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2005年7月

マジックキッチン(2004/香港)

現在開催中のF4フィルムフェスティバルにて上映されている、ジェリー・イェン初出演の香港映画『マジックキッチン』。でもこれはジェリーの映画というより、やっぱしサミー・チェンありきの映画でせう。
サミーと言えば、彼女はよしもとばななの『キッチン』が大好きで、自分がヒロインをやりたいとどこかのインタビューで言っていた記憶があるような…。まぁ、香港で映画化はされたけど、主演は富田靖子ちゃんで以下説明不要。そのリベンジのためこの映画に出た、というのでは絶対ないのだろうけどね。
またこの映画は、久々に香港でメガホンを取ったリー・チーガイが監督。日本で撮った『不夜城』の経験も生かして(?)日本ロケもふんだんに盛り込まれているのであった。

香港で人気の私房菜(プライベートレストラン)を営むシェフの慕容優(サミー)は、亡き母譲りのレシピを駆使して料理を生み出すもてなし上手。しかし、そんな彼女なのに男運は全くなし。かつて大ホテルのシェフであったのにかかわらず、セクハラで昇進できなかった彼女の母曰く、慕容家の先祖は歐陽家の男と愛し合った結果、その別れで生じた恨みがまだ晴らされないため、恋愛が成就しないというのだ。そんな優を若きアシスタント可(ジェリー)は密かに愛しており、彼女に日本のTV局で開催される「どっちが料理王大会」に出場するようにけしかけるが、優は乗り気ではない。
日本へ渡った優は、偶然にも元彼の傳佑(アンディ)と再会する。彼は優がデパートでOLをしていた頃の上司であり、恋に落ちたのだが、肝心なところで不運が彼らの恋愛を邪魔してしまい、結局別れることになってしまったのだ。一緒に食事を、傳佑に誘われ、それに答えたものの、その夜の約束を守ることができなかった。
男運に恵まれない優を、親友の博薇(マギーQ)と紫葵(ニコラ)は心配し、彼女をバーや合コンに連れ出す。しかし、ある日の合コンで、優は傳佑が博薇の現在の彼氏ということを知ってしまい…。

先に書いたように、これはジェリーの映画じゃなくてサミーによるサミーのための映画(笑)。しかも料理映画だと見せかけて、しっかり恋愛映画の比率が高い。…やっぱ、香港では本格的料理映画って難しいんだなぁ。いや、『金玉満堂』や『キッチン』でもそう思ったんだけど。しかも『キッチン』には中華が出てこないし。そうか、これって料理映画だったと思い出させるのは、ラストの「どっちが料理王大会」にサミーが出場するくだりからだったんだが、…その食材はありか?で、その料理とその判定はありか?と首をひねってしまったのはワタシだけだろーか。

まぁ、確かにおいしい映画ではある。だって、アンディにジェリーと中華圏を代表するアイドル二世代に恋をし、その合間にステに彦にソーさんにアンソニーさんと、さまざまなタイプの香港明星に囲まれるんだよ、サミーってば。こんなにおいしい映画、今まであったか?honeymilkさんの「サミーの接待映画のようだった」という意見に思いっきり同意。
で、ジェリーなんだけど…。ワタシが彼をあまり好きではないことは今までにもここで散々書いてきたので、ここで改めてそのへんは説明しないけど…う~ん、演技としてはナチュラルでいいし(といっても台詞は吹替?)、これまでドラマで同世代という設定の女性(除くカレン)相手に恋を繰り広げてきたから、年上のサミーとの恋愛は時には姉弟、時には忠犬(ファンの人ごめんなさい)、そして時には強引にベッドに引っ張りこみ…といろんなアプローチを見せてくれるし、そんなところが年下男の魅力よね、なんていえないこともないんだけどさ、それでもワタシはひかれんな(こらこら!主観入れるな)。 っていうか、今回はアンディの方が観てて安心できたんだよね。珍しいことなんだけど。ま、ホントに脇役だから、彼も割り切って演じたんだろうけどね。

そして、もうひとつの見どころは日本ロケ。メインロケ地は歌舞伎町だったりお台場だったりなんだろうけど、一番知りたい場所はクライマックスで優と傳佑が博薇の去った後で話し合う鉄道路線。あれ、多分千葉の私鉄ローカル線を使っているんだろうけど、いったいどこの何線なんだろう?と思うワタシは千葉県出身。あと、バンドの演奏をしている場所は妙に人工的なんだけど、どこなんだろう?東京もどんどん変わってきてるからねぇ、と思う田舎もんのワタシであった。

最後に、日本がらみでこのへんも書いておこうっと。音楽担当(原創音楽)はノークレジットだったけど、オープニング&メインテーマ作曲が、元G-CLEFのピアニストにして、現在朝の連ドラ『ファイト』の音楽を担当されている榊原大ちゃん。さらに劇中インスト曲は中華電影ではすっかり御馴染、『LOVERS』 『2046』 『恋の風景』の梅林茂さんが担当(ちゃんとエンドタイトルで確認をとったので間違いない)。彼、チーさんとは『不夜城』でコンビを組んでいましたね。大ちゃんは梅林さんのサポートを務めていたようなので、その関係で音楽を担当することになったのかな。ピアノの主旋律が弾む、心うきうきな気分になるメインテーマがよかったなー。

原題:魔幻厨房
監督&脚本:リー・チーガイ 撮影:アーサー・ウォン 音楽:梅林 茂&榊原 大
出演:サミー・チェン ジェリー・イェン マギーQ ニコラ・チャン アンソニー・ウォン ダニエル・ウー スティーブン・フォン マイケル・ウォン ウィリアム・ソー ロー・カーイン 樋口明日嘉 アンディ・ラウ

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《喜馬拉亞星》(2005/香港)

…そーいえば、『ムトゥ 踊るマハラジャ』ってもう7年も前に公開されたんだっけ。
コンビニの店頭に並んだスナック「ガラムマサラ」のパッケージを眺めながら、ボンヤリとそんなことを考えた。しかし、香港映画の日本公開もガタッと減ったけど、インド映画も日本に来なくなっちゃったよなぁ、それというのもあの、とこれ以上はかなりやっかみの入った暴言になりそうなのでここでカット。
かつてアジアには自国の映画がハリウッド映画より人気のあるという地域が二ヵ所あった。ひとつは香港、そしてもうひとつはインドである。 香港は返還を控えた90年代前半にハリウッド映画の人気が急激に上がり、ついには年間興収も逆転してしまって今に至るのだが、国内各地でその地方の言葉に合わせた映画を作っているインドは未だに自国映画の人気を保っている…はずだと思う。
さらに香港とインドといえば、重慶大厦(ここにあるカレー屋さん、行ったことないからよく知らんが)とか、陸羽茶室上海灘のドアマンさんなどでインド人のお兄さんに出会う。普段日本じゃあまりインド人に出会わないが、さすがにかつてのアジアの港としてイギリスに目をつけられた(ははは)ところだけあって、香港ではインド人と出会う率が高い。(昔、チムのプロムナードを夜一人で歩いていた時、インド人のお兄さんにナンパされたことがあったなぁ…あはははは)

それはともかく、そんなふうに思ったからというわけではないけど、今年の賀歳片だったロナチェン&ラウチン&ジャンユーの3人が主役をはった、香港製マサラ(?)ムービー《喜馬拉亞星》を観てみた。

雪深いヒマラヤの山中。亞星(ロナチェン)はここで育ち、ヨガを体得してきた青年だ。ある日、彼はインドのヨガ城で印度西施の嫁選びのために行われるヨガ大会に出場することを決意して、下山する。ヨガ城に行く途中、亞星は結婚願望の強い大家姐(チェリー)とその一味に出会う。亞星が下山した目的を聞いた彼女は、西施と彼を困らそうと、自分たちの悪事に亞星を巻き込む。
一方、ヨガ城に香港から観光に来ていたのは、某イギリス人コメディアン演じる有名なキャラによく似た驚青(ラウチン)とその甥二人(Shineの二人)、そして某日本人コメディアン演じる有名な映画キャラによく似た大膽(ジャンユー)。あわてんぼうでそそっかしい驚青は強盗に催眠術をかけられて金を巻き上げられるが、そんな彼の前に孔雀(セシリア)が現れ、彼を夢の世界に誘う。夢うつつのままインドを彷徨う彼は、蛇に足をかまれた美女を助ける。その美女こそ噂の印度西施。でも催眠術にかかったと思い込んでいる驚青は、彼女がひげ男にしか見えないと思い込むが、西施は彼に夢中になる。
一方、叔父とはぐれた甥二人と大膽はうっかり「印度神油」を飲んでしまう。この神油、1滴飲むと昨日の記憶を忘れ、たくさん飲んだら飲んだ分だけ忘れてしまうという困った油。自分が誰だかわからない3人は、インドから香港に出稼ぎしに行って戻ってきた親子だとか、日本のヤクザだとか勝手に思い込む。そんなこんなでインドを彷徨っていた3人は大家姐たちと知り合い、亞星に悪事を教え込むように押しつけられる。そのほかあれこれとドタバタがあり、自分の目的を思い出した亞星と西施の父親に見込まれてしまった大膽、そして父親によって仲を引き裂かれてしまった驚青は、ヨガ大会に出場することになる…!

題名に“ヒマラヤ”とありながらなぜ舞台はインド?さらになぜみんな広東語をくっちゃべっている?というツッコミは基本中の基本なので置いておくが、わかりやすいくらいパロディ満載な映画だなぁ。マサラムービーをベースに、『古惑仔』に日本のAVに『ゴッド・ギャンブラー』に『ミスター・ビーン』に『男はつらいよ』に『幸せの黄色いハンカチ』に『メメント』に『千夜一夜物語』に日本のヤクザ映画にエトセトラエトセトラ…。もっと細かいネタまで目を凝らせばいっぱい出てくるんだろうけど、ありとあらゆるネタを詰め込みすぎて話が破綻しまくっている…(苦笑)。ラストなんて〇〇の運命変わっちゃうしね。ま、これはワイさんが狙ったのかもしれないけどさ。

最近はジョニーさんのところから一人立ちして映画を監督しているワイさん、そういえば去年の《鬼馬狂想曲》も彼の監督作で、ラウチン・ジャンユー・セシリアも続投。あの映画もパロディ満載で楽しかった。ラウチンのマイケル・ホイ演技はよかったもんなぁ。
…しかし、今年もラウチンにとってはかなりチャレンジな役どころだったんだろうけど、なぜローワン・アトキンソン(asミスター・ビーン)演技?いや、物真似的にはまずくなかったと思うけど、ちょっとこういう役どころを振るのはなぁ…。去年と同じホイ兄路線続投でもよかったんじゃないかと(でもイメージが固定されちゃうのか、まずいな)。
対するジャンユーは故・渥美清氏の当たり役である車寅次郎的キャラを演じていたんだけど、真似というよりただのコスプレ?という印象。…しかし、香港では受けてたのか?『男はつらいよ』シリーズって。ほら、あの映画って非常に日本的なコメディだから、日本以外では受けないんじゃないかなぁって思っていたので。でも『幸せの黄色いハンカチ』までネタにしていたってことは、ワイさんってもしかして山田洋次氏のファン?(多分違う)
そして、タイトルロールのロナチェン。どーも彼の名前を聞くと、未だにずいぶん前の「飛行機内で泥酔して乱暴狼藉を働いて逮捕」ってイメージがあるんだよなぁ。でも、復活したよなぁ、見事に。まぁそれを言ったら、ごく最近麻薬所持で逮捕されちゃった(んだよね?でもそれっていつのことだっけ)チェリーちゃんもそうなんだが。

でも、実際には主役は3人で、その3人の行動を楽しむ映画といったほうが正解か。
ハチャメチャだけど、こういうわけのわからん無軌道な映画(それもわざわざヒマラヤ&インドロケ敢行!)を作る余裕があるのはそれでよいのではないか?…なんていったらマジメな映画ファンに怒られそうだなぁ。 とまたまたわけのわからんまま、終わりにしようっと♪

英題:Himalaya Singh
監督&製作&脚本:ワイ・カーファイ
出演:ロナルド・チェン ラウ・チンワン ン・ジャンユー セシリア・チャン チェリー・イン Shine

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新流星胡蝶剣(1993/香港)

「映画タスキ(中華電影限定)」のエントリーの「観たい映画」で、『精霊の守り人』をミシェル・ヨー姐さん主演で観たいと書いたのだけど、ここでまず始めにそれがどーゆー話なのかというのを今回は前振りがわりに…。

精霊の守り人
上橋 菜穂子 / 上橋 菜穂子作 / 二木 真希子

舞台は人と精霊の世界が混在する大陸の諸国。各国を渡り歩く用心棒を生業とする30代の女性バルサは、自分とすれ違った新ヨゴ皇国の第二王子チャグムとその母を事故から救ったことで彼らと知り合う。彼女が凄腕の短槍の使い手と知った妃は、バルサに息子を守ってくれるように依頼する。実はチャグムは、精霊〈水の守り手〉によって体内に卵を産み付けられてしまった〈精霊の守り人〉で、幻獣から命を狙われており、さらに跡取りをめぐるお家騒動に巻き込まれて、父の帝からも命を狙われているのであった。バルサは幼馴染で薬草師のタンダと共に、孤立無援のチャグムを命がけで守ることになる…といった話。
この本から始まる「守り人」シリーズは、児童向けファンタジー小説でありながら主人公が30代女性(つまり子供たちから見ればオバサン)で凄腕の戦士、当然本文はアクションシーン満載という、あまりにも異色な設定に、こりゃ武侠小説にも負けないなぁと思いつつ楽しみながら読んでいるシリーズなんだけど、これを映画化するなら、アニメよりもやっぱり実写だなと思ったときに、頭に浮かんだのがミシェル姐さんだったのだ。で、そのバルサよりちょっと年下で、いつも満身創痍な彼女の世話をせっせと見ている(さらに思いも寄せている)タンダは誰かなぁと思ってると、トニーが思いついた。最初の理想キャストはなぜかラウチンだったんだが、タンダは薬草師だから剣が使えないし、バルサに思いを寄せながらどこかうっかりさんでたびたび危機(例えば邪悪な精霊に取り付かれて人鬼と化したりする)に巻き込まれ、そのたびに彼女に助けられるーってな感じがトニーっぽいかなと。
と、これ以上書くとどんどん話がずれていきそうなので、このへんで。

そんなわけで、このトニーとミシェル姐が共演した武侠片、『新流星胡蝶剣』。これは武侠片ブームに乗って作られた1本だという。この「守り人」シリーズっぽいノリだとよかったけど、香港映画だから絶対そんなわけねーよな(爆)。

秘密結社「快活林」の女剣士、コウ(ミシェル姐)と弟弟子のシン(トニー)とイプ(ドニー)は、ツォ率いる対立組織が武術会を開いて自分たちを初めとした他の組織を潰そうと企んでいることを知り、彼らの持つ秘密文書を強奪し、対立組織を潰すことを決意。コウは早速シンを組織に潜入させる。弓使いのシンには武術家の娘である恋人シウディ(ジョイ)がおり、互いに相思相愛の身だったが、幼い頃から彼と姉弟のように育ってきたコウもまた、シンに思いを寄せており、シンの子を宿したシウディを目の仇にしていた。そんな彼女にイプもまた思いを寄せていた…。

すみません、ストーリーの説明ができません。
もっと簡単に「すごいアクションとヘナヘナな恋愛模様が展開する」とだけ言いたいくらいです。それくらいストーリーはないです。恋愛模様の方ははっきりいってなくてもいいんだろうけど、そもそも武侠片は剣と恋の物語が多いからなぁ、そうしないとカップルで観に来られないだろうし。 そう、アクションはさすがチン・シウトン!というくらい力入ってて嬉しかったっす。ミシェル姐&ドニーさんの竹林アクションはバイオレントで美しく(武侠片の傑作《侠女》へのオマージュとか?)、これが観られるだけでも価値ありかな、と。ま、その他はどーでもいい作品かと(暴言)。

トニー演じるシン、女好きで美女に弱く、でも昔から自分を好いてくれる人の気持ちに気づかないってーのは、なんか武侠もんヒーローの黄金パターンだなぁ…(苦笑)。さらにジョイ演じる小蝶(シウディ)、「武術家の娘」というからアクションを期待してたら全くなしだし、美女ってだけでホントにおバカさん(それを自分で言うなよー)だし。こんなキャラならミシェル姐のコウの方が…って思うのは自分だけ?

あと、ジミリン(当時はさすがティーンエイジャーだったからかわいかったな)の登場&活躍が唐突なのは、プロデュースが“台湾の王晶”こと朱延平だから、というのに非常に納得。アイドル映画だもんね。ハハハハハ。 とりあえず、こんなところか。

すんませんねー、前ふりと本文が不一致かつやる気のない感想で。 …ところで、やはり朱延平映画に欠かせないトゥオ・ツォンホアと、張震パパ・張國柱がどこに出ていたか見逃しました。どこにいたんだ?國柱氏はミシェルの仕えるあの王か?

英題:Butterfly and sword
監督:マイケル・マック 製作:チュー・イェンピン アクション指導:チン・シウトン
出演:ミシェル・ヨー トニー・レオン ジョイ・ウォン ドニー・イェン ジミー・リン トゥオ・ツォンホア チャン・クオチュー

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映画タスキを受け取りました。(ただしここでは中華電影限定)

以前、Musical Batonを託した「M&K Fabclublog」M.さんから「見たい映画をつなぐタスキ」が回って来ました。ちなみにこのオリジナルは本年度アカデミー賞(もちろん米国の)ノミネート作品『ホテル・ルワンダ』日本上映を求める会に参加されているshidehiraさんのはてなからだそうです。
ここは中華電影のblogなので、中華電影限定で答えたいと思います。そのほかの映画については、後述を参考とのことで…。
では、いってみよう!

1)過去1年間で一番笑った映画

だいたいにおいて、笑える映画といえば香港映画。このへんにおいてはこのところ恵まれているけど、1本は絶対選べないぞ!というわけで、『カンフーハッスル』《精武家庭》『大丈夫』かな。どれも作り手&俳優の個性がよーく出ていて、笑いのタイプが違う映画ざんす。そーいえばキャスティングもかぶっていないね。

2)過去1年間で一番泣いた映画

1番と違って、これまた難しい。泣かせ映画ばやりの今日この頃、最近涙腺が硬いので滅多なことでは泣かないのですが、『楽園の瑕』でちょっと泣いたかな。あ、『欲望の翼』でも。両方とも久々に観たというのもあるし、やっぱりレスリーが…ね。

3)心の中の5つの映画

『悲情城市』
これを観なかったら、中華電影&トニー・レオン迷である現在のもとはしは生まれなかった。日本公開時が台湾留学直前だったということもあって、自分の人生の中でも非常に役に立った映画のひとつでもある。当然、墓場まで持っていきたい映画だ。

『さらば、わが愛・覇王別姫』
張藝謀や陳凱歌の映画は初期の頃から観てきたけど、この映画に出会う前までの中国映画はどうも重苦しさと垢抜けなさばかりを感じさせてしまうものばかりで苦手だった。でも、これはやっぱりすごかったよなぁ。レスリーの見事な“復活”ぶりももちろん、中国の20世紀を約3時間で一気に駆け抜けて見せたカイコーのエンターテインメントな作りに驚いたもんだった。

『ブエノスアイレス』
香港映画に本格的に足を踏み入れたのは、実は王家衛作品の『恋する惑星』だったり、『月夜の願い』や『君さえいれば』のUFO作品だったりと、先の香港ブームに見事に乗っかったままここまできているんだけど、王家衛作品で強く心に刻み付けられているのは実はこれ。この映画、ワタシの周りの香港電影好きには「ブームに乗っかった作品じゃん」とか「レスリーの運命が…」などことごとく評判が悪くて、一人で好きだといい続けていたんだけど、始めて香港に足を踏み入れたり、日本での上映期間(半年)中に地元・東京と合わせて6回も通ってしまったことから、思いいれは深かったりするんだ、これが。

『ハード・ボイルド/新・男たちの挽歌』
映画館で観たのが98年の冬だったので、ここに。ちょうど『フェイス/オフ』公開にのって地元映画館で公開されたんだけど、これと『狼』を観て、ウーさんの虜になったのは言うまでもない。ハリウッド作品でしかウーさんを知らない人にはぜひ観てほしい作品だったりする。

《無間道》三部作
…考えれば『覇王別姫』以外、全部トニー出演作じゃないか、全く(苦笑)。 3年前のクリスマスシーズン、珍しく全席が埋まった香港の映画館でこの映画の第1作を観た時には、これが壮大なトリロジー作品になるとは思いもよらなかった。字幕がついて改めて観て、その内容の濃さと渋さにじぃぃぃんとしたのはいうまでもなし。香港映画の歴史に残る作品になったのが嬉しい。

4)見たい映画

もちろん王家衛&トニーの新作に、ジョン・ウーの中華圏での新作。ユンファの香港映画の新作。リー・チーガイ&ピーター・チャンの新作も、ってみんな大御所だなぁ。若手ならステ監督とパン・ホーチョンの新作も観たいぞ。
願望として観たい映画だと、日本の小説を香港で映画化、とかいうのがみたいなぁ。
例えばミシェル・ヨー主演で上橋菜穂子の『精霊の守り人』(30代の女用心棒が主人公のファンタジー)とか、トニー&カレン主演で赤川次郎原作の「夫は泥棒、妻は刑事」シリーズのどれかとか…って完全に趣味ですみません。

5)このタスキをつなぐ方々

受け取ってもらえるかどうかはわかりませんが、今までワタシが書いたmusical BatonBook Batonとかち合わないように考えた結果、次の5名さまに。
どこからか回っていたらごめんなさいませ。
もちろん、スルーしても無問題ですので、よろしくお願いいたします~。

Hong Kong Addict Blogもにかるさま
ぼちぼちぶろぐわらしさま
あじさいの散歩あじさいさま
tomozoのうれし★たのし★大好きtomozoさま
そして、In the groove for lifeもとはし…って自分かよ。

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あれまぁ、『上海灘』がいまごろ日本進出とは!

中華ネタも少ない今日この頃だけど、今日下のリンクのような記事を発見。

ブランドシティと呼ばれる香港だけど、ワタシゃそっち方面にはまったく興味がない。でも、中環のペダービルにある『上海灘』は大好き。中国服好きのワタシとしては、カラフルな配色にキッチュなデザインが気に入ってるのだ。なんせ初めて香港に渡った時、ここで大枚はたいて中国服パンツスーツ上下を買った記憶がある。
…そう、ここの痛いところはお値段がかなり張るってことなんだよな。あまりにも…な値段なので、今はウィンドウショッピングのみざんす(笑)。
そんな『上海灘』、いよいよというかいまさらーというか、日本進出決定ですよ!もうそのお値段にふさわしく、場所は銀座ですってよ、奥さん!

リンク: asahi.com: 〈スナップ〉シャンハイ・タンが日本進出�-�文化・芸能.

あー、とりあえず、上京した時にウィンドウショッピングしてみます。っつーか、ここに香港で買ったパンツスーツ着て行ってみるかなぁ。でも色が肌色(ってまだこういうのか?ピンクがかったベージュといったほうがいいのかな?)なんだよ、そのスーツ。今着ると、ほとんど肉じゅばんかもー(苦笑)。

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友は風の彼方に(1987/香港)

『ハードボイルド』や無間道三部作(注:リンク先はまとめ感想)、あと厳密にいえば刑事ものじゃないけど『星月』など、香港映画には潜入捜査官ものが多い。そのジャンルの傑作はどれかと考えれば、やっぱりユンファ&ダニー・リー主演、リンゴ・ラム監督のこの映画につきるのかなぁ。
香港映画迷やってるなら、これは定番中の定番映画なんだろうけど、今まで観る機会がなかったのよ、お恥ずかしながら(^_^;)A。さらにこれ、クエンティン・タランティーノのデビュー作『レザボア・ドックス』はこの映画のパク、もといこの映画にインスパイアされて作られたというのもあり、そこでも興味があったのよね。

屋台街でチンピラのワーが殺された。捜査にあたったラウ警部(孫越)は自分の甥で武器屋兼タレコミ屋のチャウ(ユンファ)を呼びつける。実はチャウは潜入捜査官で、やはりワーも潜入だった。とある窃盗団を追っていた彼の後を継いでくれと、ラウはチャウに頼む。 その数日後、宝石店の入ったビルにフー(ダニー)を始めとした5人組の窃盗団が押し入った。そこに駆けつけた警官の一人が殺される、後からラウも駆けつけるが、その現場はチョウ署長が連れてきた若手キャリアのジョン(ロイ)に仕切られる。以後、捜査班長になったジョンとベテランのラウはことごとく反発する。そこでラウはチャウにフーたちと接触し、窃盗団に加わるように命じる。ホステスのホンと結婚を控えたチャウは、彼女との結婚を延期してその任務に入る。そして、彼はそれを最後にして潜入から手を引こうと決意していた。 なんとかフーたちと接触できたチャウだが、ジョンの部下にマークされてしまう。そこを助けたのがフーだった。彼と友情関係を結んだことで、チャウは窃盗犯に加わった。窃盗団は新たなる強盗計画に乗り出し、チャウはラウに情報を流す。しかし、ジョンはチャウもろとも窃盗団をつぶそうとしていた…。

まず最初に暴言一発。クエタラファンは怒らないでくださいませ。

やっぱクエタラ、アンタたいしたこたねーや。オリジナルの方がよすぎだわ。

てゆーか『レザボア』って銀行強盗に押し入ったら失敗しちまって、そこで仲間割れしたり裏切り者がいて最後の最後でメキシカンスタンドオフして構えだけだと思ったらほんとに撃っちまって殺しちまって…と筋(だったと思う)だけ書けば身も蓋もない映画じゃん。
それはこの映画での銀行強盗のくだりからインスパイアされたとはいえ、それじゃあどーしよーもねぇじゃん。で、それを観た若者どもが「クエタラってCool!マジやば!」とか言ってたんだからなぁ(注・公開当時のイメージ。その頃は「マジやば」なんて言葉は当然なかったよん)。なんせTMレボレボの歌にも♪タランティーノくらい観とかなきゃだなんて…なんてあったもんね。ったくそれなら、♪リンゴ・ラムの映画くらい観とかなきゃ、だってばよ。

…以上、暴言終了。
まぁ、『レザボア』は結局銀行強盗の部分しかパクってなかったようだけど、これはやっぱり警察映画ってこともあるので、ラウ警部(もちろん名前は建明ではない、ってみんなわかっているか)と若きロイ演じるジョンとの対立も見逃せない。特にこのジョンのキャラが典型的なエリートタイプ。二人の対立はまるで某人気邦画みたいだ(笑)。この二面から映画を描いているから、面白いのは言うまでもないのである。

ユンファはこの頃まさに絶好調だったんだよねぇ。多分、この映画が日本で公開された頃にちゃーんと観ていたら、アタシゃきっとユンファに惚れてたな、なんてちょっと思ったりして。
いやなんせこの映画の彼、演技がすっごく軽やかに感じたのだ。潜入捜査官といえば苦悩を抱えていて…というのがイメージだけど、この映画のチャウはちっともそんなそぶりを見せない。警察自体を辞めたがっていて、愛するホンと共に暮らしたいと願っていたのもあったんだろうし、実は画面に見えないところで悩んでいたのかもしれないけど、ユンファが演じるとその状況も面白がっているんじゃないか、なんて思うほどだ。彼が“亞洲影帝”と呼ばれるのは、この軽やかさゆえなんだろうなぁ。
そんな彼に対峙するのは香港一の警官俳優、李sirことダニー・リー。ワタシの中のbest of 李sirは『狼』なんだけど、それ以外はほんとに警官役しか見ていなかった。この映画を観るまでは。この映画での彼は初めて観るチンピラ(…厳密は違うが)役。ほんとに初めてだったので、とにかく新鮮だったよ。そして、ユンファと並ぶとやっぱりその「双雄」ぶりに惚れ惚れする。もちろん、男の友情ぶりもじっくり見せてくれる。そんな二人だから、お互いの正体を知った時は衝撃だったろう。そして、それがわかった時に、二人の前にあったのは破滅への道だったというのも、言うまでもない。

全てが終わった後のエンドタイトルには、映画中盤で二人が出会う直前にチャウがおどけてダンスするショットが入る。このシーンのユンファは印象的だった。あと、いつもはじっとりした香港だけど、この映画ではクリスマス前の乾いた空気が漂っているようで、映画の雰囲気ともマッチしたロケーションだったな、と思った。

原題&英題:龍虎風雲/City on fire
監督:リンゴ・ラム 製作:カール・マック 撮影:アンドリュー・ラウ 音楽:テディ・ロビン
出演:チョウ・ユンファ ダニー・リー スン・ユエ ロイ・チョン

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祝!金庸の『射鵰英雄伝』やっと文庫化。

金庸作品をずっと出していたのは中国方面に強い徳間書店だけど、ハードカバーで長編作品を完訳したのにかかわらず、邦訳されてずいぶん経つ『射鵰英雄伝』や『笑傲江湖』などが文庫化されていなかったのが不思議だった。文庫化されているのは今読んでいる『碧血剣』を始め、『書剣恩仇録』や『侠客行』などの初期作品で止まっていて、いったいどうしたんだろーなーと思っていたのだ。
そしたら、先週の新聞に載っていた徳間書店の広告に『射鵰英雄伝』文庫化(しかも1・2巻同時発売)の文字を見つけ、かなーり嬉しくなっちまいましたよ。

射雕英雄伝 1
岡崎 由美 / 金 庸 / 金 海南
徳間書店 (2005.7)
通常24時間以内に発送します。

現在CS等で放映されている中国ドラマ版が好評につき、めでたく文庫化になったようで。そいつはめでてぇや! 実は図書館でハードカバー版を読んでいたら1巻で挫折したという恥ずかしい過去があるので、今度こそはなんとしても読み通したいもんだい。
もちろん今後は『神鵰侠侶』『雪山飛狐』そして『笑傲江湖』の文庫化にも期待していいよね?

…とかなんとか言っているなら、早いとこ『碧血剣』読み終えろよ、自分(苦笑)。

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この夏の楽しみはこれ、かな?

えーと、諸事情によりブラウザ変えての初投稿になります。うまく反映させられるかどうか不安だわ。

この夏は仕事で東京出張するくらいで、帰省以外はどこも旅行しないつもりでいるのでヒマかなぁ…と思ったんだけど、なんとお盆直前に無間道三部作一気上映なんてあるんですか、あの六本木ヒルズで!(from TOHO THEATER ONLINE.)それじゃ早く実家に帰らなきゃではないか。…でも、“NIGHT”って書いてあるってことは、もしかしてオールナイト上映なのか?

…だ、誰か、ご一緒しませんかぁ?

あと、ビアレストランの老舗ニュートーキョーこんなビアガーデンをやっていたとは!台湾旅行キャンペーンもあるんだって!
よーし、出張or帰省の時、誰かとデートする時(大笑)に行ってみようかなぁ(^_^)。

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運命のカップルは意外というか、でも当然というか…?

なんか面白い企画考えているなぁ、韓国よ。と思ったのが、サーチナに載っていた次の記事。

韓国人ファンが選ぶ王家衛映画ベストカップルは?
韓国では現在、王家衛(ウィン・カーワイ)監督も参加したオムニバス映画『eros(邦題:愛の神、エロス)』が上映され、話題を呼んでいる。

  この上映を記念して行われた王家衛作品に関するインターネット調査で、「韓国人ファンが選ぶ王家衛映画の中のカップルベスト3」が明らかになった。

  投票した785人のうち、約4割の票を集めて1位に選ばれたのは、『春光乍洩(邦題:ブエノスアイレス)』の張国栄(レスリー・チャン)梁朝偉(トニー・レオン)

これ、日本でいえば、プレノンアッシュの飲茶倶楽部の企画にもありそうでせうか?とかなんとかいいつつも、自分、飲茶の会員になったことないんすけど。
しかし、王家衛電影の運命のカップルって言えばやっぱり『花様年華』の周慕雲&蘇麗珍じゃないかと思ったら、実は香港から南米まで彷徨ってしまった、あの黎耀輝と何寶榮(『ブエノスアイレス』)がベストカップルとは!
…もしかして腐女子が多いのか、韓国の王家衛迷には。というのは冗談だけどさ。確かにワタシもブエノスは大好きだし、あの映画でのレスリー演じるウィンのどうしようもないオム・ファタールぶりも、彼に困らされながらも愛しているのでついつい世話を焼きたくなってしまうトニー演じるファイの献身(?)ぶりも好きなんだけど、これって王家衛作品ではある意味突き抜けて異色なカップルじゃないか?

そういえば、韓国では日本より少し遅れて『ブエノス』が劇場公開されたらしいけど、上映当時、韓国では法律で同性愛を認めていない(と思った。いや、映像での同性愛表現が認められないのかな?)から、オープニングのあのベッドシーンがカットされたって聞いたことがあるっけ。でも、あの時と状況は変わったのかなぁ?

そうそう、王家衛といえば、発作的にこんなゲーム作ってみました。…王家衛電影迷の方、すんませんですm(_ _)m。

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『同じ釜の飯』(中野嘉子+王向華)に思ふ。

同じ釜の飯

同じ釜の飯

王 向華 / 中野 嘉子

平成13年、春。雨降る東京・渋谷のとある映画館。後にこのblogの書き手となるもとはしたかこは春休みを利用して上京し、そこで映画『花様年華』を観ていた。画面に映し出されていたのは炊飯器、だった。張曼玉演じるチャン夫人が、その炊飯器を使ってご飯を炊き、アパートの人々にふるまっていた場面、だった。もとはしは前年、同じ渋谷でこの映画のプレミア上映を観ていたのであったが、そのときには、その些細な場面に気を止めたりはしなかった。しかし、そのときは、なぜかその場面が気になって仕方がなかったのだ。もとはし、心でこう思った。

-これは、この間テレビで観た、『プロ○ェ○トX・倒産からの大逆転劇 電気釜』のその後ではないか! そう思ったもとはしの心の中に、あの番組のエンディングテーマが流れてきた。

それから4年後の春。その番組の後日譚ともいえる出来事をまとめた本が出版され、中華趣味関係blogで話題となった。それが、この『同じ釜の飯』である。

この本は、電気釜開発では遅れをとってしまった日本の家電メーカーが、活路を海外、しかもアジアに求め、見事に成功を収めた日本と香港の、男たちの記録である…。
(BGM『地○の☆』、ナレーター・田日トモロホ) ♪ちゃーん、ちゃーん、ちゃーん…ぷろじぇくとえーっくす…。

えーと、ふざけるのもこのへんにしときまふ。

今や日本の電化製品は、日本のみならず、世界各国に多大な評価を受けている。日本の電機メーカーで世界に知られているとなると、まずはソニーが思い浮かぶのだろう。しかし、ソニーが欧米で評価されたのと対照的に、アジアで多大な評価を受けていたメーカーがある。それはナショナル&パナソニックで御馴染みの松下電器だった。

この本ではまず、香港進出のきっかけとなった炊飯器から始まっているのが、松下電器といえば、炊飯器や冷蔵庫などの家電はもちろん、CD&MDプレイヤーやパソコンに至るまで、日本の家電市場でも人気のあるメーカーではないだろうか。(…それは単に我が家のTVとCDラジカセがパナソニックだからって言う贔屓目も多少あるんだけどね)

今回の記事のネタにした『プロジェクトX』、最近は全く観ていないんだけど、2001年2月に『倒産からの大逆転劇 電気釜』が放映され、その後に『花様年華』を観た時に、日本の高度成長期の始まりと映画で描かれた香港が同じ時代であった!という真実(当たり前じゃ)を改めて確認することになり(笑)、その映画の時代背景をリアルに感じることになった。
当時といえば、中国大陸では文革が始まろうとしていたのは言うまでもないんだけど、戦後の復興から立ち上がった日本が、自由港であった香港からアジアに電気製品を売り出す活路を見出したということはもっと知られていい事実だろう。(つまり、ワタシは恥ずかしながらこの事実を、この本を読むまでは知らなかったんっすよ。こんなワタシが中国語学科卒でいいのか、ほんとに)
しかし、商売は一方的に進出しただけでうまく行くはずがない。ナショナル炊飯器が香港で成功したのは、日本人たちの情熱だけでなく、彼らに共感した香港商人(華商)の蒙民偉の多大な協力があったからだった。長崎華僑の血を引く蒙氏は日本で暮らしたこともあり、日本語も堪能だった。彼の協力なくしては、炊飯器もここまで売れなかっただろうし、日本の家電が海外にはばたくこともなかったのかもしれない、と思ったのだ。やはり、海外で成功したいというのなら、金儲けだけでなく、自分たちの事情もわかってくれて、かつ現地の事情に詳しい人間にサポートしてもらわないとうまくいかないんだな。

60年代の香港については、いうまでもなく映画での知識しかない。その中でも『花様年華』ではチャン夫人の夫が日系貿易企業に勤めているという設定になっていたり、『2046』では木村さんが日本から香港に駐在して働いている若きエリートサラリーマン(でも広東語は苦手というのが日本人的?)を演じていた。それだけではなく、いつも拝見しているせんきちさんのblogにて紹介される映画からは、60年代に日本と香港の映画会社が何本も合作映画を作り、日本のスターが香港人俳優と共演していたり、日本の職人監督やカメラマンも香港映画に携わっていたという、今まで知らなかった事実も知った。
戦後間もない日本は、自国や欧米だけで企業努力をしていたわけではなく、ちゃんとアジアにも進出して、しっかり仕事をしていたのだ。それこそ、『プロジェクトX』的な知られざるエピソードではないだろうか。

読みやすい文章なので、その当時の香港の仮定状況がどんな様子だったのか、目に浮かぶように想像できる。しかし、蒙氏の会社のショールームがあの重慶大厦にあったとは、今のことしか知らない人間にとっては驚くべき事実だなぁ。

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若き仕立屋の恋 -『愛の神、エロス』(2004/フランスほか)より-

王家衛の『ブエノスアイレス』の原題が《春光乍洩》と知ったとき、これはどこかで聞いたことがあったような…と思ったことがある。確か台湾のビデオシアターで同じ題名を見たような、と調べてみたら、ミケランジェロ・アントニオーニの『欲望(Blow up)』の中国語題と同じだということに気づいた。王家衛らしい題名のつけかただなぁ、と感心していたら、いつの間にかこんなオムニバスを、当のアントニオーニ、そしてアメリカのスティーブン・ソダーバーグと一緒に作っていたとはどういうことだ。そーいやぁ家衛、最初は『1:99』で1本短編を撮るつもりだったけど、この映画を撮るために辞退したんだって?ということはこの短編によっぽどの自信があるんだな、じゃー観てやろーじゃねーか、というエロスもへったくれもない意気込みで、『愛の神、エロス』を観に行った色気なしの自分。そんな色気もエロスもない人間による感想の始まりー。

1963年、香港。仕立屋見習のチャン(張震)が高級娼婦のホア(コン・リー)の元へ仕立てた服を持ってきたとき、彼女の部屋からは激しい喘ぎ声が聞こえていた。若い彼の肉体はそれに反応してしまい、いざ彼女と対面する時には、思わず前を隠してしまう始末。しかし、娼婦ゆえに男性の生理を知り抜いているホアには余裕があった。彼女は彼のズボンと下着を脱がせ、「いい仕立屋になるのなら、大勢の女に触れなさい」と告げて、彼の股間を愛撫する。その手に快感を覚えたのが、チャンとホアの関係の始まりだった…。

ただ裸になって抱き合い、つながることだけがエロスではない。そんなことを考えたことがある。もっとも自分は女子なので、殿方の考えるエロスはまた違うのだろうが。
この作品の後に続くソダーバーグ作品もアントニオーニ作品も女性がガッと裸になったり、全裸でセックスしてたけど、どうもそれにエロスは感じなかったなぁ…。胸がでかいなぁとか、肝心な部分にボカシは入らないんだなぁとか思って観ていたけど。その後の作品と比べると、この王家衛作品ではチャンも下半身を脱いだ以外は裸にならず、娼婦のホアも仕事に励む音の描写はあれど、カメラの前では絶対脱がない。最近胸のでかさが際立ってきたコン・リー姐さんが脱ぐことを期待した殿方なんて、果たしていたんだろうか?
(もちろん、王家衛はベッドシーンが撮れないわけではない。『ブエノスアイレス』では二人の男にベッドシーンを要求したし、『2046』ではチャウの性的奔放さがバイ・リンを相手に何度も繰り返されるベッドシーンで示される。まぁ、それらの場面にはセンセーショナルを感じてもエロスは感じさせなかったけど…)
でも、このオムニバス映画の中で一番エロティシズムに満ちていたのは、この作品だった。
もともと30年代の上海を舞台に想定したものの、SARS騒ぎでロケ不可能になり、『欲望の翼』『花様年華』『2046』と同じ60年代香港を舞台にして、撮影時にも細心の注意を払いながら行ったことで、手の触れ合いで官能を感じ取る物語が生まれたという偶然は、実にそのいきあたりばったりぶりが見事な演出となる(誉めてます)王家衛マジックたるものだ。この物語はチャンの働く仕立屋とホアの住む高級アパート、そして病に倒れたホアが投宿するホテルの3ヵ所のみを舞台にした、王家衛映画の黄金パターンであるので、チャンがホアの部屋で決して抱き合わない逢瀬を繰り返している頃、外ではリーチェン(チャン夫人)とチャウが一緒に食事をしていたのかもしれないし、まだ若い旭仔やあの若い警官が街を彷徨っていたのかもしれない、などという想像も生まれる。
…話を元に戻して、The Handという原題のこの短編は、その題名の如く手がすべてを感じ取る。初めての出会いでチャンを愛撫するホアの手、薄い服の上からホアの肉体に触れ、彼女のドレスを仕立てていくチャンの手、そして彼女を抱くかのように自分が仕立てたドレスを愛撫するチャンの手。彼らはその肉体や生地の上から触れることで愛を感じ、愛を伝えていたのかもしれない。それがあるからこそ、クライマックスで憔悴したホアがチャンを手だけで触れることを求め、それに対してチャンが初めて彼女に口づけしようとしたのを拒んだ場面が印象的だった。
…そういえば、『楽園の瑕』でも、一番エロティックな場面は、莫容燕/媛が黄薬師の愛を求めて、夢うつつに歐陽峰を手で愛撫するシーンだったっけ。60年代シリーズだけじゃなく、そこにも通じるような気がする。

香港人俳優をメインキャストにすることが多い王家衛作品の中でも、『ブエノスアイレス』以降ずっと彼にかわいがられてきた(DJ ShadowのPV『Six day』にも出演)台湾人の張震が今になってやっと主演というのも意外だけど、トニーとはまた違った若い男の色気を発散していて、楊徳昌監督の秘蔵っ子時代から彼を観てきた身としてはその成長ぶりに惚れ惚れしてしまったのであった。(そーいやぁ張震、この間雑誌エル・ジャポンで家衛と対談していた、日本の若手実力派俳優JO君と同い年ですな。キャリアはぜんぜん違うけど)逆二等辺三角形の顔にヒゲも似合うぞ。トニーより似合うじゃん、ゲーブルヒゲ(苦笑)。日本でロケもした田壮壮監督作品『呉清源』ではこれまた日本の若き怪優・大森南朋と共演だそうで、これも楽しみだなぁ。
『2046』でははっきりいって出番は必要だったか?と言われていたコン・リー姐さん。“女優に愛のない”王家衛とコンビを組むのは当然2度目なんだけど、『2046』よりこちらの演技のほうがよかった。彼女演じるホアは多分、上海あたりから流れてきた娼婦なんだろうけど、多くの男に愛されることを至上の喜びとして自信に輝く前半と、落ちぶれて病に倒れ、儚さを漂わせる後半のコントラストが見事だった。もちろん決して美人ではないと思うん だけど、外見じゃなくて内に秘めた情熱が美しさとして見えてくるような女性だったと思う。この役、マギーだとまず厳しいし、カリーナでもちょっと違う。家衛も初対面で握手したコン・リーの手からインスパイアされてこの物語を産み出したらしいので、コン・リーあっての作品なんだなと気づいたのであった。

とまぁ、エロスもへったくれもない人間がエロスを語ると、こんな感じ。他の2作品の感想は、日記blogをご参照あれ。

原題:The hand
制作&脚本&監督:ウォン・カーウァイ 撮影:クリストファー・ドイル 美術&衣装&編集:ウィリアム・チャン 音楽:ペール・ラーベン
出演:コン・リー チャン・チェン

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ワンナイト・イン・モンコック 旺角黒夜(2004/香港)

現在の世界状況で、特に人を過激なテロに走らせる原因として挙げられるのが、「憎しみの連鎖」である。それはグローバリズムが肥大する現代、4年前の同時多発テロから現在に至るアメリカとイラク等の対立を例にとると明らかに見えてくる。相手への憎しみが攻撃を生み、その攻撃に対しての反撃を生じた結果、多くの犠牲や悲劇を生み出すのは、ここで説明しなくてもいいだろう。
香港の片隅で起きたある事件が、そこに居合わせた人々を悲劇に巻き込んでいく、イー・トンシン監督が今年の金像奨で最優秀監督&脚本賞を受賞した『ワンナイト・イン・モンコック 旺角黒夜』を観たときに思ったのは、悲劇的な出来事もまた、憎しみと同じように連鎖して起こるものなのだということだった。

ことの起こりは、対立するチンピラのタイガーとファイ(サム)がいざこざを起こし、交通事故を起こしてタイガーが死んだ事件だった。タイガーの父親ティムは組のものを使って生き残ったファイを刺し、さらに彼のボスであるガウの暗殺を決意し、大陸から来たリウ(林雪)に殺し屋を手配させる。選ばれたのは、湖南省の貧しい村に住む若者フー(彦祖)。クリスマスイヴの前日、フーは片道ビザで香港に入境し、リウの指示を受ける。この情報はタレコミ屋によって警察にも伝わっており、射撃の名手だが、過去に犯人を射殺してしまったことを苦悩しているミウ警部(中信)率いる旺角署の捜査課は、標的を二つの組のボスとその殺し屋に絞って捜査を開始する。
自分のホテルに警察の手入れが入ったことを知ったフーは、とある安宿に身を寄せるが、そこで男に襲われていた娼婦を助ける。彼女は同じ湖南省出身で、タンタン(セシリア)という名前だった。実はフーには、彼の恋人スーが香港で行方知れずになっているため、探しに来たという目的もあったのだ。その事情を知ったタンタンは彼と行動を共にし、スーを探して旺角のナイトクラブにあたる。同じ頃、ミウたちはリウを拘束し、彼を使って殺し屋を捕らえようとしていた。フーは自分が裏切られていることを知り、ミウたちの罠をかいくぐてなんとか逃げ延びた。しかし、その後にはミウたちとフーの両方に、本当の悲劇が待ち受けていた…。

NYでいえばハーレムやブロンクス、東京でいえば歌舞伎町に当たるのが旺角。エンディングのクレジットにも出ていたが、ここが世界で一番人口密度の高い地区だと言われれば、確かに納得する。常に人がひしめいている通菜街や王家衛の短編フィルムの舞台にもなったポートランドストリートなど、That's香港という地区であるのは確かだし、その姿は『いますぐ抱きしめたい』や『古惑仔』シリーズでもおなじみだ。チム界隈なら平気で夜の一人歩きしてしまうワタシも、このあたりはさすがに怖くて夜に出歩けない。このところ『PTU』『黒白森林』など夜の街の犯罪系(ノワール系…っていうのともちょっと違うと思ったのでこう書く)香港映画をいろいろ観ていることもあり、例えば『PTU』でのチムの描かれ方とこの映画の旺角の様子を頭の中で比べたりしながらこのヘヴィな物語にどっぷりと浸かっていった。
新聞記事になる交通事故から始まる偶然と悲劇の連鎖は、実際に世界のどこでも起こりうることだ。それを思うとこの映画はフィクションであってもリアルである。発端こそ香港黒社会映画によくある黒社会の抗争だが、この映画はそれを全面的に出さず、それに巻き込まれてしまう大陸からやって来たフーとタンタンにスポットを当てることで、現在の香港の状況がどうであるかということも示してくれるのだ。
香港の黒社会が大陸と結びつこうとしているのは『終極無間』やここ数年のいろんな香港映画でも多少提示されていたし、大陸の女性が香港に渡り、セックスワークに励んで大金を得るのはフルーツさんの『ドリアンドリアン』でも描かれていた。しかし、この映画では先の二つでは描かれなかった、大陸から香港へ来た人間がたどる負の面と彼らがたどる悲劇が描かれ、それが救いようもない結末を迎えることで、あまりにも重苦しく、考えさせられるものにあがっていたのだった。…ここに、この映画が金像奨で脚本賞と監督賞を受ける理由がある、と思ったのはいうまでもない。

イー・トンシンさんは「悲劇の人」だと思う。それは本人が悲劇的というわけではなく、ラブストーリーからアクションものに至るまで、その中に隠された悲劇や苦悩を印象的に描き、見せてくれる人だと思ったからだ。あの楽しくてエッチな『色情男女』にだって、最新作が酷評されたのに心を痛めた映画監督(ラウチン)が湾仔で入水自殺するというくだりがあるし、当の主人公だったレスリー演じる映画監督だって、自分の撮りたいものと全く違う作品の監督を要求されて苦悩していた。
しかし、トンシンさんの作品では結末に悲劇が待ち受けていても、主人公たちに注がれる視線は突き放したものではない。『つきせぬ想い』のラウチン&アニタの運命のカップルを温かく見守っていったように、この映画でも汚れた稼業に手を染め、幾つもの苦難にも出会いながら、心は純粋さを失っていない大陸から来た二人の交流を丁寧に見せている。それはスターである彦祖とセシリアにこの役を演じさせた(&全編ほとんど北京語で通させた)意外性も作用しているのはいうまでもない。
彼らを追う警察側も複雑な背景を抱えている。中信さん演じるミウはあの『ダブルタップ』でレスリー演じるリックと対決した刑事その人であり、4年前のあの事件がトラウマとなってすさんでしまったということを示してくれる。中盤、タレコミ屋の密告によりあるホテルに押し入り、突撃する前に若手刑事ファン(アンソン・リョン)が中の人物を射殺してしまったくだりにそこがよくわかる。結局、偶然によって密告に真実味があったとわかっていても、どこか後味の悪い一件であったのは言うまでもない。そして、それが終盤のフーとの銃撃戦への伏線になり、それも偶然が重なって引き起こされたことことも…。

あまりに悲劇的であり、香港映画特有の爽快さは全くない。しかし、いろいろと考えさせられることが多い映画だ。
香港映画は今だ低調にあるといわれていても、このような社会派作品も生まれているし、2003年の《忘不了》から復活しつつあるというトンシンさんもまた、香港映画界で独自の地位を築いていくのだろう。まだ《忘不了》と、この春香港で久々にロングランを記録したという《早熟》も、いつか観てみたい。

監督&脚本:イー・トンシン
出演:ダニエル・ウー セシリア・チャン アレックス・フォン(方中信) ラム・シュー チン・カーロッ サム・リー

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ブラック・シティ 黒白森林(2003/香港)

今をときめくF4を北京語読みの「エフスー(じゃ広東語だと「エフセイ」?)」ではなく英語読みの「エフフォー」と呼ばせるのって、台湾芸能ブームを“台流”と呼ばせたがるくらい違和感があるなぁと思う。そう考えるワタシは、はたしておかしいだろうか。いや、充分おかしい。←反語表現。あと、『流星花園』を「りゅうせいはなぞの」と読むのだって間違っていないんだけど、やっぱり違和感があると感じるのもおかしいんだろうな。ちなみにワタシは「りゅうせいかえん」と読んでいる。…それもヘンだな。
こんな書き出しにしたのは理由がある。今日取り上げるこの映画、原題を日本語読みするとどうなるか考えてしまったからだ。普通に読めば、確かに「くろしろしんりん」。しかーし、日本語には「黒白」と書いて「こくびゃく」と読ませる熟語がある。だから、この原題は「こくびゃくしんりん」と読んでしまってもいいのかもしれない。…ってそんな呼び方するのはワタシくらいなもんか?

またまたどーでもいい前置きは置いといて、今日はこの映画。
『無間道』のように、悪と善が混在する香港アンダーグラウンド。そこでは黒白(こくびゃく)つけるのが難しい。ってーな感じの映画がこれ。2003年といえば、ちょうど『無間道』三部作製作中だったわけで、キャストもアンソニー(字幕では北京語読み?の「ファン」だったが、役名も無間道と同じ黄!)、チャッピー、ジャンユー(特別出演)、ン・ティンイップとかぶりまくり。パクリではないけどどこか亜流なにおいを感じると思ったら、この映画の監督は王晶。しかもご丁寧にダブル監督。…イヤー、この人のエンタメ精神は健在だわ、なんて改めて思うのであった。

1993年、汚職警官のセブンアップ(ラウチン)が黒社会のボス、チュウ(ジャンユー)と密会中、作戦決行中の同僚、捜査課の黄強(アンソニー)に出くわしたことから、全てが始まる。街に響きわたる3発の銃声。その後には、立ち尽くす黄の足元に、セブンアップとチュウの遺体があった。黒社会は黄が出世のためにセブンアップを殺したと主張し、彼の妻もそれを頑なに信じる。そしてセブンアップの忘れ形見ヤンは父を殺した黄に復讐を誓い、自分の父や彼と同じ警官を目指す。
9年後、成長した息子ヤン、通称コーラ(レイモンド)は麻薬課に所属していた。彼はベトナム人麻薬ディーラーのシクロ(テレ)を追った事件の最中、父の仇の黄と、彼の部下のダメ警官アシイ(チャッピー)に出会う。シクロは逃したものの、コーラは的確な行動を見込まれて、捜査課に配属される。上司はもちろん黄。しかし、行動を共にするうち、憎き敵である彼が自分の父を殺したとは思えなくなるコーラ。そんなコーラのもとに、チュウの後を継いだ息子ライ(小春)が近づく。ライはコーラに黄を殺すように命ずる。
シクロに香港の麻薬ディーラーのウォン(パトリック)が近づき、麻薬を強奪した。しかし、それが元でウォンは命を狙われる羽目になる。そこで黄のチームがウォンを警護する。コーラはウォンの娘で大学生のケイティ(ジル)を警護する。彼らが警備している間も、シクロは攻撃の手を抜かず、警察の捜査網の裏目をかくようになってくる。その合間に、黄は自宅を襲撃される。黄はシクロとウォンの背後に、誰かがいることを感じ、その最終目標が自分であるということを感じ取る…。

まず、全編に流れるメインテーマにインパクトあり。ここ数年の香港映画でのベストメインテーマは当然『やりび』の、♪パーパパ、パーパパ、パパパパー、パパパ、パーパパ、パーパパ、パパパパー、なんだが、それにも負けないこの映画のメインテーマ。男声コーラスで、♪ウンバ、ウンバ、ハハハハ、ウンバ、ウンバ(以下略)と流れるリズムが主旋律なのである。うーん、これは文章ではうまく説明できないけど、ラグビーNY代表「オールブラックス」で有名なマオリ族の闘いのダンスの曲と、昔の西部劇映画に登場するインディアン(あえてこの表現で記す)が悪役で出てくる時にあげる雄叫びをミックスしたようなテーマを想像していただければわかりやすいかと。
これまで香港映画において、黒社会と警察(それも地元の)との力関係の微妙さは何度も何度も描かれてきたテーマである。今まで観てきた中では、例えば『BEAST COPS 野獣警察』での、地元に精通した顔役のような刑事が、黒社会のチンピラ連中をなだめたり、暴走する古惑仔と対決したりする姿があったり、 『無間序曲』で描かれた天敵同士のウォン警部とサムの関係などから、これらを観ているうちに、警察と黒社会の関係は汚い結びつきではないけど(そうか?)、警察はなんらかの形である程度相手の動向をつかんでおかないと、うまく街を動かせないもんなんだな、だから地元のたたき上げの刑事は必要なんだな、なんて思ったもんである。…日本でもそんなもんかな?
冒頭、セブンアップは潜入なのかなーと思っていたのだけど、観ているうちにどうもそうじゃないのでは?と思ったので、あ、コイツは汚職警官なんだ、というのに落ち着いた(違ったらすまん)。チュウの信頼が厚かったようなので、ほとんど親友みたいなもんだったのだろうか。もちろん、セブンアップは黄とも大親友だったということは、劇中でも語られる。
黄に対するコーラの復讐譚、シクロとウォンの麻薬取引に関する駆け引きと、彼らの取引を押さえるために護衛に就く黄たち、そして黄への復讐に事件を利用するライ…。1時間40分の中に複数の事件がこれでもかこれでもかと詰め込まれるので、はっきりいってどういう方向に着地するか先が見えずらかった。ラストになって9年前の事件の真相と幾つものどんでん返しが起こるので、えーっ!?という間に終わってしまった印象。放り投げだされた筋書きも多かったかなぁ。でも、『無間道』やジョニーさん作品に負けているかというと、王晶映画にしては結構健闘してるんじゃない?なんて思えるところもあったのだ。まぁね、コーラとその周辺の思い込みは誤解だったというのは想像できたし、これで警察が完全に悪と描かれちゃ救いようもないからね。
他の作品と比較して、これはいいかもと思ったのが、40代独身でイギリス人のお父さん(元英国軍の爆弾処理専門家)の介護をして暮らしているという黄の家庭事情の描き方。部屋にグランドピアノがある生活を質素な生活と言ってはいけないのだろうけど、高齢化問題を抱える現代の日本に生きる身としては、介護問題は香港も同じなんだなぁ、などと感心してしまったのであった。ま、そんなとこかな。

キャスティングもホントに王晶映画的。だって、冒頭に登場してさっさと退場するだけなのに、ラウチンとジャンユーって…。いいのかなぁ。
メインはアンソニーさんというより、ただいま売り出し中のレイモンド君(『Needing You』『PTU』)。清廉潔白な演技に好感は持てるけど、主演にしてはちょっとインパクトに欠けるかなぁ。チャッピーは『無間道』のキョンがそのまま刑事になった(それもかなりのダメダメ刑事。だいたい身だしなみがなっちゃいないし)って言うのはどーゆーことだ。テレンスは…いいの、ずっとこの路線で?ニコパパはさすが大スターなので、登場時のインパクトは大きい。髪も長いし。しかし、このパパの娘にジルっていうのも…。小春、もっと出番があっても…。あ、ピンキー・チョンが演じた(だよね?)ウォンの妻の使い方はホントに王晶映画っぽい。ジョニーさんや『無間道』ではセクスィー系女優が出てこないストイックさがあったけど、やっぱり王晶映画ではビキニスタイルのお色気担当(でもあまりお色気には見えなかったなぁ…)女優が欠かせないんだなぁ。

この映画を観たのは、仙台に『ワンナイト・イン・モンコック 旺角黒夜』を観に行く前日で、観たばかりの時はそれなりによかったんじゃん?なんて思ったんだけど、…『旺角黒夜』を観た後では、かの映画のインパクトがあまりにも強かったので、やっぱりたいしたことなかったか、なんて思い直してしまったのであった。すまん、ホントに。

英題:colour of the truth
監督:ウォン・ジン&マルコ・マック
出演:アンソニー・ウォン チャン・シウチョン レイモンド・ウォン チャップマン・トウ ジリアン・チョン テレンス・イン ラウ・チンワン ン・ジャンユー ピンキー・チョン ン・ティンイップ パトリック・ツェー

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