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誘拐ゲーム(2007/香港)

 “無間道三部作”以来、サスペンス流行りの香港映画界。そこで描かれる事件はさまざまあれども、誘拐を軸にした女性同士の対決というのはあまり観たことがない。原題が“誘拐”そのものであるのが、『カルマ』や『カオマ(まぎらわしい…)』で御馴染のロー・チーリョン監督の『誘拐ゲーム』である。はい、チーリョン作品には欠かせないカレーナちゃんはもちろん出ています。

 新進劇作家のヨン(カレーナ)の弟が誘拐された。犯人グループは劇上演時の舞台上での身代金取引を要求。捜査に当たったホー警部(レネ)と部下のチー(シウファイ)は犯人を突き止めて追い詰めるが、ミスで犯人を転落しさせてしまい、あわせてヨンの弟の命もを失わせてしまう。
 3年後、ヨンは悲しみを振り切るが如く演劇にのめりこむが、今度は最愛の夫が癌に冒される。夫の治療は海外に渡らなければ受けられず、莫大な費用がかかる。そこで彼女は夫に内緒で、大陸出身の大富豪ウォン(グォ・タオ)の小学生の息子の誘拐を企てる。しかし、ウォンの息子は偶然にもホーの息子と同級生で、雇ったネパール人は間違ってホーの息子を誘拐してしまう。単純ミスに怒るヨンだが、警察への恨みもはれない彼女はこれに乗じてホーへの復讐も企て、ウォンへの要求と同じ額をホーに突きつける。間の悪いことにホーの息子は、ホーと離婚した夫(チーラム)の間で親権を争っていた。あまりにも厳しい要求にホーは精神的に追い詰められていく…。

 なーんかアキラ黒澤の『天国と地獄』っぽい…というか、日本の女性ミステリー作家の作品で同じような話がなかったっけ?と思わせられる筋書きだった。
愛する者のために一人の女は罪を犯し、もう一人の女は追い詰められ、それに巻き添えを食った男が2、3人…。事件はなんとか解決するけど、後味はあまりよろしくなかったなぁ。
 だいたいヨンって売れっ子劇作家じゃないのか?あんな立派なスタジオで稽古ができるなら、夫の渡航&治療費もなんとか自費でで出せそうなんじゃないかって思ったんだけど、それ以上に費用がかかったってことか?ってーのが最大のツッコミ。夫を救いたい一心で犯罪に手を染めたんだろうけど、なんかだんだん犯罪の魅力に取り付かれてしまったんじゃないかと。対するホーは息子を救うに先立つ金がなく、息子の友達だったウォンの息子を誘拐してウォンに身代金をせしめようとまで思いこむのも怖い。しかもそのときのレネの表情もどこかイッちゃってたし…ってこれは『カルマ』の犯罪心理版か?まぁ、同じ監督だからな。

 しかし、カレーナの金髪ショートは『姉御』以上に姉御だったぜ(笑)。あと、ウォン役は『クレイジー・ストーン』の前立腺炎持ちの警備主任ことグォ・タオさんだけど、いい俳優さんだと思っただけに、あれだけの出番は非常にもったいない…。彼、『私の胸の思い出』にも出ているって聞いたけど、こっちには来なさそうだから、いつかDVDチェックするか。それ以外にもあれこれツッコミしたくなる映画だけど、その中での救いは意外にもシウファイさん演じたチーさん(なんか緊張感のない名前…漢字で書くと“智叔”らしいが)だった。ジョニー組では脇役ながら重宝されている彼だけど、こういう役もできるのかー。いろんなところで拝見した皆さんのツッコミ通り、あの“もろこしヘア”はいかがなものかと思ったけど、カレーナとレネの両方に関わり、二人を支えながらそれぞれ心配していく役どころはおいしい。ご退場は予想していたけど、それでもクライマックスまで取っておいてもよかった気がするなぁ…。

 この手の、キャストがはっきり言って地味で、俗に言うB級テイストが多い香港映画の中でもBマイナスくらいの出来の映画(すみません厳しいこと言って)って、DVDスルーでもなかなか手が出ないけど、今回こうやって観るチャンスがあったのは素直にに喜んでいる。自分がDVDよりも大きな画面で観たい(でもベストは映画館)主義だからなおさらかな。そんな意味で今年の中国映画祭事務局には感謝しているけど…、今度開催する時は、どうかフィルメックスと時期をずらして開催してくださいね!お願いしますよ。

原題:[糸邦]架(The Kidnap)
監督:ロー・チーリョン
出演:カレーナ・ラム レネ・リウ チョン・シウファイ チョン・チーラム

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コメント

はじめまして

この映画は、よく考えると無茶苦茶ですけど、先が読めないスリリングな感じが良かったです。

カレーナの役が最後、車で轢かれるのはマヌケに思えました。

またレネの役が、自分の子供を助けるために、大富豪の息子を誘拐を企て、失敗して、お金の援助を頼んで、それでOKというのも、無理がありすぎる展開ですけど。

投稿: おおくぼ | 2007.12.12 23:32

おおくぼ様、はじめまして。
女性が主演のアクションスリラーも少ないので、目新しいかなと思っていたのですが、展開を追っていくうちにおいおいと言いたくなってしまったんですよ。さらにロー・チーリョン監督は女性を撮るのが好きなのかも、と思った次第。
あ、カレーナの最期の場面では、なぜか『Three』での黎明を思い出してしまったのですが、あちらよりこちらのほうが死に様はちゃちかったと感じました。

投稿: もとはし | 2007.12.12 23:48

>「さらにロー・チーリョン監督は女性を撮るのが好きなのかも、と思った次第。」

ロー・チーリョン監督の『カオマ 救命』は、女性を撮りたかったんだと思います。あれも、無茶苦茶な話なんで、唖然としました。

カレーナが真犯人なのはいいですけど、オチも「えええ???」という感じでした。腎臓を抜くというのが復讐なのかなあ〜と思いました。売買して、お金儲けしたという設定ですが。

それよりは、『誘拐ゲーム」のオチは、無理があるにしても、旅行用バッグから子供発見できてハッピーエンドというんで、良かった気がします。

あとチー(シウファイ)刑事が途中で殺されたのは可哀想ですが、彼のお陰で、この映画はリアリティを保ってる気が、私もしました。

『Three』は観てないないんで、すいません。

投稿: おおくぼ | 2007.12.16 23:10

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» 『誘拐ゲーム:原題 [糸邦]架 、連環局』・・香港映画 [お茶の間、ひねくれ者の本電影紹介]
香港映画は、先が読めない展開の激しい映画が多いです。 1. リアリティ無視のギャグとしか思えない展開の映画 2. 現実にはありえないけど、映画的なリアリティはそれなりにある映画 と2タイプあります。 『誘拐ゲーム』は2のタイプなので、ハリウッド映画並だと思いま..... [続きを読む]

受信: 2007.12.13 00:30

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