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『山の郵便配達』彭 見明

 我愛的中国電影之一是『那山 那人 那狗(山の郵便配達)』。
 最近我知道這本書文庫出版了。…変な中国語で申し訳ない。

 文庫の帯に曰く、「(前略)全国に感動が広がった中国映画の原作がついに文庫化。高校現代文教科書に採用された名作
 …知らなかった。高校教科書に採用されていたなんて!
 どこの教科書?と疑問に思い、「山の郵便配達 高校 現代文」でググッたら、筑摩書房の「精選 現代文」に収録されていたのを発見。ちなみに検索結果では、実際にこの小説を教材に使った全国の高校数校の指導シラバスファイルも引っかかって、うわーシラバス公開してるのねと驚く。いやー、高校現代文で扱われる中国文学なんて魯迅の『藤野先生』くらいだろーなんて思っていたけど、今やよしもとばななや村上春樹が掲載される時代だから進んでいるのね(当たり前だろう)。

 前置きはこのへんにしておいて、短編集であるこの小説の感想を各作品ごとにちょこちょこと。
 『山の郵便配達』。文章を読むと頭に浮かぶのは当然、郵便配達のお父さんと息子のリウイエくんの姿(笑)。映画に出てきた美人の女の子はオリジナルキャラクターと聞いていたんだけど、小説にも「赤い服の少女」というのが出てきている。…あ、でも、その少女はお父さんのお気に入りで、息子の嫁になってもらいたいと思っているというから違うか。映画の女の子は息子が自然とひかれる存在だったし。オリジナルといえば犬の「次男坊」も、原作では名無しの犬。しかし、犬視点で物語が語られるくだりもあるのは面白い。これは映像じゃわかりにくいものね。
 山の男の仕事を描いたのが『郵便配達』なら、次の『沢国』は湖で漁をする女たちを描いた物語。情景描写や言葉が美しい。日本語でもそう感じるんだから、原文はもっときれいなんだろうな。
 『南を避ける』は南の広東に憧れている愛娘をなんとかして行かせまいとあれこれかくさくする老父・老田の話。広州に行って働いたこの村の若い女は過労やなんやらで気がふれて帰ってきたり失踪して怪死をとげたりする、と説明されるくだりはかなりブラックだけど、工場の過重労働と人権無視の話は聞いたことがあるので、結構背筋が寒くなってしまう。また、老田が知り合いの任子牛の会社に行き、街のキャバクラ(!)で接待を受けるくだりには、著者の日本人イメージを中国人に反映した云々と述べられた解説の解釈よりも、やっぱり拝金主義のオッサンってこーゆーことやるんだな、って気分であきれたのであった。
 『過ぎし日は語らず』は豊かに育った主人公が、老いた師匠との日々を回顧する物語。舞台こそ中華人民共和国初期だけど、師弟関係は古代のそれとあまり変わらない印象。
 『愛情』は30歳独身の鉄道員と、感情が高ぶると心臓が止まって死んでしまうといわれる不治の病を持つ同年齢の女性の、「そんなバカな!」といいたくなる展開の恋物語。でも、ラストへのもっていき方はよかった。恋愛もの嫌いのアタシでさえ「ううっ」ときちゃったもんで。
 最後の『振り返ってみれば』は元カノの変貌に、もしかして娼婦でもやって稼いで行くのか?と怪訝に思う男が痛い目に合わされる話。これまた、現代中国への皮肉が込められた話。

 これらの物語は全て、作者の故郷である湖南省を舞台にしているらしく、表題作以外は、90年代に書かれた作品だとか。普通中国というと、どうしても北京や上海、またはチベットやウイグルなどの少数民族自治区を思い浮かべてしまうけど、この短編集で書かれている、古き生活と近代化が混在した姿が、案外今の中国を表わしているんじゃないかな、などと読み終わって考えてみた。

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