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『無間道Ⅲ小説 終極無間』アラン・マック&フェリックス・チョン原作 李牧童ノベライゼーション

小説版『終極無間』読了後、やはり香港で買っていて、ちょっと読んだだけで投げていた(苦笑)『無間道Ⅰ+Ⅱ小説』(アラン・マック&フェリックス・チョン原作 李牧童ノベライゼーション)も改めて読んだ。いや、やっぱりねぇ、たとえノベライズであっても、映画でイマイチ理解できなかったところを補ってくれるし、『終極』の小説でもわからない単語があってもなんとか1冊読み通せたから、前編(?)も読んでおかなきゃなぁって思ったからだ。あと、nancixさんのblogにアップされた劉建明陳永仁楊錦榮の人物論に小説版からの言及があったので、せっかく手許にあるから改めて読んで確かめたいな、と思った次第で。…普通は順番通り読むもんなんだけどね。ま、許してちょー(^_^;)。前編も流し読みした程度だから、後でわからない単語は調べよう。

では小説版『終極』の感想を。ワタシ以上に熱心なるトニー迷の方はすでにこれをゲットして読了されている方も多いと思いますので、本記事でのヘッポコな指摘に「もとはし、それ違ーう!」というところもありましたら失礼いたします。そういう時は遠慮なくツッこんで下さいませ。なお、例によって例の如く、当然のようにものすごーくネタバレ(映画本編も含む)しているのでどうかご注意を。

映画で『終極』を観たとき、前にも書いたけど、映画全体がまるでミステリー小説のような構成になっていたことに驚いた。その構成に賛否両論が出ているのは承知だけど、こういうスリリングな作りもありではないかとも考えたものだ。じゃ、これを活字化した小説版はどんなものだ?と思い、早速読める中国語だけ拾って小説を読むことにしたのだ。
小説は映画の終幕から6年経った2009年から始まる。7歳になった息子磊落を連れたマリーが、昏睡状態に陥ったラウの世話をしている。同じ病院にはヤンの元恋人メイが入院しており、マリーと磊落は彼女と見舞いにやって来た13歳の娘詠音と知り合いになる。もちろん、お互いのパートナーの正体には気づかない。
一方、警察の墓地・浩園にはチョン警部がウォン警視の娘深秋(7歳)とイギリス出身の未亡人を連れてウォン警視の墓参りに来ている。ここにはウォン警視の墓の他、かつての彼の同僚ルク警部、ルクの放った潜入捜査官ロー・ガイ、警察学校長だったイップ警視、そしてヤンとヨンの墓碑がある。そこでウォン夫人はチョンに過日リー先生とメイ親子に会ったことを話し、そろそろ我々もこの事件の真実を知る頃ではないか、と彼に促す。こんな導入部(第1章)から、物語は映画の冒頭につながるヤンの殉職半年前(第2・3章)に遡る。
…あれ、ラウとマリーの子供って映画では娘じゃなかったっけか?それは今度観たときにでも確かめることにして、ここですでに映画のラストがどうなるかほのめかされていたので、観る前に読まなくてよかったと思ったよ。マリーは息子に父親の正体を話していなかったみたいで、息子が病室で警察ごっこをして撃たれた犯人の一人が「オレは臥底(潜入捜査官)なんだ…」といって絶命する(ふりの)台詞にも彼女はつい過剰反応してしまう。マリーだけでなく、多分他の人も話していないんだろうな。だから、この冒頭はホントに痛い。

第4章以降ではヤンの死後10ヵ月後の現在になり、第7章までほぼ映画の流れどおりに展開。でも「こんな場面あったか?」というところがいろいろと登場。例えば、ヤンとウォン警視が例によって例の如くの屋上デート、違った密会中にいきなり「ズボンを脱げ!」とふざけあう場面(ここで目が点になった…)に、ヤンがかつて留置中に出会った男を思い出す場面(以上第5章)など。あと、ラウがリー先生から盗んだパソコンから、彼女が中央図書館でヤンと逢ったときの顛末を書いた日記を見つけるのも。まー、このへんは映像化の意味はない場面ですね。特にヤン&ウォン警視のズボン脱ぎ合戦とか。それを映像化してもある意味ラブラブにしか見えないし(こらこら)。
ちょっと気になったのが、三人称と一人称の混在。大部分の文章は三人称で進むんだけど、その中でヤンはリー先生との診察時には一人称で語りだし、ラウはヨンを追い詰めようとするくだりで語りだす。そしてヨンさえも、ラウと最後の対決を迎えた時に、自分の立場と今までのこと(警察学校でヤンやラウと競っていた時からヤンが殺され、シェンと真相を突き止めようと誓ったくだりまで)を一人で語る。オマエら語りすぎだ←いや、それは言い過ぎ。いや、これまで日本語の小説で三人称と一人称の混在する小説をあまり読んでこなかったから気になったのかもしれないけど、読んでいると、あれ?ここでいきなり「我」とか出てるがこれは誰だ?とついつい立ち止まってしまうのだ。ま、一人一人の内面をわかりやすく説明しようとなるとこうなるのかもしれないけどね(ちなみに『無間道Ⅰ+Ⅱ小説』ではヤン、ラウ、ウォン警視、サム、マリーの一人称モノローグが全て分けられ、名前つきで書かれている。その他は三人称)。

そして終章(第8章)は2009年に戻る。事件の全てをウォン未亡人に語ったチョン警部は、ヨンとサムの間に裏金の取引があったことを突き止めたが、ヨンの死後、彼の口座に残されたサムからのカネは全て慈善団体に寄付される手続きがとられていたということを言い添える。一方、メイ親子は咽喉炎の治療に来ていたリー先生と再会し、彼女は磊落と会う。磊落がリー先生に「この暗号わかる?」と彼女に教えたのは、彼の父親がいつも指で打っていたというモールス信号だった。驚くリー先生。6年前、自殺未遂により全身麻痺状態になりながら、かろうじて指だけは動かせたラウは、3年前昏睡状態に陥る前日まで、モールス信号でマリーに自分を許してほしいというメッセージを伝えていたのだ。そして、そのメッセージを読み取ったリー先生は、ウォン未亡人親子とヤンの遺族であるメイ親子がすでにラウを許しているということを彼女に伝えた。その日の夜、マリーはある決意をする…。
前のエントリーではラストでサムの妻マリーの幻影に撃たれてラウはすっかり我を失ってしまったのではないかと読み取ったコメントを書いたけど、この小説を読むと、そうではなかったことに気づく。ま、この方がラウに救いが残されるから、後味も映画版よりは悪くはならないんだろう。(…そ、そうか?いずれにしろ悲しいのには変わりないんじゃないか?/_;)ところでヨンが裏金を全て慈善団体に寄付したというくだりを読んで、「さすがリヨン、すごいぞリヨン!ユニセフ大使も務めているだけあって、ホントにボランティア王子だ!」と俳優本人と混同してしまったのは言うまでもなかったりする(笑)。

読後の感想。うーん、やっぱり映画のノベライズってこともあってそんなに難しい表現は使われていないし、凝った構成でもないので、意外にも読みやすかったかな。それでも読み取れていない部分はいろいろあるのかもしれないけどね。せっかくノベライズがあるのだから、これを翻訳して出版してもよかったんじゃないかな。意訳(超訳?)でよかったらいっそこちらで翻訳するか(大笑)。あと、日本独自でノベライズっていうのも面白いかもしれない。ノベライゼーションなら警察内部や事件の描写を重厚な筆致で描く高村薫さんの小説っぽさを狙ってほしいかも。(ってかなり趣味だな、それ)

あと、『無間道Ⅰ+Ⅱ小説』はウォン、サム、そしてマリーがほぼ同世代の幼馴染だったという衝撃の事実が語られる1974年から物語がスタート。さらにラウがサムのご近所さんだったということや、彼の両親にヤンの母親の過去も描かれている。これを読むと、『序曲』でのウォンとサムが敵でありながらなぜ親しくしているかがわかるんだよね。

とりあえずここまで。後は気づいたらちょこちょこ書いていこうかな…。

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コメント

 うわーん、先を越された!(苦笑)
 りよん王子を連想して思わず笑ったの、全く同じです。
 ま、賢いヨン様にはサムとの駆け引きも報酬目当てじゃなくて、ゲームみたいなものだったんでしょうね。
 一人称と三人称の混在に手こずったのも同じ。「我」ってどいつやねん!と思わず突っ込み。
 しかも「他」が"彼女"か"彼"かも、時々ごっちゃになってましたし。ちゃんと女へんとニンベンで使い分けしてよぉ。
 ラウが新妻マリーにいろいろと哀願し、それでもと離婚を切り出されて叫び出すところ、哀れだけど鬼気迫りましたわ…。それとリー先生、腰抜かしてないでそこでラウを止めんかい!ですよね。映画ではラウは彼女の後頭部を殴って気絶させた? クロロフォルムなどは用意してないと思ったけど…。
 日本語訳は、アンディファンのどなたかが半分までは成し遂げられたと聞きますが…。それ聞いて、自分でやってみる気は失せました。

投稿: nancix | 2005.04.21 01:01

nancixさん、お先に失礼いたしました(^_^)。
ラウが真実を知ってしまったマリーに離婚を切り出されたくだり、改めて読んでみましたが、小説ではここがラストに向かうポイントになっているのかなーという印象を受けました。映画で観てしまうとサムの妻マリーへの想いが一番強く出ていたようですが、小説を土台にすると一番愛していたのはやはり今のマリーだったということで(こちらも当然ヤンはその次…違うって)。いずれにしろ、両方のマリーがラウがヤンへと転換してしまうスイッチになっていたというとらえ方ができそうですね。リー先生はそれを見守る者という位置で。
やっぱり、翻訳しようというのは誰でも考えちゃうんですね。まずは原文を中国語の先生に見てもらって文章の難易度を見てもらおうかな。もっとも本気で翻訳したら多分かなりの時間がかかるのは間違いないので…(笑)。

投稿: もとはし | 2005.04.21 22:10

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