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こころの湯(1999/中国)

1990年代半ばまで、中国映画といえばどうも垢抜けないところがあった、ということを『恋愛中のバオベイ』の時に書いたんだけど、その「垢抜けなくてどんくさい中国映画」のイメージを変えることになったのが、張揚監督の『スパイシー・ラブスープ』と、今回取り上げる『こころの湯』だと思うのだけど、どーだろうか?
この映画、4年前に劇場で2回観ているのだけど、先週末、久々に語学教室の「看中国電影学習漢語」イベントで観た(しかも字幕なしで。苦笑)ので、感想なんか書いてみたい。

北京で男性専用の銭湯「清水池」を経営する劉(朱旭)のもとへ、深[土川]でビジネスマンをしている長男の大明(プー・ツンシン)が戻ってきた。知的障害を持つ次男の阿明(姜武)が出したハガキに、もしや父が倒れたのではと驚いて帰省したのだ。兄の帰還を素直に喜ぶ阿明だが、父親とはどうもうまく言葉を交わせない。なにせ深[土川]で家庭を構え、すっかり南方人の生活になじんでいる大明は、風呂にも浸からずシャワーを浴びるくらいだ。
「清水池」には北京の下町で暮らすさまざまな男たちが集う。コオロギ相撲に興じる老人たち、水を浴びないと「オー・ソレ・ミオ」を歌えない内気な青年、さまざまなビジネスに手を出しては借金を作りまくる大明の旧友、夫婦仲がうまくいかずに銭湯に逃げ込む男…。劉たちは銭湯で起こるさまざまなトラブルにかかわったり解決しながら日々を過ごしていた。はじめはぎこちなかった父と大明もだんだん打ち解けていく。
しかし、そんな幸せな生活は長くは続かない。銭湯の界隈はまもなく再開発により取り壊されることになり、劉家にそのことが知らされた数日後、父が入浴中にこの世を去った…。

な、和むなぁ、いつ観ても…。オヤジの裸ばかり出てくるのに。もちろんそれに和んでいるわけではない。
以前の中国映画では、かつては『黄色い大地』のような辺境を舞台にした過酷な環境の物語だったり、張藝謀がコン・リー主演で作っていた映画のように悲劇的な結末のものなどばかり観てきたせいか、どうもなんだかいつも悲惨なんだよなぁ、と痛い気持ちになるものが多かったんだけど、こんなふうに気持ちよく見られて和める映画がでてきたということは、それだけ中国映画が洗練されて成熟してきたからなのかな、と思うのである。まぁ、若者主演の映画ではそれでも垢抜けないところも多少あるのかもしれないけど、『スパイシー・ラブスープ』やこの映画で北京の人々の暮らし振りを描いてきた張揚監督の作品からは、都市としての北京が成熟し、洗練されてきている姿が伝わってくる。さらにこの映画では、21世紀に向けてスクラップ・アンド・ビルドを重ねていった挙句に下町の情緒が破壊されていく悲しみも伝える。それは現代の東京を始めとした日本や世界の各都市とも通じるものがある。結局、都市はどこも同じであるし、そこで生きてきた人々の喜怒哀楽も世界共通で普遍的なものなんだろうな、なんて感じさせてくれる。
…なんて御託はどーでもいいね!これはとにかく楽しく、和む映画。女性もほとんど出てこないし、若者も出てこない。出てきても美形はいない。でも楽しい、でも好き、といいきれる映画。

『大地の子』の“中国のお父さん”こと朱旭さん、映画出演はそれほど多くないというけど、なんとワタシ、彼の出演作6本中4本観てました!なんてラッキー。途中で退場されるのが残念だけど、やっぱりいいわ、お父さん!と言いたくなってしまうのだ。
このお父さんの息子たちでは、寡黙でマッチョな大明こと[シ僕]存昕さんもいいけど、どこか林家こぶ平(あ、もうすぐ林家正蔵か)に似ている姜文さんの弟さん、姜武さんの阿明に注目。いやー、うまかったわー。映画で同じような役どころを演じた俳優としては『アイ・アム・サム』のショーン・ペンとか、この映画をエッセイで紹介していたノーベル賞受賞作家大江健三郎氏原作『静かな生活』での渡部篤郎などを思い出してたけど、ヒイキ目をひいても阿明が一番よかったかな(かといって他二人が悪いってわけじゃないです、決してね)。

あと、もーちょっとだけ言うと、映画全体に流れる“水”の雰囲気がよかった。乾いた大地と人の心に潤いをもたらすようなイメージ。邦題はそれをうまく表現していて、珍しくいいタイトルつけたじゃん、と感心。(これ、語学教室のアメリカ人英語教師も誉めていた。曰く「英題はつまんないけど、日本題はすごくいい、観たくなる」と。ちなみに日本語がわかる人だった)

原題(英題):洗澡(SHOWER)
監督:張 揚(チャン・ヤン) 製作:ピーター・ロウアー
出演:[シ僕]存昕(プー・ツンシン) 朱 旭(チュウ・シュイ) 姜 武(ジャン・ウー)

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コメント

トラバしました~。私もこの映画、大好きです。ほのぼのしていて良かったですよね。この監督のほかの映画もほのぼの系かと思い、Quitting(英題です。日本未公開)という映画を見たんですが、これがジャンキー男とその家族の話でものすごおく鬱々とした話で辛かったです。
ほっ香港に行かれるんですか!生トニさん見れるんですか?スバラシいですねー。

投稿: こっぺ | 2005.03.21 03:23

こっぺさん、TBありがとうございました。
そうか、張揚監督の新作が日本でなかなか公開されなかったのは、暗い話だったからなのか…、なるほど。
あ、『スパイシー・ラブスープ』はご覧になってますか?

はい、香港行ってきます。ゲットした席がかなり後ろの方なのでちゃーんと見られるかどうか不安ですが、とにかく行く末を見守りたいと思います(笑)。

投稿: もとはし | 2005.03.21 23:49

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邦題:こころの湯、英題:Shower、原題:洗澡 チャン・ヤン監督 チョウ・シェイ他出演 1999年 最近観る映画観る映画今年のベストワンなんだけど、これは本当... [続きを読む]

受信: 2005.03.21 03:14

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