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ディバージェンス(2005/香港)

原題の《三岔口》は中国語で「3つの分かれ道」という意味だ。これはまた、京劇の題目としても有名らしい。(これについてはnancixさんが詳述しています)『ニューポリ』のベニーさんが、『風雲』以来7年ぶりの顔合わせになるアーロン&イーキンに、自作には3度目の起用となる彦祖を加えた『ヒロイック・デュオ』ならぬヒロイック・トリオの『ディバージェンス』は、あまりにも意表をつきまくったサスペンス映画だった。

刑事シュン(アーロン)は実業家イウ(ロー・カーリョン)のマネーロンダリング事件に係わった証人をカナダで逮捕し、香港まで護送してきたが、空港に着いた直後、証人は暗殺される。殺したのはプロの殺し屋コーク(彦祖)。警察に戻ったシュンは停職処分を受ける。
イウは刑事訴訟を得意とするトウ(イーキン)を顧問弁護士に雇い、明らかに自分に不利な条件をもみ消してはなんとか自分の罪から逃れようとしていた。そんなイウはアイドルとしてデビューした息子のハーを溺愛していたが、ハーは後日突然誘拐される。
失意の中にいるシュンは、10年前に突然失踪した恋人フォン(アンジェリカ)のことが忘れられず、自暴自棄な生活を送っていた。そんな彼は独自にイウをおっていたが、ハーが失踪する前に出演したイベントにて、トウが連れてきた女性を見て愕然とする。トウの妻エイミー(アンジェリカ)はフォンにそっくりだったのだ。それ以来、シュンはトウの家の近くを張り込み、ストーカーすれすれの行為を繰り返す。
懇意の仲の監察医(エリック)や探偵(林雪)などからの情報から、シュンは事件に殺し屋の代理人ティン(寧静)と彼女に雇われているコークの存在を突き止める。そしてある日、コークはシュンの前に現れ、衝撃の事実を告げる。
また、香港では首をワイヤーで絞めて殺す連続通り魔事件も発生していた。一見何の関係もない事件であったが、その事件にハーの秘密を握っていたらしい写真家やシュンに情報を流していた探偵が巻き込まれて殺されていく。やがて、それらの事件は思わぬ方向へと展開していく…。

…とまぁあらすじを書き出してみたけど、実は書き落とした重大事実も多いかもしれない。この映画、香港では「わかりにくーい」と言われてそれほどヒットしなかった(同時期公開のイー・トンシン最新作《早熟》が意外なヒットを飛ばしていたのもコケた原因の一つかも?)らしいけど、国内外のサスペンス映画を見慣れている日本人観客にとっては、意外にもわかりやすい筋立てだったんじゃないかな。それでも、あまりにもエピソードを盛り込みすぎて、このネタで確実に映画が2本撮れるんじゃないかという気はしたけどね。
この、こりまくったストーリーを手がけたのは『ラヴソング』のアイヴィ・ホー(岸西)。恋愛ものがお得意な方と認識していたんだけど、実はこーゆーものも書けるのか(単に気づかなかっただけということもできる)、とビックリしたのは言うまでもない。敵方(と言えるのか?)もマフィアじゃなくて、金転がしで危機に瀕している悪徳(多分)企業だったり、その企業の社長が有罪を無罪にしてしまう敏腕弁護士を雇うというのも目新しい。というか、ハリウッド&日本のサスペンス映画らしい雰囲気を漂わせているように感じたのだ。こういう設定は5年前くらいの香港映画にはなかったような気がする。これも『無間道』三部作や『ワンナイト イン モンコック』のように、物語性を重視したサスペンス映画が出てくるようになった流れなのかな。でも、とっても香港映画らしい作りだったのは嬉しい。

シュン、トウ、コークの3人が直接対決する場面はない。物語はこの3人の観点で突き進んでいく。この3人の主人公は、それぞれ善や悪の位置に立ちながらも、その立ち位置に相反する行動や自らの位置に疑問を抱いてしまうような、多面性のあるキャラクターとして設定されている。
熱血漢(アーロンが演じるんだからなおさらそれが強調)で、警察の広報番組でホストを務めた経験があるくらい人気のある刑事シュンは、未だに10年前に目の前から姿を消した恋人フォンの思い出を拭いきれず、彼女そっくりのエイミーをフォンだと思い込んで毎晩自宅前に張り込む。ギリギリで正気を保ちながら、思い込みによる狂気に支配されていくシュン。事故でどんなに重傷を負っても、すぐ現場に復帰したり独自の捜査を再開させてしまう恐ろしさもある。これまた演じているのがアーロンなんだから(以下略)。…それはともかく、こんなとんでもない役回りなのに、この役はアーロンじゃなければ演じられない!と思ったのは事実だし(アンディがこれをやると『終極』と化すだろうしね)、ジョニーさんの柔道映画で演じた柔道バカ青年の明るさなど微塵もない渋ーい演技にビックリしたのである。でもやっぱりシュンは熱血漢だと思うんだが…。皆さんどう思われます?

この頃ホントに殺し屋が多い彦。でも彼が演じているコークは『ワンナイト』のフーのような純粋さのないクールなフルタイムキラー。雇い主のティン(彼女をあの『上海グランド』の寧静が演じていると知った時はビックリよ!すっげースレンダーになっているし、思い切ったスキンヘッド姿には、怪作『ドラゴンヒート』のTHE MEを彷彿とさせたわ…)とはクールな関係を築いている任務に忠実かつ自由な精神を持つ殺し屋(…ちょっと矛盾?)。ある因縁で結ばれている(言わないけど…)シュンとは激しい火花を撒き散らす。『ジェネックスコップ』や『ニューポリ』では“恐るべき子供(というのはオーバー?)”だった彦だけど、ニューポリの怪演がまるではるか昔のことだったように成長した姿を見せてくれた。というより、同じ悪役でもちゃんと演じ分けられるようになったというべきか?すごいぞ、彦。悪役じゃなくてもこれくらいの演技はになってくれれば、おねーさんは嬉しいぞ(こらこら)。

そういえば最近はアーロンよりイーキンの作品ばかり観ていたから、すっかり御馴染になっているイーキンは、意外な役回りで新鮮だった。『ひとりにして』のゲイのスタイリスト役にもビックリしたけど、今回は敏腕弁護士で妻子あり!という役どころだもの。法廷シーンではガウン姿も見られたし、イーキン迷の友人曰く「似合わない」という眼鏡姿も珍しい。この眼鏡で彼が奥二重であることを確認したし、ロングのシーンでは顔が四角いトヨエツにも見えたなぁ。両者のファンの皆さんすみません。
今回のイーキンの役はかなり難しい役だったと思う。この3人の中でも一番多面的な顔を見せることになるキャラだもの。イウに信頼される冷酷な敏腕弁護士の顔、エイミーや子供たちの前で見せるよき夫やよきパパとしての顔、そして、クライマックスシーンに見せる意外な顔…。このクライマックスがあまりにも驚きだったのだけど、イーキンったら、よくこの仕事を受けたよって思ったわ。

その他のキャスティングも。エイミーとフォンを演じたアンジェリカちゃんといえばご存知中華ホラーの女王(《救命!》も『カオマ』って題でビデオ化されたっけねー。観ないけどさ)。役どころとしてはオトコどもが熱ーくぶつかり合うこのタイプの映画らしい扱われ方だったけど、クライマックスのあの突き飛ばしシーンは天晴。あーゆー演技って香港映画らしいと思うけど、最近あまり見ないので…。
遺体安置所の監察官(だと思う)のエリック兄貴、元刑事の探偵の林雪、この人たちは出てくるだけで画面をさらうなぁ…。アーロンの同僚のジャン、もっと活躍してほしかったかも。アーロンを調べるのは『ニューポリ』でもいじめ役だった于榮光さん。適材適所的キャスティングだけど、思わず手を振りたくなるのは言うまでもない。しかし、たたき上げっぽい中堅刑事役で登場したサム!すっごく落ち着いてて大人っぽかったわ。サムももう30歳だもんね…。

原題:三岔口
監督&製作:ベニー・チャン 脚本:アイビー・ホー 美術デザイン:ウィリアム・チャン アクション指導:ロー・カーリョン
出演:アーロン・クォック イーキン・チェン ダニエル・ウー アンジェリカ・リー ニン・チン エリック・ツァン ラム・シュー サム・リー ジャン・ラム ユー・ロングアン

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