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2005年11月

食神(1996/香港)

渡港回数もそろそろ二桁になるワタシだが、香港で初めて食べた屋台の飯は廟街の屋台で食べた叉焼麺だった。まだ広東語もろくにできず(今もできないが)、街を大きな顔して歩けなかった時期でもあったが、腹を壊さないかどうか心配しつつも、親切なおじちゃんに作ってもらった小さな麺の味は今でも覚えている。香港に通い始めた頃はどうも飲茶やレストランでの食事にこだわっていたけど、最近一人香港すると、チムのキャメロンロードやキンバリーロードにある快餐庁の排骨飯や叉焼飯をテイクアウトしてホテルで食べるのが楽しみになってしまった(これもある意味淋しいか?でも、映画を観るのが夜8時頃なので、その後にレストランで夕飯するとその後の一人歩きが怖い時間帯になるんだよね)。安くてボリュームがあるからねぇ。ホテルはリッチにしても所詮は貧乏トラベラーなので、どうもケチることに力を入れてしまうのでした(笑)。
そんな人間からすれば、『無間道』でサムがぱくつくお弁当にも興味があるし、超豪華な中国宮廷料理も超チープな中華屋台メシも同じまな板の上に載せて勝負するこの『食神』も、大いに楽しみながら観られたのはいうまでもなかったりするんだ、これが。

ある日、廟街にふらりとやって来た男は、この街で育った顔に大きな傷のあるフォウガイ姐さん(カレン)の屋台でラーチャー(雑多)麺を食べて、それをメチャクチャにこき下ろす。男の名はスティーブン周(星仔)。かつては“食神”と称されていた…。
香港最大のレストランチェーン“唐朝”のオーナーであった周は香港中のレストランのシェフの豪華な料理をこき下ろし、自らの威厳を誇示する。しかし、彼自身は名シェフどころか、料理すら満足にできないただのセコい商売人だったのだ。彼の成功と名声は弟子入りした唐牛(ヴィンセント)と周の協力者だった“大快樂”社長(マンタ)の裏切りによって奪われ、その足元は崩壊する。周は逮捕され、身ぐるみはがれて下町に放り出されたが、その傲慢な性格は相変わらず。廟街の古惑仔たち(カイマン、林雪)にボコにされるが、屋台の麺をけなされたはずのフォウガイ姐はなぜか彼に親身になる。彼女とチンピラのボス・ゴウタウ(李兆基)がいざこざを起こしたのを救ったのは周のアイディアだった。3人は結託し、シャコと肉団子を混ぜ合わせた“小便団子”を作り出す。紆余曲折ありながらも“小便団子”は大ヒット。大快樂社長と唐牛の妨害にもめげず、周と仲間たちは快進撃を続ける。
これをきっかけに本気で料理人を目指そうと決意した周は、1ヵ月後の料理鉄人コンテストへの出場を控えて、湖南省にある中国料理学院への入学を決意。旅立ちの前日、周はフォウガイ姐が顔の傷を負ったのが、屋台に吊るした食神の旗を破られたチンピラに殴りかかったことからであると知る。彼女は自分を愛していたのだ。しかし、周はそれをただのファンじゃねーかと冷たくあしらう。そして湖南省に渡った周は、大家楽社長の放った刺客に襲われる…!
1ヵ月後。白髪と化した周が、少林寺の夢精大師(劉以達)とともにコンテストに現れた。空白の1ヵ月には壮絶な裏話があったのだ…!

今でこそ、スクリーンでは監督兼主演で八面六臂の大活躍を見せている星仔だけど、監督も兼業して映画を撮り始めたのはこれか『0061』の頃からだったかな…。この映画自体は97年に日本公開されていたけど、当時はまだ星仔も知名度は低かった。むしろ、共演したカレンの恐ろしいほどのブスメイクに注目が集まってしまったんじゃなかったっけ。でもこれは地元で劇場公開されなかったので、ずーっと観たいと思っていた作品だったのよ。まぁ日本公開当時じゃなくて、今観たほうが正解だったなぁ。だって、あの頃はまだ香港にも行ったことがなかったから、地元ローカルギャグがほとんどわからなかったもんなぁ。
ローカルといえば、この映画の前半の雰囲気はまさに香港地元テイスト満載だった。上海銀行ビルを間近に見るリッポータワー屋上(に『唐朝』の本拠地があるという設定)の風景から、屋台街とそこを仕切る古惑仔たちの抗争や、フォウガイ姐が朗々と(?)歌い上げる『陸小鳳』(…って、古龍の小説の?)の歌、そして落ちぶれた周が姐さんや古惑仔たちの力を借りて路地からリベンジ&大逆転を謀ろうとする展開はとっても香港的だ。と思えば後半の料理コンテストシーンはほとんど『少林サッカー』前傳?ってなノリ。もっとも土台には星仔が敬愛する李小龍映画があるんだろうけど、少林十八銅人の連続ギャグや聖人なんだか俗物なんだかよくわからん夢精大師の存在、そしてそんな状況を一切無視して暴走しまくるミス・ナンシーことシッ・カーイン様の熱演に大笑いしっぱなしだった。よくこの映画と引き合いに出されたのが、料理を食べると口から七色の光を発して「おいしーい!」と叫びまくるものすごい料理アニメ『ミスター味っ子』だったけど、星仔のコメディ映画にはそんな日本アニメのオーバーアクトを実写で軽ーく超えてしまうという力量があるので、ホントに楽しいのだ。日本の実写ドラマや映画でそれをやったらベタになったりどっか退いてしまったりするもんね。

星仔のキャラは銭勘定と儲けることに夢中で、性格はあまりよろしいとはいい切れない傲慢キャラといういつもの役どころ。ま、これが黄金のパターンだからいいのである。負け負け感たっぷりのガキ大将ってところかな。そのゴーマン野郎が愛(…たぶん)によって目覚めていくのもいつものお約束。
星仔はオタクなので(笑)ここ数作のヒロインはいつもヨゴレキャラだけど、『喜劇王』のセシリア、『少林サッカー』のヴィッキー、そして『功夫』のシェンイーと比べると、この映画のカレンはその汚れっぷりにおいては最強のヒロインではないだろうか。もともと美人というより英中クォーターの個性派な顔だちのせいか、ブスメイクするとかなり強烈になるし、牛肉をぶったたく姿はほとんど鬼(笑)。さらにはお世辞にもオサレといえないダサダサなピンクのワンピース姿で周にラブアタックをかます。よく考えればかなり痛いキャラなのだが、それでもかわいそうとは思えないのは(笑)、彼女の役どころが義理人情を重んじるカッコよくてクールな古枠女だからだろうか。
いつもは星仔とコンビを組んでバカばっかやってるマンタは珍しく悪役。でも彼よりも目立っていたのは『008』を監督したヴィンセントさん。やっぱり面白いです、彼。『少林サッカー』で最初に星仔たち少林チームにコテンパンにやっつけられていたのを思い出しちゃったな。
古惑仔連中ではなぜか髪が緑色のカイマンさんに加え、なんと林雪発見!妙に嬉しかったよー。小便団子を食べたゴウタウのリアクションは噂には聞いていたけどおかしすぎ。これってなんかのCMのパロディだったのかな(同じ構図をどっかで観た覚えが…)。あと、如花ことレイ・キンヤンもしっかり出ていたり唐突に『初恋』広東語版が流れたりといろいろ書きたいことがあるんだけど、あまりにも盛りだくさんだから書ききれない…(笑)。
あ、DVDにはセリフ完全翻訳版字幕ってのがあったのだけど、先にそっちを観ておけばよかったなぁ。えらく詳細な翻訳でビックリしたもんで。

最後に、この映画からは小便団子が実際に商品化されて話題を呼んだという有名な話があるんだけど、ワタシは結局この小便団子を食べることができなかった。映画を観てから食べるんだと思っていたのに、数年前にこの団子を商品化したお店のご主人が亡くなられて店もたたんでしまったことを先に知ってしまったからだ…。

英題:The God of Cookery
監督&脚本&出演:チャウ・シンチー 監督:リー・リクチー 撮影:ジングル・マ 音楽:クラレンス・ホイ
出演:カレン・モク シッ・カーイン ン・マンタ ヴィンセント・コック ロー・カーイン タッツ・ラウ レイ・シウゲイ ティン・カイマン ラム・シュー

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同じ月を見ている(2005/日本)

いつだって自分にも周りにも素直でいて、まっすぐに人の気持ちを受け止め、清らかに生きていきたい。それは誰でも思うこと。フィルメックスで観た『SPL』の刑事たちだって、そんな思いを抱いていたのに違いない。でも彼らはマフィアのボス逮捕のために、卑劣な手をあれこれと使ってきた。現実のオトナの世界なんてそんなもの。素直に、そして清らかに生きていくことなんて、とてもじゃないけどできない…。
でも、この『同じ月を見ている』の主人公のひとりであるドンは、無口で感情をあまり表に出さないが、清らかに生きている人間だ。そして、助けを求めている人がいたら命も投げ出す勇気も持っている。そんな人間を友に持ちながら、彼を裏切ってしまった親友の視点からこの物語は語られる。

熊川鉄矢(窪塚)は心臓外科で働く研修医。彼が外科医を目指したのは、10歳の頃に出会った幼馴染の杉山エミ(メイサ)の心臓病を治すという夢からだった。二人は結婚を控えていた。ある日、鉄矢のもとにもうひとりの幼馴染、ドンこと水代元(えぢ)が刑務所から脱走したという知らせが入った。ドンは無口だが絵の才能があり、人の思っていることを絵に描いて表すことができるという不思議な力を持っていた。互いの境遇の違いはあれ、故郷の軽井沢で3人は幸せな少年期を送っていた。しかし、今から7年前、鉄矢が高校生の頃に山火事が発生し、エミの父親がそれに巻き込まれて命を落とす。そして、その犯人としてドンが逮捕されたのだ。ドンが自分たちの目の前に現れることを恐れる鉄矢は、彼をエミに会わせまいと行く手を妨害する。
ドンは歌舞伎町で金子(太郎)という男と知り合った。自らの不始末でヤクザに殺されそうになったところをドンに助けられ、ドンはヤクザとのいざこざで銃創を負う。金子は彼を知り合いの美容外科医中田(松尾)のところに運び込み、金子とドンは友情を結ぶ。しかし、ドンは彼の前からも姿を消した。金子はドンとの出会いをきっかけに足を洗うが、ヤクザに襲撃されて命を落とす。死ぬ前に、金子は鉄矢にドンの居場所を知らせる。
ドンは山形の寺にいた。ドンのスケッチを見た日本画家東谷(岸田今日子)が彼を弟子にしたのだ。鉄矢はエミを連れて山形に車を走らせる。そして、彼女に7年前の山火事の犯人は、実は自分であると告白する…。

両親を失い、貧しい環境で生きるドンは、自分が喋らない分、他人の心を理解して絵を描くことで人とコミュニケーションをとってきた。地元の子どもたちからいじめられていても、彼は全てを受け入れていたし、周りに流されやすい鉄矢がそそのかされて彼をいじめても、ドンは何も言わなかった。鉄矢は小さい頃からドンに憧れていたんじゃないだろうか。まるで宇宙に起こる全てを知っているような目をしてスケッチに夢中になるドンの姿に、理想の人間を見たのかもしれない。でも、人間は自分にないものを欲しがり、それを持っている他者に嫉妬する。鉄矢とて例外ではなかったのだ。親友からは尊敬と嫉妬の両面から見られていたドンだけど、彼もやはり人間であり、全てを受け止めていた代わりに、どうしても抑えきれない衝動をキャンパスにぶつけていたのであった…。
この物語のテーマは「人間の生き方の理想と現実と嫉妬と償い」じゃないかなーなんてなんとなく思った。ドンを中心に、鉄矢とエミ、そして金子がとりまく人間模様が展開されるけど、鉄矢はドンを憎み、エミは素直にドンを受け止め、金子はドンと出会って再生する。エリートの鉄矢、裕福な家庭で育ったエミ、堕落した人生を送っていた金子、そんなふうに立場の違う人間たちに対して、ドンは分け隔てなく接し、彼らの前から去っていった。彼らの頭の上にはいつも月が輝いている。いろんな姿で現れても、月はいつも同じだ。だから、この題名であり、それはドンを象徴する言葉でもあり、鉄矢とエミに贈った絵に描かれた彼の姿だったのだろう。
まーでもねー、一応こんなふうに気取って書いてみたけど、実際の本編は結構ツッコミどころも多かったりして。感動した人にはホントに申し訳ないんですが。m(_ _)m
最大のツッコミは二つばかりあって、それを言うとネタバレになるのであえて申しませんが、後半は「おいおい、そりゃねーだろ(泣)」と思ったところも多数あったので。
だいたいコピーからして「号泣」とか「泣ける」とか謳っている映画にはハナッから用心してかかる人間なので(自分で書いていてホントにつまらない人間だと思うけどね)、予想通り泣かなかったし。あーでも、ラブストーリーが突然ヤクザもんになるくだりでは、健太監督ってさすがに欣二監督の息子さんだけあるなーって思ったかな(今回は単独作初監督だけど、欣二監督の遺作を引き継いだ『バトロワ2』は観てなかったもんで)。トーンがぜんぜん違うんだもん。あれくらいの描写は香港映画なら平気だけど、ヤクザ映画も香港黒社会映画も見慣れていない若い観客には結構きついんじゃないかな?

初主演の日本映画だったえぢ。いやーほんとに頑張った!偉いよキミは!…よく考えれば魔裟斗と『漂流街』のTEAHと3人でイケメン殺し屋トリオを演じた三池監督の『DEAD OR ALIVE2』じゃ、台詞もなければ出番も少なく、あっという間に力翔コンビに殺されていたもんな(確か)…。
日本語の台詞がやっぱり完璧じゃない部分は多少目をつぶっても(でも、それが吹き替えされないくらいの演技だったからまた偉い!)、今まで香港映画で観てきたえぢとはまた違って、ちゃーんと「日本人のちょっと変わった青年」になっていて、全編にわたってしっかりと存在感があった。もともとドン役はこれで映画界に復帰した窪塚くん(以下くぼづ兄。弟も俳優デビューしているので最近こう呼んでいる)に当てられていたけど、くぼづ兄があえてライバル役を選び、ドンをアジア人俳優にという話からだったそうだけど、このキャスティングはホントに大成功だったと思う。「キャラが裸の大将くさくても輝いているのはいかがなもんか」みたいな意見もあったけど、それは輝いて当然なんだよ!地獄の天使みたいなキャラなんだから(例えが変か…)。くぼづ兄があちこちでえぢを賞賛しているのでここではあえて引用しないけど、彼にとってえぢとの出会いもまた刺激的なものだったんだろうな。
そのくぼづ兄も見事な復活だった。彼の演じる鉄矢、ホントにイヤなヤツだったのよねー、もうわかりやすくヤなヤツ。ドンのような“純真無垢で人々を癒す青年”役は、この映画の脚本を書いた森淳一監督の『ランドリー』で経験済みだから、くぼづ兄にとってドン役もやれないことはないんだよね。でもあえて鉄矢を選んだというチャレンジング精神と、ここ数年付きまとっていたクレイジーなエキセントリックさを全て脱ぎ捨てた抑え目演技に好感が持てた。ちゃーんとズボンをウエストまで上げて穿いていたし(爆)。頑張れよくぼづ兄、これまでのマイナスイメージを払拭しろよ。ついでに香港でなんか映画にチョイ役で出ちゃってもいいぞ(こらこら)。えぢに誘ってもらえ。
あとはやっぱり山本の太郎ちゃんでしょう!彼が演じる底辺のチンピラ役って結構御馴染ではあるんだけど、それであってもオトナな演技で締めてくれて嬉しかった。えぢとのツーショットも絵になる。ついでに太郎ちゃんと松尾スズキさんのコンビもよかった(松尾さん、出てきただけで笑えたし…『イン・ザ・プール』の伊良部先生じゃないけど)。ツーショットといえば、まさかえぢと岸田ムーミントロール今日子様まで!豪華だ、豪華すぎる…。えぢよ、オマエは幸せ者じゃ。
あ、メイサちゃんを忘れてた。初めて演技を観たけど、オトナっぽいねー。ホントにまだ17歳なの?トシ10歳くらいごまかしてない?
そんなこんなでえぢの日本映画デビュー(え?)を見守れたのは嬉しいわ。日本アカデミー賞事務局の皆さん、どうか是非えぢに最優秀新人賞をあげて下さい。確かにえぢは香港じゃ新人じゃないですけど、それくらいの賞をあげちゃってもまったく無問題ですよ!(ってある意味暴言?)

最後に、久々に聴いた久保田利伸の歌声は、相変わらずセクシーだった…(*^_^*)。

監督:深作健太 原作:土田世紀 脚本:森 淳一
出演:窪塚洋介 エディソン・チャン 黒木メイサ 山本太郎 松尾スズキ 岸田今日子

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SPL〈殺破狼〉(2005/香港)

勧善懲悪の論理が崩壊し、何が正しく、何を信じていいのかわからなくなっている現代社会。憎むべき社会の敵にも守るべき家族がある。正義の御旗を掲げて中東の国を攻撃した大国は、その国の弱き民にとってはまさに凶悪な敵である。
そんな世界の中で、人々は自分のあるべき場所をしっかりと守り、目標達成のためならどんな手を使ってもそれを果たそうとする。この『SPL』は、黒社会の大物逮捕という使命と目標に、彼の手にかかって死んだ部下の復讐という動機を重ね合わせたために、恐ろしいほどの執念を燃やして破滅していこうとする男たちを描いた映画だった。

1994年、香港。
西区警察捜査課のチャン(ヤムヤム)たちは、黒社会の大物ウォン・ポー(サモハン)に不利な証拠を掴んだ部下の一人とともに、ポーの収監されている刑務所に向かう。その途中、高速道路でポーの部下ジャック(呉京)の車に追突され、ジャックは部下の一人を匕首でめった刺しにして去っていく。部下夫妻は死に、彼らの一人娘ホイイーはチャンたち生き残った部下によって育てられる。そのチャンは後頭部に重傷を負い、さらに治療時の精密検査で脳腫瘍が発見される。残り少ない命を覚悟したチャンは復讐を誓い、ポーの逮捕のためなら手段を厭わず、荒っぽい捜査を続ける。そんなチャンを気遣うかのごとく、彼の部下はポーの部下のアジトをガサ入れした際に、手下の一人から大金を強奪する。
3年後の夏。退職を控えたチャンの後任者として、マーシャルアーツに長けたマー(ドニー)がやって来た。凶悪殺人犯と格闘して相手を脳障害に至らしめたというマーの過去が捜査課を騒がす。そんな時、チャンがポーの元に送り出した潜入捜査官が死体で発見される。そこに居合わせた天体オタク少年のビデオには部下をボコボコにするポーの姿が映し出されたものの、最終的に殺したのは彼の手下だった。チャンはマーを除く捜査課の全員に、証拠を捏造し、ポーの犯行として検挙することを提案する。彼らの不審な企みに気づいたマーも同行するが、彼らの狂気を止められない。そんな捜査課の面々もやはり人の子、人の親。父の日を前に、娘同然に育ててきたホイイーや、実の子供たちを気遣う一面も見せるのであった。
しかし、その父の日にポーたちの反撃が始まる。件のオタク少年を襲撃してコピーテープを強奪、警察に送りつけてチャンたちの不法捜査を暴露する。さらにポーはジャックを放ち、チャンの部下を一人ずつ惨殺していく…。

いやぁ、痛い…面白いんだけど、それと同じくらいものすごーく痛い。だから全体的に痛い(ってなんか語弊があるぞ)。香港映画では暴力描写って当たり前だから、一応その手のシーンには免疫があるつもりだったんだけど、それにしてもこんなに痛い描写が続くってーのはどーゆーことだ。日本でも主演作品が幾つかDVD化されている(らしいけど未見)呉京演じるジャックがチャンの部下たちを次々と血祭りにしていくくだりは「うわーやめてよージャックぅー(>_<)」って思っちゃったもの。
しかし、ここまでしてこの映画で描かれるのは「ああ恐ろしきなりオトコの執念」。もにかるさんのblogのコメントでもちょこっと書いたんだけど、復讐に燃えるあまり卑怯な手を使ってまでもポーを捕えたいチョンたちの執念(それがよくわかるのは屋上に揃った4人とマー刑事が向かい合う場面!あの場面の4人の目つきがすでに正気じゃない…)に慄き、それに応戦するポーたちのさらに輪をかけた卑怯さにも同じくらい慄いた。その一方でチャンたちとポーには家族を大切に思う心を持ち合わせていたりするので、いやぁ愛と狂気は紙一重だなぁ(ん?この表現でいいのか?)なんて思った次第。

サモハンさんの演技をリアルタイム観たのって何年ぶりだろう…多分『無問題』以来(爆)?
あの体型はそのまま(でももしかして一回りくらい大きくなった?)で、口ひげに長髪だったから最初誰だかわからなかったけど、悪役でも貫禄と存在感は変わらないなぁ。この貫禄じゃ水島裕さんは吹きかえられないね(古い話してるなー)。サモハンさんがアメリカで人気を集めたTVドラマ『マーシャル・ロー』は観ていないんだけど、留学先でそれを観たという弟曰く、えらくシリアスでビックリしたと言っていたから、いつかこれも観てみたいなぁ。
そんなサモハンさんとクライマックスでは怒涛のガチンコアクション(&衝撃の結末…ここでは書けないけど)を見せるドニーさん、現代劇で姿を見るのはホントに久々だー。いや、もう二度とイッセー尾形とは言いませんから(笑)。黒のレザージャケットに黒ワイシャツ(首元ボタン2つ開け)とかなりセクシー&イケイケ。それに白いベルトを合わせるのはいかがなものかとも思ったが、それはまぁいいか。あまりに強いので恐るべき男と恐れられているけど、かつて自分が追いつめた容疑者を再起不能寸前にまでしてしまい、その男に対して自らの良心の呵責をするかのように面倒を見るくだりも出てくる。この物語の登場人物の中で家族が登場しないのがジャックとマーだけなんだけど、そのあたりで彼の人間性をうかがわせるようにしたのかな、ウィルソンさんは。しかし、「戦いの後の一杯」シーンには大いに笑かせていただいたぜ。ったく(苦笑)。
ヤムヤムはもう、『PTU』のホー隊長以上に非情かつ卑怯かつ悲痛なキャラ。だってあの後頭部の傷からして…先述した屋上シーンの冷たーいまなざしとか…鼻からボタボタたれる血を見ると…。これで金像の主演男優賞候補になったらすごいだろーなー。あと、ヤムヤム部下ズ(こらこら)もよかったなぁ。リウ・カイチーさん、こんなにいい味出してくれるとは。ダニー・サマーさん、名前は聞いたことあったけど、こういう演技するとは知らなかったぜ…。皆様の死にっぷりには心の中で大いに泣かせていただきましたよ。

確かに観おわった後、「痛い…全体的に、痛い…」としか感想が出なかったんだけど、時間を置けばおくほど、「確かに痛いけどさ、ひどい作品ではなかったよなー」というふうに感想も変わってきた。
この映画は決して暴力礼賛の映画じゃない。これを観た欧米のどっかの某映画監督(もろわかり?)みたいな輩が「So Coooooooool!」とか言って暴力シーンをもろパクった映画を作ってもらうようじゃ困るけど、この映画での暴力描写は必然的であり、これはウィルソン監督のメッセージにもあったんだけど(今回メモするのを忘れてしまって…)、登場人物たちが理想として願っていた穏やかな心を象徴するように現れる怖いくらい美しく青い海と、現実の醜さや非情さを強調するためのものだということを考えなければいけないかな、うん。

しかしウィルソンさんってすごいよな…。作る映画のジャンルがあまりにも広すぎる。機会があったらりよん&すーちーの『スパイチーム』と、ジャンユー&サンドラ姐の『ジュリエット・イン・ラブ』(これは日本未発売だから香港でDVDかVCDを買おう)も観ておかなければ。

監督:ウィルソン・イップ アクション指導&出演:ドニー・イェン 
出演:サモ・ハン・キンポー サイモン・ヤム ジン・ウー リュウ・カイチー ダニー・サマー

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フィルメックスからの帰還。

えー、とりあえずのご報告です。『SPL』の記事もアップして、こっちの追記を忘れていました(笑)。
去年は夜にマリオンに足を運んだのでよくわからなかったけど、今年は日中に映画を観たこともあって結構余裕がありました。(実は銀座に遊びに行く母と途中まで同行動。彼女は日劇で『春の雪』を観ていた)ええ、お名前は存じないけど国際でもお見かけしたお方がちらほらと…多分あちらにも「あーアイツ、また来てるなー」なんて思われているかも。
ウィルソンさんが来られなかったのは残念。ビデオメッセージでお顔を拝見すると、結構お若い方じゃないすか。でも40歳?まー、香港人って年齢不詳な人が多いから…。

そうそう、若いといえば、席を確認してトイレに立ったときに、若いスタッフ君に「奥様、お席はお分かりですか?」なーんて言われてしまったわ。ええ、確かにアタシは年齢的には「奥様」ざんすよ、奥様。ほほほほほ…。

写真はフィルメックス協賛の某ブランドのショーウィンドウに飾られていた『スリー・タイムズ』のタペストリー。このブランドが手掛けたフィルメックスのスタッフTシャツ、実は結構欲しかったりする(^_^;)。去年のスタッフTシャツもかわいかったなー。今年はかなりシンプルなデザインだったんだけどね。
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金馬奨の結果、アジアの映画ビジネス、そして『SPL〈殺破狼〉』について。

11月13日に、台湾の基隆で行われた台湾電影金馬奨。日本語訳では「台湾アカデミー賞」とか「台湾ゴールデンホース・フィルムアワード(香港フィルムアワードと同じ直訳だな)」と呼ばれるけど、ここでは簡単に「金馬」と言いたい。
その金馬の詳細なる結果はもにかるさんKumiさんのblogで紹介されていますので、詳しいデータはそちらをご参考くださいませ。

しかし、作品賞が『カンフーハッスル』とは…。金馬ってこれまでは、台湾や香港などの主要映画賞と全く違うノミネーション&結果がでる(去年は中国の『ココシリ』。日本公開はどうなっているのだ?配給がついたと聞いているのに)ので、これにはいったい何の政治的な力が働いているのだか?といつも不思議に思ったものだけど、結構金像奨的な結果が出たので驚きましたわ。アーロンの主演男優賞受賞(『ディバージェンス』)も素直に喜びました。主演女優賞のすーちーを始めとした、ホウちゃんの『スリー・タイムズ』の複数部門受賞は台湾映画的にもよし。
何よりも嬉しいのは、『靴に恋する人魚』の最優秀美術デザイン賞受賞でしょう!おめでとう、ロビン監督!!

ところで今回の金馬、日本ではロイターのみの報道かと思いきや、毎日インタラクティブとフジサンケイグループの経済紙「フジサンケイ・ビジネスアイ」(最近職場で購読している)の紙面で大々的に紹介されていたのでビックリした次第。毎日では英語版に写真特集もあり。特にビジネスアイではカラー紙面(webにはありませぬ…)ですーちー&アーロン、そして助演女優賞の元秋さんが登場。特に今年は金馬が「台湾国際映像博覧会」でのイベントの一環として行われたから、それで注目されたのかな。いや、毎年そうなのかな?でも金馬は独自で授賞式が行われていたような記憶が…。

そういえば香港でも、今年の金像は例年通り香港国際映画祭と同時期で、両イベントは香港エンターテインメントエキスポ(トニーが大使を務めたアレ)の関連で行われていたから、今年は香港・台湾ともに映像コンテンツの海外売り出しに力を入れているのかもしれない。もちろん日本でも、東京国際の関連イベントとしてフィルムマーケットが行われたり、注目度が高い秋葉原でアニメやCG系のイベントが開催されていたから、中華圏だけではなく、コンテンツビジネスの隆盛は全アジア的な流れなのかもしれない。

確かに、韓流ドラマがアジアを席巻して以来、日本や台湾も映画だけでなくドラマの売出しをかけてきた。もっとも日本は韓流の前から香港や台湾にドラマを輸出してきて、それがもとで日本ブームになってきたのに、当の日本ではあまり注目されてなかったもんなー、不思議なことに。ドラマだけじゃなくて、アニメや特撮ドラマも同様。昔から人気があったのに、アニメに文化的価値があってビジネスチャンスになると気づいたのはベネチアやアカデミーで宮崎アニメが評価されてからだもんね。
その影響もあって、やっと日本とアジアの映画界にアジアンコラボの風が吹いてきて、ビジネス面でも価値が出てきたのだ、ということを証明したのが、今年の東京国際であり、nancixさんの記事でも紹介されたNHKBSで放映の『スクリーン・ウォーズ』に見られたということなんだな。
アジアンコラボがハリウッドに対抗できるかどうかというのはまだまだ未知数の可能性があるからなんともいえないんだろうけど、日本の映画界で中華圏の映画人が仕事できるようになったのはいいことだと思う。ホウちゃんの『珈琲時光』イーモウの『単騎、千里を走る。』そしてビル・コンさん&リー・チーガイさんのコンビで製作予定の『昴』など、監督始めスタッフが中華圏でキャストが日本人メインというのもあれば、現在公開中の『春の雪』でのリー・ピンビンさんのカメラ、そして今日のスポーツ紙(from報知)で報道されていたぶっきー(妻夫木聡)&柴咲コウちゃん主演の『どろろ』(手塚治虫御大作品!)のアクション指導にチン・シウトンさんというような、日本スタッフにアジアの映画人が加わるパターン、そして『狸御殿』ツーイー『同じ月』のえぢなど、中華明星が主役級に起用されて日本語で演技するなんて、ちょっと前じゃ考えられなかったもの。
最近は日本映画の国内ヒットも増えてきたし、行定勲さんや三池崇史さんなど、インディーズやVシネで活躍してきた監督さんがメジャー映画会社で仕事をするようになったからというのも関連ありそうな気もするし(三池さんはドイル兄さん始め、アジアの映画人とも交流があるものねぇ)。

まぁ、ちょっと今政治的に中国や韓国とはゴタゴタしていて、それを素直に受け取っちゃった人々が何も知らずに中国や韓国とつくものを嫌う傾向が見える。その延長で、政治的に嫌中傾向な人々が、日本映画に中華圏の映画人がかかわることや、『イニD』のようなアジアンミックス作品を批判することも多少あるみたいなので、それがちょっと気になるけど、そのへんの誤解は解いてもらって、政治と娯楽文化(もちろん民間交流も)は直結しないんだよってことをわかってほしいかな。何よりも我々中華電影迷にとっては、えぢが頑張って日本語を話して熱演するのをここ日本で観られるって思っただけで、ワクワクするもの!

まぁ、日本とのコラボじゃなくても、面白そうな香港映画の新作を観られると思っただけでもワクワクしちゃう人間なんだけどね、アタシは。
そんなわけで今ワクワクしながら待っているのは、今週末に東京フィルメックスで上映され、すでに日本公開も決定しているという『OVER SUMMER』 『トランサー』のウィルソン・イップ監督最新作『SPL〈殺破狼〉』。最初に香港公式サイトをのぞいた時、ドニーさんと並んでいる恰幅のいいヒゲのオッサンは誰だ!林雪にしては目つきが鋭いぞ!とかなんとか言っていたら…、サモハンだったとは!(ちなみに今のサイトはなぜかトップしか出ない…)
しかし、日本のスポーツ紙マスコミは香港映画の若手はどーでもよくても、サモハンというブランド名にはそれ以上に反応するんだなぁ、と思ったのは、昨日の日刊スポーツのこの記事。

キンポー主演プレミア試写会に1000人殺到

まー確かにさ、サモハンといえばデブゴンだけど、このお方って監督もアクション指導もできる才人で、すでに二人の息子が香港芸能界で活躍しているってことももーちょっと丁寧に報道してほしかったかな。成龍さんの息子ジェイシー君のときもそう思ったけど…。ま、そこでグチグチ言ってもしょうがないか。

とにかく、ドニーさん&ヤムヤムとサモハンの熱ーい対決が観られるのが楽しみだ。

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『江湖』鑑賞記念(笑)もとはしが愛とツッコミと独断と超偏見で選ぶ劉徳華作品ベスト5。

えー、お待たせいたしました。予告したとおりのアンディ作品ベスト5です。非華仔迷である自分がいかに華仔歴を歩んできたかということも交えながらお送りしたいと思います。では第5位から。

5位 アンディ・ラウ スター伝説

だいたい7年位前のこと。地元の香港映画サークルで、劇場公開される香港映画の上映の宣伝手伝い(チケ売りやチラシ作りですね)をしていた頃、サークルの中心となっていた友人の一人に熱烈なアンディファンがいた。彼女はレスリーファンも兼ねていたので、当時は非常に忙しい香港明星迷生活を送っていた。その彼女の強力リコメンで上映が決定したのがこの映画。その映画のほかにもワタシは彼女からアンディ映画のエトセトラを知ることになったが、おかげでその当時に自分が抱いたアンディのイメージは、「チンピラ・ロン毛・流血」の3本柱であった。ええ、この映画を観たことで、それが決定的になってしまいましたわよ。…いや、実際長髪アンディって古装片以外はこの映画くらいなんだけど、そのフレーズが定着するくらい強烈だったので、はい。友人のベスト・オブ・アンディは『逃避行(天若有情)』だったけど、それは未だに観る機会がなかったのであった。

4位 いますぐ抱きしめたい

初めて観たアンディ作品は多分『ゴッドギャンブラー』だったと思うけど、友人の刷り込み(ゴメン友よ!)によって「チンピラ・ロン毛・流血」イメージを固定化させられていたときに観た作品では、やっぱりこの映画が印象的だった。観た時期はブエノスの前(97年の2月ごろ)なので、多少は王家衛作品ということも意識したけど、今の作風とは明らかに違うもんねー(よく観ればこだわっているけど)。この映画に限らず、アンディのボコボコ&流血シーンを観るたび、「ああ、ホントにこの人は哀愁の鼻血野郎だ」とか「今日も元気に血を吹いているなー」とかつっこんでいたもんなー。正直に言えば、彼によるこの文字通りの「出血大サービス」演技が苦手だった。後述の作品でも書くけど、せっかく悲願の金像奨最優秀主演男優賞をゲットした『暗戦』でも、すっごいいい演技をしていたのに、突然の血吐きシーンでその好印象も全てパーになったもの(泣)。

3位 ベルベット・レイン

一番最近に観た映画で好印象だったからこの位置というのもあるけど、だんだん渋み演技と父親役が定着してきたなぁというように感じられたので。父親役は『ファイターズ・ブルース』あたりからもやるようになったけど、あの当時はまだまだ熱血男児役のほうが多かったもんね。感想は前に書いたのでここでは省略。

2位 Needing You

アンディのキャリアの充実に貢献を果たしたのは、ジョニーさんじゃないかなと思うことがある。よく考えれば金像でアンディに賞をもたらした『暗戦』も『マッスルモンク』(実は未見)もジョニーさん作品だし。この映画はサミーの映画という印象が強いんだけど、女ったらしだけどホントの恋にめぐりあっていないビジネスマンという役柄が意外にハマっていて楽しく観られた。血の代わりにゲロ吐いてたけど、それは香港映画だから許される(こら)。あと、『逃避行』のパロディは見ていないくせにしっかり笑えた。なんでだ。友人のおかげか?

1位 インファナル・アフェア 終極無間

確かにワタシはトニー迷だ。だからアンディとトニーが共演した無間道三部作を1位に上げるのは自分でも納得だ。もちろんトニーばっかり見ていたのは言うまでもないんだけど、『終極』のアンディの演技は想像以上のものだったからねぇ…。どうすごかったかは以前の感想を参照ということで。手抜きにて失礼。

いかがでしたでしょうか?かなり独断と偏見が入って多少ウケ狙いな部分もありますが(汗)。
100本以上も映画にでているアンディ作品のうち、ワタシが観たのはホントにちょっとだけだから、トホホーな作品などはかなり見落としているんだけど、やっぱり好印象なのは無間道前後あたりからでしょうか。相変わらずそれってどーよな作品もあるかもしれませんが、考えたら『十面埋伏』の劉のような役柄も今までの演技ではなら引き受けなかったんじゃないかな(というよりもあの役柄もなぁ…という気も)なんて気もしたので、アンディの演技幅も広がってきているのでしょうね。次回作の『墨攻』は酒見賢一の小説が原作で(正確に言えば森秀樹によるマンガ化作品らしいが)、日本資本も入っているというので、これまた期待してますわ。

最後に、はたさん、企画のご提案ありがとうございました。考えていて楽しかったですよー。

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ベルベット・レイン(2004/香港)

華仔と学友。
この字を見て「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉ!」と心動かされたそこのアナタ!きっとホモソーシャル好きですね?というのは冗談として、この二人といえば、今から17年前に作られた王家衛の記念すべきデビュー作『いますぐ抱きしめたい』でのものすごーく熱い義兄弟仁義ぶりが未だに忘れられないでいる。特に学友さんは「なぜそこまでやる!わかったからそのへんでやめにしとこうよ、ねぇ!」といいたくなるほどの熱演ぶりも強烈だった(あ、『ワイルド・ブリット』も同じく)。そんな彼はいつの間にやらアジアに名を馳せる“歌神”となり、幸せな家庭も得たステキなお父さんにもなっていた。そして、当時(と言ってもこの映画を観たのは今から8年前だ)は豪快に出血するチンピラ役がハマっていた華仔ことアンディは、映画に出まくり歌うたいまくりの日々を送って、いつの間にやら渋ーい演技もできるオトナな中堅トップスター&アジア映画の未来にかける大プロデューサー様になっていた…。
そんな二人が熱ーく火花を散らし、さらに無間道3部作イニDでいつの間にやら(いいかげんくどい?)次世代明星になっていたえぢ&ショーンとも共演するという、なんてゴージャスな!と言いたくなる映画が、今日観た『ベルベット・レイン』だった。

江湖(黒社会)に名を轟かすボスのホン(アンディ)の暗殺計画が持ち上がっている。ノッポ(エリック)を始めとしたホン配下の3人のボスはお互いを疑いあう。ホンには義兄弟のレフティ(学友)がおり、ホン亡き後は彼が江湖を仕切るとなると、自分たちの立場があぶないのではないかと…。
ホンは愛妻エミリー(シンリン)に子供が生まれたと聞き、レフティと共に病院に駆けつける。レフティはホンの身を案じ、家族と一緒の移住を薦める。そんなレフティは、3人のボスとその家族を抹殺するようにと、刺客を送り込んでいた…。
若きチンピラのイック(ショーン)のもとに仲間のターボ(えぢ)が、鉄砲玉を決めるくじ引きがあるという知らせを持ってきた。一旗揚げたい二人はくじ引き会場のクラブへ。見事、当たりくじの娼婦ヨーヨー(林苑)を選んだのはイック。彼はヨーヨーに一目惚れする。ボスのトウ(チャッピー)はイックにナイフを渡すが、それでは確実に標的を仕留められない。イックとターボは強引に拳銃を手に入れる。しかし、鉄砲玉となった彼らを、別のチンピラどももまた狙っていた…。

いやぁ、わかりやすくホモソーシャルだなぁ。そしてものすごーくはっきりとデジャヴも感じる…(^_^;)。それで思い出すのはやっぱり『いますぐ抱きしめたい』だったり無間道三部作(特に無間序曲)だったりするんだけど。そんなわけで「わー、懐かしーい」なんていいつつ観ていたのである。
こちらはカタギなので黒社会の修羅場なんてほんとに映画じゃなきゃ楽しめないし(現実の中華圏の黒社会はもちろん、日本のヤクザなんかに感情移入はできないよ)、映画の中で描かれる黒社会はやっぱりフィクションの世界。そんな世界だからこそこういうオトコのロマンを託せるんだろうな。
しかし、中華なヤクザの皆さんってどうして敵を殺す時、当人だけじゃなくて家族まで惨殺して根こそぎにするんだろうか、ということを前から考えていた。この映画でもレフティが、ホン配下のフィゴとその一族を自分の手下に皆殺しにさせる場面(フィゴの子供が殺されようとするところはキツかった…)がある。それは古代中国の覇権争いからそのようなことが行われてきたからなんだろうけど、要するに相手を殺すとその子供に復讐されることを恐れてってことか。そこまで非情にならざるを得ない黒社会は恐ろしいが、ホンはそんな掟をあえて遠ざけることで黒社会で大ボスの位置までのし上がってこられたんじゃないかな。家族を守れなければ真のボスになれない、とレフティに告げる場面もそれを考えることで心に響いてくる。…その後の二人には、思いも寄らぬ運命が待っていたのだけど。

一方、イックとターボにはもろに『いますぐ…』のアンディ&学友の影響が見られる。それは特にヘラヘラしながらもイックのためにつくすターボの姿を観ていればすぐわかったし、「もしかして、この二人って十何年前の…」なんてことも感じていた。でも、この二人が『いますぐ…』の完全コピーでなければ、この二人が数年後にあの二人になるというのも、また違うんじゃないかなぁなんて思ったりもしたのだ。いつの世にも香港の江湖で繰り返される歴史的光景?って感じかなぁ。(あ、カッコつけちゃった。というより今回の文章はあいまいな文末ばかりですみません)

しかし、アンディももうボスをやるようなお年頃になったのね…。確かに今年44歳だし、やってもおかしくないんだよな。まぁ、この間観た『愛していると、もう一度』よりは自然に受け入れられたのは言うまでもないわ。昔は似合わねーとか言ってバカにしていた(ファンの皆さんごめんなさい)長髪も不自然に感じられなかったし。シンリン(日本語表記が久々に「ウー・チェンリェン」)とのツーショットは見ていて嬉しかった。
演技を観るのはドラマ『恋のめまい愛の傷』以来だけどスクリーンで観るのは何年ぶりだろう?な学友さん(《金鶏2》観てないもんで)。最初スチールを見た時は「なんぢゃこりゃあー!」と叫んだラスタヘア(つけ毛だよねー)も動くとそれほど違和感がないな。それもあわせた衣装設計にも伊達者っぽい性格が反映されてて面白いっす。
この二人が雨の中歩く姿は…こりゃ確かにたまらん。金像奨でのアンディ入場(学友さんはいなかった)@ブルーカーペットを思い出しちゃったもんねぇ。
次は若者ふたり。ショーン&えぢといえば先にイニDを観ているのは言うまでもない。イニDのときはえぢがよかったけど、今回はショーンがよかったなぁ。ただ黙って立っているだけでも、あの大きな黒い瞳がものを訴えている。無間道三部作のおかげで、ショーンはよくポストトニー扱いされているけど、あの瞳の存在感はトニーとは全く違う種類のものだと思う。うまく説明できないけどね。今回のイックは、どん底の人生から這い上がろうとする意志の強さと、死の影とに怯えるナイーブさを持ち合わせたキャラクターになっていた。
えぢのターボはヘラヘラしながらもイックを守ろうと身体を張る。軽薄だけど惚れた相手(?)には自ら負傷してでも命もかける。敵対勢力にとっ捕まってゲロ吐くまでこてんぱんにされ、ある行為をしろと強要されるシーンは衝撃的だった(あれぐらいグロいシーンは香港映画に全くないわけじゃないけど、見慣れているわけじゃないからねぇ)けど、そこまでさせられるくらい彼のイックへの想いは強いってわけで…って自分で書いてて赤面してきたぜ。
あと、小ネタとしては、エリック兄貴の役名とか、『大丈夫』にも出ていた(風俗ネットカフェのおねいちゃん役かな?)という林苑ちゃん演じるヨーヨーの「(名前は)カリーナ・ラウよ」とか、『PTU』に続いてまたしても拳銃をなくす警官の林雪あたりに笑っていたけど、当然劇場で反応していたのはワタシだけ…トホホー。しょうがないんだけどね。 

最後に、この映画で今年の金像奨で最優秀新人監督賞を獲ったウォン・ジンポー監督(1973年生まれ)の演出手腕についても。
“王家衛の再来”とか言われているらしく(てゆーかそれはパン・ホーチョンだって言われていたじゃん)、映像センスは凝りまくっているし、そんな中でもきちんと物語を描こうとしているけど…実際にはまだまだかなっていう印象も感じるなぁ。まぁ、これが長編2作目ってこともあるし、正当な評価はこれからかもな。しかし、エリック兄貴やアンディ率いるフォーカスフィルムズのバックアップを受けている香港映画の期待の星であるのだから、これからも自己研鑽して香港や世界の香港映画好きの観客をうならせるような作品を作ってほしいと期待して、終わりにするかな。ははははは(なぜそこで笑う?>自分)

最後に私信:はたさーん、以前の記事コメントでお約束した「ワタシ的アンディ映画ベスト5」は、次回の記事で書きますねー(予定)。

原題:江湖(jiang hu)
監督:ウォン・ジンポー 製作総指揮:アラン・タム&アンディ・ラウ 製作:エリック・ツァン 脚本:トウ・チーロン&ウォン・ジンポー 音楽:マーク・ロイ
出演:アンディ・ラウ ジャッキー・チョン ショーン・ユー エディソン・チャン エリック・ツァン ン・シンリン(ウー・チェンリェン) チャップマン・トウ リン・ユアン ラム・シュー

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ワダエミさんの展示会。

先週、東京国際で有志ランチ会に参加したところ、ワダエミさんが『英雄』&『十面埋伏』他で手がけた衣裳の展示会が行われるという情報を入手。そして帰宅後、なんと我らがココログにてこの展示会のblogがスタートしているのを発見!さっそくマイリストに登録したのであった。

リンク: ワダエミの衣装世界 powered by ココログ展示会公式HP

東京展の前売では『英雄』でマギーが着た青(エミブルー)の衣裳の切れ端が特典でつく(チケットスペース購入分のみ&限定)とか。

しかし、日程が…(泣)。上京予定とずれている…。
東京展の後は札幌らしいけど、あとはどこに行くのかな?地元にも来てほしいんだけど…(南昌荘あたりでやってくれないかしらん)。

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『碧血剣』読了。次は『七剣下天山』か、それとも『還珠姫』か?

えー、なんでたった全3巻のシリーズを読むのに約1年もかけてるんだよと某専門家に怒られましたが(苦笑)、金庸の『碧血剣』(リンクは以前の記事)を、東京国際の期間中にやっとのことで読み終わりました(^_^;)。

碧血剣 1
碧血剣 1
posted with 簡単リンクくん at 2005.11. 5
金 庸著 / 小島 早依訳
徳間書店 (1997.4)
通常2-3日以内に発送します。

清代初期、時の皇帝の忠実な部下でありながら、謀反の疑いをかけられて失脚した袁崇喚。生き残った息子の袁承志は、滅清復明を目指して華山派で修業し、さらに伝説の刺客金蛇郎君の忘れ形見、夏青青と出会って金蛇剣を手にする。承志と青青の行くところ、さまざまな人物が現れて一悶着(特に色恋沙汰)を起こしていく…。
てなぐあいのあらすじだけど、これでいいのだろーか?
ワタシは金庸作品ではやっぱり『笑傲江湖』が一番すきなんだけど、これは歴史ネタが絡まないから楽しく読めたんだよなー。よく考えれば『書剣恩仇録』も『侠客行』(これもリンクは以前の記事。まだ感想書いていないわ…)も滅清復明の話だったもんなー。だから進まなかったのか?というのは言い訳なんだけど(笑)。
でもこれ、前も書いたと思うけどやたらと女子キャラが多かったような気がする。で、そのキャラがほとんど承志に言い寄ってくる。青青も女の子(でも金蛇郎君の跡取りということもあって男装している)だし、なんと○○の○○(ネタバレにつき伏せる)である武芸の心得を持つ女の子も承志に惚れちゃうし。なお、ここで活躍した女子キャラのうち何人かは、あの『鹿鼎記』にも顔を出すという。…そーいえばこれもまだ3巻までしか読んでいないんだよなー。でも機会があったら残りの巻を一気に揃えて読むってことで。

七剣下天山 上
梁 羽生著 / 土屋 文子監訳
徳間書店 (2005.10)
通常2-3日以内に発送します。

射雕英雄伝 1
金 庸著 / 金 海南訳 / 岡崎 由美監修
徳間書店 (2005.7)
通常24時間以内に発送します。

で、今は中華小説以外でも読む本がたまっているので、次に読もうと思っているのは、以前も書いた『射鵰英雄伝』『七剣』原作の『七剣下天山』にしようかと思っていたんだけど、なんと、やっとというか今さらというか、これが出ちゃってビックリしたざんすよ!

還珠姫
還珠姫
posted with 簡単リンクくん at 2005.11. 5
瓊 瑶著 / 阿部 敦子訳
徳間書店 (2005.10)
通常24時間以内に発送します。

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今年の国際は、スタンリーさんに始まり、スタンリーさんに終わる。

10月30日日曜日、泣いても笑っても、これが映画祭最後の日。
当初は初日上映のみのゲスト出演だったスタンリーさんが、本日の『長恨歌』上映@コクーンにて再びティーチインを行う!もにかるさんのblogで知り、スタンリーさんの話を聞ける機会は滅多にないし、いいチャンスかも!でも当日券を取るのは大変かも…などと思い、早めに麻布のお宿をチェックアウトして地下鉄&JRを乗り継いで渋谷に向かうと、bunkamura入り口には早くも行列…。よく見ると、コクーン初回上映の『あらしのよるに』(家族連れが多かったー。さすが名作絵本!)、プレスの皆さん、ル・シネマ一般上映整理券待ち、そしてコクーンの2回目以降の上映(『長恨歌』&『愛と卵について』)と、列が並び分けられていた。やはり当日券狙いのnancixさんと共同戦線を張り、10時40分過ぎに無事当日券ゲット(場所は2階中央席の一番上!)。チケット取りに走られた観客の皆さん&必死に会場整理をしていた東急の皆さん、お疲れさまでした。その後は中華電影&トニー好きの皆さんとお茶を飲んだりランチしたりと会場時間までゆるゆる過ごしたのであった。

1週間ぶり2度目鑑賞になる『長恨歌』。
前回の上映では夜行明けがたたって多少記憶があやふやなところも多かったし、その印象でサミーにいい印象を持たなかったのかなーって気がしたくらい、2度目の映画鑑賞では改めて、ホントによい出来だなーっと思った次第。ストーリーのおさらいももちろん忘れなかったけど、曲線が美しい高級マンションのエントランス、幕開けから幕引きまで時代が変わるごとにガラッと変わるサミーのメイキャップやワードローブの多様さ(晩年の老け具合が…という文句さえも出なかったわ)、そしてカーファイ、胡軍、彦祖というタイプの違った3人の男の魅力的なこと!あ、あと、カラーと琦瑶の運命に大きな影響を及ぼす琦瑶の娘ウェイウェイの親友をユミコ・チェンが演じているっていうのも改めて確認できた。いやぁ、再見できてよかったわ。これなら是非とも一般上映してもらいたい気もする。どーでしょうか配給会社の皆さん。ル・シネマや銀座テアトル、シネスイッチあたりの単館で観てみたいですわ。

上映後にスタンリーさんが登場。
サミー&胡軍はとっとと帰った(失礼)のに、スタンリーさんはずーっと東京にいたのかしらん?渋谷駅前でバックナンバーをもらった国際のデイリーニュースで、スタッフと一緒に撮った写真があったもんな。あと、今年は『異邦人たち』で一緒にお仕事した桃井かおり姐さんが審査員もしていたから、かおり姐さんにも会ったのかな?「あ~らスタンリーお久しぶり、お元気?かおりも会いたかったわー」なんていってたらさぞかし楽しかろうな、姐さん。ははは。
とまぁ話がずれてもアレなので、とっととティーチインに愛とツッコミを。

Q:2回目の鑑賞です。前回の舞台挨拶で、監督は「この映画は上海という都市と琦瑶という女性の物語だ」と話されておりました。でも上海という都市といいながら、実際にはほとんど室内のシーンしか出てきません。これにはどんな意図があったのですか?
A:上海は大きな変化を遂げ、未だに変わり続けている。この映画は2004年に撮影したが、やはり上海で1991年に『ロアン・リンユィ(阮玲玉)』を撮ったときとは大きく変わってしまった。我々に与えられた予算は多かったのだが、それをたくさん使って戦後の上海を再現させるわけには行かなかった。そこで原作を読み、映画化を決意した時点で、この映画は室内のシーンを中心に撮ろうと思ったのだ。室内中心にすることで細部にこだわりをいれようということになり、きわめて自然に見せようとした。それは客観的視点でもあり、主観的な要素でもあった。

確かに、往年の上海の姿を現在の上海に求めてはいけない。東京でも同じだ。現在公開中の映画『三丁目の夕日』(これも国際参加作品)は、昭和30年代の東京をCGで再現したというけど、これは日本映画だからできるのであって、中華電影では同じことはできないだろう。CGが使えない分、美術と演技力で勝負する。それは正しい。いや、日本のやり方がいけないってわけじゃないよ、念のためにいうけどね。
というわけで、お次は美術の質問、というか、スタンリーさんの影に必ずウィリアムさんあり!な質問(笑)。

Q:スタンリーさんは86年の『地下情』から、美術デザインの第一人者ウィリアム・チャンと仕事をしていますが、この二人の20年はどうだったのでしょうか?
A:『地下情』の頃、ウィリアムはすでに有名なデザイナーであり、自分は映画2作目の新人監督だった。だから、彼と仕事をするのはおこがましいし、美術は彼の専門だったから、あれこれいえなかった。実はその後の『ルージュ』と『阮玲玉』では一緒に仕事をしていないんだ。ワタシたちは『異邦人たち』からコンビを復活させた。二人とも、細かいことにはこだわらない主義だ。今ではとてもリラックスして映画を撮るようになって、最初の頃の緊張感はなくなったね。お互いに変わっていったことはいろいろあるけど、互いの信頼は全く変わっていない。
いい映画っていうものはディテールで勝負するもので、細部がきちっとしていなければならない。ある映画を観て、物語などが記憶に残っていなくても、雰囲気や場面に出てくる小道の様子が不意に蘇ってくることがある。ウィリアムはそういうものを産み出す力を持っている。彼とはこれからもいい仕事をしていきたいね。

ワタシを含め、ウィリアムさんのファンは多いと思うけど、さすがに本人を見たこともなければ会ったこともない。現代の香港または中華電影を語る上では欠かせない人なんだけど、一般的にあまり紹介されてないからまだまだ無名…だと思う。でも、こうやって本人を知る人から語ってもらえると、ちょっと本人に近づけるような気がする。ウィリアムさんの映画美術がもっと有名になって欲しいと思うし、でもこのままでもいいかなぁ、日本映画の仕事なんて入っちゃったらすっごく忙しくなりそうだし(なんてったって日本には種田陽平さんがいるもんなー)…なんて思った次第。

Q:今までの作品と比べると、人物のアップがものすごく多いと感じました。クローズアップの多用は俳優の演技力の力量に頼るところが多いと思うのですが、この点において苦労したことはありますか?
A:ワタシは原作小説の人物像にひかれて、映画化を決意した。またかつては『ルージュ』ではアニタ・ムイ、『赤い薔薇、白い薔薇』ではジョアン・チェンとヴェロニカ・イップにもひかれて彼女たちを撮りたいと思ったし、今回もそれと同じことだった。原作を脚本化するとき、それがコメディになるのか、悲劇になるのかは、その人物の動き次第だ。その人物にひかれたということは、それがクローズアップされることが必然的に多くなるのだ。ワタシは、クローズアップは映画の命であると考えている。俳優たちは五感をフルに使って演技する習慣がある。それをすることは俳優の命ではないだろうか?
『阮玲玉』のマギーの場合は、30年代の雰囲気を出してもらいたくて、眉を剃るように指示をした。彼女は最初は嫌がっていたが、次第に役にのめりこむようになってからは、自ら剃るようになった。俳優は表情が命であるが、もともとの顔を変えるのは難しい。

うーむ、ちょっと散漫なまとめ方になっていてすみません。
クローズアップで人物を撮るということは、難しいなぁと思うことがある。TVだとそれでもいいんだろうけど(それをやりすぎると演技力がつかないということもあり)、映画だとクローズアップで演技することは難しいと思う。でもその人物を魅力的に撮りたい。梅姐を、陳冲を、ヴェロニカを、マギーを、そしてサミーを。スタンリーさんは独自の美意識を持っていて、いつも女優の美しさにこだわるなぁと感じることがよくあるのだが、それは彼女たちの持つ魅力にひかれ、それを画面の中で最大限に輝かせようとするからかな。美しいものとして女優を魅力的に撮る人はいい。そんな映画人がもっと世界にいてほしい。

スタンリーさんはどんな質問でも丁寧に答え、熱弁を振るっていた。まー確かにねぇ、前回の舞台挨拶&ティーチインでは時間も押していたし、それってどーよな質問?もあったから、自分の言いたいこともなかなか言えなかっただろうし、映画に対して非常に真摯な姿勢を持って鑑賞する東京の観客は、中華圏の観客とも違うだろうから、どんな質問を投げかけられても、ついつい話に力が入っちゃうのかもなー。と、スタンリーさんの話術に聞き入っていたら、時間はあっという間に過ぎて最後の質問。

Q:ワタシは梁家輝のファンなのですが、監督作品での彼はヒロインを見守る役割が多いと感じる。『阮玲玉』以来13年(監督曰く14年)ぶりに一緒にやった彼の仕事はいかがでしたか?
A:二人とも歳をとったよ(笑)。でも、彼はいい役者になったね。演技力のある人で、正確にやってくれた。サミーはこれまでラブコメばかりに出ていたから、今回は一転してこの映画に出たので、彼は彼女をサポートして励ましてくれた。40テイクも出した場面もあったんだが、カーファイはずっと彼女のそばにいて励ましていたんだ。彼は「自分さえよければ後はどーでもいい」という人間じゃない。これは『阮玲玉』の時には気づかなかった。だから、今回の彼の行動にはとても感動したんだよ。

ここ1年で観たカーファイ出演作品(新作)は『大丈夫』 『柔道龍虎榜』とこの映画。『大丈夫』ではとんでもない演技に大笑いしっぱなしだったけど、『柔道』での落ち着いたオトナ演技はよかった。90年代前半では日本じゃ一番有名な『ラ・マン』から『大英雄』までものすごい幅の演技を見せてはっちゃけてくれていたけど、さすがにもうすぐ大台だから、昔みたいな演技もできないもんねー。そういえばちょうど10年前に国際で上映された日港合作『南京の基督』で最優秀女優賞を獲った富田靖子ちゃんが、やはり共演したカーファイについて「いろいろ面倒見てもらっていい人だったー」といったようなことをインタビューで言っていた気がしたので、カーファイって優しいんだなーと改めて思ったわ。

ティーチインの後はなんと即興サイン会まで実施する大サービス。ああ、こんなことだったら『藍宇』のVCDを持ってくるんだった!でも何にサインしてもらってもいいのね♪ということで、3日間ティーチインで大活躍したメモ帳(ちなみに2003年版新潮文庫マイブック。笑)にサインしてもらい、握手までしてもらえちゃいました。いや、ホントに嬉しかったですよ。
謝謝関錦鵬導演、我非常高興!

そんなわけで、スタンリーさんに始まって終わった今年の東京国際映画祭。メイン部門の盛り上がりなどはよくわかんないんだけど(ハリウッド系ゲストが少なかったから注目度が低かった?イ・ドンゴン君やヨンエちゃんも来なかったっていうしね)、個人的には去年より大盛り上がりの4日間でしたわ。去年はずーっと一人だったってこともあったけど、今年は友人やネット仲間の皆さんといろいろ話せたので楽しかったです。やっぱり映画で盛り上がれるのは嬉しいもんねー。
お互い3週連続の上京お疲れ様ですのnancixさん、初日の朝飯友となったgraceさん、2週間ぶりの盛り上がり再び!状態だった中華電影&トニー迷の皆さん(すみません、まとめてしまいました)、お会いできなかったけどきっと同じ会場のどこかで同じ映画を観ていた中華電影系bloggerの皆さん、前半戦の戦友であった盛岡のHさん、ステへの愛復活ってホントですか?の東京のMさん、短い時間ですがお話できて嬉しかったlookさん、そして野崎先生、ホントにホントにありがとう&お疲れさまでした!
また来年の国際か、それとも別の機会でもお会いしたいです。

というわけで、ヒルズとbunkamuraで中華電影への愛をさけびまくった今年の東京国際映画祭の、愛とツッコミの観戦記はこれにて終了。

でもワタシの電影無間道は、まだまだ終わらなかった…。
とりあえず来週末は、地元で『ベルベット・レイン』、そして約2週間後はフィルメックスの『SPL』だぁー!

写真左は『藍宇』VCD、右は『異邦人たち』パンフ。うう、ミシェルの横のすーちーも入れたかった…。pht0511032151.jpg

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愛していると、もう一度(2005/香港)

国際後半戦は、28日が香港イースター映画2本立てだったんだけど、29日はフォーカスフィルムの大プロデューサー様アンディ先生大特集(でも2本立て)だった。以前も書いたけど、今年のアジアの風は裏アンディ映画祭(爆)。この映画と先に挙げた『靴に恋する人魚』、そして『Aサイド、Bサイド、シーサイド(17歳的夏天)』のプロデュースを手がけ、さらにはインドネシア映画『ジョニの約束』の世界配給権も獲得した。また、今回の参加作品じゃないけど、“フォーカス:ファーストカット”では『モンゴリアン・ピンポン』のニン・ハオ監督と『ベルベット・レイン』のウォン・ジンポー監督の次回作、そして星仔の片腕、おデブのラム・ジーチョンの初監督作品もサポートする。そーいえば浅野忠信くん主演の新作(確かタイ映画)もフォーカスがプロデュースするんだっけねー。

そんな八面六臂の大活躍を見せる、いまやすっかり香港電影界の顔役(笑)となった大プロデューサー様の最新作が満を持して登場!
…しかし件の大プロデューサー様は、次回作撮影のためにご欠席(涙)。うう、せっかくのオーチャードホールの1回こっきり上映なのに。(ちなみにオーチャードでの映画鑑賞は5年前の『花様年華』以来。『靴』を観たシアターコクーンなんて『キッチン』以来8年ぶりだし)

コウ(アンディ)は腕利きの外科医。彼にはチーチン(阿Sa)という新婚ほやほやのかわいい若妻がいるが、仕事に追われて予定をキャンセルする日々が続いていた。今日も「仕事が終わったら食事しよう」とチーチンに言うが、北京の医師との会談が入ってまたいつものようにキャンセル。免許取立てのチーチンは病院まで車で来ていて、コウからの電話に「108回目のキャンセルかぁ…」とつぶやく。しかし、二人の次回のディナーの約束は永遠になくなってしまった。暴走した車と交通事故を起こし、チーチンはそのまま帰らぬ人になってしまったのだ。
それから6年後、外科医を辞めたコウはチーチンの父親リョン(シウホン)が勤める救急隊に入隊し、隊長を務めていた。チーチンとの約束を守るかのように、彼は時間を遵守する人間になっており、隊員(林雪)たちからも信頼されていた。ある日、任務を終えて本部に帰ろうとするコウたちの救急車の脇で、高速に入ろうとした車がポールに激突した。最初は他の車に任せようとしたコウだったが、思うところがあってその場で救助する。大破した車の中にいたのはユンサム(チャーリー)という名の女性で、かつて心臓の手術をしたことがあるという。ユンサムを病院に運んだところ、コウは元同僚の心臓外科医ホー(アンソニー)がユンサムの主治医だったことを知る。そこでふと、コウはチーチンが臓器ドナーの手続きをしていたことを思い出す。ホーに問い質したところ(守秘義務はどーしたんだ!)、ユンサムは香港で始めて生体間心臓移植に成功した女性であり、彼女にはチーチンの心臓が提供されたのだ。しかし、その心臓は拒否反応を起こしていた…。
妻の心臓を持つ女性ユンサムがどうしても気になってしょうがないコウは、思い余って彼女のあとをつけ、家にまで侵入してしまう(オマエはラウか?それともシュンか?とツッコミ)。リビングの雰囲気が自宅(正式には同居していたチーチンの両親宅)のそれによく似ていたことから、彼はチーチンとの幸せな日々を回顧する。さらにユンサムの部屋に入った彼は、彼女が夫とうまくいっていなかったことから故意に事故を起こして自殺することを考えていたことを知る。さらに彼女の夫であるカリスマヘアデザイナーのデレク(アンディ二役)は、自分と全く瓜二つであった。そこでコウはある決意をする。彼女を悲しませたままあの世に向かわせてはいけない。自分の妻も再び死んでしまう。だから自分がデレクになりかわってユンサムにつくしてあげよう、そして彼女の中のチーチンを慰めてあげよう、と…。

オープニングクレジット、「黄秋生」「林雪」の名前が浮かぶたびに波のようなサワッとした歓声が上がる。いいなぁこの雰囲気、「アンソニーに林雪、この映画でいったい何役やんの?」って感じで。
『ER』のグリーン先生のように、緑の医療着(って言うのかな?プルオーバータイプの上下)に白衣を羽織ったコウ先生登場。医者役アンディってあまり観たことがないからちょっと新鮮。チーチンは専業主婦だったのかな?しかし実年齢を考えるとかなりヤバいんでは、この設定。ヘタすると幼な妻だぞ。ピノコまではいかんが(でも阿Saなら意外と「ちぇんちぇー」が似合うかも。イメージ的に)でも、この二人の幸せな日々はあっけなく終わりを告げる…。
そしていつの間にか救急隊員になっているコウ先生。ここではベレー帽姿の凛々しいアンディが見られる。制服フェチはご注目(こらこら)。そんなわけで、この後はいろいろ説明しなくとも華麗なるアンディファッションショーに突入する(ってなんか違うな)。なんといっても極めつけは黒い上下に無精ひげといういかにもーなスタイルで、自分より背の高いモデルたちと並んで歩くカリスマヘアアーティスト姿でせう!キャーアンディったらステキー…って本気で言っていないのがミエミエかしらん。ゴメンねファンの人。

…しかし、このアーティスト・デレクと、元外科医の救急隊員コウ。確かにアンディは一人二役で頑張っていたんだけど、妻の心臓を持つ女性も愛してしまうコウと、派手な業界に身を置くゆえに自由奔放でいながらも、実はちゃーんと妻を愛しているデレクに何の違いがあるのか知らん?言い換えればコウもデレクもユンサムに対する愛のベクトルが全く同じだったから、えー?こんなんでいいのぉ?と思ったのは事実。現にティーチインでもそのことについて指摘があったんだけど、それに答えたダニエル・ユー監督曰く「これは意図的にそうしたんだ。ホントはデレクをもっと冷たいヤツにしたかったんだけど、アンディはファンのことを考えると冷たくできないって言っちゃって…」とのこと。…ううう、冷たいキャラでもファンは喜ぶんじゃあーりませんか、大プロデューサー様よ。

ユンサムの最後の日々をデレクとして一緒に過ごし、かつて彼がチーチンにしてあげられなかった償いをするかのごとく、ユンサムを愛するコウ。ああ、こんなふうに愛されたら、女性も本望だよねぇ…などと珍しくこんなことを考えて胸がキューンとしちゃったんだけど、ふと我に返った。「…しまった!アタシはセカチューやいまあいみたいな純愛ものには全然泣けず、ウルトラマンの感動エピソードにワーワー泣く特異涙腺システムの持ち主だ!ここで泣いてはいかん!まんまと大プロデューサー様の企みにハマるところだったぜぃ」と冷静になったのである。そんなワタシの隣の席の女性がワーワー泣いていたのは、もちろん言うまでもない。
しかし大プロデューサー様、サービス大魔王と化してますよ。哀愁の鼻血野郎時代のようにプープー鼻血は吹いてくれないけど、チーチンの容態が急変した時に選択室に水汲みに行き、あふれた水に脚を滑らせてすっ転ぶシーンになぜそんなに力を入れるんだ!?これもティーチインで質問が出たんだけど、ダニエルさん、「だいじょぶだったけどね(^_^;)」と前置きしてからすっ転びシーンの撮影秘話を披露してくれた。最初はワイヤーで吊る予定だったのが、大プロデューサー様曰く「説得力がない!」といって自らすっ転ばれたとか。…す、すごい男優魂ってゆーか、全身サービス大魔王だな、アンディよ。それ以外にもアンディとダニエルさんは全ての場面で話し合って、アイディアを入れてったそーですよ。ほんと、今後アンディのことは哀愁の鼻血野郎からサービス大魔王に呼び名を変えてあげなくちゃ。サービスサービス♪(古っ!)

おっと、他の人のことについても書かなきゃ。阿Saについてはさっき書いたのでパス。
チャーリーは…『ニューポリ』以降儚げな役どころが続くなぁ。いや、大人の女になったからステキではあるんだけど、ちょっとこのイメージで固定されちゃってもなぁって気もあるのよ。でもステキだ。いつかまたトニーと共演してねー(^o^)丿。
アンソニーさんはどことなくジョージ・クルー二ーを知的にしたようなイメージの心臓外科医(しかも襟元には蝶ネクタイ!)うーん、知的だわ。ウォン警視のようなダンディさとも、文太パパや小寶パパのようなセクシー&パワフルさともまた違って楽しいわ。林雪はどこで何をやっても林雪なので、見かけたらすぐに手を振りたくなっちゃうわ。
シウホンさん演じるチーチンパパも、娘を失った悲しみから立ち直れずにいる父親を印象的に演じていた。ユンサムと会った時の、奥様と一緒に金色のチャイナ服を着たところの雰囲気がよかったなぁ。

そんな感じのサービス大魔王によるサービス過剰な愛の巨編。ティーチインではどんな質問があったのか?というわけで、上記で書いたこと以外のQ&Aに愛とツッコミを。ゲストである監督のダニエルさんはアンディのフィルムパートナー。昨年の『十面埋伏』でもプロデュースを手がけ、その時にアンディと共に来日しているとか。彼はアンディの「ホントはここに来たかったのだけど、自作の準備に入ってしまって無理だった、ゴメンね。そして映画を観て泣いてしまった方、泣かせてゴメンね」というメッセージを持ってきてくれた。

Q:この映画を作ったきっかけは?
A:ワタシは小さい頃から恋愛小説が好きでよく読んでいた。男としては、愛する人には優しくしてあげなきゃいけないと思って、この映画を作ったんだ。

ちょっとちょっと聞きました?「愛する人には優しくしてあげなければ」。これ、知人の男どもに聞かせてやりたい台詞ですわ。

Q:アンディが二役を演じる際、どんな指示をしたのですか?
A:彼とは昔からの仲で、お互いに性格もわかっている。だから演技のハードルを上げて正反対の性格を持つ役柄を要求したら、見事にやってくれたんだ。

なるほど、確かにコウとデレクは正反対。でも愛のベクトルは…ってまたさっきの繰り返しになるので以下略。

Q:(香港のファン。質問は広東語)失意のアンディがオレンジを切るシーンがあったけど、その意味は?
A:ワタシはいろんな表現をするシーンには、小道具を使うんだ。よく「悲しいときには心が酸っぱくなる」というので、いかにも酸っぱそうなオレンジを使ってみたんだ。

アンディもこのシーンが気に入っているらしいよ。

Q:相手役に阿Saとチャーリーをキャスティングした理由は?
A:アンディはいろんな女優とたくさん共演しているから、共演女優を探すのが大変なんだ。そこで今回は今まで共演したことがない女優を求めて、チャーリーと阿Saを選んだ。チャーリーは昔彼女のMTVを撮ったことがあるんだけど、悲劇的な役柄がピッタリだと思ったんだ。また、阿Saはアンディと比べるとすっごく若いんだけど、アンディ迷には彼女の年齢くらいの若いファンも多い。そこで、「華仔も若い女優と共演できるんだよ」という証明を見せたかったんだ。二人ともとても美しく、演技も素晴らしかった。

10歳くらい違うはずのチャーリーはわかるんだけど、やっぱ阿Saとじゃ犯罪的だよ、ダニエルさん…(苦笑)。そして最後の質問。

Q:このコンビの次回作はなんですか?
A:まず、フォーカスフィルムとしてはいろんなプロジェクトを練っていて、若い監督や俳優たちと、いろんなことをやっていきたいって思っている。この映画祭に来る前にも、いろいろとリサーチして2作品(『AサイドBサイド』と『靴』かな?)持ってきた。これからもいろんな作品を映画祭に持ってきたい。
来年作る予定の作品は、アンディとマギーの共演もの。自分はプロデューサーに回って、監督はジョニー・トウにしてもらうんだ。お楽しみに。

おお、いいニュースを聞いた!アンディ&マギーの共演ってもしかしたら『欲望の翼』以来では?それに演出がジョニーさんっていうのも気になる。コメディでいくのか、どシリアスで行くのか?そのへんもあわせて楽しみが増えたのであった。

まー、映画自体はさっきも書いたけど、とーってもアンディらしいサービス満点映画。でも、この映画自体やその製作姿勢からも今後の香港&アジア映画の未来の姿が垣間見える。そして、香港映画の復活も遠くないんじゃないかなぁなんて思わされた映画なのであった。応援してますよ、ダニエルさんに大プロデューサー様!

というわけで、以上で今年の東京国際鑑賞分の映画自体の感想は終了。ただし、30日(日)上映の『長恨歌』でスタンリーさんのティーチインを聞いたので、次回はそっちをアップして映画祭の総括に入りますわ。というわけで、もーちょっと続く…。

原題&英題:再説一次我愛[イ尓](All about love)
監督:ダニエル・ユー 製作&出演:アンディ・ラウ
出演:チャーリー・ヤン シャーリーン・チョイ アンソニー・ウォン ラム・シュー ホイ・シウホン

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靴に恋する人魚(2005/台湾)

今年は、デンマーク出身の世界的童話作家、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの生誕200周年。幼い頃の記憶をたどると幼稚園の絵本や母さんの夜話、図書館にあった童話全集、そして♪アーレアーレアンデルセン、アーレアーレアンデルセン、ミースターアンデルセン…というノー天気な主題歌に乗って、キャンティ&ズッコのおかしな二人組がアンデルセン童話の世界を旅するアニメ『アンデルセン物語』などで、ワタシは彼の世界に親しんできた。今の子供たちは、NHKで放送中のドラマティックなアニメ『雪の女王』でアンデルセン童話の数々を観ているのかなぁ…。しかし、アンデルセンの童話にはなぜかハッピーエンドが少ない。大きくなってから知った彼の生涯もまた、女性を愛せずに一人放浪し、ずっと童話を書き溜めてビンボー暮らしをしていた…というもので、それじゃー悲しいに決まっているよ、と思った次第。

で、いきなりアンデルセンの話から始めたのは理由があって、台湾の新鋭女性監督ロビン・リーが、アンディ・ラウ率いるフォーカスフィルム(映藝娯楽有限公司)が立ち上げたアジアの新人監督支援プロジェクト“フォーカス:ファーストカット”に選ばれ、ローバジェットで作り上げたこの初長編映画『靴に恋する人魚』には、人魚姫やマッチ売りの少女など、アンデルセンの童話のモチーフがちりばめられたつくりになっていたのが面白いと思ったからだ。そこでティーチインの時に「もしかしてアンデルセン生誕200年にインスパイアされました?」と聞いたところ、ロビン監督からは「脚本は2年前にできていたから、その事実は知らなかったの。だからそれは全くの偶然」という答えをもらったのであった。なるほーど。また、「童話をモチーフにすれば、みんなに喜んでもらえるんじゃないかなーと思って、こんな作りにしました」とのこと。ほぉぉー。
え?それでこの映画って、いったいどんな作りだったんだって?それはねぇ…。

昔、といっても1週間前の昔(多分)。台北にドド(朶朶。発音はduoduoなので「トゥオトゥオ」と表記すべきだろうけど、打つのが大変なので字幕に従います)という少女がいた。少女は表に出るよりも絵本を読んでもらうことが大好きで、毎日両親に絵本を読んでもらっていた。なぜ彼女が外に出なかったのかというと、先天的に足が不自由だったから。それを悲しんだ両親は『人魚姫』だけは彼女に読ませまいと避けていた。しかし、多くの絵本も読みつくされ、ついに『人魚姫』の出番がやってきてしまった。人間の王子に恋をして、美しい声と引き換えに魔女から脚を得たくだりに自分の運命を重ねておびえるドド。そんな彼女も、脚を直すための手術をすることになる。どーしても人魚姫トラウマから逃れられないドド。オペの最中に、彼女は夢の中で魔女(タン・ナ)と出会い、「幸せになりたければ、黒い羊と白い羊を手に入れなさい」と告げられる。その言葉に勇気をもらうドド。もちろん、オペは大成功。もう成功しすぎてしまって、ドドは世界にもまれな美しい脚の持ち主となってしまったのだ。
成長し、一人暮らしを始め、立体絵本の出版社で事務(といってもほとんど雑用)の仕事を始めたドド(ビビスー)。彼女の周りは折り紙マニアのジャック社長を始め、パソコンに首ったけのデータ入力エンジニア×2、社長命令で原稿を取りに行くけどめったに顔をあわせないイラストレーターのビッグキャットと、変な人ばかり。そんな彼女の楽しみはお給料でかわいい靴を買うこと。女主人(タン・ナ2役)が切り盛りしているお店の靴たちも彼女に買われるのを楽しみにしている。家には彼女に買われた靴たちが並べられ、ある意味台湾のイメルダ状態。仕事はきついけど、靴を買って眺めてはいてお出かけするのが、彼女の幸せだった。…ここまでは。

ある日ドドを小さな悲劇が襲う。虫歯ができたのだ。ジャック社長は彼女に痛み止め(どー見ても正露丸)をやり、ビッグキャットも正露丸をくれる。そして彼女は親切にも、近所のスマイリー歯科医院を紹介してくれたのだ。歯医者は苦手だけど、治さなきゃ後が大変と治療に行くドドは、ここで運命の人に出会う。痛みに耐えかねて蹴飛ばしたミュールを拾ってくれたのは、美形の歯科医スマイリー(ダンカン)。彼こそが、ドドの運命の王子様だったのである。たちまち二人は恋に落ち、結婚して小さな家に引っ越す。そして王子様とお姫様は、いつまでも仲良く暮らしましたとさ…というのが前半。

そう、ここで終わっちゃ意味がない。お互いにラブラブな二人だけど、スマイリーはドドの靴フェチぶりと衝動買い癖を大いに心配する。このままじゃ家が靴で埋まっちゃうよ。スマイリーはドドに靴の買い控えを薦め、彼女もそれに従う。でも行きつけのお店の靴がワタシを呼んでいる!と仕事帰りにお店に寄り、諦めて会社に戻る途中に、人生最大の悲劇がドドを襲う…!

♪幸せって何だっけ何だっけ…ポン酢しょうゆのことじゃない。
この映画のテーマは、かつてさんまちゃんがCMでも歌ったような「幸せってなあに?」ってこと。これって、単純なようでいて、実はかなり難しくて答えにくい哲学的なテーマのような気がする。(そうか?)
ドドの人生は山あり谷ありの大波乱。好きなものに囲まれて、ステキな男の人と出会えてラブラブでいられることが本当の幸せなのだろうか。いや、そうじゃない。某相田みつをじゃないけど、幸せであるということは自分の心が決めるもので、自分の身に最大の悲劇が起こったときも、そこから立ち直れないまま暗ーく沈んでいちゃ救われない。魔女が彼女に告げた“幸せの白い羊と黒い羊”は具体的に提示されないけど、観客はそれぞれ、ドドが出会って手に入れたものの中にその羊を見出すんだろうな。で、ワタシが何を見出したかというと、これを言っちゃつまらんから内緒ね(笑)。

そんな哲学的テーマをおいといても(こらこら)、この映画の見どころはたくさんある。
まずは、なんと台湾電影金馬奨の最優秀美術デザイン賞部門にノミネート(他には最優秀視覚効果賞部門もノミネート。ちなみにライバルはなんと『功夫』に『七剣』!)されたポップでキュートな美術。ジミーの絵本を思わせるようなスマイリー歯科医院、赤で統一された靴店などが印象的。監督曰く「美術と衣装はワタシの8年来の友人が手がけた。“まるで童話”というスタイルを狙ったの。今までの台湾映画にはあまりにも暗くてきたない作品が多かったから、ワタシたちはピンキー♪な作品を撮りたかったの。…でも、お金も人もなくて大変だった」とのこと。…うんうん、確かに今までの台湾映画の美術は「台湾にウィリアム・チャンやハイ・チョンマンはいないのか!」と叫びたくなるくらい暗かった。ホウちゃんもヤンちゃんもミンリャンも、もーう(-_-;)。
お次はローバジェットの割にはかなり豪華なキャスト。ビビスーは台湾に戻って以来久々に顔を見た(F4仔仔と共演のドラマ『Love Storm』観ていないので)けど、やっぱしかわいいなぁ。童話の主人公のようなクラシカルなまとめ髪とふんわりした衣装、そしてどんな靴でも履きこなす美脚!(…しかし、外反母趾はまだ治っていないんだよねー?と同じく外反母趾持ちでハイヒールのはけない自分は心配する)
彼女の起用は監督以下スタッフ全員一致で「彼女はもう若くはないけど母親役まで演じてもらえるし、顔がかわいいので“人魚”にピッタリだと思ったの、この話を持っていったら、彼女もすっごく気に入って、話をして5分で『やりたい!』といってくれたわ」(監督談)とのこと。うんうん、女子って幾つになってもかわいいものが好きだもんね(含む自分)。ワタシがビビスーでも同じことを言うよ(おいおい)。
『七剣』では出番が少なくてその魅力がよくわからんかったダンカン君。彼の魅力はすっと通った鼻筋か。某ぺ様以上に笑顔のステキな王子様なんだが、カーテンを洗って縮ませてしまったり、ドドがせっかく心を込めて作ったデコレーションケーキ(羊型!)を箱ごとガサガサ振ってガッカリさせる(これは連続ギャグになっている)うっかりさん。でも、笑顔もイヤミにならない爽やかさがあったなぁ。ダンカンはビビスーから紹介されたの起用で、同じ製作会社で『僕の恋、彼の秘密(17歳的天空)』を作った縁もあったとか。あとは『ラブゴーゴー』の失恋娘タン・ナ、東京国際映画祭グランプリ受賞作『最愛の夏』('99)でデビューした李康宜、シンガーソングライター朱約信など、ちょっと知ってる顔の登場も楽しかったなぁ。
さらなる驚きはナレーション。なんと、大プロデューサー様アンディ先生が北京語で手がけていらっしゃいました!大驚きでしたわよ、ホントに!

でもほんとにかわいかったぁ。やっぱ人生、こーゆー映画も必要よ。
同じかわいい系映画でも『アメリ』ほどひねくれていないし、ストレートにかわいいって言えちゃうからまたいいんだよ。なんだか噂によるとぺ様の日本事務所がこの映画の配給権を買ったんだとか言うけど、GAGAかアルバトロス(え?いいのここで?)に配給協力してもらって韓流をしのぐ勢いのプロモーションをしてもらいたいもんだわ(以上かなり冗談入ってます)。

ラストに、本文中で紹介できなかったティーチインについて愛とツッコミ。ロビン監督は元女優?と思わせられるような美人さん。多分20代後半と見たんだけどいかに。フォトセッションもなんだかお茶目な行動をしてくれてましたよん。うーん、監督萌えー(爆)。

Q:この映画のロケ先はどこですか?エンドクレジットを観ていたら「新竹」とあったのですが、どこでしょうか?
A:新竹は動物園のシーンだけで、あとは台北で撮りました。あの動物園はすごく小さいんだけど、雰囲気のいいところなんですよ。あと、ポストのあった草原と道も台北で撮りました。ポストは借りたもの。現地上映でも「ロケが台北らしくない」って言われたんですよ。

うん、確かに台北らしくなかった(^_^)。台湾ドラマを観ていても、街の雑踏よりも郊外の一軒家がよく出てくるので、あー、台湾でもこーゆー場所があるのかなぁって思うもんなんだけどね。

Q:アンディはプロデューサーとしてこの作品にどう係わっていたんですか?
A:これは新人監督養成プロジェクトなので、とりあえずお金かな。でもスターTVも出資してくれたの。それぞれもらったお金は少なかったけど、次作ではいっぱいもらいたいわ(笑)。少ないお金で美術や特撮に力を入れた。靴が泣いたり笑ったりする場面に特撮を使ったのよ。
Q:ラストは数年後という設定なのに、人や子猫が歳をとっていないのはなぜ?
A:それも予算の関係です、はい(^_^;)。でも、人間が変わらないのは意図的なの。
Q:本編に登場するたくさんの靴、どこかのメーカーとタイアップしたの?
A:そうしたかったけど、ひとつのメーカーに頼むとみんな同じ靴ばかりになってしまうのよね。だからかわいい靴を借りてきたり、フツーの靴にスタッフが装飾を加えたりしていたの。

うーむ、お金の問題は厳しいなぁ…。でも、たとえローバジェットでも、創意工夫を凝らしたりすれば、こんなステキでかわいい映画ができるんだよねー。日本のインディーズフィルムメーカー(特に女子)の皆さん、これはためになるかもよ。そして最後の質問。

Q:これから撮りたい映画は?
A:アイディアは二つある。そのうちお金があったら撮りたいのが“DNAがワタシの愛を変える”というテーマのもの。潔癖症の女の子がDNA変換を促す薬を飲んでものすごーく不精な男に恋してしまうんだけど、はたしてそれで幸せなの?っていう話を考えているの。これは、ワタシの女友達の永遠の悩みでもあるのよ。

うーむ、SFだなぁ。ってゆーよりヘンだなぁ(爆)。どーゆーキャスティングがいいかな?香港キャストでもいいよねきっと?
でも、ロビン監督のテーマってやっぱり「ホントの幸せってなんだろう?」なんだね。

我希望看[女尓]拍的新電影!謝謝!

原題&英題:人魚朶朶(The shoe fairy)
監督:ロビン・リー 製作&ナレーション:アンディ・ラウ
出演:ヴィヴィアン・スー ダンカン・チョウ タン・ナ リー・カンイ チュー・ユエシン

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AV(2005/香港)

この映画の香港でのキャッチコピーは日本語で「世界の中心で、セックスをさけぶ。」(大爆発)
昨年の東京国際アジアの風で注目された“香港の宮藤官九郎”改め“美肌映画監督(友人Mさんの言葉からヒントを得て命名)パン・ホーチョン待望の新作『AV』は、まさにこのキャッチコピー通りの快作であり、個人的に女子の視点から観ると、「ああ、オトコの子って、やっぱりおバカよねぇ…」と思いっきり「バカ」に力を込めて呟きたくなる作品であった。

香港バプティスト大学に通うジェイソン(黄又南@Shine)、チーオン( 『The EYE』のローレンス・チョウ)、ガウポウ(エリック・ツァンの息子、デレク・ツァン)、フェイは就職にも女の子にも縁が薄いダメダメ君の大学4年生。そんな4人が集まるといつもろくでもない話が始まる。ある日、4人は映画学科のカーロッ(徐天佑)が卒業制作と称して好きな女の子を現場に呼び、彼女を騙して濃厚なラブシーンを撮ったことが大学側に知られて強制退学させられたということを知り、彼のところに行く。そのことにヒントを得た4人が思いついたのは、「日本からAV女優を呼んでオレらでAV作ったらやらせてもらえるんじゃねーか?」というホントに大バカとしか言いようがない企画。AVDVD屋で偶然に発見した彼らの天使の名は天宮まなみ(本人)。普段は何をやってもダメダメな4人は、早速学生企業援助ファンドを悪用(!)して嘘の会社を立ち上げ、まずは彼女のマネージャーである暉峻創三(!もちろん同姓同名で、我らがアジアの風ディレクターご本人様ではないのは言うまでもない)とコンタクトを取る。しかし暉峻は彼らが提示したギャラに首を縦に振らない。そこで4人は暇を持て余している友人たちに動員をかけ、監督を専門家のカーロッに依頼すると、どんどん話が大きくなってきて…。

まず、最初にホーチョンによるティーチインの一部の引用から話を始めたい。詳細はまた後でね。

Q:この映画で描かれている香港の若者の実態が面白かった。ところで、劇中では「日本人はスケベだ」って言っているけど、実際の日本のイメージもその通りなのか?
ホーチョン:いや、そんなことは思っていないよ。でも、実際の香港の若者も、そして自分自身もスケベだよ。
深沢寛(共同脚本):それにね、日本と香港のAVって全く違うからね。

うーん、これはワタシも知りたかった問題。
確かに信和中心に足を運ぶと、明星グッズのフロアからちょっと離れたところに日本の海賊版AVが堂々と売られている店がある。それに、過去にも幾つもの香港映画で「日本人=スケベ」という短絡的イメージで捉えられたものもあった。
実はかつてワタシも台湾でAVを観た経験がある。ホテルでTVのチャンネルをザッピングしたら、普通は視聴制限がかかっていて観られないはずのアダルトチャンネルが写って、そこで展開されていたのは、明るくてベッドだけしかない部屋で身体も鍛えられてなくて美しくない全裸の男(でも顔はまぁまぁだったな)がうつ伏せの全裸女子に馬乗りになってせっせと腰を動かし、その下でアニメ声の女子があーんあーん言ってる姿だった。あと、すでに20代後半と思しき女子がセーラー服を着て脱がされてたのもあったなぁ。そのときワタシは思った。

…とここで「AVって愛がねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」と暴言を大爆発させようと思ったのだが、かなりヤケクソ気味になってしまうし話がずれまくるし変なところからコメントやらトラバスパムとかきそうなので、あえて思ったことと言わないことにした。ってすでに↑で言ってるけど、まぁ気にすんな。

そんなわけで(どんなわけだ)この映画の主人公4人組の設定に超説得力があったと感じたのは言うまでもねぇ。…しかも、そのあたりは妄想で終わらせるのがフツーなのに、いくところまで行くのかオマエらは。あきれたを通り越して感動するぜ、ったくよ。
しかーし!そんな設定や一見ご都合主義なストーリーを飛び越して、実はこの映画は教養映画だったんだ!という面にも気づかされた。

最初は遊びのつもりだった。そのために出資側を騙してベンチャー企業を立ち上げ、友人を騙しては資金を集め、まなみちゃんとエッチしちゃう。でも、欲望が果たされた時点でそれにいつまでも浸ってはいられない。本格的な撮影機材(もちろんカーロッが無断持ち出しした)を揃え、なぜかワイヤーアクション(なんと動作指導は銭嘉樂だ!)まで導入されたりとお遊びが肥大化していく中で、リーダーとして動いていたチーオンはプロジェクトの中止を決断する。そして、彼は仲間たちにこんなことを語った。(以下はうろ覚え)

「オレ、今まで学校で習ってきたことは、社会に出ても決して役には立たないって思っていた。でもさ、この計画を実行するのに資金を蓄えて配当金を割り当てたり、利害を計算したりってことは、これまで授業でやってきたことと全く同じじゃないか」

そう、学校でやってきたことっていうのは学校以外のところでは役には立たないってことはない。主人公4人組は今どきの若者らしい快楽主義者揃いで、大学図書館の書架の間に座り込んでピザを食っちまうほどお行儀の悪くしょーもねー奴らなんだけど、自らの欲望を満たした後には、自分の成長にちょっとだけど気づく。それがわかるのは先の言葉を言ったチーオン(ローレンス君、『The EYE』や『ひとりにして』とはあまりにもキャラが違うのでビックリ)で、冒頭では自分のことを語れなくて就職の面接に失敗した姿が映し出されたのに、ラストでは自信にあふれた表情で面接に臨む姿が見られる。

また、まなみちゃんに恋してしまったジェイソンが「お願い、AVにもう出ないでよ」と懇願し、彼女が「どうして?これがワタシの仕事なのよ」と何度も言う場面。それは、AV女優はあくまでも役柄を演じる女優であり、TVモニター内で見せるあられもない姿態も演技であって彼女の素顔ではなく、彼が観てセックスして恋した「天宮まなみ」は、決して天宮まなみちゃん本人とは違うのである、ということがわかる。オトコは女性に幻想を抱き、女性はそれに対しては非常にそっけない。こういう現実がある。そこで夢から覚めないと、大人になれないし前に進めないんじゃないか。ジェイソンの幻想はラスト近くで決定的に木っ端微塵になるけど、うん、AV女優もものすごい現実的でクールな仕事なんだなぁと改めて気づかされた。まぁ、この映画のまなみちゃんの存在は人間そのものというよりは、やっぱり4人のエロガキどもに甘い幻想と一瞬の快楽とビターな現実を見せて消えていった、まさに「導きの天使」だったんだなぁと考えれば、映画での存在感のいい意味での希薄さも許せたもんだったけどね。
…でも、まなみちゃんはスクリーンで観るよりも、実際に本人を生で見たほうがずーっとかわいかったのは言うまでもないよ!同性のワタシでもそう思ったもの!

と話がずれたので元に戻して、ああ、ガキってこうやって成長していくのね。おバカだけど。
しかもホーチョン曰く、「この映画は陳凱歌監督の言葉にインスパイアされて作られた映画」らしいぞ(fromアジアの風パンフ・ディレクターズノート)。そうまで言うんだから、これは確かに21世紀香港の教養映画だわ…。って自分が本気でそう思っているかどうかと言われると、多少「うっちょーん」もはいっているんだけどさ。だって、以下に記すホーチョンたちのティーチインでも、はたして彼ら(特にホーチョン自身)が本気でそう言っているかどうかも怪しいぞって思ったところが多少あったからね。

Q:天宮さんを起用するきっかけは?
ホーチョン:この映画を作るにあたって、AVショップでDVDを眺めていて彼女の作品を見つけ、この子で行こう!って決めたんだ。自分でもうまく説明できないけど、とにかく彼女は魅力的だった。撮影を終えて幼馴染のアラン・ウォン(音楽担当)と話をしていたら、「彼女さ、オマエの中学時代の初恋の彼女にそっくりだったじゃんか!」と言われたんだ。女の子の好みってずーっと変わらないもんだったなぁって思ったね。

…なんかもうこのへんで「ホーチョン、それって実はかなりホラ入っていない?」っていう気にさせられるんだけど。

Q:天宮さんに質問です。映画に出てきた4人の主人公やその他の人々では、誰が好みですか?
天宮:もうみんないい人ばかりだったから、順番も決められないなぁ(はぁと)。

うまいぞー天宮(爆)。次は誰もが気になっていた「アイツ」について。

Q:天宮さんのマネージャーの名前が「暉峻創三」で大笑いしたのですが、なぜその名前をつけたのですか?
ホ:ワタシは自分の作品のキャラに親しい友人の名前を使うことが多い。今回は日本人が出てくるということだし、日本人では彼が一番親しいから名前を使わせてもらったんだよ。

…でも、劇中での扱い、さんざんなんすけど、テルオカさんったら。
ところで、今回ホーチョン、ウェンダース・リー(『メイド・イン・ホンコン』)と共に脚本を執筆したのは日港ハーフでホーチョンの幼馴染の深沢寛さん。彼は今回が初脚本で、同時に日本語台詞の監修顧問も務めていたのだ。

深沢:ボクの書いた広東語の台詞は全部ダメって言われちゃってね。書き直しさせられたんだ。
ホ:自分は脚本を繰り返して読んで手直しするので、時間がかかるんだ。他の人には迷惑をかけてしまって大変だけど、最終的にはいい作品になっていると思うよ。

やっぱり、脚本が映画の命だもんね。お次はファンの男性から(でも観客は全体的に女性のほうが多かったような…まいっか)まなみちゃん関連質問二つ。

Q:天宮さんのファンです!香港映画出演と国際映画祭参加でセレブになった気分は?
天:セレブって言うんじゃなくて…でも、一般映画にAV女優としてホントにAV女優の自分が出演したことで、AVの価値というものを見い出してほしいなと思っている。
Q:ジェイソンと天宮さんが野球場でキャッチボールをする場面と、ホテルの屋上で話し合う場面がよかった。監督が作っていて印象的だったシーンは?
ホ:ワタシも野球場のシーンが好きだ。香港にああいう野球場があるってことを知っている人は多分ほとんどいないんじゃないかなって思う。この映画は13日で撮ったんだけど、あそこのシーンには半日を割いて撮影したんだ。
天:実は野球場のシーンで一番NGを出したんですよ。今度はNGを出さないように気をつけたいですね。
深:おかげでマネージャー(もとはし注/もちろんテルオカ氏じゃないのは言うまでもない)に文句言われちゃいましたよ。あと、あそこは当初、別の映画のロケが入っていたのだけど、無理を言って撮影予定を入れてもらったんだよ。

まなみちゃん、なかなかいいこというなぁ。でも、観る価値あるAVってこの日(以下略)…というのは自分が女子だからか。スマンなオトコどもよ。では気を取り直して最後の質問。

Q:男子4人組のキャスティングについてはどんなことを考えましたか。
A:撮影期間も短かったから、自分とも親しい友人たちを集めて撮った。あと、キャラクターのヒントには、カーロッと同じ経験をした友人がいるので、彼のことも参考にしたんだよ。

こんな感じのティーチインだった。面白かったよーん。でも、映画のネタは実体験をもとにしたと言えども、どこからどこまでがホントなのかは未だに不明だけどね。

で、前の記事にも書いた「パン・ホーチョン肌美人説」なんだけど…、『精武家庭』から一緒になった友人Mさんが一番前の席に座っていたので、じっくり監督の顔を見ていたらしいんだけど、毛穴が見えなくてツルツル肌だったのに非常に驚かされたんだとか。彼女は『精武』もかなり前で観ていたらしいけど、ティーチインでのステ監督の肌については「ちょっと毛穴目だった。でもステなんか目じゃなく肌のつやがよかったよ、ホーチョンって」って言ってた(爆)
というわけで、今後ワタクシはホーチョンのことを、最初に書いたように“美肌映画監督”と呼びたいと思います。以後よろしく(こらこら)。

監督&脚本:パン・ホーチョン 共同脚本:ウェンダース・リー&深沢寛 音楽:アラン・ウォン アクション指導&出演:チン・カーロッ
出演:ウォン・ヤウナン ローレンス・チョウ デレク・ツァン チー・ティンヤウ 天宮まなみ エリック・コット チョン・ダッミン ホイ・シウホン

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