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『同じ釜の飯』(中野嘉子+王向華)に思ふ。

同じ釜の飯

同じ釜の飯

王 向華 / 中野 嘉子

平成13年、春。雨降る東京・渋谷のとある映画館。後にこのblogの書き手となるもとはしたかこは春休みを利用して上京し、そこで映画『花様年華』を観ていた。画面に映し出されていたのは炊飯器、だった。張曼玉演じるチャン夫人が、その炊飯器を使ってご飯を炊き、アパートの人々にふるまっていた場面、だった。もとはしは前年、同じ渋谷でこの映画のプレミア上映を観ていたのであったが、そのときには、その些細な場面に気を止めたりはしなかった。しかし、そのときは、なぜかその場面が気になって仕方がなかったのだ。もとはし、心でこう思った。

-これは、この間テレビで観た、『プロ○ェ○トX・倒産からの大逆転劇 電気釜』のその後ではないか! そう思ったもとはしの心の中に、あの番組のエンディングテーマが流れてきた。

それから4年後の春。その番組の後日譚ともいえる出来事をまとめた本が出版され、中華趣味関係blogで話題となった。それが、この『同じ釜の飯』である。

この本は、電気釜開発では遅れをとってしまった日本の家電メーカーが、活路を海外、しかもアジアに求め、見事に成功を収めた日本と香港の、男たちの記録である…。
(BGM『地○の☆』、ナレーター・田日トモロホ) ♪ちゃーん、ちゃーん、ちゃーん…ぷろじぇくとえーっくす…。

えーと、ふざけるのもこのへんにしときまふ。

今や日本の電化製品は、日本のみならず、世界各国に多大な評価を受けている。日本の電機メーカーで世界に知られているとなると、まずはソニーが思い浮かぶのだろう。しかし、ソニーが欧米で評価されたのと対照的に、アジアで多大な評価を受けていたメーカーがある。それはナショナル&パナソニックで御馴染みの松下電器だった。

この本ではまず、香港進出のきっかけとなった炊飯器から始まっているのが、松下電器といえば、炊飯器や冷蔵庫などの家電はもちろん、CD&MDプレイヤーやパソコンに至るまで、日本の家電市場でも人気のあるメーカーではないだろうか。(…それは単に我が家のTVとCDラジカセがパナソニックだからって言う贔屓目も多少あるんだけどね)

今回の記事のネタにした『プロジェクトX』、最近は全く観ていないんだけど、2001年2月に『倒産からの大逆転劇 電気釜』が放映され、その後に『花様年華』を観た時に、日本の高度成長期の始まりと映画で描かれた香港が同じ時代であった!という真実(当たり前じゃ)を改めて確認することになり(笑)、その映画の時代背景をリアルに感じることになった。
当時といえば、中国大陸では文革が始まろうとしていたのは言うまでもないんだけど、戦後の復興から立ち上がった日本が、自由港であった香港からアジアに電気製品を売り出す活路を見出したということはもっと知られていい事実だろう。(つまり、ワタシは恥ずかしながらこの事実を、この本を読むまでは知らなかったんっすよ。こんなワタシが中国語学科卒でいいのか、ほんとに)
しかし、商売は一方的に進出しただけでうまく行くはずがない。ナショナル炊飯器が香港で成功したのは、日本人たちの情熱だけでなく、彼らに共感した香港商人(華商)の蒙民偉の多大な協力があったからだった。長崎華僑の血を引く蒙氏は日本で暮らしたこともあり、日本語も堪能だった。彼の協力なくしては、炊飯器もここまで売れなかっただろうし、日本の家電が海外にはばたくこともなかったのかもしれない、と思ったのだ。やはり、海外で成功したいというのなら、金儲けだけでなく、自分たちの事情もわかってくれて、かつ現地の事情に詳しい人間にサポートしてもらわないとうまくいかないんだな。

60年代の香港については、いうまでもなく映画での知識しかない。その中でも『花様年華』ではチャン夫人の夫が日系貿易企業に勤めているという設定になっていたり、『2046』では木村さんが日本から香港に駐在して働いている若きエリートサラリーマン(でも広東語は苦手というのが日本人的?)を演じていた。それだけではなく、いつも拝見しているせんきちさんのblogにて紹介される映画からは、60年代に日本と香港の映画会社が何本も合作映画を作り、日本のスターが香港人俳優と共演していたり、日本の職人監督やカメラマンも香港映画に携わっていたという、今まで知らなかった事実も知った。
戦後間もない日本は、自国や欧米だけで企業努力をしていたわけではなく、ちゃんとアジアにも進出して、しっかり仕事をしていたのだ。それこそ、『プロジェクトX』的な知られざるエピソードではないだろうか。

読みやすい文章なので、その当時の香港の仮定状況がどんな様子だったのか、目に浮かぶように想像できる。しかし、蒙氏の会社のショールームがあの重慶大厦にあったとは、今のことしか知らない人間にとっては驚くべき事実だなぁ。

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