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香港の美肌監督は、今年もまた東京にしゃべりに来た。

香港の美肌監督は、今年もまた東京にしゃべりに来た。

右上がホーチョンのサイン。下がイザベラヴァージョンのポスター(だと思う)

予告通り、愛とツッコミのティーチインレポートイザベラざんす。

先にも書いたとおり、パン・ホーチョン作品は一昨年特集上映が組まれたこともあって、3年連続で来日しているわけだけど、一昨年は『ビヨンド・アワ・ケン』以外の彼の作品(『夏休みの宿題』 『ユー・シュート、アイ・シュート』 『大丈夫』)を観ていたのにもかかわらず、ティーチインに参加することがなかったんですわ。確かあの時は2回目の『大丈夫』上映時にチャッピーと共に、そして『ビヨンド』で陶紅&ジルと一緒に登場したんだっけ?
昨年の『AV』ティーチインでやっと生ホーチョンに遭遇。最前列で見ていたMさんが「ホーチョン、肌美人!毛穴ないのよー!うらやましい!」と感激していたので、上方の席にいたワタシは「いつかじっくり彼の美肌を見てみたいもんだぜ」と思ったのだった(先日1年ぶりにMさんに再会し、そのことを話したら「…それって誰だっけ?ステじゃないよね?」と言われてちょいとコケました)。

そんな思い出話はこのへんにしておいて、10月28日分のティーチインを自己流で採録。

Q:映画を撮る上で心がけていることは?
ホ:一番大事なのはストーリーだ。これぞ映画の魂だからね。

お、これは脚本家出身らしい発言ですね。彼は監督デビュー前に幾つか小説も書いていて、これまた前にも書いたけど、『フルタイム・キラー』の原作も手がけていたというし。 

Q:なぜ中国返還前のマカオを舞台にしたのか?
ホ:マカオは中国が最初に欧米列強に植民地化され、一番最後に中国に返還された都市なんだ。この街の400年の歴史と、生まれてから長い間父親を知らずに育ってきた少女がやっと父にめぐり合うという人生を重ね合わせたかったからだ。

これは気がつかなかった。マカオは香港よりヨーロピアンな都市だから、オリエンタル・エキゾティズムを求めたのかな、なんて思ったのだけど…。マカオを舞台にした映画といって思い浮かぶのは、『ロンゲストナイト』とか『Bad Boys』とかだな。でも、あれらの映画じゃ街自体の印象が薄かった。

Q(先の質問と同じ方):劇中にふんだんにファドが盛り込まれていたなかで、ラストにあのファドの曲を選んだのはなぜ?
ホ:マカオはポルトガル領だったから、ポルトガルの伝統音楽であるファドをどうしても使いたかったんだ。ラストに流した曲は、音楽のピーター・カムと一緒にファドの音源を聴きまくってこれだというものを選んだんだ。…ま、実はあのファドを歌っている女性シンガーと個人的に仲良くなりたかったってのもあるんだけどさ。
司会:で、歌手の方とは仲良くなれたんですか?
ホ:もちろん、仲良くなれたよ。

なんか、こーゆー下心見え見えの考えは『AV』の頃と変わってないんすけど(爆)。選曲に関してはわりとストレート、でも彼には王家衛ばりのセンスがあるっていうことを実感。もちろん、劇中でチャッピーとイザベラが口ずさむ梅姐のヒット曲も、かつて『大丈夫』の挿入歌で使われた『書剣恩仇録(だっけ?)』も…(笑)

Q:出てくる料理がみんなおいしそうでしたね。ところで、監督の演出方法は?
ホ:演出法というよりも、いい俳優を選べばそこで演出が決まってくるんだ。まず、映画に出てもらいたい役者をセレクトしてから、彼らが過去に出ていた作品をチェックして、それがよかったら起用するんだ。(続く)

ここでいったん中断してコメントを。
ということは、キャスト優先主義なんだ。ちょっと意外。
これまでホーチョン作品に登場したなかでいつも出ているといえば。チム・ソイマンさん(あれ?今回はヤンのアパートの管理人さんか?)にデレク、そしてチャッピーくらいか。この作品には出ていなかったけど、エリック・コットや張達明も御馴染だ。その中でもチャッピーは同世代だから組みやすいんじゃないかな。
しかし、彼の作品にトニーが出るってことは…おそらくないだろうな。彼にホーチョンがいったいどういう役を振るんだかって思うと、全然想像できないもの。

(上の続き)ホ:あ、マカオの料理は確かにうまいよ、Macau Food,イチバン!(英語&日本語)
司会:同僚役のアンソニー・ウォンは美味しそうに食事していましたねぇ。あのシーンって、いったいどう撮ったんですか?
ホ:あのシーンはアンソニーの演技の影響がよく出ているんだ。彼の登場する3シーンは一気に4~5時間で撮った。そのうちでハンバーガーを7,8個、麺を4杯、そして牛肉を2皿食べていたよ。本人は「美味くねぇ」って言っていたんだけど、彼はやっぱりいい役者だから、美味しそうに撮れていてよかったよ。

秋生さんの見事な食べっぷりはホントに注目もんだった。もしこの演技で来年の金像に助演男優賞ノミネートされたら、それはそれでまたすごくないか(笑)。

前半はこんな感じで進んでいった。
ワタシは2階席なので、質問ははなっから諦めていた。でも、聞きたいことはいろいろあったのよねぇ。まー、それは次回の映画祭に来るであろう新作で、前方の席が取れたら聞くってことにしておくか。
ところで、映画祭という場所に集うのはほとんどはファンであって、熱心に作品を鑑賞して、彼の映画や香港映画のある種の特徴を理解しているのはもちろんなんだけど、そうでない人もたまにいるんだなぁという質問が幾つかあった。質問された方にはホントに申し訳ないけど、んんんーって気分になってしまいましたよ。

Q:1・この映画は実話を元にしているのですか?
  2・ファーストカットとラストにヤンが煙草を吸っている同じシーンが登場してくるが、その意味は何か? 
   3・途中にヤンが多くの女性たちをオーディションしているように見える場面があったが、あれはヒロインのオーディションを劇中に挿入していたのか?よく理解できなかったのだ。

ここで申し訳ないけどツッコミ。3番目の質問の場面の意味、アタシはもちろんわかっていたし、近辺に座っていた香港映画好きそうな女性グループも異議申し立てをしているのを聞いた。ああいうシチュエーション、男の人にはわかりにくいものなのかなぁ(質問者が男性だった)。 

ホ:(通訳さんに)…何だっけ?(ここで爆笑)
1つ目の質問については、これは本当の話ではないってこと。
『大丈夫』を撮っていた頃、チャッピーが「付き合ってる彼女と結婚したいんだ」と話してくれたんだ。その言葉に「実はもう大きな娘とかいるんじゃねーのか?」なんて冗談を言って返した時に、この物語を思いついたんだ。昔の彼女の生んだ娘が、自分の知らぬ間に街を歩いていてすれ違っていたりってことは、もしかしてあるんじゃないのかな、なんて思ってね。

ここでうまく元ネタ話に着地してくれたのはありがたいぞ。…そうだよね、オトコっていう生き物は命を授けても決して産む性ではない。だから彼女が望まない妊娠をしてもどう対処していいのかわからず、ついつい冷淡になってしまうってのはよくわかる。常日頃、オトコどもよエッチするにはちゃーんと最後まで責任取れよーって思っているからね(あ、実体験にあらずよ、念のため)。そんな中でいきなり大きな娘が目の前に現れて「パパ、アタシはアナタの娘よ」なーんて言われたら卒倒するに違いないんだからさ。ってそこまではいかんか。

ホ:タバコについては、これは映画内での重要なポイントなんだ。ヤンの母がタバコを吸うようになったのは、センが彼女を捨てたからだ。後にヤンと母親はタバコを買った途中でセンと再会し、ヤンはセンのことを知るし、母親はタバコが元で肺がんを患って死んでしまう。ラスト、ヤンとセンが「これからは禁煙しようね」と約束するのは、悪い習慣と一緒にこれまでの関係をいったん断ち切って、これからは生まれ変わって健全になろうっていう意味がこめられているんだ。

おお、これもまた『AV』に続いて教養的な意味があったのか(爆)!まーねー、香港映画には王家衛電影でタバコの紫煙を燻らすトニーを始め、たいていの登場人物が喫煙者なので、その姿は確かにカッコいいんだけど、世界的に禁煙傾向にある中ではどーかなーと感じたこともあったので。…でも“禁煙啓発映画”にしては親子共々タバコ吸いすぎだよね(苦笑)。
では、問題の3番目の質問。

ホ:あの女性たちはセンのかつての女たち。ヤンは彼女たちを呼び出して父親との関係を次々に切らせていたんだよ。(日本語で)ワカッタ?(場内爆笑)
司会:あれはジェラシーからでしょうか?それとも恋人たちが父親にふさわしい女として見たかったってことからでしょうか?
ホ:両方あると思うね。父娘関係って微妙だからね。父親が娘のボーイフレンドを気にするように、娘も父親のガールフレンドが気になるんだよ。

ワタシはあの場面、完全にヤンのジェラシーだと思っていた。彼女、かなりエレクトラコンプレックス入っているものね。彼女にとっての母親はイザベラ(エラ)しかいなかったわけだから、自分と母親に劣る女性は絶対認めたくなかったに違いないもの。

Q:嘔吐シーンが強調され、多用されているのはなぜですか?あれは、悪酔いで吐いているのだって思ったけど。
司会:ゲロシーンは、ハリウッド映画でもよくあるよね(>そうか?)
ホ:別に強調したわけじゃないよ。ボクの友人には酒2本でゲロる奴がいるからね。

んー、香港映画ではゲロシーンってそんなに珍しくないから、特に気にも留めずにいつものように見ていたんだけどなぁ…。もっとも最近の日本映画なんてきれいなものばっかりだから、ゲロシーンなんかないか(暴言吐くな>自分)。

こんな感じであっという間に最後の質問。

Q:劇中でヤンはセンの実の娘ではない事実がわかるけど、なぜ本当の父親が名乗らないのでしょうか?また、チャッピーが出頭する前に自分のロレックスを売ってまでしてアパートの家賃を払おうとするけど、そこまでしてヤンに対する責任を負うのはなぜなのでしょうか?
A:確かに、実の父親もヤンが生まれてからは、ずっと彼女と離れていた。でも、イザベラは最初にセンとの間にできた子を堕してしまい、そのことを悔やんでいたので、自分の娘として産んだ子をセンの娘として育てたいと望んでいたことをわかっていたので、彼は身をひいたんだ。そして、センはヤンが自分の娘でないことを知っていた。だけど、本当の娘は中絶によってこの世に存在しない。だから、生まれずに自分が殺してしまったような実娘に償いたくて、マカオ人にとっても大事なロレックスを売ってまでして、自分の不在時の家賃を工面したんだよ。

この答えは胸に染みました…。実の娘ではなくても、死んでしまった恋人と本当の娘を思って一緒に生き、ちゃんとした親子関係を築いていきたいと考えたセンに、とても救われた気分になったので。まー、日本と香港(というか中華圏)の親子社会は全く違うのだけど、やっぱり親も子供も捨てられるのは悲しいもの。

最後に、噂には聞いていた特別プレゼントタイム!
「手を挙げた姿が“チョーカワイイ”」という彼らしい理由でサントラをゲットされた方、本当におめでとうございました(はぁと)。
そして、劇場を追い出されたあとは外のテラスで予想外(笑)の即興サイン会。「押さないで下さい、監督が落っこっちゃいますよー」のアナウンスも気が利いてナイス。ああ、やっぱりしっかりデジカメを充電してくればよかった…といまさらな後悔をしながら、昨年スタンリーさんにもらったのと同じマイブックにサインをしてもらい、じっくりとそのゆでたまご肌を鑑賞していたアタクシでした。

今度は監督を囲む飲み会(いや、ファンミじゃなくてね)などあればいいっすねー…ってどこでやるんだよ。そして誰が企画するんだよ(爆)。

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