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香港国際警察 NEW POLICE STORY(2004/香港)

予告編の上映が終わり、ユニヴァーサル(!)と東宝東和のクレジットと日本版タイトルクレジットが映し出されてすぐ、画面に現れたのは「英皇集団」のクレジット。いやぁ、いろんな意味で曰くつきのこの事務所のクレジットを日本で観られるとは思いもよらなかったわよ(苦笑。ちなみに『メダリオン』は未見)。

思えば香港返還後、俳優としてはハリウッドに活躍の場を求めていった成龍さんは、地元では自ら映画会社を立ち上げて『ヴァーチャル・シャドー』『ジェネックスコップ』をプロデュースした後、現在は英皇集団とタッグを組んでJCEピクチャーズを立ち上げて(第1回作品はステ初監督作品《大[イ老]愛美麗》)、沈滞する香港映画を救おうと尽力してきた。でも、語弊があるかもしれないけど、日本人は香港映画にしろハリウッド作品にしろ、彼のすごいアクションだけ注目して、このような映画人としての側面には全く注目してこなかったのはまずいんじゃないかな、なんてふと思った。だいたいの日本人にとっての成龍さんのパブリック・イメージって、彼とサモハン、ユン・ピョウがトリオを組んで大暴れしていた80年代前半のメインストリーム映画の頃で時が止まっているような印象だ。それだけイメージをぶれさせずに、清廉潔白を押し通す成龍さんは決して悪くないと思うんだけど、彼のこの素晴らしい業績がステロタイプの香港映画像を作り上げてしまったのは確かだ。だから、骨の髄まで香港映画オタクのワタシみたいな人間にとって、彼は香港映画の未来を考える偉大な大哥であると同時に、香港映画の固定イメージ化の元凶(表現悪くてすみません、要するにnancixさん言うところの“ジャッキー・チェン・ジレンマ”です)であるという複雑な思いを抱かされてしまう大明星であったのだ。

香港返還から7年、ご当地では『ゴージャス』や『アクシデンタルスパイ』、『メダリオン』に出演してきた彼が、80年代に一世を風靡したあの《警察故事》シリーズの名を引き継いだ新作『香港国際警察』を作り、しかもニコラス・ツェーやダニエル・ウー、シャーリーン・チョイなど自らのプロデュース作品に出演した若手俳優たちとコラボし、さらにあのチャーリー・ヤンまで復活させてしまったと聞いたとき、これはただのリメイク映画じゃない、えらく気合が入っているぞ成龍さん、と思ったものだった。

香港警察のヴェテラン陳國榮警部(以下チャン警部、成龍さん)は格闘技と銃器扱いに長け、どんな悪にもひるむことなく立ち向かうことで同僚や部下に信頼されていた。彼は部下ローの姉ホーイー(チャーリー)と婚約し、公私共に満たされた日々を過ごしていた。…それはほんの一年前のことだった。彼の運命を一転させたのはアジア銀行を襲撃した若いギャングたちだった。ギャングの逮捕に部下9人を引き連れてアジトに向かったチャン警部は、敵の罠にはめられ、リーダーのジョー(彦祖)を始めとしたギャングたちに、ゲーム感覚で警官を殺されてしまったのだ。一人生き残ったチャンは停職処分を受け、ホーイーとの仲もギクシャクし、生きる気力を失って酒に溺れる日々を過ごすばかりであった。
助けの声を聞いて捕まえようとしてたスリの二人組(Boys、残念ながらすでに解散…)にもバカにされ、路上でゲロゲロ吐きながら倒れこむチャンに、一人の若者が近づく。彼の名はシウホン(ニコ)。自ら「巡査1667でチャン警部の相棒」と名乗る彼は、部屋の掃除から現場への復帰までチャンの面倒を見て、強盗犯に再び立ち向かうように焚きつける。同僚のクワン警部(于榮光)の挑戦に乗り、コンピューターに詳しい若手警官ササ(阿Sa)の協力を得て、チャンとシウホンは強盗犯の行方を追う。しかし、1年前の虐殺をゲーム化してオンラインに流すという非道徳的行為をしている彼らも、チャンに次々と挑戦してくる。それは香港警察だけでなく、ホーイーまでも巻き込んでしまった…。

実は、オリジナル(とあえて言おう)の『ポリス・ストーリー』の詳細をよく覚えていない。おぼろげな記憶や資料を基に書いてみるとこんな感じか。これはちょうど20年前の作品で、身体を張って悪に向かい、おきゃんな恋人(今やカンヌの影后、マギー・チャン!)に振り回されながら頑張る成龍さんの80年代を代表するシリーズだ。
今回の《新警察故事》は確かにこの人気シリーズの名を引き継いではいるものの、その趣は80年代に作られた成龍作品とは大きく異なる。
それがよくわかるのはオープニング。だって、あの成龍さんがデロンデロンに酔っ払ってゲーゲー吐いているんだぞ!とにかくその醜態は観ているだけで痛い。さらにそこから突入する回想シーンはさらに痛い。だって、愛する同僚たちを目の前で惨殺されると考えると、気が触れなかったのが幸いと思うくらいの悲惨さなのだから。
彼の演じるチャンも痛みを抱えながら生きてきた人間だが、そんな彼に立ち向かう強盗犯たちは彼の痛みを脚で踏みにじるが如く、部下を奪い、チャンの名誉を失墜させ、それに飽き足らずに彼の最愛の者まで奪おうとする。そこまで執拗に彼を追い詰める強盗団の目的は、チャン個人ではなく、彼の所属する警察に憎しみを抱いている。
しかし彼らも、全員が裕福な家庭に生まれながらも決して両親に愛されず、特に警視正の息子であるジョーは幼少時に父親から児童虐待すれすれの折檻を受け、その憎しみと母親に甘やかされながら成長してきたということが描かれることもあり、みんなが現代っ子特有のアンバランスさを抱えている。彼らはその心の痛みを警察の憎しみにすりかえて、極悪非道をつくす。…まぁ、ありがちな設定ではあるけど、これもまた痛いと思ってしまった。彼らの理由なき虐殺は、ヴェテランのチャン警部にとっても恐るべき敵であることは確かだ。それがお互いに痛いと感じるのだから、複雑な時代になったものだと感じたりもする。とちょっとずれてきたかな。
一方、同じ若者でも、強盗犯たちと全く正反対な生い立ちのシウホンは違う。身分を偽ってまでチャンに同行し、彼を助けていく(最後には助けられるけど)シウホンは、決して裕福ではなかった頃に起こった事件が元でできたチャンとの“縁”を大切にしていて、その想いに動かされていったような印象を受けた。この二つの若者像を見て思ったのは、人の生き方は、幼少時に人とどう触れ合っていったかで決まるのかな、なんてことだったりする。ってまたずれてきたな。
まぁこれ以上書くとまだくどくなるので、強引に裏テーマを見つければ、この映画は成龍さんから若者たちへのエールなんじゃないかな、なんてことを考えたのよ、はい。でなけりゃ、彼の作品でここまで若者スターが目立つことってないもの。今までもなかったもんなぁ、こういうケースって。すーちーやトニーと共演した『ゴージャス』だって、見事なまでに成龍さんの映画だったし(まぁすーちー大活躍映画でもあったけど)。だけど日本じゃ…ってこれ以上は言えないな。

では、各キャラもろもろへの愛とツッコミいってみよう。我らがチャン警部については先に書いたコメントにて代えさせていただこう。
ニコ演じるシウホン。実は今回、珍しくニコにやられました(もちろん惚れないから、迷の方は安心してね)。ああ、何度心の中で「かかかカワイイよ、ニコ…」と呟いたことか(大笑)。メチャクチャ深刻なストーリー展開の中で唯一のコメディリリーフ(ラスト近くのあの白目も含めてか!?)ということもあるし、『ジェネックスコップ』 『トランサー』のようなイケイケオレ様路線でもなければ、 『わすれな草』 『ティラミス』のようなナイーブ路線でもない、第3の路線の可能性を観た気がした。いや、キャラ的傾向としては、パンフレットで宇田川幸洋さんの書かれていたように「オヤジを助ける役だと輝く(例:わすれな草)」っていう土台があるのは確かなんだけど…。やっぱりいろいろあったから確実に成長しているのね、キミは。嬉しいぞおねーさんは(大笑)。…しかしニコ、最近は日本の迷の皆さんに「王子」って呼ばれているんですって?えー?なんか…(すみません以下略)。あと、一部で「ジョー(もちろんオダギリ)に似ている」と言われているのもなんか…(これも以下略)。
彦祖。悪役としては『ジェネックス』以来かなー。この間観た《精武家庭》もやや悪役入り気味であったもののヘタレだったからね。でも、相変わらずクレイジーでひねくれた役はハマるなぁ、キミ。そんな彦ももう30歳だけど、昔からいわれていた頭髪は…、あ、まだなんとかなってるか。(おいおい!)今度『レディ・ウェポン』が観たいかも(笑)。
彦祖と同い年だけど、7年ぶりの銀幕復活が嬉しいチャーリー!おかえりー(^o^)丿。成龍さんの年齢設定にあわせたように大人の知性的な女性として登場してくれたのがさらに嬉しい。多少ブランクを感じさせる表情も見せるけど、今後の活躍に期待。なにせこのところ、香港映画では彼女のようなタイプの女優になかなか出会わないよなぁって思っていたので。
敵方ではテレもいたし、ゴツい身体でカンフーを繰り出すアンディ・オン(《少年阿虎》でなんと主演のヴァネスをさしおいて金像奨新人賞を受賞!)の初勇姿も拝めたし、警察側でも、あ、あれがサモハンの息子ティミーかな?で連凱はどこ?トニー・ホーはどこ?とかあれこれ探していたもんだった。
そうそう、忘れちゃいけないのが阿Sa。キミ、ショートの方が絶対カワイイな。ニコと一緒にカップめんを食っていたり、オフィスにペットのトカゲ?(本人曰くカエルらしいが)を持ち込んでたりしてるのがウケた。あと「パパのバカバカー、警官なんかならなきゃよかったー!」のシーンもね。それに乗せられて留置所の鍵を彼女に預けてしまうつくづく親バカちゃんなパパである。

成龍さんの次回作の中には、これまでJCEで2本映画を撮ってきたステが監督を担当する作品もあるとか。今後は成龍さんと若手とのコラボもどんどん増えそうな予感。例え未だにアクションばかりで彼を語られたとしても、香港映画を愛する我々は、成龍さんを今後の香港映画における道を照らしてくれる灯火として、改めて大哥とリスペクトしていかなきゃねー、と思いを新たにさせてくれたのであった。ホント、期待通りで嬉しかったよ!でもラストのNGは香港ヴァージョンを観たかったよ(苦笑)。

原題:新警察故事
監督:ベニー・チャン
出演:ジャッキー・チェン ニコラス・ツェー ダニエル・ウー チャーリー・ヤン シャーリーン・チョイ テレンス・イン アンディ・オン デイヴ・ウォン

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コメント

こんにちは。またまたTBさせて頂きました!
私もこの作品のニコ、かなりいいと思いました!
表情豊かでかわいかったですよね。
ひこそも最近悪役づいてるけど、ハマってます、こういうの。
思いテーマだけど、笑いも忘れない、よくできた作りになってて楽しめました!

投稿: m-therese | 2005.05.17 16:45

m-thereseさん、TBありがとうございました。
この映画は若者俳優の頑張りももちろんですが、
中堅&ベテラン俳優の顔見せも嬉しかったです。
伍百の登場場面なんて、ほんとに驚かされましたもの。

投稿: もとはし | 2005.05.17 19:23

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