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《恋愛起義》(2001/香港)

最近劇場でよく観るのが、複数の監督が同じテーマで短編を撮るオムニバス映画。
先週は夏目漱石の短編小説をそうそうたるメンツがいじりまくった『ユメ十夜』を観たし、来月は世界中の映画人(含むドイル兄さん)がパリを舞台にして撮った短編を集めた『パリ、ジュテーム』を観る予定。その他、ウーさんが久々に中華圏でメガホンを取った短編が含まれるオムニバス映画も公開待機中だし、来月のカンヌでは、60回開催を記念して、王家衛やイーモウ、北野武氏などが劇場を舞台にして作ったオムニバス短編を製作してお披露目されるという。これ、全世界的な傾向なのね。

もちろん、香港でもオムニバス短編は作られている。今回感想を書く《恋愛起義》は6年前に作られた、恋愛をテーマにした3本の短編で構成されたオムニバス映画。(ちなみに製作はあの英皇!)この映画にはもうひとつ共通点があって、監督がみんな素人かつ異業種の人間であるということ。スチールカメラマンのウィン・シャが第1話の『非走不可』を、ニコとステが共同で第2話の『愛得鎗狂』を、そしてラジオDJの芝See茹Biが第3話の『不得了』をそれぞれ処女作として撮りあげているのである。では、各話ごとに紹介&ツッコミを。

『非走不可(kidnap)
父親と靴屋を営むジョーは、定職につかないことや身なりのことで父親からどやされ、いつも不機嫌だ。ジョーは毎晩店の前を通ってコンビニに寄る名前も知らない少女が妙に気になっていて、ある日、衝動的に彼女を拉致監禁してしまう。少女はジョーに反抗し、出会ったばかりのボーイフレンドのジョセフに助けを求めるが、彼はいつまでたってもやって来ない。やがて、少女とジョーは感情を通わせるようになり、距離を少しずつ近づけていくのであった…。

ここでネタバレすると、ジョーは男モノの服をまとった引きこもり気味なすっぴん顔の少女である。だからつまり彼ではなく“彼女”なのであるが、そんな彼女が恋に落ちるのが同性の少女だ。つまり同性愛なのね。香港映画にはレズビアンカップルがよく登場するけど、だいたいがボーイッシュな少女とフェミニン美女という組み合わせ。最近日本のライトノベル界隈でウケてる百合ものとは明らかに違うのね。二人の間には非常に緊迫した空気が流れている。そりゃ状況が異常だからね。監禁された後にその相手と恋に落ちる“ストックホルムシンドローム”状態だし。彼女にひかれるあまりにジョセフの存在を確かめたくなったジョーは古着のデニムを脱いでドレスをまとい、ルージュをひいて本来の“女”になり、クラブに乗り込むまでに至るのだ。…でも彼女の心はやっぱり自分の手中にある“名無しの少女”にあるというのがオチであり、それを盛り上げるのがニコの代表曲『非走不可』ってわけ。…といってもストーリーはあってほとんどなしって感じだから、『非走不可』のPVっぽい印象かなってーことも思ったりして。
ウィン・シャの写真は好きだけど、この映画ではまさに彼の写真が動いているって感じ。演出的にはやっぱり王家衛っぽい?と思ったら、クレジットの一番最後の「鳴謝」トップに「王家衛先生」の字があったよ(笑)。

『愛得鎗狂(my beloved)
ピザ屋で働くロビンは、無愛想で社会不適応な性格である。彼は銃をこよなく愛し、モデルガンのベレッタを大事にしていたが、ある日その最愛のベレッタが壊れてしまう。ロビンはベレッタの亡骸を墓地に葬るが、まもなく街で見かけた美しいライフルに心を奪われる。バイト先から給料を前借してライフルを手に入れたロビンだが、そのライフルがだんだん女性に見えるようになってくる。彼女に誘惑されたロビンは、ライフルを街に持ち出すようになり…。

恋愛といっても、第1話に続いてまたもちょっと尋常じゃない恋愛物語。とんがったサウンドに乗って描かれるロビンの銃恋愛妄想の暴走はオタと一言で済まされるけど、ロビンの辿る顛末を思うとちょっとかわいそうな気も多少するかな。しかし、こんなロビンに銃の組み立てにセックス以上の興奮を覚えると呟いた、高村薫の小説『李歐』の主人公一彰を思い出したのはいうまでもない。
かつてステはマーティン・スコセッシを尊敬しているといっていたこともあって、演出はスコっぽい感じがある。でも、恋愛をテーマに与えられても、まっとうな恋愛ものにしないところが、このニコステコンビのこだわりというか意地なのかというか。それはともかく、映画自体もとっても男子な作品だよなーと感じた一編。

『不得了(oh,g!)
シャーリーン(阿Sa)はICQチャットで知り合ったローレンス(ローレンス)と会ってみた。二人はたちまち恋に落ち、一夜を共にした。アトムやガンダムが好きなローレンスと感情豊かなシャーリーンはデートを重ねて愛を深めていく。

今時(といっても6年前か)の香港人の恋模様も、日本人若者の恋愛とあんまり変わらない。3編のうちでは一番馴染みやすい(?)恋愛だけど、ただラブラブであるってーことを30分で描いたって感じかな。それが悪いってわけじゃないけど。
阿Saもローレンスもこれがデビューだったのかな?二人とも若いー(笑)。ローレンスは佐藤隆太君みたいなちりちりヘアで登場しているけど、結構似合っているし。

この映画を経てステは長編監督デビューを果たしたわけだから、ステ監督誕生前夜はもちろん、阿Saやローレンスのデビュー当時を見られた意味では得かな。
ところで第3話を監督した芝See茹Bi、ちょっと前に自殺騒ぎを起こしたことは聞いているけど、日本じゃほとんど知られていない人だからその顛末を知らないんだけど…どーなったんだろうか?

英題:Heroes in love
製作:ゴードン・チャン&ジャン・ラム 監督:ウィン・シャ(非走不可) ニコラス・ツェー&スティーブン・フォン(愛得鎗狂) 芝See茹Bi(不得了) 撮影:オー・シンプイ 編集:ウィリアム・チャン
出演:唐詠詩 鄭躬菁(非走不可) 胡 波(愛得鎗狂) シャーリーン・チョイ ローレンス・チョウ(不得了)

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