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単騎、千里を走る。(2005/中国)

高倉の健さんといやぁ、自分にとって物心づいた頃からすでにトップスターで、まさに“ザ☆スター・健さん”ってーしか呼べない人だった(軽い肩書きですみません)。だって、自分が小さい頃に観た映画なんてアニメばっかだし、彼を初めてスクリーンで観る前までは『野性の証明』でデビューした薬師丸ひろ子ねえさんの“父親”役だった人、という認識しかなかったからね。初めて観たのも、洋画の『ブラック・レイン』だし。
そんな健さんは現在75歳で、映画界でのキャリアは50年、そして出演作品は204本だそうだ。こうやって数字を書いてみても、彼が日本の映画界におけるザ☆スターであるってことが、ホントによくわかる。その「日本映画界のザ☆スター」が、中国の人々にも親しまれているということは、中国を習い始めた時からいろいろと聞いてはいて、ホントかねぇ?なーんて疑問に思っていたもんなんだが、現在の中国語の先生が、「健さんはねぇ、中国の35~60歳の人の間では憧れの人なんだよ」と嬉しそうに話してくれたことから、真実だと実感した。
『単騎、千里を走る。』は、健さんを自分のアイドルと仰いでいた中国人の一人である張藝謀監督が、彼なりのミーハー心を込めまくって作り上げた、イーモウによる健さんのための“健さんらぶらぶ映画”である(爆)。

高田剛一(健さん)は東北に住む漁師。彼の元に、ずっと反目していた息子の健一(貴一ちゃん)が倒れたという連絡が入った。息子の嫁理恵(しのぶちゃん)は健一が末期の肝臓がんであることを高田に告げ、民俗学者である健一が取材した、雲南省麗江の仮面劇のビデオテープを渡す。そこでは李加民という俳優が、得意の『単騎、千里を走る』を来年披露してあげると健一に約束をした場面が映っていた。それを観た高田はふと思い立つ。もう中国に行くことができない健一の代わりに、自分が李加民に逢って、彼の仮面劇を撮影してあげよう、と。こうして、中国語もできない高田は単身麗江へ渡る。
しかし、なんせ中国だからことは思いのほかうまくは進まない。日本語がおぼつかないガイドの邱林によると、李加民は暴行で逮捕され、3年は刑務所から出られない。ほかの俳優でいいのではないかというのだが、高田はそれでも引き下がらない。彼自身も自分の引っ込み思案な性格と、日本語が全く通じない状況に苛立つばかりだったが、高田の事情を知り、彼の思いに打たれた邱林と旅行代理店のガイド蒋[雨/文]は彼に協力し、なんとか刑務所まで行けることになる。ところが、今度は肝心の李加民が歌えない。訳を聞くと、彼には李家村に生き別れの息子楊楊がいて、彼が恋しいというのだ。自分の願いをかなえる前に、李の願いもかなえなければと決意した高田は、邱林とともにさらに奥地の李家村に向かう。邱林のガイドと携帯電話(!)による蒋[雨/文]の通訳、そして村長の厚意により、ついに高田は楊楊と出会う。そして、楊楊を麗江まで連れて行こうとするが、今度は楊楊が彼らの前から姿を消してしまい…。

感想を素直に書けば、この映画のテーマは「高倉健さんを、中国のど田舎に連れて行きたーい!(電波少年風)」で、「中国雲南省・麗江の仮面劇にぃー、高倉健が出会ったぁー(世界ウルルン滞在記風)」でもある(大笑)。
お互いに仲たがいしたままの高田の健一への思いと、結婚もできないまま生き別れてしまった加民の楊楊への気持ちは二重写しになり、高田は息子のため、さらには加民のために雲南を走る。たとえその願いがかなえられないものでも、そこまで歩いたことは無駄にならない。高田も健一が渡った中国に渡り、人々と出会うことで、初めて息子を知ったのだろう。
もちろん、実際の中国ではこんなことはありえないだろうし、「中国の国民の99.99%は反日である」なーんて、いかにも中国的誇大表現を用いてオーバーにいわれている(それを日本は真に受けて中国を嫌う。おいおいーって感じだ)この時代には、ここで語られる物語はキレイごとに思われるだろう。でも、そんな余計な心配をしなくても、描かれる物語は全世界に共通する普遍的なものだ。「まごころが世界を変える。」というコピーは決して伊達じゃなく、この物語には、現代社会がこういう世界になってほしいという、イーモウや健さんの願いが込められているのではないだろうか。以上、マジメな感想編。

次はおちゃらけ感想編。
この映画はアイドル映画であり(ってご年配のファンを泣かせるようなことを書くなよ、自分)、イーモウの健さんへのらぶらぶぶりがよーくわかる。これはツーイーへのらぶらぶぶりとは似て異なるんだよなぁ。なんてったって、どっかのインタビューで健さんが言っていたけど、イーモウは『英雄』に自分の役を用意していたくらいだっていうし(言葉を話さない老剣士役だったらしい)。もちろんその役どころはボツられたそうだが、それで正解である。
しかし、ただのアイドル映画では終わらなかったよ、これが(笑)。日本はもとより、中国でも広く知られている健さんのイメージは「無口でストイックで不器用」ってものだが(これでいいのか?やや自信なし)、イーモウはそれを逆手に取り、不器用な男が異国に出ることで、自分自身や親子関係をみつめ直す物語に仕立て上げた。…もっともその手段は「おいおいマジかよー」と言わずにはいられないものだったけど(爆)。
麗江には行ったことがないけど、かつて雲南の昆明に住んでいた弟曰く、いくらか観光地化されている(&雲南省の少数民族が研究対象になっていることが多い)ということもあって、蒋さんのような日本語ガイドがいるのはなんとなくわかる。しかし、全く言葉のできない日本人を、よくも奥地まで連れて行けたもんだなぁ、と思う自分は、一人で中国大陸を旅したことがありません。すんませんねぇ、中国語だって死なない程度の語学力だもん。しかし健さんはさすが健さんなので、戸惑ったり苛立ったりするけど決して取り乱さない。しかも慣れていくうちに口数も増えてくる。その場にもなんとか対応する。ついでにケータイやデジカメやDVを使いこなす(これにはビックリしたけど、現代は日本だけじゃなくて、中国の田舎にもそれだけデジタル機器が入り込んでいるっていうこともわかるよねー)。さらに一緒に一夜を過ごした楊楊坊やのう○●シーンを写真に撮る。うーん、さすがだ。さすがオトナだ。(って最後のはある意味幼児虐待じゃないか?)
ここまでさせるか?大スターに(大笑)。これってイーモウなりの健さんへの愛の表現(またの名をらぶらぶ邪念。詳しくは『十面埋伏』『2046』を参照のこと)?と思ったものだが、よく考えれば、これで正しいのだ。イーモウは充分に健さんへ敬意を払い、彼の前に壁を建てている。それを飛び越えてもらおうとしてもらい、健さんはそれに答えている。大スター健さんに対して手を抜いていない。素晴らしい!もしこれが日本の若手監督なら、健さんを目にした途端に怯むぞ(苦笑)。

そして、この映画はただの感動映画でも終わらない。意外にも笑える。
それは非職業俳優(よーするに素人)の中に健さんが投げ込まれたというシチュエーションを念頭に置かなくても、異文化を背負って生きている人たちの間におこるコミュニケーションギャップ、その中で途方に暮れながらも意外に機転が利く高田さんの行動(特製ペナントを使ったビデオメッセージのアイディアはすごい!)、そして楊楊とのコミュニケーション(含む●○こシーン)にはくすりと笑わさせられる。しかし、ザ☆スターの前で●ん○させられた楊楊くん…これがトラウマにならなきゃいいが(^_^;)。

この映画を観てわかったこと。
イーモウは映画への愛のためなら、たとえ自分のアイドルだろーが愛する女優だろーが、決して容赦はしないってことだ。この姿勢、日本の映画監督(特に若手)は見習ってほしいもんだ…なーんて、偉そうでスマン。でもこれで、健さんが若手監督の作品にも出やすくなった…ってことは、決して、ないな。はははははは。

原題:千里走単騎
監督:張藝謀 製作:江志強 (日本ユニット)監督:降旗康男 撮影:木村大作
出演:高倉健 李加民 邱 林 蒋[雨/文] ヤン・ジェンポー(字のチェックを忘れました) 寺島しのぶ 中井貴一(声の出演)

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コメント

「中国の国民の99.99%は反日である」のほうが大げさだよ!!!!

投稿: 夕西 | 2006.12.08 12:41

ええ、わかってますよ、夕西さん。
別にこのことを本気にしてなんかいませんよ。
ただ、これを真に受けちゃう人も確かに存在するんですよ。

投稿: もとはし | 2006.12.08 20:58

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