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鳳凰 わが愛(2007/中国・日本)

 中国映画にハマるのは、なにもワタシたちのような観客側だけの話じゃない。映画を作る側、特に俳優にもハマっていく人が少なくないみたいだ。NHK中国語講座のアシスタントを務めた前田知恵ちゃんのように、北京電影学院で本格的に女優として学んだり、中国のドラマに抜擢された日本人留学生のような存在から、大物では健さんのような人までさまざまだ。あ、日本人であっても金城くんはもとから中華明星なので完全に別格。
 そんな中でいちばん強烈な印象を残したのが、『鬼が来た!』や『故郷の香り』で過酷な撮影現場を体験した香川照之であり、『天地英雄』を経て、この『鳳凰』で初のプロデュースを手がけた中井貴一である。この二人は姜文さんとの共演、そして撮影現場を本にまとめているという点で共通点がある。
照之も貴一ちゃんも撮影現場ではそれぞれ散々な目にあっているようなのだが(ちなみに二人の本は読んでいない。インタビューでの発言から推測しただけ)、なぜか続けて出演しているのだから、よほどハマったのだろうか?(照之の次回作は台湾映画らしいぞ)過酷そう現場なのに、なぜそんなに中国映画にハマる?

 中華民国初期の東北地方。劉浪(貴一ちゃん)は恋人の鳳児にいたずらした男を殴り倒したが、男が重傷を負ったので劉浪は逮捕され、懲役15年の刑を受けて服役することになる。刑罰の重さに理不尽さを感じた劉浪はいらだち、それを同房の古株、老良頭(グオ・タオ)になだめられる。やがて、劉浪は母から鳳児がレイプされて自殺することを聞き、衝撃を受けて脱獄を図る。
 同じ監獄の女子房には、暴力を振るう夫を殺して投獄された周紅(ミャオ・プウ)がいた。死刑確定を取り消された彼女だが、日々無気力な生活を送っていた。 お互い看守に反抗的な態度を取ったことから、劉浪と周紅は共に豚小屋の掃除をさせられることになる。壁で隔てられた監獄の中、普段はいっしょに行動できないのだが、ここから心の交流が始まり、やがては愛し合うようになる。野外作業で周紅が崖から谷に落ちたとき、劉浪は真っ先に助けに行った。
 しかし、女好きの新入り囚人が女子房に乱入したことがきっかけで、女子房が独立し、移転することになって、二人は離れ離れになる。鳳(鼠=雌)が凰(蛇=雄)を求めるという故事のように互いを求め合う劉浪と周紅の運命はどうなるのか。

 この長きにわたる男女の物語は実話にもとづいているという。どのへんがだ?というのは後で調べるからいいとして(苦笑)、同じ実話に基づいた話としても、某〇イソラとはスケールも質も全然違う(そんなもんと比べるなよ)。
 本編のほとんどが刑務所の中なので、『覇王別姫』のように激変する20世紀中国の姿は具体的に描かれず、繰り返し登場する老良頭の取り調べ場面で政権の交代が語られるくらいにとどめてあったのだが、恋愛をメインに出すならむしろ政治や歴史の話が表にでるのはそんなくらいでいいだろうとおもう。うまい処理の仕方だ。
 しかし、それ以外は結構ツッコミたくなったのはいうまでもなかったりして。もしあの刑務所のように男女の監獄が共存する施設があったとしても、あそこまで自由にやらせてもらえていたのか?なんか20年前の高校生が全寮制で暮らす学園ものやっているようなノリになっていないか?とか、吹雪の中で劉浪が落ちた周紅を救おうとして自分も落ちた末に彼女を見つけたのが、雪が積もっておらずに動物たちがフツーに暮らしている洞窟(というか愛の異次元空間?)だっていうのもこらこらって思った。
きわめつけが日本占領下の時代に劉浪が実は川に落ちて生き残った日本人である(東北地方に商談しに行き、川で水難事故にでも遭った名士の子弟か何かという設定か?)というのが語られる場面。これは貴一ちゃん自身が、日本人である自分が出演するのに説得力を持たせるために、監督と相談して付け加えた設定らしいのだが、そんな設定はいらなかったんじゃないか?
 これ、もう大陸でも公開されたのかもしれないけど、このへんにおける現地の反応がちょっと気になる。

 と、ついつい気になる点を先に挙げてつっこんでしまったけど、これはそんなに悪い映画じゃない。これまで日中合作で作られてきたラブストーリー映画の中では比較的出来はいいと思うし、貴一ちゃんも潔く頭を丸め(ラストでは弁髪断髪シーンまでサービス。ちょんまげだけじゃなく弁髪も似合うんじゃないの?)中国語の台詞もだいたいこなしていたくらい熱演していたし。…でも一部だけ本人の声質とは違うように感じたのだけど、もしかして一部アテレコしたのだろうか。
 周紅を演じたミャオ・プウは、多分初めて見た女優さん。かなり生活臭を漂わせていたが、ジャンクー作品の常連である趙涛とどっちが年上だろう。いや、これを観た翌日に『長江哀歌』を再見したこともあって、ちょっと雰囲気似ているなぁと思ったので。 
 でも一番よかったのは、最近やたらと顔を観るグオ・タオの老良頭だな。伸ばしっぱなしの髪を結っていつの人間だよ?と思うくらいの風貌を持っている彼は、占いを得意とする最年長の囚人。囚人たちのリーダーでもあり、劉浪の善き友となって彼をサポートする。ユーモアもあっていい味出してました。 
 日本でもいろんな映画に出演し、最近は悪役も少なくない貴一ちゃんが、『天地英雄』に続いて中国映画に出たのは、『天地英雄』を観たジン・チェン(金[深+王-シ]。ジヌ・チェヌっていう日本語表記は明らかに間違い。誰だこんな表記にオッケイ出した偉いヤツは)監督が出演依頼をしたからということ。よかったじゃないか貴一ちゃん、中国での苦労が報われて、ついでにプロデュースまで手がけられて。今後どこまで中国映画と関わるかはわからんけど、これが縁でもーちょっといいアジアンコラボが展開できたらいいもんだよねー。

 最後にもうちょっと。音楽は『悲情城市』以来久々の中国語圏映画のような気がするSENS。『悲情城市』以降、彼らの音楽は日本のドラマで多用されたのでだいぶ耳馴染になったけど、トレンディ(死語)ドラマの劇伴より、こういったアジアンシネマの映像の方がよりマッチしている。

監督&原案:ジン・チェン 製作総指揮:角川歴彦 製作:中井貴一 高秀蘭 音楽:SENS 
出演:中井貴一 ミャオ・プウ グオ・タオ

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