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ブレイキング・ニュース(2004/香港)

アンチ王家衛の香港電影迷の方には申し訳ないけど、表題映画の感想の前置きとして、日本における『2046』騒動について触れたい。
この映画、決して“キムタク主演”映画ではないことは、これまでの王家衛映画の傾向や撮影スタイルを知っている人間なら充分理解できるはずだ。だから映画の達人集団であるはずの配給会社は、それを十二分に生かしてこの映画を宣伝できたのではないか。今回の配給が今まで王家衛映画を手がけたことのない外資系配給会社(ちなみに日本ではBV社、日本以外のアジア各地域ではTF社が配給)とはいえ、宣伝は他の会社に依頼できるのだろうから、かつて王家衛映画の宣伝を手がけたことのある会社(PH社とかES社とかBE社とかSC社とか)やスタッフを導入することはできなかったのだろうか。…その結果が、東京国際映画祭オープニングイヴ前のあのサプライズイベントを大々的に、一部だけ放映して、まるで“キムタク主演”をことさら強調したかのような翌日の芸能ニュースとなったような気がする。その話題だけにつられて件の映画を観に行った人の反応は…ま、この話題性だけで観たって人を見つけて聞いてみてよ。

結局何がいいたいかというと、些細な部分を大々的に取り上げて加工・放映し、一般に多大な影響を及ぼすメディアの力は恐ろしいと言うことである。ちょっとオーバーな書き方だけどね。そして、そのメディアの恐ろしさを逆手に利用した、警察と強盗犯の熾烈な攻防という“香港的大事件”を描いたのが、これから感想を書く『ブレイキング・ニュース(大事件)』である。英題・原題ともに内容をストレートに表したタイトルがなんだか嬉しい。

大陸からやってきたユエン(リッチー)率いる強盗団のアジトを突き止めた香港警察捜査課のチョン(ニック)。捜査班は彼らのアジトを襲撃し、狭い街の中で大銃撃戦が始まる。双方に死傷者を出したこの銃撃戦の果て、強盗団は交通事故現場にあった救急車を強奪して逃走する。おまけにその現場に居合わせたマスコミに、強盗団の一人に撃たれそうになって懇願した警官の姿をとらえられ、大々的にニュース放映されてしまったことで香港警察は非難を受ける。それを受けて組織犯罪課のウォン警視(サイモン)は対策会議を招集。この会議で最年少の警視レベッカ・フォン(ケリー)はとんでもない作戦を提案。マスコミには警察が提供する映像と情報だけを流し、逃走中の強盗団を追い詰めようというものだ。かくしてレベッカを隊長に、広報課のグレイス(マギー)をブレーンとした作戦チームは全警官に小型カメラをセットし、周到な計画のもと犯人逮捕に出動する。
一方、チョンたちも警察が仕掛けた作戦を知りながらも独自にユエンたちを追っていた。仲間を一人失った彼らは二手に分かれてあるアパートに潜入、チョンたちも後を追う。マスコミを引き連れたレベッカたちも現場に駆けつけ、アパート住民に避難を呼びかける。突入部隊を投入させながら、次々にマスコミに操作した情報を流して全市民をTVの前に釘付けにする。ユエンはアパートの住人でタクシー運転手のイップ(林雪)とその子供たちを人質にして立てこもり、TVを通して警察の企みを知る。さらに偶然アパートに身を隠していた殺し屋チュンと手を組み、イップ家を利用してネットやマスコミに加工していない情報を流して警察に対抗する…。

ネタとしては『踊る大捜査線』にもありそう(実は観ていたけどこの作品の熱心なファンじゃない)だけど、この映画はさすがに香港映画なので(こらこら)、犯人側の描写もしっかりしている。特にリッチー演じるユエンは、クールかつ極悪非情でありながらもどこか人間味のある人間として描かれており、イップたちに手製の昼飯をふるまったり、友情を結んだチュンの代わりに自分が彼の仕事を果たそうという義理人情を持っていたり、レベッカに対する受け答えのスマートさが印象的だった。あきらかに善人顔(でやっぱり岸谷五朗似)のリッチーが演じることでその味はいい方向に出たんじゃないかな。わかりやすいし(笑)。それに対してケリー演じるレベッカたち警察側だけど、彼らには事件解決のためには市民をだますのもやむなく、とにかく手段を選ばないというずるさがもう充分なくらいわかるんだけど、なぜか観ているこっちも「なんとか事件を解決してほしい!」と思わされてしまうのだから、彼女も相当な演出家だったな、と思うばかり。張家輝さん(なんか久々に観たような気がする…)演じるチョン刑事は一般的な刑事映画では主役になってしまうタイプなんだろうけど、この「ショー」ではあえて脇に持ってきてと言うのも計算よね。でも、クライマックスでは一般的なセオリーにのっとって活躍するのである(笑)。毎度お馴染の林雪は、限りなーく庶民にしてちょっとトホホーな役回りで毎度ながらいい味出してて好演。
しかし、この“大事件”はあくまでもフィクション。それから大いに楽しめ、興奮できる映画だ。もしもここ日本でも自分の生活を揺るがすようなある事件が起きて、伝え聞く情報が明らかに都合のいいことばかりしか書いていなかったら…。そう考えると恐ろしいかな。


まぁ多少ツッコミたいところはあるものの、作品の完成度はすごい。来年の金像奨には何かしらノミネート&受賞するんじゃないかな。これならカンヌの特別招待作品でも結構いけるわ。まぁやっぱりトゥさん作品で一番好きなのはなんといっても“やりび”だけど、その次くらいにいいと思う作品だった。…でもねー、トゥさん自ら「好きな作品」だとかなんとか言ったという『マッスルモンク』はいったいどないなモンなんだ(苦笑)。観たいぞ。あとFilmexで上映される最新作『柔道龍虎榜』も観に行こうかなどと思っているんだなこれが。

原題:大事件
監督:ジョニー・トゥ
出演:ケリー・チャン リッチー・レン ニック・チョン ラム・シュー サイモン・ヤム マギー・シュウ ホイ・シウハン

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コメント

丁寧なレビューありがとうございます。
「いい人だけの役はもうやりたくない」というリッチーが熱望した役ではありますが一般の方にはどう映るのか少々心配でもありました。劇場での反応が気になっておりました。本人曰くもともとは悪人顔なので杜監督は顔をみるなり「OK!君でいこう」といってくれたそうです。
そうそう岸谷五郎はリッチー本人も知っていて「最初に雑誌で見たとき自分かと思った」とか申しておりました。
今夜、偉仔は「英語でしゃべらナイト」にご出演とか。リッチーは「中国語会話」に出ます。ちょうど放映時間もずれたのでよろしかったらイイヒトリッチーもご覧くださいませ。

投稿: giccha | 2004.10.25 21:47

gicchaさん、どもども。
そうですか、本人曰く悪人顔ですか…。善人っぽく見えてしまうのはやはり今までの彼の役どころのイメージからなんでしょうね。
アジアの風パンフにリッチーのインタビューがあってそれを今確認したのですが、トゥさんは彼の眼を見て出演を決めたとか。あと減量したとか。短髪も新鮮でよかったです。

これから中国語会話としゃべらナイトを掛け持ちして観ますねー。

投稿: もとはし | 2004.10.25 22:56

結局、英語の時間がずれたのでかけもちせずすみました~。

レビューありがとうございました。最後はやっぱり私が思ってた通りでした。いろいろすみませんでした。
シリアスなアクションのはずなのに、けっこう笑うところがありましたよね? やっぱりもう一回みたくなりましたわ。
そういえば今年は、ケリーちゃんの映画が日本公開1本もなしのような気がします。やっぱり「大事件」をやってくれないとちょっと淋しいです・・・。(来年は終極無間があるけど)

投稿: grace | 2004.10.26 00:40

>graceさん
あら、この記事でラストわかりました?後ほど詳細をと思っていたのですが(^_^;)。
例の美味しいシーンから逆兵糧責め(とあえて言ってみる)合戦のシーンは面白かったですわ。すっごく緊迫した場面なのに。

そういえばケリーの映画…そうか、去年はラベンダーと無間道があったけど、今年は日本で公開されていないんだ。シチズンのXCのキャラクターも交替してしまうから、どこかに出てほしいですね。

投稿: もとはし | 2004.10.26 23:01

初めまして
>この“大事件”はあくまでもフィクション。

この撮影をした渡船角では映画の様に住民の避難はありませんでしたが、2003年12月に実際に強盗団と警察隊の銃撃戦が早朝4時頃あったんです。

私は当時文華楼というビルに住んでいたのですが、映画撮影時に部屋の前や屋上を武装した人たちが走り回っていて当時を思い出してしまいました。

撮影終了後にビルの撮影許可証を「記念にちょうだい」と言ったら簡単にもらえました。

投稿: 八雲 | 2005.03.23 12:11

八雲さま、はじめまして。
ということは、『大事件』は映画としてはフィクションではあっても、実際の事件をモデルにしているのですね。これは初耳だったのでビックリしました。
情報ありがとうございました。

投稿: もとはし | 2005.03.23 22:15

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