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ジャスミンの花開く(2004/中国)

 チャン・ツーイーはアジアンビューティーである。それに文句はない。
 しかーし、『夜宴』の感想でも書いたけど、そうであってもどーしても彼女に文句をつけたくなる要素はいっぱいある。
 例えば、イーモウが演出する“らぶらぶ邪念”満載の彼女の役どころ。『グリーン・デスティニー』『MUSA』そして『夜宴』で見られる、鼻っ柱が強くて自分の意思を押し通す、というよりはそのワガママさが元凶で周囲の人がどんどん死んでいくファム・ファタール以前のじゃじゃ馬娘役。仕事を選んでいるのかどうかが非常に気になるハリウッド映画での演技(『ラッシュアワー2』『SAYURI』など)。そして、カンヌやオスカーや公式行事で披露してくれるツッコミがいのあるやる気マンマンなドレス姿。毎度書いているけど、華人ならやっぱりチャイナドレスを着ようよ、謙さんのご夫人はオスカーのレッドカーペットで和服着ていたしさぁ、って思っちゃうんだけど、どーかなぁ。

 そんなふうにツーイーには多少「それってどーよ」と言いたくなる気分があるんだけど、だからと言って彼女が嫌いってわけではない。数多ある作品の中でも、時々いいと思う演技をしてくれることがあるからだ。最初にそれを思ったのが、金像で主演女優賞をゲットした『2046』の演技(あれ、『初恋のきた道』は?ってのはいいっこなし)。
そして、先日新宿で観た 『ジャスミンの花開く』は久々のツーイーの熱演に好印象をもってみていた次第。

1940年代の上海。写真館を営む母(陳沖)と二人暮しの少女茉(ツーイー)は映画が大好きで女優に憧れる少女。しかし、娘に店を継いでもらいたい母は彼女に映画を観に行くことを禁じる。そんな彼女はある日、映画会社の社長孟(姜文)にスカウトされ、芸能界に足を踏み入れる。孟社長の寵愛を受け、芸能界でたちまちスターとなる茉。しかし妊娠が発覚し、孟社長との子を身ごもったことで社長の態度が急変。堕胎を進めるが彼女は拒否する。その次の日、上海に日本軍が侵入し、社長は会社を解散して茉を置いて香港へ逃げる。身重で実家に帰った茉は、母が新しい恋人として知り合いの理髪師を家に連れこんでいたことに驚く。やがて茉は女児を出産し、彼女に莉と名づける。同居生活はしばらく続いたが、ある日茉は母の恋人に襲われ、それを目撃した母は黄浦江に身を投げて自殺する…。
 文革前夜。成長して大学生となった莉(ツーイー)は、同級生の傑(陸毅)に憧れる。共産党員である傑は学生たちに労働の重要さをアピールし、莉も彼に同意したことで二人は急激に接近する。写真館を継いだ母茉(陳沖)に傑を紹介した莉だが、傑は茉をブルジョワと言う。やがて莉は傑と結婚するが、裕福に暮らしてきた彼女は労働者の家庭に馴染めない。我慢しきれなくなった莉は実家に戻るが、彼女を追って傑がやって来る。二人は写真館で生活し始めるが、莉が子どもを産めないことがわかり、二人は養女をとることにする。傑は花と名づけた娘を溺愛するが、夫の愛が娘に移ってしまったと思い込んだ莉は、いつか二人が男女の関係になってしまうのではないかと疑うようになり、それが悲劇を呼ぶ…。
 やがて中国が改革開放に向かおうとする80年代前半、両親を失った花(ツーイー)は祖母の茉に育てられて成長する。祖母に内緒で恋人の杜(リウイエ)と結婚した彼女だが、杜は遠くの大学に進学して離れ離れになってしまう。4年後、大学を卒業して上海にやって来た杜は、就職に失敗して日本の大学院に進学することを花に告げる。彼の言葉を信じて待つ花だったが、杜が日本からよこしたエアメールには、別れの言葉が記されていた。そのときすでに、花の胎内には彼との子どもが宿っていた。一度は堕胎を決意したのだが、結局産むことを決意する。やがて祖母の茉もこの世を去り、一人ぼっちになった彼女は雨の夜の路上で産気づく…。

 監督のホウ・ヨンさんは、張藝謀や田壮壮監督作品でカメラマンを務めてきた人だそうで、画面構成は非常に美しい~。特に第1話でのオールド上海の雰囲気は最高でした。ツーイーと陳沖がまとうドレスも美しいし。やっぱりツーイーはチャイナドレスがよく似合うよ。
 しかし、そんな華やかさと裏腹に、茉の少女期は波乱万丈である。華やかなスポットライトを浴び、ハリウッドのスターのような社長に愛されたはいいが、妊娠した途端に捨てられ、せっかく身を挺して守った実の子を愛することができずにかつていた世界に心を残す。幸運の赤いあざを額に持って生まれた娘の莉には幸せになってほしいと願いをかけても、彼女も、そして養女としてやってきたその娘の花もとことん男運に恵まれない。さらに莉の身には最大の悲劇が起こるわけで…。なんかそれ、身も蓋もないのでは?
しかし、そんな「男運のない三代の女性」話なのに、辛気くさいとも気が滅入るようにも思えなかったのは、ツーイーも陳沖も好演していたし、彼女たちが男に去られても幸せを手にしようという生き方をしていたからか?
 この映画ではチャイナ服からメガネ女子までいろんなツーイーが楽しめるのでお好きな方にはたまらないだろうけど、その七変化ぶりというか、どーよって感じのイケイケっぽさもなく、イヤミにならなかったのでこっちも安心して観られた。でも彼女を軽く超えていたのはやっぱり陳沖。『胡同のひまわり』の極めてフツーなお母さんから一転、非常に印象的な二人の母親を演じていて、特に第2話以降で演じる茉の壮年&老年期の演技はお見事。第2話ではツーイーがそのまま母親になったようなアンニュイさを漂わせ(そのせいかチャイナドレス姿も色っぽい)、第3話では家族に起こった悲しみをすべて背負い込んだ上で血のつながらない孫を大切に育てる優しさを見せる。これまで『ラストエンペラー』にハリウッドのB級アクション、そして『ツイン・ピークス』など、非常に広い範囲で彼女の演技を観てきたけど、この役以上に印象に残る役がない(苦笑)。トニーの妻を演じる《色、戒》がかなり楽しみになりましたよ。
 対する男どもは姜文さん、『七剣』の陸毅くん、そしてリウイエくんといいメンツを集めているんだが、どいつもこいつも…(-_-;)。特にリウイエくん、かわいい顔してそーゆー役柄かよ。あわねぇー(爆)。対照的に姜文さんのうさんくささすれすれにダンディなハリウッドスター気取りの社長はよかったわ。

原題:茉莉花開(Jasmine Women)
監督&脚本:侯 咏 原作:蘇 童 製作総指揮:田壮壮
出演:チャン・ツーイー ジョアン・チェン チアン・ウェン ルー・イー リウ・イエ

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