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2007年11月

早熟(2005/香港)

ジェイシー「監督、ボクこれから青山に行ってきます」
デレク「おお、気をつけて行ってこいよ。」
ジェ「…あのぉ、監督?今日はオフじゃないんですか?」
デレ「なんだ?なんでそんなこと聞くんだ?」
ジェ「だって、日本には結構監督のファンも多いですよ。ボクと一緒に青山行ってもいいんじゃないですか?ファンの皆さんが父さんの映画のロケで日本にいるってことは知っているんですし、この間はダニエルが撮影の合間に僕の映画を観に有楽町まで来てくれたってこともあるみたいですし」
デレ「そんなこと言われてもなぁ、今夜は横浜でスタッフと飯を食いに行くって約束しちまったし…」

 現在絶好調撮影中(多分)の《新宿事件》のロケ現場で、ジェイシーとトンシンさんの間でこんな会話が交わされた…ことは多分ないだろうな(苦笑)。
 と相変わらずの前振りはこのへんにして、成龍さんの息子さんとして日本でもぼちぼち紹介されるようになってきたジェイシーくんの出世作にして、イー・トンシン監督の快作『早熟』が満を持して映画祭で上映。上映前に舞台挨拶にやってきたジェイシーは、フラッとやってきてフラッと帰ってきた自然体青年でした。でもやっぱりお父さんの息子だなぁ…と思ったのも確かなこと。

 家富(ジェイシー)はできの悪い不良だけど、気はやさしい少年。そんな彼が一目ぼれしたのは、名門のテレサ女学院に通う16歳の若男(フィオナ)。名門校の男子学生のふりをして学院に潜り込んだ家富は若男と意気投合。厳格な敏腕弁護士の両親(アンソニー&キャンディス・ユー)に育てられ、自由を求めていた若男は家富の奔放さにひかれ、執事(シウホン)や家富の両親(エリックとっつぁん&テレサ)の助けもあって交際を深めていく。
 ある日、両親の海外出張のすきを狙って、二人は郊外にキャンプへ行く。ワインに酔い、すっかり気持ちが緩んだ二人は互いに身体を許してしまう。案の定、若男の妊娠が発覚し、彼女の父親は娘と家富を引き離す。彼女への深い愛情とともに責任を感じた家富は駆け落ちし、二人は家を飛び出す。友人の手引きで西貢のボロ家に居を定め、誰の助けも借りずに二人だけの出産を決意する。自然薯と釣りで採った魚介類、インスタントラーメンの日々、まるでままごとのような“新婚生活”を過ごす二人だったのだが…。

 香港では16歳以下が未成年とされることを初めて知った。それもあって、香港人には早婚が多いといわれる所以か。しかし、若者の愛と性の問題は、日本も香港も同じみたいだ。
 昨年放映されたTVドラマ『14歳の母』(観てなかったけどさ)や、今なぜか大流行のケータイ小説映画で若年層の妊娠が描かれているけど、そこではなんだか妊娠やそれにまつわる大きな悩みや問題がキレイごとのように感じられてしまって(orキレイごとしか見せていない?)、リアリティがない。あの手の作品が好きな方やスタッフの方にはほんとに申し訳ないことを言ってしまうんだけどね。
 まーワタシ自身ももう10代なんてうーんと昔になっちゃったし、高校時代は自分はおろか周りには浮いた話もなかったし、いい年こいても彼らくらいの子供を持っているわけではないから、なんだか他人事…と言って終わろうと思ったけど、やっぱりどーしても他人事には思えない。

 若いころは、自分は何でもできると思っていた。すぐ大人になれると思っていた。でも、それができると思ったら大間違いで、世間知らずの彼らは現実の厳しさにぶち当たるのは言うまでもなく。
 もちろん、そんな彼らを親は心配しないわけはない。セレブな弁護士夫妻である若男の両親だって、超庶民なミニバス運転手の父親と海鮮料理店でウェイトレスやってる家富の両親だって、自分たちが犯した過ちを再びさせまいとしてそれぞれが彼らを愛し、我が手に取り戻さんとする。だけど、子供を持ってしまった時点で、彼らがイヤでも親から自立しなければならないのは運命なのだから、親たちは彼らの過ちを許し、正しい道へ導いてあげることしかできないんだろう。娘を取り戻すことばかり考えていた若男の父親がそれに気づいたとき、家富は逮捕されてしまったけど…。でも、逮捕されてしまったとはいえ、若い2人の未来は決して暗くはないはずだ。

 ジェイシーの初々しさ、フィオナのかわいらしさ。撮影当時はすでに20歳過ぎていたとはいえ(フィオナはこれがデビュー作なの?)、むこうみずで子供っぽくて一生懸命背伸びするカップルはあまりにも痛々しく、いとおしい。こういう経験をしていなくても、自分が10代だったころのあれこれをついつい思い出してしまう。
 それを見守るエリックとっつぁん&テレサ姐さん、秋生さん&キャンディスさんの各夫婦。立場も身分もそれぞれ違うけど、決して自分の子供を見捨てることなんてしない。これもまた好キャスティング。家富パパがミニバスの仲間を連れて、へっぽこ古惑仔ふうに家富の友人のところに押しかける場面が面白かった。もちろん、執事役のシウホンさんも忘れちゃいないし、裁判場面で登場の大御所デヴィッド・チャンさんにカーロッも。

 作品としては非常に地味だし、ケータイ小説の過激さに慣れてる(麻痺している?)このごろの日本の女子コーセーからすればたいしたことないと感じられるのかもしれない。今の日本映画じゃいろんな理由でこういう作品は作れないだろう。それだから公開できないってわけじゃない。やっぱり香港電影迷以外の、若い人にも観てもらいたい。
 また日本で上映してもらえるチャンス、どこかで作ってほしいよ。 

英題:2young
監督:イー・トンシン 製作:ホアン・ジェンシン
出演:ジェイシー・チェン フィオナ・シッ エリック・ツァン テレサ・モウ アンソニー・ウォン キャンディス・ユー ホイ・シウホン ラム・シュー チン・カーロッ デヴィッド・チャン

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アイ・イン・ザ・スカイ(2007/香港)

 ジョニー親分映画といえば“銀河映像”。
 だから親分作品の脚本でお馴染、ヤウ・ナイホイさんの記念すべき監督デビュー作『アイ・イン・ザ・スカイ』も当然このレーベルからのリリース。そして…、

  祝!東京フィルメックス審査員特別賞受賞!

 犯罪に係わる重要参考人をマークして監視する香港警察の監視課。そこに配属された新人警官のボーボー(ケイト・ツイ)は上司の“犬頭”(ヤムヤム)から“子豚”のコードネームをもらい、香港市内で続発する強盗事件の関係者の監視の任務につく。街の中に設置された監視カメラの記録から、襲撃された宝石店の近くに現れた男(林雪)に“ファットマン”という暗号名をつけてマークすることになる。
 強盗団のボス・山(カーファイ)は標的となる宝石店が見渡せるビルの屋上に上り、そこから警官の動きを読んでは手下に指示を与えていた。監視課は当初彼の存在をつかみきれなかったが、ひょんなことからその存在を知り、“影の男”と呼んでマークするようになるが…。

 「オレたち監視課は、“天上の眼(eye in the sky)”なんだ」という、犬頭が新人の子豚に監視課の心得を教える言葉が英題となっているように、前編を通じて香港の街を俯瞰するようなアングルで映画は進行する。場面切り替えのフェイドイン&アウトも、町中の監視カメラの映像が荒くなっていくような画面で凝っている。まさにこの英題がしっくりくる。
 監視というとマイナスイメージのほうが強い。最近完結編が公開された“ボーン三部作”では、記憶喪失の主人公ジェイソン・ボーンを街中の監視カメラが追い、その情報がCIAに送られるといった場面がたびたび出てきたし、半年くらい前には自衛隊が憲法改正反対運動をしている人だったかなんだかを監視しているなんてことがあったし(うろ覚えでスマン)、9.11以降、街角に監視カメラが増えていくのを見るたびに、うわーこんなのイヤだよぉ、ヘンなことできないじゃん(いったい何をするんだ)なんて思うのである。

 でも、香港警察の監視課が監視するのは、あくまでも犯罪抑止のため。しかも監視カメラだけじゃなく、一人ひとりが標的について回るというローテク&人員動員大作戦。強盗事件の続発を止めるべく地味(!)に活動する人々と、その中で戸惑いながら成長していく子豚。物語の描き方としては『PTU』に近いのかな。
 ジョニーさん作品では女性キャラの活躍があまりないけど、この映画では子豚の成長が全面的に描かれる。ファーストシーンでは、どことなく不良少女的に登場する彼女だけど、そんな彼女がトラムに乗り込んでマークした中年のおっさんが彼女の上司だったというのが全く予測できない。しかもそれがあのカッコいいヤムヤムだってのも驚き!あのお腹、詰め物しているんだよね?(苦笑)
 同じトラムに居合わせたカーファイは、老眼鏡をかけてナンクロを解くようなフツーのおじさんとして登場するけど、しばらくして彼の正体がわかったときにはまたビックリ。まるで監視課の裏をかくように強盗団に冷静な指示を与え、身の危険を感じるととっさに一発で敵を仕留める(頚動脈かっ切り…痛いよー)という残忍さも併せ持つ。いやぁ、この不気味なカーファイ、親分作品だけのものじゃないのね。
 警察側ではマギーさんの役どころがまるで『PTU』のチョンさんがCIDから転勤したんじゃないかってくらい同じに見える(けど偉い)役だったのがちょっと笑った。あと、このところよく顔を見るシウファイさんに無間道三部作のお馴染みのティンイップさん等の登場も嬉しい。

 しかし、あのクライマックスのヤムヤム炎?の復活シーン(苦笑)…。香港の刑事はやっぱりちょっとやそっとのことでは死なないんだな、と改めて実感した次第。 

原題:跟蹤
製作:ジョニー・トー 監督:ヤウ・ナイホイ
出演:サイモン・ヤム レオン・カーファイ ケイト・ツイ マギー・シュウ ラム・シュー ン・ティンイップ チョン・シウファイ

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おめでとう、ナイホイさん&親分!

 ただいま関東から戻りました。さすが3連休最終日、新幹線がめっちゃ混んでおりました(泣)。

 いまネットに入ってもにかるさんのところで知ったビッグニュースがこれ『放・逐』のアニエスbアワード(観客賞)はワタシも投票したから堅いよなぁと思ったけど、ナイホイさんの『アイ・イン・ザ・スカイ』が審査員特別賞ですよ!恭喜、恭喜!

asahi.com:東京フィルメックス、イスラエル映画に最優秀作品賞 - 文化・芸能.

アジアの個性派作品を紹介する映画祭「第8回東京フィルメックス」(朝日新聞社など共催)は25日、コンペティション部門の最優秀作品賞にイスラエルの家族劇「テヒリーム」(ラファエル・ナジャリ監督)を選んで閉幕した。次席の審査員特別賞は香港のサスペンス「アイ・イン・ザ・スカイ」(ヤウ・ナイホイ監督)が受賞した。

 フィルメックス公式サイトにも詳細が載っておりますよ。
 いやぁ、なにはともあれめでたいめでたい!
『アイ・イン…』は配給がついているようなので、どうやら日本公開も期待できそう。『放・逐』も早いところ劇場公開を決めてくださいねー、キングレコードさん(にっこり)。

 いやぁ、やっぱり“映画祭の命は充実したプログラム”ですねぇ。1週間前のオープニングセレモニーで林ディレクターがおっしゃられた言葉が今思い出されますわ。今年のフィルメックスはホントに楽しかったです。忙しかったけど、充実した映画三昧の週末を送れましたよ。
 来年は3連休初日からスタートのようで、もちろんここで面白そうな映画があったらまた観に行きますよー。

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放・逐(2006/香港)

ほうちく【放逐】
[名]スル
 ①その場所や組織から追い払うこと。追放。「業界から―する」((以上Yahoo!辞書より)
 ②組織を裏切った5人の男たちが、飯を食ったりじゃれあったり金塊を強奪しながらゴロゴロ転がっていくさまを描いたジョニー・トーの映画。

 …何を言いたいんだ、このまえがきは。

  1999年12月、中国返還直前のマカオ。生まれたばかりの子供をあやす女性(ジョシー)のもとに、二組4人の男たち(アンソニー&林雪、ジャンユー&ロイ)がやってきて、彼女の夫ウー(ニック)の行方を尋ねる。実はこの男たち、かつては殺し屋だったウーの仲間で、5人はフェイ(ヤムヤム)のもとで働いていた。しかし普通の暮らしを求めてウーが戦線を離脱したため、フェイはウーの抹殺を仲間の2人に命令し、他の仲間は彼を守るべくウーのもとにやってきたのだ。ウーの帰宅とともに、アパートは三つ巴の死闘となる。しかし、5人はあっさり和解し、一緒に飯を作って再結集を誓う。
 5人は仕事を斡旋してくれるエディ(シウファイ)のところへ行き、いくつか仕事を紹介してもらうが、その中にはフェイを襲うというものもあった。そこで5人はフェイを襲うが、銃撃戦でウーが負傷。4人はウーを闇医者のところに担ぎこむが、そこにまた急所を負傷したフェイとその一味がやってきて再び銃撃戦に。この戦いでウーが命を落としてしまう。ウーの亡骸を妻のところに届けた4人は、当然妻になじられ、街を去ることにする。妻は彼らに復讐することを誓う。
 4人は離れの島に来たが、ちょうどいいことにここには依頼された仕事のひとつである金塊があることに気づく。しかし、金塊はすでに警察(に偽装したチンピラ?)に押さえられ、4人はがっかり。しかし、程なく進んでいくと、彼らと別のチンピラの金塊をめぐる激しい銃撃戦に遭遇。唯一生き残った警察の制服を着た男(リッチー)の助太刀をして敵を皆殺しにし、彼と金塊を分け合う。そして4人はウーの妻がフェイの元にいることを知り、彼女を助けるためにマカオ市街に戻る…。

 観てから1週間経ってしまったこともあって、あらすじがかなりアバウトだけど、はっきり言って物語はあってなしが如き。だから許してー。
 ジョニー親分の映画の中で何が好きかと尋ねられたら、やっぱりやりびでしょう!と言ってしまう。これは3年前にDVDで観て、あーなんてすごいんだ、かかかカッコいい…としか言えず、同じ年の地元の映画祭に、ロイがこの映画とともにやってきてくれたので改めてでっかいスクリーンで体験でき、「かかかカッコいい…」と惚れこんでしまった次第。
 以降、ジョニー親分の映画には、時折うげげげーという気分にもさせられながら(黒社会二部作など)付き合ってきたのだけど、やりびのように胸をつかまれる映画にはなかなか出会えないでいた。だけど、この映画をずっと待ってて本当によかったよ!去年のヴェネチアでこの写真を観て以来、絶対この映画は面白いに違いないって思っていたもの!
で、観てみたら、

ホントに面白かった。カッコよかった。以上。

 …え、これで終わりにしちゃダメ?んじゃ、もーちょっと書こう。
何がよかったって、もちろんファーストインパクトだったあのやりびにはかなわないところがあっても、ストーリーはなきに等しくてもいったいどう転がっていくのか分からないスリルあり、血腥くも美しい銃撃戦の親分的様式美あり、決してハンサムじゃないけど恐ろしく濃ゆい味わいの男たちの熱演あり、腐女子じゃなくてもときめいちゃう熱ーいホモソーシャル風味あり(男子校的シモネタのりあり、ロイのちゅー場面あり)、ともかく親分特製のセット定食(もちろん○肉ミ○チなんてもんはない)を茶餐庁でいただいてうわーおいしかった!っていいたいくらいかっこよかったんですよ!もちろんそれ以上のツッコミはやろうと思えば出来るけど(リッチーの存在意義は?とかあれこれ)、そのへんは眼をつぶっても許されるでしょう、香港電影迷的には。
 あと、個人的に今回は各キャラクターの衣装&スタイリングもジャストフィットで楽しませていただきました。秋生さんのノーネクタイスーツ+トレンチ、ジャンユーのパンク気味ヘア、ロイの長髪、警官の制服とティアドロップのグラサンがよく似合うリッチー、ダークスーツの胸元にコサージュ(多分)を飾ったヤムヤム、皆さん、妙なセクシーさ(ほめ言葉です)を醸し出してたわ。

 上映前にプログラミングディレクターの林さんから「この映画は来年上映予定です」とのアナウンスがあったので、また再び日本語字幕で観られる機会があるのはとっても嬉しい。また大きな画面でこの映画を心ゆくまで堪能したいけど、そのためには一般の人にももっと観てもらいたい。本当にそう思う。そのためには毎度言うように宣伝側には作品に愛とリスペクトを持ってもらいたいし、一般の人にも観てもらえるような適切さのある宣伝をしてもらいたい。各界の賞賛の声は必要だけど、無関係のタレントを使ったり、日本版イメージソング(そんなのつかないか)なんてものは絶対つけてほしくない。そして、今回の上映では女性客も多かったのだから、男性だけじゃなく女性にも観てもらえるようにしてもらえればもっといいなぁ。
 ともかく、また観たいし、未見の方にはホントにオススメの1作。

英題:Exiled
監督&製作:ジョニー・トー
出演:アンソニー・ウォン ン・ジャンユー ロイ・チョン ラム・シュー ニック・チョン リッチー・レン ジョシー・ホー ホイ・シウホン チョン・シウファイ サイモン・ヤム

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映画祭の秋、終わる。

映画祭の秋、終わる。
といいつつ、写真は『呉清源』。はい、この2日間、中華電影だけで5本観ました。地元じゃ当分上映ないし、これを劇場で観る中華電影納めにしますよ。
まだ放・逐の感想も書いてないし、これで当分blogのネタには困らないからいいか。今夜以降、頑張って書きます。
最後に、フィルメックス&中国映画祭でお世話になった皆様、お疲れ様でした!

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それぞれのシネマ・中華圏監督編(2007/フランス)

 今年で還暦を迎えたカンヌ映画祭での記念イベントとして製作、上映された究極のショートフィルムコレクション『それぞれのシネマ』。カンヌの常連監督たちが映画館というテーマで3分間の短編を作るという課題を与えられ、世界に名前を轟かす35人の監督(うち2組兄弟)が作り上げた、120分33本勝負。
 アジア地域からは中華圏の5人に北野武監督を加えた6作品が登場。二番手に登場したかのバカ監督(しつこいようですがこれはホントに彼に対する誉め言葉です)の作品は既に観ていたのでどーでもいいとして、さっそく感想を。

『電姫戯院』監督:候孝賢
 台湾・フランス・日本の古典的&なつかし映画の一場面が描かれたクラシックな看板。そこから視線を下へ移すと、入り口にいろんな人がたむろして、台湾語でカバーされた『ズンドコ節』が陽気に流れてくる。もちろん、おつまみを売る屋台も大賑わい。ここだけでもう、ホウちゃん作品ってことが丸わかり。クローズアップを排してやや引いたところに固定されたカメラワークも懐かしい。
 電姫戯院には、一般の庶民から裕福な家庭のお嬢様たちまで、さまざまな人が集まってくる。そこに1台のジープが止まり、ピシッと軍服をきめた若い軍人(張震)が、身重の妻(すーちー)と子供たちを伴って降りてくる。彼らもまた映画を観に来たのだ。いくら遠目からでもちゃんと張震&すーちーのカップルだとわかるのがいい。ああそうか、これは『百年恋歌』の後日譚だったのか…。なんで去年の今ごろ、無理してでも観なかったのだろう、と後悔しても役立たず。
 夫婦が映画館の中に入った次の瞬間、時代は一気に40年進み、廃墟と化した現在の館内に変わる。ぼろぼろのスクリーンに映し出されるのは、おそらく60年代の青春映画の一場面。日本と同じように、映画館が一番の娯楽だった時代は、台湾でも既に過去のものなのか…。
 ホウちゃんは、この作品でおそらく自らが青春を過ごした時代を描いたのだろう。それにはもちろん、某ヒット邦画的懐かしさの追求もあるのだろうけど、同じ時代を描いても、あの映画にはない過ぎ去った時代への挽歌が聞こえるような気がする。

『看電影(映画を観る)監督:張藝謀
 野外上映は、たいていの中国映画の題材に使われる。『思い出の夏』『玲玲の電影日記』などを挙げれば説明不要か。偶然なんだろうけど、盟友にしてライバルでもあるイーモウとカイコーはこれを題材にしていた。まずはイーモウ作品から。
 ホウちゃんの映画体験を元にした先の作品の余韻を引きずったままこれを見たせいか、うっかり「ああそうかぁ、イーモウの幼少時の映画体験はやっぱり野外上映がぁ。なんか台湾と大陸の60年代の違いを感じるよなぁ」なんて大バカ丸出しで言っていたんだけど、この話自体が現在の中国を舞台にしているんだよね(苦笑)。
 映写機と機材を積み込んだ軽トラに乗る青年と、それを追いかける子供たち。青年に一目ぼれする村の少女。夜になるのが待ちきれずに映写の準備に集まる子供たち。上映前のちょっとしたアクシデント…と、よくある(であろう)風景を軽やかにきりとり、少し銀のかかったフィルムに焼きこむ。こういう純朴さはイーモウの真骨頂でしょう。今後もこーゆー作品を頼むよイーモウ。もう“らぶらぶ邪念”や“濃密な時代劇”はお腹いっぱい。

『是夢』監督:蔡明亮
 台湾映画界の問題児(こらこら)ミンリャンはマレーシア華僑。最新作の『黒い瞳のオペラ』は未見だけど、それを考えると彼の撮る台湾に妙な熱帯的アンニュイさが漂うのは合点がいく。いや、アタシはマレーシアに行ったことありませんよ、単なるイメージです。もちろん行ってみたいけど。
 そんなミンリャンが故郷マレーシアで撮ったのがこの作品。いや、アタクシ的には『楽日』のように、古い映画館の誰もいない座席を3分間固定カメラで写しっぱなしにしても怒らないぞなんて思ったけど、いくらミンリャンでもさすがに同じ手は二度も使わない。でもシャオカンと懐メロは何度でも使う。ついでに自分の母親まで登場させる。椅子に座らず階段にしゃがんでドリアンをほじくる。
 使えるものはとことん有効活用する。偉いぞミンリャン、わははははは。以上。うわーなんだこりゃ、感想これだけか。

『I Travelled 9000 Kilometers To Give It To You』監督:王家衛
 青さの残る少年(『地下鉄』のファン・ジーウェイ)が、隣席の女性(ひそかに王家衛作品常連のチャン・ヨーリン)に心奪われ、思わずエロい行為に出る、と説明すればこんだけ(ってずいぶんアバウトな説明だな、それでいいのか?)なんだが、さすがはオサレで個性派の俺様審査委員長家衛&こだわりのアーティストウィリアムさんコンビ、その他愛もない話のフッテージにゴダールのSF映画『アルファヴィル(題名はこの映画の台詞から)』を用い、いつもながらの映像美とモノローグwith字幕とジーウェイの顔のアップとヨーリンの美脚アップ(で顔は絶対映らない)でラッピングしてエロさやんわりで仕上げた次第。…しかしそれでもツッコミたい。これはなんだ、映画ってゆーよりも散文詩か!?キミたち詩人か!?ってそのツッコミ自体が意味不明でオチがないよ!
 ところでこれを観て以来、ネタの『アルファヴィル』が観たくなってしょうがない。昔深夜にTVで放映した時に撮ったビデオが途中で切れていた悔しさもあるんだけど、イマドキの大味SFよりも20世紀後半に作られたレトロシックなフューチャーノワールが結構好きだからってこともあってねぇ。

『寒村(ザンショウ村)監督:陳凱歌
 同じ野外上映ネタでも、カイコーの切り取る風景は1977年。
 映画技師のいぬ間にいたずらし、この年に亡くなったチャップリンの無声映画に喜ぶ子供たち。電気が切れたので自転車にバッテリーをつなげ、ペダルを漕いで人力発電で映画鑑賞。それは技師に見つかり、当然こっぴどく怒られることになる。子供たちは三々五々と逃げていくが、たった一人逃げずにその場に縮こまっていた少年がいた。「おじさん、映画、もう終わっちゃったの?」と尋ねた少年は、目が見えなかった…。
 映画は、決して目が見える人のためだけのものではない。目が見えなかったり、言葉がわからない人が映画を楽しむ話も今回の短編に多く、その手のネタでは、盲目の女性が恋人の助けを借りてラブストーリーに感涙するイニャリトゥ監督の作品が印象的だった。3分間の中で物語の焦点がどんどん変わっていくので、散漫な印象も感じられないわけじゃないけど、時代が変わっても、大人でも子供でも、盲目の人も耳の聞こえない人も映画を平等に楽しむ資格があるのだというテーマがこめられていたのだろうか。

 こうやって5人の5作品を思い出しながら書いてみると、まさに5人それぞれのシネマがあり、5人とも個性を発揮した作品に仕上がっていたのでホントに楽しかった。もちろん他の地域の監督作品もそれぞれ楽しんだ次第。
 いやぁ、いい企画をありがとう、カンヌ映画祭実行委員会さん!
 そして、この映画を日本まで持ってきてくださってホントに感謝します、フィルメックス事務局さん!!

 そうそう、他の作品についての感想は非中華な日記の方で書きます、思い出したらなるべく早く。

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フィルメックスツアー前半戦(笑)終了。

フィルメックスツアー前半戦(笑)終了。
写真は有楽町某新スポット内にある某中華料理店のマンゴープリン。味はフツー。(笑)

やはり2日間はあっという間だった…。昨日はオープニングの後、銀座でしるこを食べてからホテルにチェックインし、新宿まで出て映画を1本観る。
そして今日は10時にチェックアウトして東京駅に荷物を預け、開場時間まで有楽町をぶらぶら。
朝日ホールではKEIさん、そして札幌のきたきつねさんと初対面。映画終了後、せんきちさんとも初めてお会いしまして、はじめましてな同好の士の皆様としばし時間を共にいたしました。あ、riverisaiaさんにも初めてお会いしました。すみません遅れまして。

あ、『放・逐』ですが、ものすごくよかったです。久々に「かか、かっこいい…」としか言えなかった。来年一般公開とのことなので、是非ともヒットしてもらって、地方にも回ってきてもらいたいものです。

明日からまたしばらく働いて、今週末再び上京。後半戦は中国映画祭もあるので、まだまだ気が抜けないなぁ。
最後に、お世話になった皆様、ホントにありがとうございました&お疲れ様でした。

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Je taime CINEMA!TOKYO Filmex!

Je taime CINEMA!TOKYO Filmex!
といいつつ、写真は囲碁しるこです。これは『呉清源』コラボメニュー。

 本日より東京フィルメックス。いつもはオープニングと同窓会が重なるので、今まで『百年恋歌』も『三峡哀歌』もパスしてきたんだけど、今年はあの『それぞれのシネマ』だというし、偶然にも同窓会もなかったので、勇んで上京した次第…といっても、午前中はイベントのため強制的に出勤だったので、自分の仕事をこなした後に無理やり早退したんだけどね(苦笑)。
 さて、初参加のオープニングセレモニー。非常にささやかだけど、心がなんだか暖かくなるような雰囲気。ホントに映画が好きな人のための映画祭なんだなぁ。
 そして、『それぞれのシネマ』。同じ3分なのに、感じる長さは各作品ごとに違う。そして目まぐるしく展開する120分35本勝負なので、えー、どれがだれだっけー?状態。欧米の監督作品では、普段の作品と全く違う芸風で勝負してくるのもあって「ええーーーーっ」となった作品もあったけど、我らがアジアの6監督は見事に各人の個性を出しまくっておりました。あっぱれというか、まったくもおー(特に王家衛作品)というか…。

 明日はいよいよ『放・逐』。札幌のきたきつねさんにもお会いできるかな?

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言うことが毎年一緒で本当にすみませんです(苦笑)。

 毎年、東京国際が終わるたびに、あんなことこんなことをいってて、また同じこと言うのかよーとあきれられそうだけど、それでも多分同じこと言います(爆)。

 最近、某ルート(我非常感謝!)にて大阪アジアン映画祭2007のパンフを入手した。
  いやぁ、しっかりしたパンフだなぁ。デザインがかつての「アジアの風」パンフに似ているというか、中国映画の全貌のチラシにも似ている気がする。後者の方と同じデザイナーさんかしら?
 それはともかく、この映画祭は前身である「韓国エンタテイメント映画祭2005in大阪」から始まり、昨年から日本と中華圏作品と協賛企画「中国映画の全貌」の上映が加わって今の名前になり、今年はさらにマレーシア映画特集(from去年のアジアの風)まであってどんどんスケールアップしている模様。地方映画祭冬の時代に気を吐いているなぁ。
 そのパンフの中で、昨年までのアジアの風プログラミングディレクターにして、今年の香港映画祭プログラミングディレクターである、我らが暉峻創三氏がこんな言葉を寄せていた。ちょっと引用。

 日本の配給会社のついていない作品を映画祭上映するには、莫大な経費と労力がかかる。それを東京で1,2回上映して終わりというのは、あまりにももったいない。そこで何とか全国各地で順次上映していけないだろうか、というのは実はかねてから自分が希望していたことでもあった。その望みは有志の協力により昨年の大阪や一昨年の千葉・幕張などで小規模に実現してはいたのだが、今回、こうして一挙に14作品(詳細は公式サイトの上映作品を参照-もとはし注)もの作品が上映されるのは、何だか〈アジアの風〉ディレクター職を離れた今年になって初めて、悲願が大規模に実現したかのような感慨を覚えさせられる。

 テルオカさん、それはアナタだけじゃなくて、ワタシたち地方在住の映画ファンにとっても悲願でもあるんですよ。ここ4年間、毎年10月になってなんとか予定を調整しつつ、東京国際のために上京してはヒルズやbunkamuraのまわりで勝手に愛を叫んでいるわけだけど、国際的な(苦笑)映画祭の場で同志の皆さんと一緒に香港映画で大笑いするのも楽しいんだけど、その楽しさを他の人にも知ってもらいたい、なによりも地元の劇場やホールでこの楽しさを観客と分かち合いたいって常々思っていたのだ。お金と時間をやりくりできる今だからこそ、こうやってすぐさま上京できるけど、もしこの先ワタシの人生に重大な転機が来て、地元から簡単に離れることができなくなるような状況になったら…と思うと、東京だけの上映は本当にもったいない、是非とも地方上映を積極的にやっていただきたいと思うんだけど、もしこれらの作品をわが街に呼ぼうとなると…やっぱり相当な経費や労力がかかるのかなぁ(汗)。

 映画祭のみ上映作品はまだしも、もっと心配なのは映画祭上映後になんとか一般公開が決まった作品の入りが少ないこと。去年4月に『ディバージェンス』の初日上映を六本木で観たんだけど、客の入りが…だったもんなぁ。いずれはDVD化されるからそれで、と考えている人がいるのはわかるんだけど、それ以前に劇場でかけてもらえる香港映画がもっと多くならなきゃ字幕入りのラインナップも充実しないんじゃないかな、なんて思うんだけど。
 そんなわけで、映画祭だけじゃなくて、一般上映時には、それがどんなに上映劇場が小さくとも、主演俳優来日イベントがなくても、もっと盛り上げていければと思うんですよ。それは決して映画祭のみの盛り上がりを否定するわけじゃないです。ワタシも盛り上がってますし、毎日新聞の下の記事もかなり感慨深くなりましたもの。

東京国際映画祭:香港映画を共に見る至福 香港映画祭オープニング・セレモニー(毎日jp)

 何のかの言っても、アジアの風には感謝しています。テルオカさんから石坂さんにディレクターが交替し、取り上げられる国々がぐんと増えたにしても、テルオカさんの敷いた路線は堅持してくれたみたいなので、今後もこの路線を続けて、たとえ国際の規模が縮小したとしても、アジアの風だけで十分やっていけるような体制を作っていっていただきたいです。あとは上映スケジュールがもっと観やすく、会場もいいところが押さえられれば言うことなしです。 

 そのほか、国際関係で気になった記事あれこれ。全体の総括ですが。

 ハタチの東京国際映画祭(読売新聞)

 文中で「『出エジプト記』が完売」とありましたが、複数の観た方のblog記事には空席もあった、とありましたよ。それなら観られなかった人たち(含むワタシ)の立場は…。というより、そろそろパン・ホーチョン作品を国際限定のマニアックなお楽しみ上映状態から一般公開に降ろしてもいい時期と思いますよ。第1弾にふさわしいのは『イザベラ』でしょう。ちょうどマカオが観光的にブームになりつつあるから、香港観光協会とマカオ観光局にタッグを組んでもらってバックアップしてもらいましょうよ。
 また、比較的厳しい意見はこれ(毎日)とこれ(報知)。…これは、昔から言われていたことだもんね。毎日の記事からは「取引の場所が充実してきた」みたいなことを読み取ったけど、東京国際は日本映画の見本市じゃなくて、世界の映画が観られるお祭りだというスタンスは今後も維持してもらいたい。無理してカンヌのマーケットの真似しなくていいんだよー。
(逆に国内向けアピールのためにカンヌのマーケットにタレントを派遣して、「世界で注目」ってー報道はもうやめてほしい。これまた毎度の愚痴でスマンが)

 でも、たとえ国際がなくなっても、アジアの風だけは映画祭として独立させて残してくださいよ。欧米発じゃない、東京独自の観点でアジア映画を掘り起こすことには、充分な意義があるんですからね。

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宣伝担当さん、映画のイメージ商売は避けようよぉ。

 エイベの中華芸能参入(でもあくまで予定は未定。詳しくはこの記事)に心穏やかじゃないので、是非ともこれは杞憂で終わってほしいと願っているんだけど、別に日本人歌手が中華圏に進出することに反対はしていない。台湾にもレーベルのあるソニーは、日本のアーティストを招いて台北でちょくちょくジョイントライブをやっているし、昨年4月に宏くんと一緒に元ちとせ小姐がステージに立った時には、「ああ、いいよなぁ…」って素直に思った。
 こういう歌手同士のジョイントなら問題はないんだけど、“フォーフォーの悲劇”や傷城のぴんちーぷーみたいな日本だけの主題歌差し替えってなると話は別だ。歌手のファンと映画のファンは全く別物だし、一般の人々の気をひくためにおまけをつける売り方はスマートじゃない。それはイメージソングというのでも、劇中に流れる/流れないを別にしても同じことはいえると思うのね。
 どうして映画の内容自体で売りにかけないのかしら?不思議だわ。

 そんなこともあって、今朝知ったこのニュースには頭を抱えてしまったのよ。

中(あたり)でアタれ!ベネチア映画祭金獅子賞日本版:芸能:スポーツ報知.

歌手の中(あたり)孝介(27)が、今年のベネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞した映画「ラスト、コーション」(来年公開)の日本版イメージソングを歌うことが9日、分かった。タイトルは「夜想曲 noctune」で、主人公の男女の揺れ動く気持ちを表現したバラード。同映画のアン・リー監督(53)が中の歌声にほれ込んでの起用だ。

 映画「ブロークバック・マウンテン」(2005年)でアジア人初のアカデミー賞監督賞を受賞したアン監督が、新作のイメージソングに中を指名した。

 ベネチアで金獅子賞に輝いた「ラスト、コーション」は来年のアカデミー賞も有力視される話題作。中は昨年11月、日本に先駆けフルアルバム「触動心弦」を中国、香港、台湾限定で発売し、台湾チャートで1位を獲得している。

 あのぉ、中孝介くん、アタシはそこそこ好きなんですよ。
 ライヴに行ったり、アルバムを買うほどのファンってわけじゃないけど、いま観ているNHKドラマでステキな主題歌を歌っていたり、デビュー曲『それぞれに』がいつも聞いているラジオ番組のエンディングテーマになっていたり、しかもその曲をアンディ先生がカバーしていらっしゃったり(ああ、あのマッシュアップミックスをもう一度聞きたい!)、中華圏先行(しかもオリジナル)でフルアルバムを出したり、さらに台湾映画《海角七号》(台湾で年末公開予定とのこと)にも出演したりと、日本だけじゃなくて中華圏にも目に向けた活動をしているので、好感を持っているんです。

 でも、そんなアタシでもこのニュースには力が抜けました…。
いくら個人的に好きなアーティストとはいえ、ワタシ以外のトニー迷、李安さん迷、宏くん迷など他の人にとっては「ええーっ!なにそれぇー!!」って思われるのは予想できるんだもの。最悪、そのブーイングで彼のイメージが悪くなっちゃったら悲しいし…って妄想しすぎでスマン。

 ついついそんな余計な心配をしてしまうニュースだけど、やっぱり声を大にしていいたい。毎度言っていることだけど。

映画宣伝担当さーん、映画はその映画自体を純粋に売りましょうよ。

 いくら今は『検事クリューコーヘイ』とか『昭和三十年代東京のどっかの夕方』とかの日本映画が当たっていて、他の映画も一生懸命売り込まないと話題にならないからと言い訳されても、映画自体がよければそれなりに入るんですから。
 だって『ブロークバック』には日本独自イメージソングなんてなかったじゃん。

 ところで問題の記事中には「来年のアカデミー賞も有力視」云々と書いてあるけど、確か「台湾映画」と認められなかったから外国語映画賞ノミネートは落ちたんじゃ…ってそれ以外の賞を狙うつもりか(苦笑)。

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女人本色(2007/香港)

 東京国際映画祭の協賛企画として毎年実施されている東京国際女性映画祭。これまでなかなか行く機会がなかったのだが(自分、女性のくせに!)、今回初めて行くことができた。当初予定にはなかったのだけど、同好の士の方に券を譲っていただいたので(改めて、ここで御礼申し上げます)オーチャードからダッシュして(途中歩いて)観に行った。しかし、新幹線の時間が迫っていたのでティーチインはパス。NHKのBSニュースでも取り上げられた映画だけあって、バーバラさんのお話を是非聞きたかったんだけどねぇ。

 大会社で働くジョイ(ジジ)は腕利きのキャリアウーマンで、職場結婚した夫ラム(ジョージ)は同じ会社のCEO。ロロという息子を得て、幸せに暮らしていた。しかし1997年7月1日、返還記念パーティーの席で夫はCEOの職を解任されて、後釜に大陸から来たチェンが就任する。そして、ジョイはCFO(最高財務責任者)となり、チェンの片腕として働くことになる。ラムは新天地を求めてシンガポールに移り住む。
 ジョイの元隣人である義父(シウホン)は彼女に不動産の購入を勧め、いくつか購入していたが、10月のアジア経済危機とそれに伴う不動産の価格が下落する。ジョイは義父をなじり、彼は自殺してしまう。ジョイとは姉弟のように育ってきた医学生の息子は、ジョイに向かって「父親が死んだのはキミのせいだ」と責める。
 ラムは事業の失敗により多くの負債を抱え込む。彼を心配するジョイは夫の負債を負担するが、それが他人に知られることになり、ラムは自暴自棄になって交通事故で命を落とす。
 一方、ジョイの部下シウタン(フィオナ)はカバンをひったくった男を捕まえてくれたスタイリストのケビンと知り合う。彼によってオシャレに変身したシウタンはケビンに夢中になるが、ケビンは付き合っている女性に偽物ブランドを平気でつかませるような男だった。
 2003年、ロロが新型肺炎に感染したことがわかる。封鎖病棟に駆けつけたジョイを迎えたのは、仲違いで別れたっきりになっていた義弟だった。しかし、ジョイの必死の祈りも叶わず、ロロに続いて義弟もSARSによって命を落とす…。
 (あー、資料不足に加え、映画を観ているときには帰りに間に合うかどうかが気になってしょうがないので、物語はもとより登場人物名をろくに覚えていません。ホントにすみません。)

  実はあれこれ映画を観る合間を縫って、この冬と夏に放映されたNHKの土曜ドラマ『ハゲタカ』にハマっていたんだが、これを観て、このドラマをちょっとばかり思い出していた。
 1998年から2004年まで、景気がどん底で外資ファンドによる企業買収が活発化した日本で都銀出身のファンドマネージャーとかつての彼の上司にして企業再生を請け負うターンアラウンドマネージャーが“企業再生とカネ”をめぐって対決し、挫折などを経て新たな企業再生への道を築くまでを描いていて、経済なんてチンプンカンプンな自分は、ほー、なるほどーと思いながら観ていた。それ以外に企業を巡る男と男のぶつかり合いが素晴らしい!でもスタッフちょっと無間道リスペクトしてない?と確かにワタシも思ったけど、これ以降は別の話になるのでおいておこう(このドラマについて詳しくはこちらを)。
 で、『女人』の描く時代が、多少こっちの方が期間が長いにしろ、ちょうど『ハゲタカ』で描かれた日本とかぶるなぁと感じたのだった。でも、あのドラマでは主要登場人物のプライベートは一切描かれなかったし、香港映画ならどシリアスは厳しいので、辛い時代の出来事もユーモアやペーソスをもって描かないと痛いものね。

 この10年間でワタシはちょうど10回香港に渡っていたのだけど、訪れた時に起こった大事件が劇中に見事に反映されていたので、「そういえばそんなことがあったなぁ」といろいろ思い出していた。例えば不動産株下落に伴い、株で儲けまくって一気に損をした不動産王が追い詰められて練炭自殺した事件。これも当時香港滞在中にニュースを知った。また、SARSが流行する直前にも香港入りしていたので、その頃から思うとまさにああなるなんて思わなかった(もちろん、レスリーのことも…当然本編には登場しなかったけど)。
 主人公ジョイの人生にはいろんなことが起こる。昔の男、もとい愛する夫は彼女の前から去り、新しい男、もとい大陸出身のビジネスパートナーとはどうもうまくいかない。父親代わりの隣人と義弟に加え、夫と息子にまで先に逝かれてしまい、彼女は打ちひしがれる。しかし、さすがバイタリティあふれる香港人の血のせいか、彼女はどんなに叩きのめされても決して凹まない。彼女を助け、サポートしてくれるのは部下のシウタンだったり、彼女に投資依頼をする起業マニアの毛毛だったりと、女性ばかりだ(もちろん、彼女と時に対立し、時に気にかけたりするチェンも、彼女の知らぬところで助けてあげているのだが)。日本の場合に当てはまると、ビジネスサイドではまだまだ男性上位で、女性管理職が登場しても同姓からのサポートがなかったりなんだりという話もまだまだあるし、ジョイも夫の助けがあって子供を産んでも働ける(メイドさんも雇えるしね)ので、香港って女性にとって働く環境が整っているのかな。うらやましいぞ。

 こんな感じで非常に興味深く観たし、それなりに楽しんだんだけど、欠点はキャストの地味さかなぁ…いや、これでも派手じゃんと批判されるのは承知だけど、その前まで彦祖やニコからラウチンやらカートンやら林雪まで観てしまっているので、どーも比べてしまって。
 ジジが時々カリーナに見えたのは気のせいか?というよりも、とってもキュートな彼女もいつの間にかこんなキャリアウーマンを演じるようになったのか…と感慨深い。しかし旦那がジョージ・ラム…。うーん、ジョージさんはベテラン歌手ってイメージが強いし、役柄的にも「えええーっ!!!」って末路なので「それでいいのか?ジョージさん」と思った次第。しかもベッドシーンが濃い。それで…いいのか、ジョージさん。
 フィオナちゃんの演技はお初(あ、今月の中国映画祭で『早熟』観ますよ)なんだけど、もっと活躍すると思ったらそうでもなかったなぁ。しかし、独立独歩のジョイに比べて、まだ若いからと言い訳できるにしろ、あのスタイリストと付き合い始めてからのシウトンはちょいと軽率だよな。もっとも、彼女のことをずっと見ていた花屋くん(若手歌手のヒンスくん)に気づいてくれたのはお約束だけどよしとしよう。あとのキャストはシウホンさん以外ほとんど知らない、というか知っていてもなんか気がつかなかった。スマン。それだけキャストが地味ってことなのか。

 最後に気がついたことを一つ。
 最近の香港映画は、広東語をしゃべれない俳優で中国人か台湾人だったら、そのまま北京語でしゃべらせといて、広東語のできる俳優はそのまま広東語で一緒に会話するというパターンが一般的なんだけど、北京語しかしゃべれないチェンに、ジョイはちゃんと北京語で話しかけていた。ジジも大陸映画出演のキャリアがあるので、しゃべっても無問題だからかな? 

英題:Wonder Woman
監督:バーバラ・ウォン 製作:レイモンド・ウォン
出演:ジジ・リョン フィオナ・シッ ジョージ・ラム ヒンス・チョン ホイ・シウホン

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あの企業の参入に、香港映画の運命やいかに?

 東京国際の感想は、まだ『女人本色』と総括が残っているんだけど、週末に飛び込んだこの話題に驚いたので、ちょっと中断。

エイベックスが香港映画会社の株取得(日刊スポーツ)

レイモンド・チョウ氏が引退…ブルース・リー“育ての親”(スポーツ報知)

 かなり衝撃的なニュースでした。
 ええ、バブル期における、ソニーのコロンビア買収や松下のユニバーサル買収(のちに売却)などのジャパンマネーのハリウッド買占め以上の(こらこら)。
 最初はエイベ自体がゴールデンハーベスト(以下GH)を買収したのかと思って「うぞー!いやだー!!」と驚いた。だが、記事をよく読んでみると、エイベグループの中国傘下にあるエンタメプロダクション橙天娯楽(所属俳優は梁家輝、夏雨くんなど大陸俳優としては結構いい面々)がGHの最大株主になったことで、直接の買収ではないと知ったものの、いずれはエイベが買収する気満々なんかじゃないか、と一通りの心配をしてしまうわけで。

 すでに映画製作から撤退し、今はシネコン経営や配給(この冬香港で観た《生日快楽》を配給していて、えーロゴ変わっちゃったんだーとひそかに残念に思った記憶あり)を執り行っているGHだが、橙天の株取得によって果たして不死鳥のごとく蘇るのか、というより、先にも書いたようにこれを足がかりにしてエイベが香港や大陸娯楽に進出してかつての日本でやってたようにブイブイ言わせるのかと思うと、かなりゲンナリ。
 おそらく今後、GHの名作映画(いいやつばっかりだもんなー)はエイベの映像ソフトで最発売されるのだろうけど、エイベといえば日本でブイブイ言わせていることはおいても(いっぱいツッコミしたいがここで書くことじゃない)、イニDや傷城のプロモに歯がゆい思いをした過去もあるし、《赤壁》でも、先頃この会社の芸能部に移籍した中華方面への進出に熱心な某歌舞伎俳優(スマンこんな長い説明で)が出演すると聞いて、ただでさえ頭を抱えている。
 今後は、ぴんちーぷー小姐以外に、この会社所属のアーティストやタレントがプロモや製作映画にどんどん出てくるのかと思うと、なんかなぁ…。 

 以下は完全に独り言。話半分に読んでください。
 これならまだ10年前にGHに出資して共同で映画を製作していたり、香港明星の日本でのマネージメントを手がけていた(金城くんも一時期所属していた)“藝神集団”ことアミューズのやり方のほうがよかった(今は大韓方面でそれをやっているんだっけ?いや、詳しくは知らないんだけど、以前ここにドンゴンが所属していると聞いて驚いたので)。
 おーい、フクヤマくんや南方総明星楽団(笑)や色情画像楽団(なんだその嘘中国名は)は香港や大陸で人気ないのか?
 2本の香港映画で主演を張った靖子ちゃんの後輩、ふかっちゃんやジュリちゃんはどうだ?あと、最近この事務所は特撮ドラマの主演もかなり輩出してるから、若手俳優くんを香港のワイヤーワーク&ノースタントアクションでちょこっと鍛えてやってもいいと思うんだぞー(無理か?苦笑)。
 そーいえばケリーの日本側マネージメントは未だにここなのか?

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filmexは、いったいどーなる?

おはよーございます。ただいま地元唯一のチケぴがある某Kデパート入口です。もちろんまだ開いてません。

フィルメックスのプレリザーブで『放・逐』&『アイ・イン・ザ・スカイ』が取れなかったので、あらかじめ用紙を作って8時半頃来たのですが、先客1名。多分ダブることはないと思うけど、去年の黒社会二部作も、発売同時に舞台前しかないっていわれたもんなぁ…。不安です。
香港映画って、一般公開するって言っても、なかなか地方まで来ないんだもの。この映画上映地方格差、なんとかしてくれよ政府よ!(おい、そんなことで政府に当たるのか!?)

(追記)両方ともなんとか取れました。しかし、有楽町朝日ホールって、なんであんな席の割り振りなんだろうか…。

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天堂口(2007/香港)

天堂口(2007/香港)
こーゆー場面はありませぬ(苦笑)。なんとなくジェネックス欲望の翼?

 ジョン・ウーという名前は、すでに中華電影界はもちろん、ハリウッドをもを飛び越え、世界電影的なブランドと化した感がある。だって、ただいま公開中のアニメ映画『エクスマキナ』は、あの『攻殻機動隊』の原作者で、世界的にも知名度が高い士郎正宗の代表作『アップルシード』の続編的作品なのに、それよりも「ジョン・ウープロデュース」ってーコピーが前面に出ているんだよ。まーそれ以外にYMOの再結集で誕生したHASYMOの音楽参加やミウッチャ・プラダが衣装デザインに参加などという話題もあるらしいけど…。
 そんなウーさんは今、約15年ぶりの長編中国語映画となる《赤壁》を撮っているわけだけど、中華圏復帰への準備としてとりかかったのが『桑桑と小猫』であり、製作として関わった『天堂口』であるような気がする。

 1930年代の蘇州。貧しい家に暮らす若いフォン(彦祖)は病気の母親の薬代を稼ぐために、幼馴染のターカン(リウイエ)とシャオフー(トニー君)兄弟とともに上海に出る。フォンとシャオフーは人力車を引き、ターカンはキャバレー“天堂”のウェイターの職にありつく。このキャバレーは上海映画界の実力者と裏社会のボスという二つの顔を持つホン(孫紅雷)がオーナーを務め、愛と欲望に満ち溢れたクラブだった。ターカンはホンに取り入って仕事をもらい、フォンとシャオフーを誘うが、それは横流しされた武器を奪い返すヤバイ仕事だった。相手に気づかれて乱闘となったとき、フォンは初めて人を撃ち殺す。ホンは3人を気に入って自分の側近とするが、権力への欲望をあらわにするターカンにシャオフーはついていけなくなる。
 敵の多いホンはある日刺客に襲われる。彼を襲ったのは彼の右腕にして実の弟であるマーク(張震)だった。彼はキャバレーの花形であるルル(すーちー)に恋していたが、彼女はホンの愛人にされていたのだ。そしてフォンもまた、ひょんなことからルルと知り合い、彼女にひかれていくのだが…。

 ウーさんの壮絶な傑作『ワイルド・ブリット』を原案に、舞台を30年代上海に移し、彦祖に張震にリウイエにトニー君など、中華圏の若手を総動員したこの映画、確かにウーさんリスペクトなテイストに満ち溢れている。だって張震演じる殺し屋の名前がマークだよ!さすがに鳩は飛ばないけどガンガン撃ちまくるし、もろパクリじゃない適度なリスペクト具合は誉めてつかわそう(笑)。
 しかし…リスペクトはいいんだけど、オリジナルが長い作品だったせいか、あるいは期待しすぎたせいか他に理由があるかどうか知らんけど、1時間40分じゃちょっと消化不良?と感じさせられたんですわ。ファーストシーンで「なぜこうなったんだ?」と愕然とするフォンの姿が映し出されたので、ああ、これがラストシーンなのかと思いきや、おいおいそうなるのかよ!(泣)と。あれこれ盛り込みすぎたせいか、えー、フォンとルルの恋模様の顛末はそれでいいのか!とか、シャオフーの堕ちっぷりをもう少し丁寧に…とか、言いたいことがいっぱいあって困る。これは一般公開が決まってからじっくり書いたほうがいいかしら?

 そんなふうに物語と演出には「?」ばっかりだったけど、キャストはよかったです…てーかこれだけメンツ集めれば悪くないはずがないか(苦笑)。
 彦祖は久々に主人公らしいキャラ。(それってどーゆー意味で書いている?)役割的には『ワイルド…』でのトニーにあたるのか?純粋で優しい青年が欲望にまみれた都会で過酷な試練を背負うけど、最後まで人を信じる心を失わないってところが非常に主人公っぽい。って当たり前のことをいうな。
 リウイエ&トニー君兄弟。似てないな(こらこら)。しかしリウイエよ、キミはいったいどこへ行くんだ。郵便配達藍宇はもう過ぎ去りし美しき思い出なのか!トニー君はひたすらかわいそうな役で、もう…。そういえばこの3人組の共通点は、いずれもゲイ役の経験があるってことか、どーでもいいが。すーちーはこれまたお得意な役どころですわね。完璧すぎて文句も出ない。嬉しいような残念なような。
 しかし、なによりも一番よかったのが張震だったのよね。まーこの子ったらいつの間にかこんなにクールに成長してくれちゃって、15歳のころからずーっと見てきたおねーさんは嬉しいわ(照)。それでもあちこちで指摘されていますけど、確実に彦祖とはかぶりますよね(大笑)。
 孫紅雷はすっかり悪役おぢさんになっちゃったなぁ。あのスキンヘッドは現代劇の悪役(もちろん香港映画での)でもいけると思います。

 監督さんはホントに初長編だったということで、おそらくプレッシャーがきつすぎたのかもしれないけど、それはそれだけ期待されているってことよね。初監督でヴェネチアのクロージング作品に選ばれるってのもおそらく前代未聞だったんだろうし、それは今後に期待ってことで不満もとりあえずのむことにするか。

英題:Blood Brothers
製作:ジョン・ウー テレンス・チャン 監督:アレクシー・タン 衣裳:ティン・イップ 音楽:ダニエル・ベラルディネッリ
出演:ダニエル・ウー チャン・チェン スー・チー リウ・イエ トニー・ヤン スン・ホンレイ

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男兒本色(2007/香港)

男児本色(2007/香港)

with『鉄三角』。こっちも観たかったなぁ…。

 香港の爆発王、ベニー・チャン見参!
♪ちゃららー、ちゃんちゃん、ちゃららー、ちゃんちゃん、ちゃちゃーちゃちゃーちゃちゃちゃっちゃちゃ♪(と意味なくBGM)
 おいおい、ヒーローものじゃないだろうが。えー、大変失礼しました。

 ジョニーさんほどじゃないにしろ、ベニーさんもまた多作な人である。ここ数年は1年に必ず1回は彼の作品を観ている。『BB』でしょ、『ディバージェンス』でしょ、『ニューポリ』もそうだもんね。さらにもっと時をさかのぼれば、御馴染の特警ニ部作(ジェネックスコップシリーズ)もある。名前を挙げた作品では、ほとんどの映画に派手な爆発シーンがある。成龍さんのアクションが見モノのニューポリでも警察爆発シーンがあったけど、さすがにBBは赤ちゃんをビックリさせないように爆発は控えめだったよね?いや、それ以前に赤ちゃんビックリなヒヤヒヤ場面はいくらかあったか。
 そんな爆発大好きなベニーさんだが、成龍さん以外にはニコを主演にした作品も多いのはいうまでもない。ジェネックスの1作目からすでに8年が過ぎ、あの頃は生意気でオレ様といわれたニコも、今やすっかり成長してなんと1児のパパ。彼の成長っぷりと合わせて、後輩にあたるショーンやジェイシーとのコラボレーションや、新たな悪役アクションスターとの絡みにもわくわくしながら、『男兒本色』を観たのであった。

 刑事のチャン(ニコ)は半年前、ギャングの現金輸送車爆破の巻き添えで恋人を失った。それ以来、彼はギャングへの復讐に生きることを誓い、強引な捜査で警察の問題児となっていた。今そのギャングの事件を追うのは、別の警察署に所属する警部捕のフォン(ショーン)。ある夜、彼は路上封鎖による検問で標的のギャングたち(呉京、オンくん他)に遭遇し、大乱闘を繰り広げるが、フォンはギャングたちに容赦なく叩きのめされる。
 一方、警邏課に所属するワイ・キンホー(ジェイシー)はまじめな若き警官だが、彼の兄が元警官(実は潜入捜査官)でありながら、ギャング一味に加わっていたことで事件の容疑をかけられたため、彼の身を案じた上層部は本格捜査を前にワイを休職させようとする。最愛の兄の汚名を晴らしたいと願うホーは、チャンとフォンに協力を要請する。ギャングとの接触で3人は数々の危機にさらされるうちに、ホーの兄が既に殺されていたという悲しい事実が判明するが、同時に警察側にギャングへの内通者がいることがわかる…! 

 次から次に繰り広げられる、すさまじい爆発!
 ウーさんが「バイオレンスの詩人」ならベニーさんは「爆発オペラの指揮者」かよって勢いでドッカンドッカン爆発させる。とにかく爆発させすぎ。ああ、ジェネックスでコンベンションセンターをど派手に爆発させていた時が懐かしい。あれは今の路線につながるほんの序章みたいなもんだったのね(苦笑)。おそらくこの爆発過多な演出で好き嫌いがわかれるんじゃないかな。
 もう一つの見せ場はワイヤーも効果的に利用したニコたちと、本格派である呉京&オンくんのアクションシーン。トラムステーションから飛び降りた(だったっけ)勢いでトラムにぶち当たったり、ビルから転落して木に引っかかったり車にぶち当たっても怪我一つしないのはすごいが、それが香港クオリティってことで(苦笑)。

 ニコたちも頑張っていたけど、本格派はさすがに違うわけで、とにかく強いとしかいえない(そしてそれが誉め言葉になる)悪役二人の存在感は抜群だった。呉京って顔だちが結構甘いというか、基本的にファニーフェイスの人なのに、よくもあんな憎々しげな悪役ができるもんだよなぁ。オンくんは『ニューポリ』『スター・ランナー』そして『マッド探偵』とそれぞれ違うキャラクターを演じているので(デビュー作の『ブラックマスク2』は未見)、まだまだつかみきれないところがあるけど、今回は若いホーを圧倒しながらも、どこかで奇妙な感情(って腐女子的意味じゃないよ)を交える大人っぽい役柄だった。いい味出してるぞ。

 主役3人は、それぞれがやや意外性を出した役どころを演じていた印象。
 ニコはほとんどがヒゲ面。あれ、不精ヒゲじゃないの?とちょっと違和感を抱いたけど、見ていて不自然には思わなかった。若さとオレ様っぽさを前面に押し出してたジェネックスの頃や、父を慕うような少年っぽさを見せたニューポリの役とはまた違うんだが、それがあっていたかあっていないかに関わらず、いつの間にかこういう役が回ってくるようになったんだな、ニコよ…。他の皆さんがおっしゃっていることとかぶるけど、願わくばもーちょっと文芸ものにも出てほしい。アクションものへの出演が多いのは本人の意向なの?それとも事務所?あるいは生活のため?>それはないだろ。
 ショーンは丸刈りかよ!一瞬誰だかわからなかったぞ!妙な貫禄があるので一瞬若い頃のマ○ケン(若手の方じゃなくてサンバの人)かと思ったじゃないか!登場時はイケイケなオレさまだったのに、呉京たちと乱闘して銃弾飲まされて入院&それを排出したあたりからひそかにお笑いキャラ化してないか?今回の彼の役どころについて、文楽迷の皆さんのご意見を聞きたい…。
 そして今回初めて演技を見たジェイシーくん。面長の顔立ちには確かに若い頃のお父様の面影がちょっとあるが、それでもパパはパパ、息子は息子ね。 アクションももちろんあるけど、役柄の性格付けもひとひねりしていていい。彼のキャラクターが一番よかったので、あのラストは…(泣)。
 心優しく、失踪した兄を常に気遣い、兄のために走り、敵を殺すことではなく逮捕することで正義を貫こうとするホーは、実はこの映画の裏テーマに違いない「正義とは何か?」を体現したキャラクターじゃないか?とひそかに思っているのだがどうだろうか。
 そう、この物語は実は勧善懲悪ではなく、裏側が結構入り組んでいる。ギャングと通じ合う警察上層部が登場したり、クライマックスでの警察署ジャックでは、みんな誰が警官かギャングかがわからなくなる。また、復讐心に燃えているチャンは相手に殺意を抱くのだが、やはりギャングに兄を殺されているホーは復讐であっても相手を殺すことを否定する。それが警官として、また善人としての正義なのだ、と言っているように感じた。台詞に「正義(中国語でなんて言ってたっけ?)」という言葉がよく出てきたので、ちょっとそんなことを考えてみた。

 この映画、来年の劇場公開が決まっているとのこと。これは嬉しい。
成龍さんも出てこないし、物語も荒削りだけど、本気度も高いので是非一般の映画好きの皆さんにも観てもらいたい。全国拡大ロードショーじゃなくてもいいから、ちゃんと愛のあるプロモーションをしてほしい。『龍虎門』の時のようなファンをガッカリさせるプロモーション(&吹替版メインの劇場公開)はもういやだ。宣伝側がその映画の魅力を誇大表現なしに正しく伝えてくれたら、一般の人だっても芸人吹替&タレントのイメージキャラなんかにつられずに映画館に足を運んでくれるのだから。

英題:Invisible Target
監督&製作:ベニー・チャン
出演:ニコラス・ツェー ショーン・ユー ジェイシー・チェン ウー・ジン アンディ・オン マーク・チェン サム・リー

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