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靴に恋する人魚(2005/台湾)

今年は、デンマーク出身の世界的童話作家、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの生誕200周年。幼い頃の記憶をたどると幼稚園の絵本や母さんの夜話、図書館にあった童話全集、そして♪アーレアーレアンデルセン、アーレアーレアンデルセン、ミースターアンデルセン…というノー天気な主題歌に乗って、キャンティ&ズッコのおかしな二人組がアンデルセン童話の世界を旅するアニメ『アンデルセン物語』などで、ワタシは彼の世界に親しんできた。今の子供たちは、NHKで放送中のドラマティックなアニメ『雪の女王』でアンデルセン童話の数々を観ているのかなぁ…。しかし、アンデルセンの童話にはなぜかハッピーエンドが少ない。大きくなってから知った彼の生涯もまた、女性を愛せずに一人放浪し、ずっと童話を書き溜めてビンボー暮らしをしていた…というもので、それじゃー悲しいに決まっているよ、と思った次第。

で、いきなりアンデルセンの話から始めたのは理由があって、台湾の新鋭女性監督ロビン・リーが、アンディ・ラウ率いるフォーカスフィルム(映藝娯楽有限公司)が立ち上げたアジアの新人監督支援プロジェクト“フォーカス:ファーストカット”に選ばれ、ローバジェットで作り上げたこの初長編映画『靴に恋する人魚』には、人魚姫やマッチ売りの少女など、アンデルセンの童話のモチーフがちりばめられたつくりになっていたのが面白いと思ったからだ。そこでティーチインの時に「もしかしてアンデルセン生誕200年にインスパイアされました?」と聞いたところ、ロビン監督からは「脚本は2年前にできていたから、その事実は知らなかったの。だからそれは全くの偶然」という答えをもらったのであった。なるほーど。また、「童話をモチーフにすれば、みんなに喜んでもらえるんじゃないかなーと思って、こんな作りにしました」とのこと。ほぉぉー。
え?それでこの映画って、いったいどんな作りだったんだって?それはねぇ…。

昔、といっても1週間前の昔(多分)。台北にドド(朶朶。発音はduoduoなので「トゥオトゥオ」と表記すべきだろうけど、打つのが大変なので字幕に従います)という少女がいた。少女は表に出るよりも絵本を読んでもらうことが大好きで、毎日両親に絵本を読んでもらっていた。なぜ彼女が外に出なかったのかというと、先天的に足が不自由だったから。それを悲しんだ両親は『人魚姫』だけは彼女に読ませまいと避けていた。しかし、多くの絵本も読みつくされ、ついに『人魚姫』の出番がやってきてしまった。人間の王子に恋をして、美しい声と引き換えに魔女から脚を得たくだりに自分の運命を重ねておびえるドド。そんな彼女も、脚を直すための手術をすることになる。どーしても人魚姫トラウマから逃れられないドド。オペの最中に、彼女は夢の中で魔女(タン・ナ)と出会い、「幸せになりたければ、黒い羊と白い羊を手に入れなさい」と告げられる。その言葉に勇気をもらうドド。もちろん、オペは大成功。もう成功しすぎてしまって、ドドは世界にもまれな美しい脚の持ち主となってしまったのだ。
成長し、一人暮らしを始め、立体絵本の出版社で事務(といってもほとんど雑用)の仕事を始めたドド(ビビスー)。彼女の周りは折り紙マニアのジャック社長を始め、パソコンに首ったけのデータ入力エンジニア×2、社長命令で原稿を取りに行くけどめったに顔をあわせないイラストレーターのビッグキャットと、変な人ばかり。そんな彼女の楽しみはお給料でかわいい靴を買うこと。女主人(タン・ナ2役)が切り盛りしているお店の靴たちも彼女に買われるのを楽しみにしている。家には彼女に買われた靴たちが並べられ、ある意味台湾のイメルダ状態。仕事はきついけど、靴を買って眺めてはいてお出かけするのが、彼女の幸せだった。…ここまでは。

ある日ドドを小さな悲劇が襲う。虫歯ができたのだ。ジャック社長は彼女に痛み止め(どー見ても正露丸)をやり、ビッグキャットも正露丸をくれる。そして彼女は親切にも、近所のスマイリー歯科医院を紹介してくれたのだ。歯医者は苦手だけど、治さなきゃ後が大変と治療に行くドドは、ここで運命の人に出会う。痛みに耐えかねて蹴飛ばしたミュールを拾ってくれたのは、美形の歯科医スマイリー(ダンカン)。彼こそが、ドドの運命の王子様だったのである。たちまち二人は恋に落ち、結婚して小さな家に引っ越す。そして王子様とお姫様は、いつまでも仲良く暮らしましたとさ…というのが前半。

そう、ここで終わっちゃ意味がない。お互いにラブラブな二人だけど、スマイリーはドドの靴フェチぶりと衝動買い癖を大いに心配する。このままじゃ家が靴で埋まっちゃうよ。スマイリーはドドに靴の買い控えを薦め、彼女もそれに従う。でも行きつけのお店の靴がワタシを呼んでいる!と仕事帰りにお店に寄り、諦めて会社に戻る途中に、人生最大の悲劇がドドを襲う…!

♪幸せって何だっけ何だっけ…ポン酢しょうゆのことじゃない。
この映画のテーマは、かつてさんまちゃんがCMでも歌ったような「幸せってなあに?」ってこと。これって、単純なようでいて、実はかなり難しくて答えにくい哲学的なテーマのような気がする。(そうか?)
ドドの人生は山あり谷ありの大波乱。好きなものに囲まれて、ステキな男の人と出会えてラブラブでいられることが本当の幸せなのだろうか。いや、そうじゃない。某相田みつをじゃないけど、幸せであるということは自分の心が決めるもので、自分の身に最大の悲劇が起こったときも、そこから立ち直れないまま暗ーく沈んでいちゃ救われない。魔女が彼女に告げた“幸せの白い羊と黒い羊”は具体的に提示されないけど、観客はそれぞれ、ドドが出会って手に入れたものの中にその羊を見出すんだろうな。で、ワタシが何を見出したかというと、これを言っちゃつまらんから内緒ね(笑)。

そんな哲学的テーマをおいといても(こらこら)、この映画の見どころはたくさんある。
まずは、なんと台湾電影金馬奨の最優秀美術デザイン賞部門にノミネート(他には最優秀視覚効果賞部門もノミネート。ちなみにライバルはなんと『功夫』に『七剣』!)されたポップでキュートな美術。ジミーの絵本を思わせるようなスマイリー歯科医院、赤で統一された靴店などが印象的。監督曰く「美術と衣装はワタシの8年来の友人が手がけた。“まるで童話”というスタイルを狙ったの。今までの台湾映画にはあまりにも暗くてきたない作品が多かったから、ワタシたちはピンキー♪な作品を撮りたかったの。…でも、お金も人もなくて大変だった」とのこと。…うんうん、確かに今までの台湾映画の美術は「台湾にウィリアム・チャンやハイ・チョンマンはいないのか!」と叫びたくなるくらい暗かった。ホウちゃんもヤンちゃんもミンリャンも、もーう(-_-;)。
お次はローバジェットの割にはかなり豪華なキャスト。ビビスーは台湾に戻って以来久々に顔を見た(F4仔仔と共演のドラマ『Love Storm』観ていないので)けど、やっぱしかわいいなぁ。童話の主人公のようなクラシカルなまとめ髪とふんわりした衣装、そしてどんな靴でも履きこなす美脚!(…しかし、外反母趾はまだ治っていないんだよねー?と同じく外反母趾持ちでハイヒールのはけない自分は心配する)
彼女の起用は監督以下スタッフ全員一致で「彼女はもう若くはないけど母親役まで演じてもらえるし、顔がかわいいので“人魚”にピッタリだと思ったの、この話を持っていったら、彼女もすっごく気に入って、話をして5分で『やりたい!』といってくれたわ」(監督談)とのこと。うんうん、女子って幾つになってもかわいいものが好きだもんね(含む自分)。ワタシがビビスーでも同じことを言うよ(おいおい)。
『七剣』では出番が少なくてその魅力がよくわからんかったダンカン君。彼の魅力はすっと通った鼻筋か。某ぺ様以上に笑顔のステキな王子様なんだが、カーテンを洗って縮ませてしまったり、ドドがせっかく心を込めて作ったデコレーションケーキ(羊型!)を箱ごとガサガサ振ってガッカリさせる(これは連続ギャグになっている)うっかりさん。でも、笑顔もイヤミにならない爽やかさがあったなぁ。ダンカンはビビスーから紹介されたの起用で、同じ製作会社で『僕の恋、彼の秘密(17歳的天空)』を作った縁もあったとか。あとは『ラブゴーゴー』の失恋娘タン・ナ、東京国際映画祭グランプリ受賞作『最愛の夏』('99)でデビューした李康宜、シンガーソングライター朱約信など、ちょっと知ってる顔の登場も楽しかったなぁ。
さらなる驚きはナレーション。なんと、大プロデューサー様アンディ先生が北京語で手がけていらっしゃいました!大驚きでしたわよ、ホントに!

でもほんとにかわいかったぁ。やっぱ人生、こーゆー映画も必要よ。
同じかわいい系映画でも『アメリ』ほどひねくれていないし、ストレートにかわいいって言えちゃうからまたいいんだよ。なんだか噂によるとぺ様の日本事務所がこの映画の配給権を買ったんだとか言うけど、GAGAかアルバトロス(え?いいのここで?)に配給協力してもらって韓流をしのぐ勢いのプロモーションをしてもらいたいもんだわ(以上かなり冗談入ってます)。

ラストに、本文中で紹介できなかったティーチインについて愛とツッコミ。ロビン監督は元女優?と思わせられるような美人さん。多分20代後半と見たんだけどいかに。フォトセッションもなんだかお茶目な行動をしてくれてましたよん。うーん、監督萌えー(爆)。

Q:この映画のロケ先はどこですか?エンドクレジットを観ていたら「新竹」とあったのですが、どこでしょうか?
A:新竹は動物園のシーンだけで、あとは台北で撮りました。あの動物園はすごく小さいんだけど、雰囲気のいいところなんですよ。あと、ポストのあった草原と道も台北で撮りました。ポストは借りたもの。現地上映でも「ロケが台北らしくない」って言われたんですよ。

うん、確かに台北らしくなかった(^_^)。台湾ドラマを観ていても、街の雑踏よりも郊外の一軒家がよく出てくるので、あー、台湾でもこーゆー場所があるのかなぁって思うもんなんだけどね。

Q:アンディはプロデューサーとしてこの作品にどう係わっていたんですか?
A:これは新人監督養成プロジェクトなので、とりあえずお金かな。でもスターTVも出資してくれたの。それぞれもらったお金は少なかったけど、次作ではいっぱいもらいたいわ(笑)。少ないお金で美術や特撮に力を入れた。靴が泣いたり笑ったりする場面に特撮を使ったのよ。
Q:ラストは数年後という設定なのに、人や子猫が歳をとっていないのはなぜ?
A:それも予算の関係です、はい(^_^;)。でも、人間が変わらないのは意図的なの。
Q:本編に登場するたくさんの靴、どこかのメーカーとタイアップしたの?
A:そうしたかったけど、ひとつのメーカーに頼むとみんな同じ靴ばかりになってしまうのよね。だからかわいい靴を借りてきたり、フツーの靴にスタッフが装飾を加えたりしていたの。

うーむ、お金の問題は厳しいなぁ…。でも、たとえローバジェットでも、創意工夫を凝らしたりすれば、こんなステキでかわいい映画ができるんだよねー。日本のインディーズフィルムメーカー(特に女子)の皆さん、これはためになるかもよ。そして最後の質問。

Q:これから撮りたい映画は?
A:アイディアは二つある。そのうちお金があったら撮りたいのが“DNAがワタシの愛を変える”というテーマのもの。潔癖症の女の子がDNA変換を促す薬を飲んでものすごーく不精な男に恋してしまうんだけど、はたしてそれで幸せなの?っていう話を考えているの。これは、ワタシの女友達の永遠の悩みでもあるのよ。

うーむ、SFだなぁ。ってゆーよりヘンだなぁ(爆)。どーゆーキャスティングがいいかな?香港キャストでもいいよねきっと?
でも、ロビン監督のテーマってやっぱり「ホントの幸せってなんだろう?」なんだね。

我希望看[女尓]拍的新電影!謝謝!

原題&英題:人魚朶朶(The shoe fairy)
監督:ロビン・リー 製作&ナレーション:アンディ・ラウ
出演:ヴィヴィアン・スー ダンカン・チョウ タン・ナ リー・カンイ チュー・ユエシン

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コメント

タン・ナって、堂娜て書くあの女性歌手?
横顔のアルバムジャケットしか見たことなかったから、気がつかなかったよ…(^_^;)
金髪かつらの魔女+靴屋の女主人、そうだったのか…猪頭皮といい堂娜といい、音楽人の起用はロビン・リーさんの人脈なんでしょうかねえ?

投稿: nancix | 2005.11.03 09:23

家で『ラブゴーゴー』のパンフを引っ張り出して調べたら、堂の字から口を引いた字を書く「タン・ナ」だとわかりました。はい、ご指摘の通りです。>nancixさん
老女にしちゃ妙に若いし、観たことある顔だなー…と思ったのですよ。エンドクレジットを観ただけでは自信なかったんですけど。猪頭皮も顔は分かったんですが、名前が出てこなかった…(笑)。
90年代後半の台湾音楽人の登場は親しみが湧きますねー。案外、ロビンさんはこの頃MTV製作スタッフなどをやっていたんじゃないかなー、という気もします。あくまで推測ですが。

投稿: もとはし | 2005.11.03 12:51

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