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《天行者》(2006/香港)

無間道三部作以来、サスペンスというより新しいタイプの香港ノワール映画が増えてきているが、映画自体の出来はおいといても、その手の映画が面白くなってきたのは脚本がよく練られるようになったからではないかな、というように考えている。この《天行者》もそんなタイプの映画(出来自体は後述)であるけど、監督がトンシンさん作品で脚本を手がけた『君を見つけた25時』や《神経侠侶》のジェームズ・ユエンであり、 当然自ら脚本を書いている。

 香港で悪名を轟かせ、タイで逮捕された古惑仔の葉秋(イーキン)。8年の服役を終え、模範囚と認定されて出所した彼は、タイ黒社会の実力者“博士”(フー・チン)のバックアップを得る。
 葉秋が香港に帰ってきたことで、警察と黒社会が動き出す。ベテラン警部の宋國明(中信)は組織犯罪課の中に新たに作られた「特別小組」の主任となり、基(カール・ン)を始めとした部下たちとともに葉秋の動向を追う。一方、秋の兄貴分であり、現在は料理店を経営する雄(ティ・ロン)の耳にもその知らせは入り、秋の不在の間にのし上がった若き古惑仔鬼仔(ステ)も心穏やかではない。
 秋の帰港を迎えたのは弁護士の馬(チーラム)だった。明たちもまた空港へ向かうが、秋はなぜか領事出口から現れる。彼には小国の領事の身分が与えられていたのだ。
 帰港した秋は、警察の予想を裏切り、慈善事業に乗り出す。自分の釈放記事をスクープした週刊誌の編集長許(エリック)を引き抜いて広報部長に迎え、小児ガンの子供を抱えた政財界の実力者に呼びかけて小児ガン基金を設立し、タイで見つけた時計の持ち主を探して、その所有者の妻のために行方不明の夫の行方を捜す。
 元古惑仔の篤志家としての秋の評判はますます高まる。当然鬼仔はそれを面白く思わず、國明は彼の行動に何か裏があるのではないかと推測する。鬼仔は秋の名前を騙って警察に爆弾を送りつけ、疑いの目を秋に向けさせる。そして、秋がタイで盲目のマッサージ嬢と知り合ったことに目をつけ、その少女を拉致する…。

 題名と英題がうまい。タイで服役中に仏教に帰依し、“博士”との対面後に訪れた廟で自分が何をすべきか悟った秋。そのくだりは日本語字幕がなかったのでよくわからないのだが、(日本でも迷の多いイーキン主演作品だから日本でDVD化しないのかしら?)悪事ではなく慈善が自らの天行であると悟って事業に乗り出すというのはいかにも仏教的というかなんというか。無間道三部作も仏典が引用されているけど、ここでまた仏教的モチーフが出てくるのは面白いと思った。誰か“香港人と映画に現れる仏教観”を研究してくれる人はいないか。って自分でやれって?ああ、博士号取れたらね(嘘&冗談)。
 ただ、そういう面白いモチーフと意外性のある設定を盛り込んだわりには、イマイチに感じてしまったのはなぜなんだろうか?設定も脚本も悪くないし、むしろ面白いと思ったんだけど、全体的にはそう感じたもんで。とりあえず個人的には、語りの視点が多すぎることで、秋の本意が見えにくくなってしまったことがそう感じさせるのかな、と思った次第。秋の出番より警察のシーンが目立っていた感もあるし、それに負けじと雄や鬼仔の話が割り込んでくるので、もっと秋の登場シーンを増やすか、逆にもっと控えめにして警察と鬼仔のバタバタを強調してもよかったのかな。

 イーキン、タイ好きだよねー(苦笑)。という余計な言葉はさておき、10年前まで古惑仔だったとはいえ、最金じゃもうその面影も感じられなくなってしまったかな。妙に落ち着いた演技を見せるからというわけじゃないけど、この役柄には『ツインショット(ひとりにして)』や『ディバージェンス』ほどの印象が感じられないのが非常に惜しい。個人的には『東京攻略』みたいなおちゃめさが好きなのもあるけど、今のイーキンには古惑仔ものをやるには落ち着きすぎた感じがするのはなぜなんだろう。うーん。
 中信さんはやっぱり刑事が似合うなぁ。今回は米国帰りのキャリアで頼れる主任。荒っぽい基をけん制しつつ心配するという心遣い(って場面あったか?)もわすれない。
 ステはやっぱり監督兼任の方が好き勝手できて面白いんじゃない?エリックはいつものお笑い演技を封印してヒゲ面で好演。チーラムもインテリ役。そしてティ・ロンさんはさすがの貫禄でした。この演技で画面が締まるけど、もうちょっと出番が多くてもよかったぞー。
 あと、ワタシは胡静(フー・チン)という女優をよく知りません。『ぼくの最後の恋人』で成金なレストランチェーンのオーナーをやっていた彼女です。一人だけ北京語でベラベラしゃべっていたので、おそらく大陸の女優さんであるんだろうと思うんだけど…。後で調べておくか。

英題:Heavenly Mission
監督&脚本:ジェームズ・ユエン 製作:ヘンリー・フォン 音楽:チャン・クォンウィン
出演:イーキン・チェン スティーブン・フォン アレックス・フォン チョン・チーラム エリック・コット ニキ・チャウ カール・ン フー・チン ン・ティンイップ ウォン・ヤウナン ティ・ロン

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コメント

これこれ。かなり詰め込みすぎじゃないか?という感じがしましたねー。
せっかくステぽんが出てるのに、エンター・ザ・フェニックスの時とキャラが似てるのも残念(ふつうにカワイイ役がカッコイイが見たいぞ!)

私は旅行中に香港ほぼ唯一の名画座、銀都で偶然、上映されているのを知り見てきました。
名作とはいいがたいけど、個人的には、「森冤」よりもこっちのほうがよっぽど日本でDVD発売してほしいもんです。
イーキンはもちろん、フォンさん、狄龍さんそのほか豪華メンバーなんですもの。。。

私がいちばん気になったのは誘拐されちゃう盲目の女の子でした。
あとで気づきましたが「我要成名」に出てる霍思燕だったのですね。
そして、エリックさん・・・全然おぼえてない(汗) やっぱりまた見てみよーかしら。。。

銀都、機会がありましたら、ぜひどうぞ(笑)

投稿: grace | 2008.01.26 08:44

 銀都ってどこでしたっけ?
観た記憶があるような、ないような…。
名画座とはいえないけど、旧作上映といえば、かつて今は亡き皇后戯院で、『ストーリー・ローズ』ニュープリント版と『美少年の恋』のアンコール上映を観たことならあります。

 あの盲目の女の子、気になっていたんです。
誰だ?見ない顔のわりには扱われ方が大きいぞって。
《我要成名》、観たかったのだけど去年2月の時点でVCDもDVDも探し出せなかったのですよ。
 胡静の正体より、この女の子のことを追っかけたほうがいいのかしら?(苦笑)

投稿: もとはし | 2008.01.27 00:43

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