雲南の少女 ルオマの初恋(2002/中国)

恵比寿ガーデンプレイスにある東京都写真美術館は、上京したらよく足を運ぶ美術館だ。最近は今年始めに、細江英公氏の写真展を観に行った。ここは写真のみならず、プロモーションビデオの展覧会を行ったり、映像ホールで劇映画も上映されている。中華圏的にはあのF4映画祭が行われた場所として有名か。
このホールで観たのが、雲南の少数民族ハニ族の少女が主人公の映画『ルオマの初恋』。『モンゴリアン・ピンポン』、『ココシリ』と、少数民族もの映画に弱いワタシのツボを見事についている映画だなぁと思って美術館へ行き、まず目に入ったのが日本の写真家、橋口譲二さんが手がけたというモノクロのポートレイトポスター。それを見てまず思った。
「…おお、ヤムヤムの娘さんか?」
すいません、本当にすみませんm(_ _)m。でもヤムヤムといえばモデル出身だし、濃ゆいけど美男だからそれでも問題ないんじゃ…って大いに問題あるよその発言が。
雲南省元陽県、ハニ族の村は標高約2000mにある。世界遺産に申請をしている雄大な棚田を擁する村で暮らすハニ族の少女ルオマ(李敏)は17歳。毎朝早起きして、街の市場までトウモロコシを売りに行っている。この地を訪れる外国人観光客は美少女のルオマと一緒に写真を撮りたがるが、彼女は写真を撮られるよりも焼トウモロコシを買ってもらいたい。そんな彼女を見つめていたのは、市場を仕切るクオルオ親分の家に間借りして写真館を開く昆明の青年アミン(楊志剛)。カメラマンを志す野心がありながらも貧乏で親分に家賃を催促されている彼は、トウモロコシの代金の代わりとしてルオマに携帯カセットプレイヤーを渡す。イヤホンから流れる音楽に心を奪われるルオマ。
ある日、アミンはルオマに「観光客と写真を撮ってお金を稼ごう」と提案する。二人は毎日棚田がきれいに見える場所に行っては、そこを訪れる欧米人や日本人の観光客相手に写真を撮る。トウモロコシを売るよりもたくさんの収入が得られたが、ルオマのおばあちゃんは「そんな商売しちゃいけないよ」と警告する。しかしルオマは毎日アミンと一緒にいられるのが嬉しく、その気持ちはやがて恋となる。 しかし、アミンには昆明にリリという恋人がいた。彼はリリが家賃を立て替えてくれるのを待ちわびていたが、街にやってきたリリは彼のふがいなさに腹を立て、昆明に戻そうとする。しかし、アミンはルオマと自分の夢を選び、リリは彼を見捨てる。
アミンの資金はいよいよ底をつき、クオルオ親分も彼を追い出しにかかる。ついにアミンは夢を諦めて昆明に帰ることにし、ルオマに昆明に来るように言うのだが…。
この作品のチラシに曰く、『初恋のきた道』以来の初恋映画の傑作だそうだ。そーゆージャンルがあるのか、中国映画よ(笑)。ただ、同じ初恋を描いていても、これとあれとは全然違うし、ワタシゃこっちの方が好きだわ(爆)。舞台が同じ地方でも、かたや1950年代の山西省、こなた現代の雲南省。かたや母親の遠い思い出でこなた若い娘の比較的新しい恋の記憶。恋の相手を比べると、アミンの方が現代的なややイケメンだから観てる分には嬉しい。こーゆー時にイーモウのらぶらぶ邪念って…なんていうときりがないか。
まー、切り口としては田舎の少数民族の純朴さと都会の漢民族のすれっからしさなど、お約束的な二項対立があるんだけど、それはこういう映画には避けられないことであるし、何よりもこの映画にでてくる現代文明(こらこら)が極端じゃないのがいい。ルオマはアミンのプレイヤーから流れてくるエンヤの『Caribbean Blue』の美しい音色に心をときめかせ(棚田をバックにこの曲が流れるのはなんかいかにもだよねーと思いながらも見とれてしまったわ)、昆明で暮らしていた友人のルオシアから聞いたことから、エレベーターに憧れて一度乗ってみたいと願うくらいなのだから。パソコンや携帯電話がなくても、実際はそれくらいの文明で充分なのである。
美しい細工がちりばめられた帽子をかぶり、シックだけど凝った作りの民族衣装を着て棚田のあぜ道を歩く背の高いルオマ。その仕草に、一挙一動についつい目が行ってしまう。撮影当時ホントに17歳の高校生だったという李敏小姐のルオマは、動くとさらに魅力的。ヤムヤム似なんて言ってゴメンよ、とすぐに反省しました(^_^;)。写真撮影の時には刺繍で飾られた衣裳を着るだけど、そこでかぶる帽子もかわいいしよく似合っていてよい(帽子星人なのでつい目がいく)。しかし帽子を取ると髪はセミロング、そして途端にフツーになっちゃうのはなぜ(こらこら)?
そんなルオマの恋のお相手、アミンもまた現代的な青年。『初恋の…』や『スカイ・オブ・ラブ』などの大陸恋愛故事電影を観るたび、ツーイーやジジのようなヒロインの恋のお相手が、どーも垢抜けずハンサムといえない野郎ばっかりなのはなぜなんだ?かといってリウイエほどの美青年じゃない、適度にイケメンな若手俳優はおらんのか?と思うところがあったのだけど、アミンを演じる楊志剛君(当時は電影学院の学生で、本作唯一の演技経験者だったそうだ)は張震の顔を崩したような感じで長髪もそこそこ似合う。野心はあってもダメダメなので挫折にあえいでいる青春くんな感じをよく体現していたと思う。
そして、さすが写真美術館で上映されているだけあって、この映画のキーポイントとなるのが写真。ルオマは大好きなアミンに撮られることで、最高の笑顔を見せる。棚田をバックに笑う写真がとても気に入った彼女はそれを宝物にするが、最終的にはその写真が挫折したアミンを救い、二人の絆を結ぶ。ルオマにとっての初恋は○○○○○○○が(ネタバレにつき伏字)、彼の撮った写真は思い出として残り、永遠に美しさを留めるのだろう。
(蛇足)実は公式サイトでハニ族の解説を書いていたのが、かつてのワタシのゼミ担当教授だったので驚きました。うう、アタシもマジメに研究に没頭すればよかった…と役立たずな後悔をしてみたりする。K先生、お元気そうでよかったわー。
原題:[女若]瑪的十七歳(When Ruoma was seventeen)
監督:章家瑞(チャン・チアルイ) 脚本:孟家宋(モン・チアソン) 撮影:馬東龍(マー・トンロン) 音楽:黄枕宇(ホアン・チェンユー)
出演:李 敏(リー・ミン) 楊志剛(ヤン・チーカン) 祝琳媛(シュー・リンユエン) 李翠(リー・ツイ)
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コメント
こんばんは。
大道芸観覧レポートという写真ブログをつくっています。
映画「ルオマの初恋」もとりあげました。
いい映画でしたね。
よかったら、寄ってみてください。
欠端先生の本、いつか読もうと思っています。
http://blogs.yahoo.co.jp/kemukemu23611
投稿: kemukemu | 2007.07.16 19:37
kemukemuさま、初めまして。
blogも拝見いたしました。これは上京時に観た作品ですが、まだまだ上映されているようですね。もし地元の上映が決まったらもう一度観たいと思っています。
欠端先生の本で一番入手しやすいのは『対話 文明の風土を問う』と『家族と死者祭祀』でしょうか。ワタシも機会があったら見つけたいと思います。
投稿: もとはし | 2007.07.16 22:50
本の紹介、ありがとうございました。探してみます。
「ルオマの初恋」のその(2)(3)の記事を追加しました。
もし、よろしかったらお寄りください。
http://blogs.yahoo.co.jp/kemukemu23611
投稿: kemukemu | 2007.07.21 21:29
kemukemuさま、ご紹介ありがとうございます。
じっくり読ませていただきました。
民俗学や日本の稲作文化との共通点などの視点から見ると、また味わい深いところがありますよね。
投稿: もとはし | 2007.07.23 23:41