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インビジブル・ウェーブ(2006/タイ)

 香港映画で登場する外国で一番目につくのは日本かもしれないけど、それと同じくらい目につくのは実はタイだったりする。そういえば韓国からは俳優が出演しても、舞台としては意外とクローズアップされないよね(『ソウル攻略』は別)。
 例えば無間道三部作にて、命を狙われたサムボスは香港からタイに逃げ、そこで培ったネットワークを生かしてタイのヤクザと取引をしていたし、タイと香港の両映画界で活躍するパン兄弟の作品は、それぞれ香港とタイが舞台になる(『The EYE』や『ツイン・ショット(ひとりにして)』などを見ればよくわかる)。それはなぜかなぁと考えてみたのだが、この映画を観た翌日の學友演唱会にて、彼が「ワタシは船乗りの家で育ちました」と語った言葉がヒントになった。ああ、そうか。香港もタイも大部分が海に面していて、船乗りたちが多く寄港していたんだっけ。ということはお互いに“海の民”としての結びつきが昔からあって、その絆が今映画界で息づいているのかな、なんてずいぶん飛躍した結論に至った。…何へんなこと言ってるんだオマエは、とどうか遠慮なくつっこんでくださいませ。(そういえば思い出したけど、最近の香港映画はポストプロダクションをタイで行った作品も多いよね)

 翻ってタイを見れば、パン兄弟作品にトニー・ジャー作品、コメディの『アタック・ナンバーハーフ』からアート系の『トロピカル・マラディ』まで、実にバラエティ豊かな作品が紹介されているけど、タイといえばこれ!という決定的な作品がどうも見つからないような気がする。最近はアジア映画=みんな韓国になってしまって、以前に比べると香港映画はおろか、タイやインドの映画も簡単に一般上映されなくなってしまっているのが原因かも。東京国際のアジアの風で好評を博しても、やっぱり一般上映に降りて来てくれて話題を作ってくれなければ、見られないもんなぁ。
 その東京国際で製作作品が上映されている、大プロデューサーアンディ先生率いるフォーカスが製作(スタッフには製作総指揮で盟友ダニエル・ユーさんが参加)し、昨年のベルリン映画祭に出品されたタイ映画『インビジブル・ウェーブ』は、ペンエーグ・ラッタナルアーン監督が前作の『地球で最後のふたり』に続いて浅野忠信くんを主演に、ドイル兄さんをカメラに迎えて撮った作品。しかし、全篇タイで撮られた前作よりスケール感はアップし、舞台はホンコン・マカオ・プーケットの3ヵ所となり、キャストも韓国からカン・ヘジョン、香港のエリック兄貴が登場して、アジアンミックス度はぐっと高くなった。最初はこの作品の感想をここで書くつもりじゃなかったけど、映画における香港とタイの関係を考えているうちにこっちで書くほうがいいなと思ったので、取り上げた次第。

 ハマモトキョージ(浅野くん)はマカオに住み、香港のヴィクトリアピークのレストランに務める日本人シェフ。キョージのボスはタイ人シェフだが、彼はシェフの日本人妻セイコと不倫関係にあった。それを知ったボスはキョージに自分の妻を殺させ、しばらくタイに逃げることを命ずる。中環の小さな廟の僧侶(エリック兄貴)から金と必要なものを受け取り、キョージは香港発プーケット行きのフェリーに乗り込む。二等客室の不便さに悪戦苦闘しつつ船の旅を過ごすキョージは、ニドという赤ん坊を連れた女性ノイ(ヘジョン)と出会い、興味を覚える。プーケットに着いた二人は再会を約束する。
 安ホテルにチェックインしたキョージは強盗に襲われて有り金を全部奪われる。ボスに連絡したところ、世話人のリザード(光石研)に金を手配してもらえることになった。リザードと面会したホテルで彼はノイに再会したが、そこで彼女がボスの新しい恋人だったという事実を知る。自分がボスに始末されようとしていることにようやく気がついたキョージに、リザードの銃口が向けられる…。

 実際、ストーリーはあってなきの如しかな。つっこみたい場面もいっぱいあった(例えばマカオから香港まで船で通っているって設定はどーよとか)。前作でもタイに逃げて日本交流センターの図書室で働く主人公の正体がどーやら若いヤクザだったっていう設定にツッコミ入れたくなったけど、おそらく細かい設定は気にせずに作っているんだろうな。ラッタナルさん(ってすげー略称だな)、ジャームッシュや王家衛がお好きなようで、あーこの人、ロードムービーとフィルムノワールも大好きなんだな、ってのが観ていてよくわかった。その自分が大好きなものをステキなスタッフ&キャストで思いっきり撮るってことに文句はないけど、ただ雰囲気に流されすぎちゃってないかな?ってのが気になるわけで…。これは王家衛作品だと『天使の涙』だったり、ドイル兄さん&浅野くんの『孔雀』でもそういう印象があったので。そういう映画が嫌いってわけじゃないけど、ちょっと時代的には遅すぎるのかな?

 しかしドイル兄さん、浅野くんにラブラブだね。香港女子は正直だから、彼や獅童くんのようなハンサムとは言いがたい個性派よりも、某木○さんや某竹○内くんのようなハンサム系が好まれるらしいけど(今ならジョーやぶっきーも人気なの?)、『2046』に浅野くんを出しても文句はなかったよアタシは。むしろ○村さんより適役では…ってかなり暴言めいた個人的希望を今さら書くなよ自分。
 ちなみにワタシは浅野くんはそんなに嫌いじゃありませーん。この映画でもわかるように、ここ数年の定番だった落ち武者のような長髪も悪くないって思ったし。今はオカッパなんだよね(苦笑)。さすがに30過ぎたせいかどうかしらんけど、二の腕が妙にたくましくなったよね。…それは時代劇等の出演が続いていたからか。あと、日本語のセリフより英語のセリフのほうがはっきりしていて聞きやすかった。これは意外。
 キョージは日本人にはもちろん日本語で話すけど、香港やプーケットではガイジンなので、それ以外には英語で話す。ボスやノイは彼に英語で話しかけるけど、それでも広東語で返答するツワモノがエリック兄貴。いやーさすが映画の多言語化が進む香港映画人(爆)。少ない出番ながら存在感をしっかりアピールしてましたよ。しかしそれ以外に強烈だったのは光石研さんなんだけど、あれは彼にアテられた作られたキャラなのか、それとも演じる際にどんどん膨らませていったのか?
 ヘジョン嬢は大韓女優の中でもわりと好みなんだが、華がないなーと感じたのは扱いがあまりにも…だったせいか?キョージに接近しようとしてもなかなか接近せず、どっか中途半端な感じも。それならキョージの家のご近所さん、マリアを演じたマリア・コルデロ(名前は知ってたけど初めて演技を観た…)の包容力ある大人の女性の方がわずかな出番の中にも存在感があってよかったんだけどなぁ。

 最後に感心したのは、タイ映画なのに悪役(?)をタイ人に設定したこと。これは偉いというか思い切ったというか。
 でもボスも前の妻を殺して新しい恋人と幸せになろうとしている極悪人のわりには、なんか妙にキョージに対して優しさや思いやりがあったりするので、単純な悪役とは言い切れないか。だから、キョージは復讐しきれなかったんだな。

監督:ペンエーグ・ラッタナルアーン 製作総指揮:ダニエル・ユー 脚本:プラーブダー・ユン 撮影:クリストファー・ドイル 衣裳:タケオ・キクチ
出演:浅野忠信 カン・ヘジョン エリック・ツァン マリア・コルデロ 光石 研

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