« 気持ちとしてはややビミョー?今年のカンヌのラインナップ。 | トップページ | 楽日(2003/台湾) »

西瓜(2005/台湾)

えー、今から「蔡明亮に捧げる詩」を詠みまーす。

 ああ、蔡明亮よ
 その名を聞くと身体の奥底がざわめくのは如何なる事か
 決して語りたくないのに、ついついそれを語ってしまう
 汚水と体液にまみれる思いでそれを観れば
 不快感も限度を超え やがては聖なるものに昇華される
 ああ、げに恐るべし蔡明亮

終わりまーす。
 
なぜ唐突に詩(なのか?)を詠んだかというと、つまり、ワタシにとっての蔡明亮ってこんな感じなのだ。…ってどんな感じだよ。
と自分にツッコミながら、桜前線とともにやってきた春の蔡明亮祭りとして、『西瓜(東京国際では「浮気雲」の題名で上映)』と『楽日(同じく「さらば、龍門客賤」の題名で上映)』を観てきたのだった。
なお、今回の感想はR18指定です。といっても高校生以下はあまり読まないか。

 これは公表されているかどうかわからないし、なんとも断定しようもないのだけど、実はワタシ、ミンリャン(とシャオカンこと李康生)はゲイだとずっと思っていた。それは『愛情萬歳』や『河』に男同士のキスシーンやゲイサウナの場面(しかも近親相姦までやらかす!)が頻繁に登場することや、ミンリャン作品全てに出演しているシャオカンがほとんどの作品できれいに整った全裸を披露している(それもバック全体だ)から。でも彼は「別にゲイの映画じゃないんだけど」と言う。そういう時点で…じゃないかとツッコミたくなるが、実際どうなんだか?
 そんな思いもあって、延々と固定カメラで撮られるオープニングの地下道シーンの後に、、いきなり看護婦コスプレで開脚全開、さらに下着をつけていない(だから○○○○がちらちら見えるー、うー気になるー)そこには淫らなくらい赤く熟れた西瓜がおしつけられた日本人AV女優(夜桜すもも嬢。ええ、オレ女子なのでどーゆー方か知りません)と、素肌に白衣を着て○○○○を愛撫するかのように西瓜を責めまくり、西瓜汁まみれになって彼女と合体する男優(シャオカン)の嬌態を観て、心の中で「あれ、ミンリャンってゲイじゃなかったっけ?なんでノーマル(じゃないじゃん)なセックス撮ってるのよ」とか、延々と映し出されるセックスシーンを観て、これはもろにやっているのか以前に「房中術とか使ってないか?」などと冷静?にツッコミ入れた次第。ってこーゆーシーン観てそう考える自分ってアホ過ぎ?まーオレ女子だしー(と逃げる)。
 それはさておき、自分のAVに対するツッコミはこちら(これ以上AVAV書いていると、ますます検索ワードで「AV」がトップに来るよー、えーん)を見てもらうことにして、興奮しておっ立てるブツもないオレは、女優のあげるあんあんあんという甘い声を聞いたり、シャオカンと女優が繋がっている場所をしつこく撮り続けるカメラマンなどの姿を観て感じたのは、AVにおける人間の肉体って、ホントに肉なんだなーってこと。そっか、AV好きな世のオトコどもは、肉に興奮しているってわけか、ふーん…。
ってなんだそりゃ。でもやっぱ、やる時にはコンドー…ってアンタはもう。いい加減にしろオレ。
しかし夜桜嬢の肉体、すごい迫力だったなぁ…。胸はともかく、全体的に大振りなつくりで。母性本能を感じさせる肉体ってゆーか(演技はともかく…ってこれは暴言じゃないよ)。

 日本人女優や、自分の母親と同じくらいの年頃の女優(『河』でシャオカンママだったルー・イーチン)とせっせと交わり、自分の身体をまさに心のない肉として扱っているようなシャオカンと、彼の昔馴染みである故宮博物館のガイド(シャンチー)。二人を再会させたのはやはり西瓜。
 そして、極度の水不足に襲われた近未来台湾に、まるで水を流すような勢いでこの二人の恋物語が始まる。
 シャオカンの仕事場は、シャンチーの住む林森北路のマンションだが、もちろん彼は 自分の仕事がなんだが彼女に言おうとしない。最初は彼女の差し出した西瓜汁に、仕事を思い出して飲むことが出来なかったシャオカンも、冬粉やカニを料理しては食べ、彼女の足に挟んだタバコをすって寛ぐまでの関係に至る。お互いに好意は持っているし、愛し合っている。だけど一つになれない。その思いをシャオカンは寡黙&無表情で仕事に打ち込むことで押し込み、シャンチーは川から拾ってきたホールの西瓜にキスをし、硬い表皮に舌を這わせ、服の下に入れて妊婦のふりをし、胎児を産み出すふりをして遊ぶ。
 その西瓜も、シャオカンの仕事相手がエレベーターの中で気絶していた(死んでいたんじゃないのか?)AV女優を運び込んだことで不意に割れてしまい、そこに二人が思わぬ形で出会うことになることを予感させる。そしてラスト、ついに二人は求めていた通りに結ばれるのだが…はたしてアレで愛は成就したのか?と問題の場面に(ホントにやったかどうかという興味本位の疑問以前に)しばし頭を抱えた。
 …まーでも、ミンリャン自身はアレでよしとしたんだろうなぁ。一部にはきっと不快感があったに違いない肉欲的な淫らさも、本当に求め合った二人が真に合体し、お互いを溶かし込まんとして一つになろうとすることで神聖なものになるってことで、もっと簡単に言えば「きれいはきたない、きたないはきれい」を地でいったということか…ってだんだんヤケクソで書いていないか自分?

 リアルな現実に押し込まれた登場人物の感情は、彼らが幻想の中で着飾り、往年の流行歌を歌って踊るミュージカルシーンに託される。
…実はさー、ミンリャン初のミュージカル映画『Hole』を観ていない(さらに『ふたつの時、ふたりの時間』も未見。両方とも当地で上映されていないのだ)ので、仕事を終え、屋上の貯水槽で身体を洗う全裸のシャオカンがいきなり半魚人(というより人魚か)に変身して歌う場面には面食らったのよ。でも、過酷な現実と閉塞した状況に追い込まれてますます無口になる人々がこの場面で絢爛豪華に歌いまくるのは、やはりこっちも閉塞した気分で見つめている観客にとっても清涼剤となる。それが救いだったのね。皆さんの衣装も突拍子もないけど(イーチンさんの、露にしたたるんだお腹もものともしないセクシーな蜘蛛女姿や、アレが機能せずに全身アレになってしまったシャオカンを鼓舞するチアリーダーことヤン・クイメイの、マドンナもどきなビスチェ姿など)、騒がしく、色っぽく、はっちゃけて踊りまくる様は結構楽しい。ええ、現実にはなかなか歌なんて歌えないもんねぇ。

 とまれ、こんなふうにあれこれ書いてきたけど、なんのかのいいつつ「思い出すだけでイヤになるけど、とにかく語らずにはいられない」ミンリャンの魔法に、今回もまんまとハマってしまったってわけか、自分。
現在東京で公開中の最新作『黒い瞳のオペラ』でも、こっちに来たらあれこれ文句言いつつもやっぱり観てしまうんだろうなぁ、ははははは。

原題:天邊一朶雲
監督&脚本:ツァイ・ミンリャン
出演:チェン・シャンチー リー・カンション 夜桜すもも ルー・イーチン ヤン・クイメイ

|

« 気持ちとしてはややビミョー?今年のカンヌのラインナップ。 | トップページ | 楽日(2003/台湾) »

台湾映画」カテゴリの記事

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/14197/14833951

この記事へのトラックバック一覧です: 西瓜(2005/台湾):

« 気持ちとしてはややビミョー?今年のカンヌのラインナップ。 | トップページ | 楽日(2003/台湾) »