家燕(ヤン・クイメイ)を頼る。
 失意のあまり新宿で倒れこんだ黄海を見つけた子俊は優しく彼を抱きしめると、黄海はそれに癒される。中学3年生程度の学力しかなく、落ち着きがなく情緒不安定の子俊の唯一の特技が、人を抱くだけで癒すという能力だったのだ。そこに目をつけた黄海は、家燕のアドバイスを受けて子俊を韓国人(!)の出張ホストに仕立てあげる。二人は義兄弟となり、黄海は子俊に日本語とベッドテクを仕込み、イケてるスーツを与えてホストに変身させる。案の定商売は大成功。借金返済にもめどがつく。
 黄海には離婚した妻(ミッシェル・イエ)がいた。黄海は留学していた妻を頼って日本にやってきたのだが、一旗揚げたい彼と妻とでは意見が会わずに別れてしまい、妻はタバコの自動販売機の補充で生計を立てていた。子俊は一計を案じ、横浜の遊園地で黄海と妻のデートを計画する。
 二人の仕事は順調に進んでいたが、必ずしもいいことばかりじゃなかった。子俊を再び指名した日本人女性に彼が金を払ったことで、ひそかに彼を思っていた女性の心を傷つけたり、大もうけをした黄海の引き抜きを菅野が申し出たり。家燕への義理でそれを断った黄海は、菅野の手下に襲撃される。さらに子俊の初めての依頼人だった華僑の大学教授李樹勲(ロイ)の妻が転落死したことで、子俊は殺人の疑いをかけられる…。

 例の少林なんちゃらを観ると、まー日本人のカンフー映画に対する認識ってあんなもんかいって改めて思わせられる。振り返って香港映画で描かれる日本はどうか。某☆月のような合作はまた別として、この映画のほかにも《極道追綜》や『東京攻略』や『恋戦』の例を挙げれば、我々香港電影迷は納得すること請け合いだと思うが、一般の映画ファンにはどうであろう。東京攻略あたりはトニーやケリーが出演しているので、それにひかれて観たっていう人も少なくないと思うのだが、マジメに観たらつまらないって思うのは確かだ。現にワタシもパンピーの方から言われたよ、「あれ、つまんないじゃん」って。
 香港人の撮る東京や沖縄が日本人にとっておかしいと感じるのは当然のことだ。でも、そこでは意外な風景を撮ってくれたり、香港人がどんなところを面白がっているのかということもよくわかって興味深い。だから、パンピーの方々もそんな映画に関してもうちょっと寛容になってくれないだろうか、なんて思うのは、ただいま日本に長く在住している中国人監督が撮った、某場所のドキュメンタリーに賛否両論の議論があるからだったりするのだが。って相変わらず回りくどいね自分。
 《極道追綜》は東京の中国人(香港人)留学生をめぐる事件を元にしたエンターテインメントだったが、やっぱり東京の香港人にはヤクザや歌舞伎町ってーのが切っても切り離せないのだろーか…。いや、昼のゴールデン街やディープな夜の新宿を見せてもらえるのは面白いんだけどね。

 そんな“いつでも欲望の街”状態の新宿で芽生える、ピュアで孤独な男と異郷の江湖に生きる男の美しい友情。兄貴と弟分だった黄海と子俊は、様々な経験やトラブルを経て、いつしか対等の立場になっていく。二人の立場が変化するのが、彼らが本当に小学校の同級生であるということがわかる場面。発達障害があることで差別を受けてきた子俊は『みにくいアヒルの子』のお話と『白鳥の湖』のバレエが大好きなのだが、一緒にバレエを学んでいたこともわかり、新宿南口のルミネ下の広場はたちまち劇場へと変わり、二人はバレエのステップを華麗に…もとい、ぎこちなく踏む。「みにくいアヒルの子と白鳥の湖は違う話だろ」と黄海はつっこむが、この映画のシンボルとして登場する、男娼の意味を持つアヒル(鴨子)との重なりも効果的であり、なかなか面白い使われ方に感心した。

 しかし、面白いのはそこだけかな。あとは頭を抱えたほうが多かった。あれこれ言い出すときりがないので、代表してこんなところを。
 まず、あの冷静非情なヨン様(笑)を演じきったリヨンにこういう役を演じさせる面白さはあるにしても、こういう役どころは物議を醸してしまうのではないだろうか。北方出身なので並みの香港人よりでかいリヨンなので、フォレスト・ガンプ的味わいも持たせようとしたのだろうけどね。「今は韓流が人気だから韓国人って触れ込みで売り出そう」ってーのは、あのブームの浅はかさを上手くとらえてるよ。
 子俊と黄海が友情を結ぶためにああいう出張ホストをやらせるってアイディアは悪くないけど、そういう気をてらう設定よりももっと友情を全面的に出してもよかった気がするなぁ。アラン&フェリックスコンビお得意のホモソーシャルっぷりが何とか出ようとしていたところで、あまりにも唐突にこじつけっぽいクライマックス(子俊の殺人濡れ衣→その罪をかぶる黄海)があったもんで、えー?と思ったし、その後の衝撃のラストもあまりにも唐突だったので、ホントにこの映画はあの無間道スタッフが作ったものなのか?と思った次第。
 まぁ、アランさんはともかく、フェリックスさんは初監督ということで、気負いもあったんだろうし、おそらく脚本段階でねる時間があまりなかったんだろうから、仕方ないと思ったほうがいいんだろうか。

 それであっても、もーちょっとがんばってほしいなぁと思ったのは確か。香港映画も大作主義になってしまって、こういう商業ベースにのせる中規模な映画がもっと作られなければ、底上げにならないんじゃないかなんて思ってしまったのでね。

英題:Moonlight in Tokyo
製作:アンドリュー・ラウ 監督&脚本:アラン・マック&フェリックス・チョン 撮影:ライ・イウファイ 音楽:The Invisible Men
出演:レオン・ライ チャップマン・トー ミッシェル・イエ ヤン・クイメイ 葉山 豪 二反田雅澄 ロイ・チョン

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