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故郷(ふるさと)の香り(2003/中国)

最近中国語教室でのおしゃべりで出た、ちょっとした話題からはじめたい。
ワタシの中国語の先生はハルピン出身で、南京の大学で教鞭をとってから、5年前に家族揃って岩手にやって来た。家族はスタイルのよい奥様と一人娘。以前会ったときは地元の小学校に通っていた娘さんも、もう中学生。そんな娘さんのある一言に、先生はビックリしたそうだ。
その言葉、「○○の彼氏が…」「△△の彼女が…」という、若者にとっては男朋友や女朋友を指すたいしたことがない言葉。だけど先生にとってその言葉は「たった12、3歳でもう恋愛関係にあるのか、日本のイマドキの子供は!」とも思えて、大ショックを受けたそうだ。…ま、これは日本のお父さんでも同じ反応をするかな。
「じゃ、中国では何歳から恋愛していいんですか?」とクラスメイトの一人が聞くと、彼はこう答えた。
「高校を卒業したらですよ、高校を!」

とまぁここでやっと、最近観た中国映画『故郷の香り』の話。この映画には、ちょうど高校を卒業したばかりの恋人たちが登場する。そこで、こんな前振りにしてみたのだ。先生、これを見ていたらごめんなさいm(_ _)m。
これは、ここ5年間に観た中国映画ではベストフィルムとなった『山の郵便配達』を作った霍建起監督の今のところの新作。前にも書いたけど、監督曰く、『郵便配達』の評判が一番よかったのが日本だったとかで、そのせいかどうか知らないけど、姜文監督作品『鬼が来た!』で日本兵役を演じた演技派俳優香川照之氏(以下、照之と記す)を起用し、ポストプロダクションを日本で行った作品である。ちなみに3年前の東京国際映画祭では作品が東京グランプリ、照之が優秀男優賞を授賞。でも照之、実は主役じゃありませぬ。

恩師を助けるために、10年ぶりに故郷に帰ってきた青年井河(郭小冬)。用事を終えてすぐ家族の待つ北京に帰ろうとした彼だが、橋で思いがけない人とすれ違う。脚を引きずったその女性・暖(李佳)は井河の初恋の女性だった。10年前、高校で同級だった二人は恋をしていたのだ。
次の雨の日、井河は暖の家に行く。そこにいたのは耳が不自由な幼馴染、ヤーバ(照之)だった。恩師から暖がヤーバと結婚し、娘をもうけていることを井河は聞いていた。暖の話によると、彼女は一度町の人間と婚約したのだが、相手の態度に傷ついて村に戻り、ヤーバと結婚したという。娘のヤーと遊び、ヤーバの仕事を手伝いながら、井河は10年前の恋と暖との別れを思い出すのであった…。

歌がうまく、村にやってきた美形の京劇男優に憧れた暖。最初のうち、井河はそれを見守るしかなかった。しかし、男優との別れで、井河は暖への愛を確信し、彼女のために奔走した。そして、大学進学を決意し、村のブランコで愛を告白した直後に起こった悲劇…。
それらはすべて偶然に起こった出来事(これはパンフレットで莫言もコメントしている)で、それがあったから現在の井河と暖がある。もし、暖が京劇女優を目指して村を出てしまったら、もし井河が約束通り暖を迎えていたら(もっとも、迎えられなかったのはやはり暖を愛していたヤーバが嫉妬から井河の手紙を破り去っていたからというのもあるが)…、と思うと、この恋人たちの運命はかなり切ない。そして、その二人の気持ちを痛いほどよくわかっていたのが、いつもそばで彼らを見ていたヤーバだった。だから、彼は井河が村を去る時に、声にならない叫びをあげて、暖とヤーを連れて行ってくれと懇願する。もちろん、井河はそれができないし、暖も同じだ。でも、ヤーバの懇願と暖への償いのために、井河はいつかヤーを迎えに行くと約束する。この約束は今度こそ、かなえなければいけないだろう。村で自分を取り戻した井河なら、きっとできるはずだ。

井河と暖を演じた俳優は二人とも撮影当時20代で、驚くことにこの二人、在籍した北京電影学院でまさにこの映画のような状況にあったという!さらに暖役の李佳はヴィッキーと同窓で、一度は『グリーン・デスティニー』のイェン役に決まっていたとか!というのはパンフ情報(by照之コメント)なんだけど、道理で感情のあり方がリアルなわけだ。しかし、『春の惑い』でも思ったけど、中国の若手俳優は年齢相応に落ち着いているなぁ。
で、照之はこの二人より10歳上なんだが、…違和感がなかったよ、これが。初登場時、この濃ゆくて小汚いヒゲ面はまさに照之だ(ファンの人すみません)、とすぐわかったのだけど、台詞なしのボディ&フェイスランゲージで前編を押し通す彼は、日本の個性派俳優とわかっていながらもなぜか浮いてないように感じた。ああ、だから東京国際で男優賞が獲れたのか、照之。ま、今回の撮影現場も『鬼が来た!』同様大変だったみたいだが。

とまぁ、こんな感じで。あ、そうそう、締めにもうちょっと。
同じ山間の村でも、『郵便配達』では夏の小村を瑞々しく描いていたが、今回は秋の村を乾いた感じ(でも、素っ気ない印象はない)で描いているのが印象的。オープニング、井河がススキが茂る野原の細い道を自転車で走っていくシーンでは、その風の乾いた暖かさが感じられるようだった。その乾いた空気も、井河が暖と過ごした思い出を心に甦らせるにつれ、瑞々しく変化していくみたいだった。

原題:暖
監督:霍建起(フォ・ジェンチィ) 原作:莫 言(モー・イェン)『白い犬とブランコ』
出演:郭小冬(クォ・シャオトン) 李 佳(リー・ジア) 香川照之

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