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ココシリ(2004/中国)

2年前の東京国際では審査員特別賞、一昨年の金馬奨で最優秀作品賞、そして今年の金像奨では最優秀アジア映画賞を受賞した中国映画『ココシリ』。この映画を作った陸川(ルー・チュアン)監督の前作『ミッシング・ガン』は観ていなかったし、東京国際で上映された時点では全くのノーマークだった。だけど、中国政府とチベットとの対立が続く今、これはそのチベット族を主人公とした映画で、大陸だけでなく台湾や香港でも評価されたことを知ると、俄然日本公開が楽しみになった1作。

中国青海省、海抜4700メートルに広がるチベット高原の秘境ココシリ。チベット語で「青い山々」、モンゴル語で「美しい娘」を意味するこの中国最後の秘境は多くの野生生物が生息しているが、'90年代には最高級毛織物の原料となるチベットカモシカの密猟が絶えることがなかった。チベットカモシカの絶滅の危機を察したチベット族の人々は、有志で民間の山岳パトロール隊を結成し、カモシカを乱獲する密猟者たちと命を賭けて戦っていた。
ある日、山岳パトロール隊の一人が密猟者に殺された。それを知った北京在住でチベット族の血をひく新聞記者のガイ(チャン・レイ)は調査のために青海省までやってきて、軍人あがりの山岳パトロール隊長リータイ(デュオ・ブジエ)に同行取材を申し込む。初冬の高原を行く彼らの行く手にあるのは、誰にも容赦なく襲いかかる自然の厳しさだった。密猟者の襲撃や追跡の中、一人また一人と倒れていくパトロール隊員たち。ガイはそのありのままを目の当たりにするだけでなく、貧しさ故に密猟に手を貸す元農民のマーや、リータイが語ったパトロール隊が押収した毛皮を売って灯必要経費を捻出するという矛盾した行動から、密猟者と山岳隊の抱えるあまりにも過酷な現状を知る…。

学生の頃、チベットに行ったことがある。その時はこの映画の舞台である青海省ではなくチベット自治区のラサだけしか行かなかったのだが、高度3000mという厳しい条件下で暮らして五体投地しながら聖地を目指す人々の姿や、ハゲタカが舞う鳥葬場(念のため言うが死体はなかった)を見て、この地はワタシたちの住む都市よりも、ずーっと自然に近いんだなと感じたものだった。…今考えればあまりにもお気楽な感想であるが。
そのチベットで、厳しい自然は誰に対しても平等に牙を向けてくる。密猟者を追って全力疾走すると肺がやられ、流砂にはまると二度と這い上がれない。初秋であっても、吹雪は突如激しく吹き出し、パトロール隊員であっても密猟者でも容易く命を奪われる。
そして、貧しさもまた人々の抱える問題である。マーが密猟に手を貸したのは砂漠化によって放牧が出来なくなったことからであり、山岳パトロール隊員たちは1年近く無給で働いている。狩る側も護る側も金がないのは同じだ。パトロール隊側でも押収した毛皮を売るという非合法行為に手を染めることもある。確かにそれは罪であり、密猟者と変わりないのだが、そうしなければ隊を保持できないという事情もある。そこまでしてなぜパトロール隊がチベットカモシカを守るのか。それは、自分たちと同じ、自然から与えられた尊い命が彼らにもあり、その命を人間が欲望のために勝手に奪う権利などないということを自覚しているからだろう。だから彼らは銃の残りの弾が少なくなっても、トラックのガソリンが切れても、そして多くの仲間の命を失っても、目の前にいる密猟者側が圧倒的に優位に立っていても、密猟者との対決に向かっていくに違いない。
ラスト、山岳隊の事実は人々に広く知られることになり、1997年末に政府によりココシリが自然保護区に指定され、絶滅への道をたどっていたチベットカモシカの生息頭数が復活しつつあるという事実を知る。この映画は事実に基づくフィクションであるけど、実際にパトロール隊の隊長が二代続けてパトロール中に命を落としていることもあり、ここまで来るのに多くの犠牲があったこと、そして中国でも自然保護の機運がここまで高まっているのかということを改めて思った。それがあったからこの映画は誕生したんだよね。

キャストはほとんど無名(リータイ役のブジエさんは舞台でダライラマ6世を演じたこともあるチベット族の実力派俳優らしい)で、演技経験のない人も多いらしいけど、チベット族男子のゴツゴツして色浅黒い顔はスクリーンによく映える。登場する女性はリータイの娘と元タクシー運転手のリウ(キィ・リャン)の恋人でホステスのロンシエ(チャオ・シュエジェン)だけなんだが、ほとんど野郎しか出てこないこともあって貴重な存在だ。隊長の娘役の子は丸顔でかわいかったー。…と、気の抜けることを書いてこの記事を終わりにしたい。ははは。

原題:可可西里(Kekexili:mountain patrol)
監督&脚本:ルー・チュアン
出演:デュオ・ブジエ チャン・レイ キィ・リャン

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