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ビヨンド・アワ・ケン(2004/香港)

パン・ホーチョン初のガールズムービー、といってもいいかもしれない『ビヨンド・アワ・ケン』。昨年の東京国際映画祭で上映されたので、パンフに記載された映画の製作意図も合わせて読んだが(VCDに併録のメイキングでも語られていた)、この物語はホーチョンが台湾留学時に聞いた実話を基にして作られたそうだ。

女優を目指して大陸から香港へやってきたが、現在はカラオケレストランで働いているシャーリー(タオ・ホン)には、消防官のケン(彦祖)という恋人がいる。ある日、シャーリーの前に元中学校の国語教師だったワイチン(ジル)という女性が現れる。彼女は1ヵ月前までケンと付き合っていたが、理由もなく一方的に彼に振られただけでなく、自分と彼とのエッチな写真をネットにアップされてしまったという。その写真を取り返したく、現在の彼女であるシャーリーに協力を要請しにきたのだ。自分もヌード写真をケンに撮られているシャーリーは、いつか同じ事をされるのかもしれないと恐れ、彼女と結託する。シャーリーはワイチンの復讐に協力していくうちに、いつしか友情で結ばれていくのだが、全てが終わった後、意外な真実が明らかになるのであった…。

この映画の前作《大丈夫》では、エリック兄貴・小春・チャッピー・カーファイと曲者俳優を揃えてノワール映画のパロディで倦怠期にある男(夫)たちと女(妻)たちの駆け引きを描いたホーチョン、今回はぐっとターゲットを下げて、ジルと彦祖、『ションヤンの酒店』や台湾ドラマで活躍する大陸の若手女優タオ・ホンの3人で、若い男女関係の不思議さを描き出す。
同じ異性を愛した同性同士に友情は生まれるのか?というのは、『ホールド・ユー・タイト』でも提示した問題。ワタシ自身は恋愛経験があまり豊富じゃないから自分の身に照らして考えられないけど、周囲の話を拾い聞くと、つきあっていた男がひどい奴であればあるほど、元カノと現カノは似たような経験を共有することになり、結託して彼氏に叛旗を翻すということも、たまーにあるみたいだ。

ワイチンがシャーリーに近づいたのは、ケン自身を取り返すのではなく、ケンに撮られたヌード写真を取り返すためだという。シャーリーは自分の身が脅かされるわけではないと判断し、ワイチンに協力するわけだけど、こういった具体的目的がなければ、現カノと元カノに接点が生まれないだろう。しかし、不思議なもので、性格も服の好みも違う二人(学校をクビになったワイチンは後にシャーリーと同じように髪にピンクのメッシュを入れるのだけど)は、作戦会議を繰り広げていくうちに、男性経験を語り、スクーターで高架道路を疾走し、浜辺で戯れるカップルをちゃかしながら友情を深めていく。まるでケンのことなどほったらかすかのように。ケンと熱烈に愛し合っているはずのシャーリーも、ワイチンと一緒にいることが楽しくなってくる。

甘い恋愛に身を浸すことの快楽もいい。でも、同性とスリリングな冒険にでるのも楽しい。それを味わえるのは男子だけの特権ではなく、女子だって同じ経験ができるのだ。これって結構当たり前のことなんだけど、意外にも映像フィクションの世界(特に日本のテレビドラマ)では描かれない。最近のガールズムービーではそれを描き始めるようになってきた。 それはそれで嬉しいけど、それを描く上での壁はやはり『恋愛』であり、この映画でもラストには、ケンにひどい仕打ちを受けて振られたはずのワイチンが、その「ひどい仕打ち」はケンに対しての、自分の社会的地位を犠牲にしての復讐の始まりに過ぎなかったという事実が明らかになる。そして、それを全て打ち明けた彼女は、シャーリーに「それでもワタシたちは友達よね?」と問いかけて、エンドクレジットとなる。ここでワタシは、ワイチンのケンに対する想いの根深さを改めて知る。ああ、恋に溺れた女子って凄まじい…と。そして、もし自分がシャーリーだったら、そんなワイチンに呆然としつつも、付き合っていきそうな気がしてならなかったりする(爆)。

まぁ、ホーチョンは男子なので、多少は女子に対するドリームも入っているんじゃないかと思うけど、実際こんな女子たちは日本の日常生活にもわりといそう。 「この世に王子さまなんていないし、お姫様なんていないのよ」というラスト近くの台詞は、この世の恋愛はきれいなもんなどない。だからリアルなんだろうな。

ジルのイメージってTwinsでもお嬢さんタイプ(もちろん阿Saはお転婆タイプ)だし、この映画でも最初は地味ーなメガネっ娘として登場。それが映画が進行するにつれて、メガネを外し、髪にメッシュを入れる。でも、基本的に服の好みも変わらないし、お嬢さんなイメージは不変。でも、内面の姿はかなり変化しているのだ。それが面白い。相方の阿Saはいつも元気っ娘!という演技しか観たことがないけど、ジルは意外と演技派になりそうな予感。
対照的にタオ・ホン小姐はボーイッシュでセクシーさを強調したキャラクター。でも、内面は意外とコンサバ。彼女の出演した他の作品を観たことがない(『太陽の少年』に出ていたっていうけど、覚えていないよ)ので、大陸女優にしては垢抜けているなぁという印象も。もっとも台詞はほとんど北京語だったけどね。…もしかしてこの二人のキャラ、ちょっと『NANA』っぽい?
彦は悪役…というより、珍しく“女の敵”っぽいキャラ。ジルやタオ・ホン小姐とのドキドキするラブシーンも多く、もっと脱いでくれても…なんて思ったけど、脱がないドキドキも味わえたのでよしとするか。でも、画面に登場するのはちょっとだけなので、キャラとしては実際の内面は見えにくかったかも(それがホーチョンの意図なんだろうが)。
あと、ガールズムービーの特徴ってオサレな美術と衣装だと思うんだけど、この映画では衣装を手がけるのが日本人デザイナー。妙にジルの服が日本の女の子っぽいと思ったのはそういうわけか。でも日本ではまだまだ新人&無名らしくサイトもない。ブランド名の「Multiple Core(マルチプル・コア)」でググってみたら繊研新聞のデザイナーズ見本市一覧(だと思った)に名前を見つけたので、今後ちょっとチェックしてもいいかもな。

原題:公主復仇記
監督&原作:パン・ホーチョン 脚本:パン・ホーチョン&ウォン・ウィンシー 編集:ウェンダース・リー 衣裳:田中稔美 Multiple Core
出演:ジリアン・チョン タオ・ホン ダニエル・ウー

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