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男たちの挽歌(1986/香港)

 今年のレスリー追悼鑑賞第1弾にするつもりでいたこの『男たちの挽歌』。なんとか命日前後に、と思っていたもののいろいろと予定が重なり、10日を過ぎてしまったのだけど、やっと観ることができてホッとした。このために、最近はiPodで「當年情」ばかり聴いてきたのだよ。

 この映画のあらすじは、いまさら説明しなくてもいいだろう。3年前の金像奨特刊の特集「101港人評選百年最佳華語片」では、堂々の第2位に選ばれた(ちなみに1位は『春の惑い』のオリジナル《小城之春》、3位が『欲望の翼』である)、香港映画のマスターピースである。香港人にとってはまさに宝物のような映画(それ言いすぎじゃないか?)なのだろうが、ボーダーを越えた大陸でも愛されているのは、ジャ・ジャンクーの『長江哀歌』を観てもよくわかる。
 この映画で注目を引く部分といえば、やはり欧米で“Bullet Ballet”と呼ばれ、ウーさんが“バイオレンスの詩人”と賞賛されることで有名な、クライマックスの激しすぎる銃撃シーンであろう。この様式がクエタラ始め、世界の映画人に引用され、自らハリウッドに渡った彼もまた激しさを増したアクションシーンを手がけるようになるが、実はこの映画の中では、それはちっとも重要なんかじゃない。映画人たちが銃撃戦だけ観てこの映画を賞賛しているとしたら、それはとってももったいないことなんじゃないだか、と思っている。
 何より増して重要なのは、ホーこと宋子豪(ティ・ロン)、その弟のキットこと子杰(レスリー)、そしてホーの親友マーク(ユンファ。ちなみに北京語圏では彼の名前は“小馬哥”となっている)という3人の男たちの、兄弟愛と友情、そして栄光と転落とリベンジとプライドを描いた、非常にホモソーシャル度が高くドラマ性に富んでいるということである。そして、それは男性だけでなく女性もを魅了するのだ。ねー皆さん?
 学生時代からもう何度も観てきた映画だが、改めて観ても、オープニングタイトルから胸をつかまれてしまう。3人の主人公のうち、中心に行くのはどうしてもホーになってしまうのだけど、ここはグッとこらえて、今回はキットに注目しながら再見してみた。

 以前取り上げた『レスリー・チャンの香港』で、この映画に関しては、「旧システムの映画会社による製作制度の最後の世代で、旧体制の澱を引きずっていたジョン・ウーに、香港ニューウェーブの中核になった、斬新な感覚を持つツイ・ハークが絡んだことにより、古くささと新しいセンスが混じりあって化学反応を起こした作品(要約もとはし)」というように紹介されている。また、キャストをとっても、ショウブラで武侠電影のスターだったティ・ロンさん、TVB養成所出身のユンファ、そしてアイドルのレスリーとさまざまなタイプの役者が結集して作り上げられた、ある意味奇跡的な作品なのかもしれない。

 かつてレスリー迷だったマダムとこんな話をしたことを思い出した。
 この映画のキットは“純粋”の象徴であるということ。
 兄が黒社会の人間であることを知らず、真っ直ぐな正義感あふれる青年に育った兄思いの弟は大学を出て警官を目指す。が、父が台湾人の刺客によって命を落としたことで兄の本当の姿を知り、一転して兄を憎み、父を殺した黒社会への追撃にのめりこむようになる。それに輪をかけて兄の帰盛が彼を揺るがし、昇進も阻まれることになる。兄は弟のために堅気になろうとするが、それもでも弟は兄を憎むのである。―えーと、カインとアベルってこういう話だっけ?(たぶん細部が違う)
 キットの立ち位置としては、こういう見方は珍しくはないのだろうけど、銃弾と血にまみれながらも、古い時代ではなく新しい時代への希望(=若者だから。当時の実年齢はもちろん考えてないです)として設定されたキャラだったのかな、と考えることもできるかもしれない。実は彼こそが真のヒロインである、って考えもアリだと思うけど(苦笑)。

 そういうふうにあれこれ考えてみても、結局全体の感想としては、ティ・ロンが渋いとか、ユンファの男気にやられるってー基本的なところに戻ってしまって、どーしてもレスリーメインの感想をまとめることはできないのよね。
 この続きは、近日アップ予定の『挽歌Ⅱ』の感想にて。
 というわけで書き逃げスマン(汗)。

原題(英題):英雄本色(A Better Tomorrow)
監督&脚本&出演:ジョン・ウー 製作:ツイ・ハーク 撮影:ウォン・ウィンハン アクション指導:ブラッキー・コー&・スティーブン・トン・ワイ 音楽:ジョセフ・クー
出演:ティ・ロン チョウ・ユンファ レスリー・チャン レイ・チーホン エミリー・チュウ ケネス・ツァン シン・フィオン

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