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ウィンターソング(2005/香港)

1990年代半ば、天津出身の小軍と広州出身の李翅が香港からニューヨークに移り住んで偶然の再会を果たそうとしながらすれ違っている時、彼らの故国・中国の北京では、北京電影学院で監督を目指す若き香港人、林見東(金城武)が、自分の食べていた麺をつまみ食いしていた貧しい少女、老孫(周迅)と出会っていた。10年前の小軍と李翅のように、お互いに孤独な中で出会った見東と老孫は、映画『ラヴソング』で描かれたのとは全く違った形で10年を過ごし、2000年代半ばの中国映画界で再会を果たす…。

約8年ぶり(正確に言えば9年ぶり)に、ピーター・チャン監督が長編映画に帰ってきた。
もちろん王家衛もウーさんも新作が楽しみな監督であるけど、香港映画にはまりたてのころに『月夜の願い』と『金枝玉葉』2部作を観て、そのつくりのうまさに感心して名前をチェックしたもんだった。久々に新作が観られて嬉しかったのは言うまでもなし。それが『ウィンターソング』なのである。

現在の上海。中国映画界の実力派映画監督・聶文(學友さん)が新作映画『毋忘我(forget me not)』の製作発表を開いていた。主演は、聶文作品の常連であり、彼のパートナーでもあるトップ女優孫納―かつての老孫と、香港映画界のスター俳優に成長した見東。彼は10年ぶりに再会した老孫が、今自分をどう思っているかということが気になってたまらないが、彼女は無表情と無関心を押し通す。
『毋忘我』は、芸術映画の多かった聶文が初めて取り組むミュージカル映画。サーカス団の空中ブランコ乗り小雨(孫納)は過去の記憶を全て失っている。彼女はサーカス団の団長に愛されていたが、その前にかつての恋人だった張揚(林見東)が入団してくる。やがて小雨の記憶が甦り、二人の愛は再び燃え上がるが、二人の関係は団長にも知られ、彼は小雨を責める…。
映画の製作が始まったが、肝心の団長役が決まらない。そこで聶文自らが演技することになる。老孫と見東の間にただならぬ雰囲気を感じた彼は、嫉妬に駆られ、映画製作にも支障が出る。

恋愛において、女より男のほうがロマンティックで、女はリアリスティックである。でも女が恋愛に対してリアリスティックな感情を抱くのは、お金や生活のような具体的なものを求めているのではなく、自己実現のために考えて行動しており、それとともに恋愛しているのだ。『金枝』2部作の昔から『ラヴソング』を経由してこの作品まで、ピーターさんが描く恋愛模様にはこんな要素が感じられる。女は男の支えがあって自らが求める夢へと進むことが出来るが、その恋愛に没頭していた男は、女の気持ちがうまくつかめず、彼女に去られて呆然とする。サムも小軍も、そんな男だったような気がするし、ローズやウィンや李翅も、まさに自らの夢を求めて突き進む女だった。
ただ、小軍&李翅と、見東&老孫の二組は一見似ていても、実は微妙に違う。それは彼らが生きた時代や場所が全く違うことも含まれるし、立場が違うこともある。さらに見東は、老孫が自分の目の前から去ってしまっても、ずっと彼女を心に抱いていたのだ。…うーむ、こんな彼をいったいどう評価したらよいのやら。一途な男なのか、単に女々しい輩なのか。特にこの映画を観た男性に聞いてみたいもんだ。
また、この映画は確かに見東と老孫の物語であるけれど、彼らの間にはもう一人の要、聶文がいる。まるで某イーモウと某コン・リーのような関係を築いていた(って私以外の何人がそんなことを思っただろーか)聶文と孫納だが、ミューズは彼の元を去ろうとしている。おそらく聶文は見東より長く孫納と時間をともにしているだろう、彼もまた孫納に魅せられていたから、創作と恋人との想いで悩むところとなり、自らも演技者となり、その苦悩を歌に託すのだ。彼らの思いを反映するかのように劇中映画は展開し、見東は現実の北京で、聶文は映画のラストシーンで、孫納への思いを告げるのだ。

この物語をしっかり支えたのが、32歳の金城くんと44歳の學友さん。
金城くんはこれまでの自由さを残しながらも、恋に悩み煮え切らないままで10年間思いを抱え込んでいる役柄をうまく体現していた。最初の劇中映画の、小雨をみつめるシーンでの瞳の暗さに炎を感じたようだもの。レスリーが去り、トニーやりよんが年齢を重ねた今、こういう役どころが似合う俳優はなかなかいない。ステや彦や張震だと全く違ってしまいそうだもの。ピーターさんが彼を起用し、絶賛して次回作にも起用した(時代劇だって!?)のも納得。
しかし、そんな金城くんの好演を歌だけであっさり食ってしまったのはやっぱり學友さん。いや、歌だけだったら今までもエンドタイトル等で聴いてきた。だけど今回は、チンピラ役なんかじゃなくて映画監督、しかも世界にも稀な“歌う映画監督”なのだから!劇中衣装をまとい、愛してきた小雨の不在を嘆く場面で歌う歌に、多少涙腺を刺激されたもんで。いやー、映画の場面でこんなにエモーショナルになれるのなら、もし今『雪狼湖』を観るチャンスがあれば、きっと号泣していたぞ(実は観たことがない。VCDかDVDって出ていないのかなぁ…。國語版でもいいし)。
周迅ちゃんは『お針子』『パオペイ』で見られるように、出会った男をたちまち虜にさせる小悪魔性が持ち味だと思う。顔もチワワ系だし(そうか?あと、中越典子嬢にちょっと似ているかな、という印象も)。か弱さとしたたかさ、野暮ったさと洗練の二面性を細い身体に秘めている。ツーイーほど小娘でもないし、ヴィッキーほど大衆的でもない。でも、やっぱりちょっとクセのある女優さんかな。そしてフランス映画向き。
で、狂言回しだったチジニさんなんですが…、何役やっていた(笑)まー皆様と同じように、アタシも彼はチョンホさま(あれだけ韓流嫌いとか言っておきながら、チャングムは多少は観ているんだなこれでも)しかイメージがないんで、ひげのないチョンホさまは地味ねー、なんて思ったんですが。ほんで何役やってた?と出番を数えながらも、誰かさんと違って(誰だよ)でしゃばっていた印象はないので良しとしたいわ。偉そうね自分。

と、まぁ、ここでとりあえず感想は終わり。
あ、でも、実はちょっとだけ気になった部分がある。それはラストの場面なんだけど、ネタバレになってしまうのでまた後日書きたいと思う。
なんで、あの言葉をあれだけ引っ張ったのかなぁ…。

原題&英題:如果・愛(perhaps love)
製作&監督:ピーター・チャン 脚本:オーブリー・ラム&レイモンド・トウ 撮影:ピーター・パウ&クリストファー・ドイル 音楽:ピーター・カム&レオン・コー 美術:ハイ・チョンマン 振付:ファラー・カーン 編集:ウェンダース・リー&コー・チーリョン
出演:金城 武 チョウ・シュン ジャッキー・チョン チ・ジニ エリック・ツァン サンドラ・ン

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コメント

もとはしさん 今晩は
CDは売っていますよ
私はたまたま香港に行った時に買ってきたのですが
「慶祝雪狼湖巡演100場限量珍蔵記念版」
なんて実は今初めて気がつきました(爆)
これは2CDとMVのDVD付きですが
普通にCDだけのもあります
アジア物販ショップなら扱ってると思います
それにしても學友さんの声は素晴らしいですね

投稿: usako | 2006.11.13 21:33

9年前に『雪狼湖』が初演された時から、サントラCDはよく見かけていたのですが、なぜか手を出せなかったのでした。実物を見てなかったからというのもあって。でもこの映画で歌う學友さんを見たら、やっぱり舞台を観てみたい!って思いましたよ。
来年香港へ行ったら、CDを探してみたいと思います。

投稿: もとはし | 2006.11.14 22:28

ご無沙汰をしています。
「ウィンター~」未見です(TT)。前売券もとっとと購入し、OSTも通勤途中に随分と聴いたというのに…このままでは上映終了してしまう~(>_<)。
なのに、顔を出したのは…チ・ジニさん。お薦めは映画「H」でございます。私は彼を映画でしか観ていないのですが(連ドラを観るのが苦手なので「チャングム」は未見です(^^;)、これ1本(と短編のオムニバス映画)でずぅずぅしくも彼を「好き」と言っております。本国ではハズれた映画と言われていますが、お時間と気力があればどうぞ(DVD特典の韓国版初期予告編も素敵です)。
さて、「ウィンター~」のチ・ジニさん、どうなのか楽しみなような、怖いような(^^;。

投稿: ぷぅ | 2006.12.13 01:46

ぷぅさん、こちらこそお久しぶりです。
『ウィンター』は地元ではすでに終わってしまいましたが、おそらく全国的にも今週いっぱいじゃないでしょうか?お早めに!

チジニ氏に関しては、もともと大韓明星自体あまり突っ込んで作品を観ない傾向にあるし、さらに興味もないので(ホントにスミマセン…)『H』も日本と合作の『ソナギ』もよーわからんのですが、『ウィンター』の彼に関しては控えめながらもしっかり舞台を支えていたという印象です。

投稿: もとはし | 2006.12.13 22:54

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なんとミュージカルである。話には聞いていたけど、金城武が歌い踊るというのがちっと [続きを読む]

受信: 2006.11.26 00:29

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