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SPIRIT(2006/中国)

♪霍霍霍霍霍霍霍霍(フォーフォーフォフォー、フォーフォフォーフォー)!
…もう最近すっかりこればっかで、どーもすみません。

昨日は年度末の忙しい時期に仕事場でちょっとショックなことがあり、凹んでしまったので、自分を鼓舞するために『SPIRIT/霍元甲』を観に行った。…ええ、もちろんポータブルCDを携えて(なぜそうならざるを得なかったのかという詳細はこちらこちらをどうぞ)。
帰り道に歌うは当然、♪霍霍霍霍霍霍霍霍!「そうさ、やっぱり強いばかりがいいわけなんかじゃないんだよねリンチェイ、そして霍師傳!」と夜空を仰いだものだった…いや、星は出ていなかったけどさ。

19世紀末の清国・天津。霍家拳の宗家に生まれた霍元甲(フォ・ユアンチアと読む)は、師匠である父(コリン・チョウ)に憧れ、強くなりたいと思っていた。母親は喘息持ちで体の弱い元甲の身を案じながらも、「武道に力の強さを求めてはいけない、鍛えるのは自分の精神であり本当の敵は自分自身である」というようなことを言って諭す。父に拒まれても元甲は自らを鍛え、天津一の武術家を目指した。
成長し、宗家の主となった元甲(リンチェイ)は、天津の街の圓環に作られた決闘台で、かつて父親が負けた趙家拳の宗家の息子を始め、多くの武道家を倒してきた。しかし、その決闘で38連勝を喫し、弟子も増えて自惚れも芽生え始めてきた。
そんな折、ベテランの武道家の秦に元甲の弟子が倒されるという知らせが彼の耳に入る。元甲は友人・農勁[艸/孫](董勇)の経営する料亭にいた秦に、一方的に決闘を申し込む。怒りと侮辱で元甲は理性を失い、秦にとどめを刺してしまう。翌日、元甲が家に帰ると、目にしたものは母と最愛の娘の死骸だった。秦の義理の息子の報復であり、彼は屋敷に押し入った元甲と自分の妻子の目の前で自害する。さらに弟子が秦に倒された真実を知り、元甲は茫然とする。
罪悪感のあまり、元甲は天津を離れて放浪する。たどり着いたのは雲南省(多分)の少数民族の村。盲目の少女月慈(孫儷)とその祖母に助けられ、村の人々と自給自足の生活を共にする。失意の元甲を癒したのは、彼らの優しさと雄大な自然だった。彼はそこでやっと、亡き母が幼い自分に言い聞かせた言葉の意味を悟ったのだ。
村で数年を過ごした後、元甲は天津に戻る。清国の凋落により、故郷は変わってしまっていた。新聞では西洋のプロレスラー、ヘラクレス・オブライアン(ネイサン・ジョーンズ)が中国人武道家を次々と倒しているという記事が載っていた。これを見た元甲は絶交した農に金を借り、上海へ。彼に「東洋の病人」と罵倒された清国の人々のプライドを背負って、元甲はレスラーと戦い、見事に倒す。しかし、以前の元甲とは違い、彼は自分に反則すれすれの技を仕掛けてきて自爆しそうになった相手を助け、その戦いと相手を称えたのだ。元甲は上海に居を定め、知育・徳育・体育の三育の養成を目的とした「精武体育会」を建立し、彼を追いかけてきた農をパートナーにして、フェアプレイをモットーとした武道家の養成に心血を注ぐ。
しかし、彼の登場を快く思わなかったのは、疲労した清国を植民地化しようと企んでいた欧米列強の商人たちだった。日本人豪商の三田龍一(原田眞人)を含む彼らは、元甲に列強+日本の格闘家4人と対決する世界初の異種格闘技戦を提案する。相手は4人、対して元甲はたった1人で舞台に上がる。この試合が明らかに不利な戦いであることは、農はもちろん、彼の最後の対戦相手である日本人武道家・田中安野(獅童くん)も気づいていた。しかし、元甲はそれを承知で、戦いの場に身を投じたのである…!

まずは時事ネタ的感想。
この“世界初の異種格闘技戦”を始めとした欧米列強の企みに、なんだかワールド・クラシック・ベースボールにおけるホスト国(米国)のたくらみに共通するものを感じたのはワタシだけでせうか…?(苦笑)だってさー、自国に有利なルールをムリヤリ作り出し、自国が明らかに勝ちそうな組み合わせをして、自国に有利な審判に判断を仰いでどーも納得いかない判定ばっかり出させたんでしょ?せっかくの世界野球なのにそんなことやっちゃダメだよぉ。それが原因で決勝リーグに敗退したって思えば、まさに「自作自受(自業自得)」なわけで。まぁ、「いろんな小細工にも負けず、マッチョ野郎どもに敢然と立ち向かう小柄なアジア人」という、米国進出後のリンチェイ映画でも御馴染の公式は、なんか今回の世界野球にも通じるんじゃないかなーっと…って多少暴言っぽいんだけど(すまん)。あ、日本が優勝したの?よかったねー。
とと、話がずれていくので元に戻そう。

でも、これは決して格闘だけの映画ではない。一人の人間の傲慢と墜落、そして再生とリベンジを描いた映画だ。
「男は、ただ強いだけではいいわけじゃない。勝負に勝つだけじゃダメだ。」
これがワタシの基本的な考えだ。これについて考えるのはアクションものやヒーローものを観たときなのだが、最近では『力道山』(リンクは非中華blogでの感想)にて、自らの出自を隠し、逆境を乗り越えるために勝ち続けるものの、勝ちにこだわることでさまざまなものを失っていった主人公の力道山に対して「なんでアナタはそこまで勝つことにこだわるんだ!」と心の中で彼に問うてみた。…もちろん、力道山はそれに答えてくれなかったが(^_^;)。
この映画では、ワタシのそんな問いに答えてくれた。1対1のガチンコバトルには、相手に対して尊敬を持って戦い、完膚なきまでに叩きのめすのではなく、勝負がついた後は相手の勇気を称賛する。そして敗者もまた、勝者に対して心から感謝し、彼を称える。これぞまさしくフェアプレイ。ともすれば国際関係の縮図のように比喩されてしまうオリンピックやワールドカップは決して国同士の代理戦争ではなく、本来の意味では異なる国や民族や人種が集って公正に戦い、相手をリスペクトするというイベントなのではないだろうか。ただ力が強いだけではなく、自分の精神的弱さを克服し、ルールを守って戦って、勝っても破れても相手に敬意を表することが真の強さではないのか、ということを、この“最後の武道映画”を通じてリンチェイは言いたかったんじゃないかと思うし、彼の考えがワタシの思いに対しての模範回答を示してくれたような気がした。

(注・この後、多少のネタばれあり。未見の方は読むのを控えてください)

一度は自らの強さに溺れたために、愛するものを失った霍元甲。そんな彼が人のやさしさに触れて再生し、そこで悟ったことを若い者に伝えていこうとして、自ら戦いの場に戻ってくる。ストーリーとしてはそんなに目新しいものではないけど、それをシンプルに描いていることで、思いがストレートに届いてくる。監督が久々の中国語映画になるロニー・ユーさん(レスリーの『キラーウルフ』や『夜半歌聲』で御馴染。ハリウッドでは『フレディVSジェイソン』とか、ロバート・カーライルの『ケミカル51』などを作っていたらしい)ということもあって、プロデューサーも兼ねたリンチェイの思いを汲み取ってうまくまとめているなぁと思ったもんだった。撮影も香港映画では御馴染のプーン・ハンサンさんだし、映像的には安心して見られる。ビックリしたのは田中さんの衣裳デザインをワダエミさんが手がけていることだけど、よく考えれば彼女、ロニーさんとは旧知の仲だもんな。

リンチェイはやっぱり素晴らしい!序盤からのアクションの美しさにも思わず惚れ惚れしちゃったし、『英雄』や『ダニー・ザ・ドッグ』でも見られた、ドラマ部分の演技の細やかさにもさらに磨きがかかっていてホントによかった。アクションや格闘技にひかれて劇場に足を運んだ男子どもよ、こーゆーところにも注目しないと彼女を落とせないぞ。…いや、あそこまで頑なに禁欲的になれってわけじゃないけどさぁ(^_^;)。
他のキャストでは勢いで絶交しても元甲に献身する心優しき(ホモソーシャルな?)親友、農がよかったねぇ。演ずる董勇さん、わりとよく見る顔?と思っていたら、大陸のTV俳優さんらしい。月慈ちゃんを演じる孫儷ちゃんは、日本でもBSデジタルで放映された大陸ドラマ『1メートルの光』でピーターくんの相手役だった子とか。なんとなく緒川たまき嬢を思わせる雰囲気。
そして獅堂くんですが…しょうがないとは思うがヘンな名前だよね、田中安野(あんの)。名前の後ろに思わず「秀明」とか「モヨコ」とかつけたくなるじゃないか(爆&意味不明ですまん)。まーねー、中国語はねー、頑張ってはいたけど確かにヘタクソでしたよ(暴言)、 『無極』の真田さんばりの発音&感情を求めてはいけないっていうのはわかっているけど。役柄としてはあれでいいのではないのでしょうか。いくら列強と共謀している連中からの刺客とはいえ、武道家、いや一人の人間として、元甲と共鳴しあい、世界にリスペクトされるべき美しい日本人の姿をうまく体現しているのだから。彼がいるからかえって原田監督演じる三田さんのダーティさ(これって以前彼が演じた『ラストサムライ』の大村と同じ役回りなんだよね)が際立っちゃって、人によっては「この映画の悪役は日本人」すなわち「反日映画じゃん!」なんていう曲解も出てきてしまうんだろうけどさ。
これは中国を日本や他の国に入れ替えても不自然にはならない物語だし、世界共通の普遍的なメッセージだってこめられている。決して反日映画なんかじゃないんだ。(特にぷちナショ気味な方にはわかってほしいんだけど)
確かにこれまでの“霍元甲伝説”や李小龍さんの『ドラゴン怒りの鉄拳』で描かれたような「日本人による毒殺説」がほのめかされるような場面もあるんだけど、これはあくまでもうわさであって本当のことではないらしい。
もしかして配給先さんもそう考えちゃって、主題歌差し替えなんて暴挙に出ちまったんじゃないだろうか。それがホントだったら、ワタシは田中さんが三田さんを罵倒したのと同じ言葉を配給会社に対して言うよ。

だからワタシは、この物語を観終えた後、いろんな思惑で差し替えられてしまった日本版主題歌を、ハイカラさんたちには本当に申し訳ないけど、聴きたくなかった。事情を知っていることもあり、聞いたら絶対愚痴を言いたくなるからだ。ラストの字幕を見守りながら、イヤホンを耳に入れ、ポータブルCDのリモコンスイッチを入れて耳を手でふさぎ、ジェイの歌声とハードな中華サウンドに耳を傾けたのだった。そのサウンドは梅林さんの手堅い劇中音楽ともうまくバランスがとれていて、いい雰囲気だった。
今後はこんなマナー違反みたいなことをせずに、手を膝の上に置いたまま、正々堂々とジェイの主題歌にのせてエンドクレジットを見守りたいものだ。

というわけで、最後に改めて主張したい。

本blogは、この日本で映画『SPIRIT』がオリジナルの形で上映されることを心から希望しております!

原題&英題:霍元甲(fearless)
監督&製作:ロニー・ユー  製作&主演:ジェット・リー 製作:ビル・コン 脚本:クリスティン・トウ&クリス・チョウ 撮影:プーン・ハンサン アクション指導:ユエン・ウーピン 衣裳:トーマス・チョン&ワダエミ 音楽:梅林 茂 オリジナル主題歌:『霍元甲』ジェイ・チョウ
出演:リー・リンチェイ(ジェット・リー) スン・リー ドン・ヨン コリン・チョウ 中村獅童 ネイサン・ジョーンズ 原田眞人

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コメント

し、しまった、クォークォークォクォじゃなくてフォーフォーフォフォでしたか! ジェイのMVをスピーカー無しのPCで聞いてしまったもので…聞き違った?(汗)。
いや全くおっしゃるとおり! 農さんの毅然とした親友ぶり、よかったですよねえ。彼が忠告した通り、酒飲み仲間の取り巻きなんて、頼りにならんもんですよ…しみじみ。
しかし、昨今の中国大陸では、人民からフェアプレイの精神が薄れて来つつある様子で…心ある中国青少年にも日本の男子たちにも、ぜひ異種格闘技戦だというだけでなく、この映画のスピリッツをこそ、理解してほしいもんですよねえ。
配給先(もしくは宣伝請負業者)さんはなーーーんにも考えず、ただ一般マスコミやスポーツ紙で手っ取り早く話題にしてもらえばいい、金になりゃいいとしか考えずに主題歌差し替えしたんだと思いますよ。ったくもう。
それにしても、霍元甲も葉問さんも、日本語文献が全然無い…毛沢東やらの醜聞はもういいから、彼ら功夫英雄の伝記を読ませてほしいですよー。

投稿: nancix | 2006.03.22 17:43

もう、リンチェの気持ちが充分伝わってきて、涙してたのに、この最後の曲。いいなぁ、自力エンディング、私もやっぱりやりたかったです。

ところで、やっぱり田中安野って変な名前ですよね〜。最初にパンフで見たとき、「タナカヤスヤ」とか読むのかなぁなんて勘ぐったのですが、直球の「アンノ」でした^^;。そうか、獅童君の北京語は棒読みだったのか。

投稿: tomozo | 2006.03.23 21:04

事前の一件もあり、少々躊躇をしながらも「映画に罪は無い」(…洒落ではありません(>_<))と言う訳で私も拝見して参りました(エンドロールではガンガンに周杰倫を聴いていましたが(^^;)。
謂わんとするところ、映像、りんちぇいのアクションの美しさ、個々のキャラクター(同行の友人は農氏が登場するたびに「いい人だ~」と涙ぐんで居りました)…しみじみとよい映画でした。観に行ってよかったです、本当に。

投稿: ぷぅ | 2006.03.24 02:33

いやぁ、農さんの評判がいいですねー(^o^)。
彼と元甲のホモソーシャルな友情にきゅんとしている女子が多そうだ、と思っていたら、脚本に『ベルベット・レイン』のクリスティン・トウ小姐が加わっていると知って大いに納得した次第です。

>nancixさま
そうですねー、大陸でもフェアプレイ精神が薄れてきているし、その様子を見た日本でも反中の空気が漂ってきていますからねー。ナショナリズムとか敵対心とかそういうものを越えたフェアプレイを見たいもんです、ハイ。
>それにしても、霍元甲も葉問さんも、日本語文献が全然無い
そういえばそうかもです。中国武術研究本はちゃんとあるみたいですけど、あまり細かすぎると専門的になってしまって、なかなか売れないんでしょうね。ええ、ワタシも政治ネタ本は飽きました(こらこら)。

>tomozoさま
オリジナルテーマ『霍元甲』は日本版DVD(CD付)が来月出ますが、日本版DVDでは確実に聴けることを願うしかないですね。ワタシも香港版DVDを買いたくなりました。
ところで「田中安野」、ワタシは「たなかやすの」だと思っていました。

>ぷぅさま
差し替え発覚を知った当初、「日本じゃ観ないぞ!」とか叫んでいましたが、やっぱり映画には罪はないと思ったものです。
映画感想サイトを見てみると、中華電影迷以外でも「あの主題歌はヘン」という意見をよく観たので、やっぱり不自然さが目立つもんだと思ったものでした。映画の出来がよいだけになおさらなんでしょうね。

投稿: もとはし | 2006.03.24 21:29

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