« 姐さん姐さん、なぜマイアミで悪徳を働く? | トップページ | にくまんにくまんにくまんにくまんにくまん…(エンドレス) »

『Shang-hai 1945』森川久美

御存知『上海グランド』を始め、ハリウッドの『インディ・ジョーンズ』の2作目に至るまで、1930年代の上海を舞台にした小説や映画は日中ともに非常に多い。それ以前の時代に目を向けても、20年代が舞台の『花の影』に清朝末期を描いた『T.R.Y.』があったり(そういえば最近続編小説が発表されたねぇ。また織田さん主演で映画化されたりするのか?)、小説『「吾輩は猫である」殺人事件』(奥泉光)ではあの『吾輩は猫である』の猫が、1905年以降(『吾輩』発表年)とおぼしき上海で活躍したりするので、20世紀前半の魔都上海はクリエイターにとって非常に魅力的な舞台なのだなぁ、と改めて思う次第。

さて、上海を舞台にした物語の中で、80年代に少女マンガの洗礼を浴びた人ならおそらく通っているのが、1980年に発表された森川久美さんの『南京路に花吹雪』。これは満州事変前夜、30年代後半の上海を舞台に、上海人の抗日青年・黄子満と上海駐在の新聞記者・本郷義明の友情と愛憎を中心に、抗日テロや戦争阻止計画等を描きながら日中戦争へと突入していく時代のうねりを描き出した作品(…かなり曖昧な紹介で申し訳ない。実は本がいま手元にないんですよー)。
その続編が今回紹介する『Shang-hai 1945』。これは確か3年前の春、『英雄』試写会で上京したときに渋谷で買っていた記憶がある。

Shang-hail945 1
森川 久美著
講談社 (2003.4)
この本は現在お取り扱いできません。

Shang-hail945 2
森川 久美著
講談社 (2003.4)
この本は現在お取り扱いできません。

1944年秋、上海。激化する太平洋戦争の中、日本の戦況は極めて不利であったが、上海のかつての租界全域を占領下において、彼らは奇跡の逆転を信じていた。
30年代後半から上海で暮らし、その後しばらく南洋に赴任していた新聞記者の本郷が帰ってきた。日中戦争突入前夜、中国との和平工作のために暗躍した彼だが、2年ぶりに戻ってきた彼を迎えたこの街は退廃化が進み、人々が希望を失う中で、偽の情報と自国軍の勝利を信じてやまない日本の軍人たちが幅を利かせていた。本郷は彼らとのトラブルに巻き込まれるが、彼を救ったのはかつての恋人だった中国人女医の蔡文姫(ルビは“ツァー・ウェンチー”だけど、ホントは“ツァイ”だよね^^;)だった。彼女は本郷が上海を去る数年前に、共産党の抗日戦線に身を投じるためにこの街を離れていたのだ。再会に驚く二人だったが、蔡文姫にはすでに李光裕という夫がいた。そして本郷は、日本陸軍が資金繰りにアヘンの取引をしていることを知り、やむなくそれに手を貸すことになる…。

20年以上前に『南京路』で中国近代史にハマったという人は、案外多いんじゃないかなーって思ったんだけどどうだろうか?そういえばワタシの大學の同期の友人もこのマンガが大好きで中国語を選んだんだよって話していたのを覚えている。…でもゴメン友よ、今さらこんな場所で謝ってもしょうがないけど、ワタシはその時まだ読んでいなかったのよ『南京路』。ちゃーんと読んだのは10年位前に文庫化されたときだったのよ。地元で『上海グランド』の上映が決まり、「30年代上海の資料ってなんかない?」とサークルのリーダーに聞かれた時に、これを参考資料に提供したっけなぁ…。
映画化したらニコに演じてほしいかも、という声もあった(確か)黄子満と本郷が大活躍したこの物語では、蔡文姫はあくまでも男たちの疾走を追いかけていた脇役に過ぎない印象があったんだけど、黄子満が登場しないこの続編では、彼の不在を埋めるかのごとく存在感をまして活躍し、本郷と祖国への思いに揺れ動く女性になっていた。メロドラマとしても読める物語なんだけど、やはり背景にあるのは戦争。だからこの物語も軍部の存在が強い。じゃあ軍部が完全なる敵かといえばそうではなく、本郷には軍人の友人がいたりする(戦死してしまうんだけど…)。かといって、中国人側への感情移入も過剰になってはいない。真の敵はこの時代の狂気であり、その狂気のために多くの人々が命を落としたのだ、と改めて思った次第。
こんなふうに歴史認識においては非常にバランス感覚に優れており、公平な目で読むことができると思うのだけど、それは日本人だからの感覚で、もしナショナリズム思想強めの中国人がこれを読んだら「いやこれは反中だ、そしてここに登場する中国人は漢奸だ!」なんて言われてしまうのだろうか?
…とまぁ、ちょっと散漫になったけど、こんな感じ。あ、『南京路』もまた読み返したくなってきたなぁ。

ところで李安さんの新作《色、戒》はこのマンガと違って中国人の恋物語だけど、時代は『レッドダスト』やこれと同じく抗日に揺れる40年代であり、漢奸の男と彼のもとに送られるナショナリストの女が出会う物語だという。この時代の政治と闘いに翻弄された恋がどう描かれるのか、かなり興味があるのであった。ええ、トニー主演ってーのももちろんあるけどね。…となんとか中華娯楽に着陸させて終わる。

|

« 姐さん姐さん、なぜマイアミで悪徳を働く? | トップページ | にくまんにくまんにくまんにくまんにくまん…(エンドレス) »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

うわ~、懐かしいタイトル!
私は連載中の「アルカディア~」で彼女を知り(これ、好きだったのですが、結局未完のまま…?)、他の作品を探したところ、丁度『Shang-hi~』の単行本が発行された頃で、そのスケールに感心し、滅茶苦茶ハマりました(そこから遡って『南京路~』と読んだ次第です)。
最近は日々の煩わしさを理由にアタマを使わなくなっているので、久々に探し出して読んでみたくなりました。
ご紹介いただき、有り難うございます。

投稿: ぷぅ | 2006.09.18 01:16

森川さんの作品はこの上海2部作くらいしか読んでいません。ほかにもいろいろと描いているようですが…。すみません。
やっぱり今『上海路』はが無性に読みたいですね。

投稿: もとはし | 2006.09.20 21:57

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/14197/11882843

この記事へのトラックバック一覧です: 『Shang-hai 1945』森川久美:

« 姐さん姐さん、なぜマイアミで悪徳を働く? | トップページ | にくまんにくまんにくまんにくまんにくまん…(エンドレス) »