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ユー・シュート、アイ・シュート(2001/香港)

香港の宮藤官九郎または堤幸彦か、はたまた香港のタランティーノかガイ・リッチー?と注目(笑)のパン・ホーチョン(彭浩翔)監督の長編第1作が『ユー・シュート、アイ・シュート(買凶拍人)』。どーゆー映画かよくわからんで前売を衝動的に買い、前情報も何もないまま観た人間がここにいます(爆)。…ま、楽しかったでふ。

フランス映画『サムライ』のアラン・ドロンに心酔し、ハードボイルドに仕事をこなすプヨ、もといプロの殺し屋バート(エリック)。しかし、いくらハードボイルドに決めてみても、最近は全く殺しの依頼がない。殺し屋稼業で家族も養っている彼にとって、依頼がないことは死活問題だ。ある日、香港マダームのマー夫人からこんな条件付きで依頼を受けた。パーティーで知り合った男とエッチしている場面をビデオに撮られて素人AVとして裏に売り出されたので、その男を殺してほしい。しかも、男を殺す瞬間をこの目でじっくり何度も繰り返して見たいから、ビデオにとってほしいと…。バートはこの珍妙で趣味の悪すぎる依頼を引き受け、高性能のデジカメを携えて仕事をこなすが、肝心のビデオの出来はクリストファー・ドイル以上の目まぐるしいカメラアングルであっけないものだった。マー夫人はもっとしっかりした映像を撮ることを約束させ、同じ手口で次にビデオ業者殺しを依頼する。この仕事には助手が必要だと感じ、困り果てるバート。そんな時、バーでドジなマリファナ売人チュン(張達明)と出会い、彼を脅して仕事の助手にする。なんと都合のいいことにチュンは映画現場で助監督を務めている本職の映画人。チュンにカメラを持たせたバートはビデオ業者を殺しに行くが、アメリカで映画を学び、マーティン・スコセッシに心酔するチュンは撮影現場は自分が仕切る!と張り切り、暗殺遂行後も「香港映画は後期作業がなってないから」(笑)と編集作業に時間をかけてバートを困らせる。しかし、出来上がった映画は冒頭に警告テロップまで入った(大笑い)かなり本格的な仕上がりで、香港マダムたちの間でも大評判。バートとチュンの殺しのビデオアーティストコンビはたちまち(一部階級限定での)人気者になるのだった…。

冒頭、トレンチコートに身を包み、青い闇の中でクールに仕事をこなすバートが登場。だけど演じているのがおむすび顔のエリック・コットなので、シリアスなオープニングもすぐコミカルに変化。『古惑仔』の牧師さまことラム・ソンイー演じる依頼人(金が払えなくて自分を殺してくれとバートに依頼)との掛け合いから大笑い。エリック演じる殺し屋バートはハードボイルドに決めたいプロのくせにどこか生活臭を漂わせているトホホさがある。香港にいったいどれくらいプヨ、もといプロの殺し屋がいるかどーかは知らんが(って職業として成り立つのか?)、こんな殺し屋もいるのかもしれない。生活臭を漂わせ、自分の理想と現実とのギャップを感じて「アラン・ドロンもスクリーンに出る前はホントに殺し屋だったのかも」などと呟いてしまうかわいらしさ。いつも画面を引っかきまわすコメディアンのエリックを見慣れていると、こういう演技はどこか新鮮だった。
一方、達明演じる映画人チュン。後半、バートを引っ張ってどんどん暴走しだす。彼のいる現場はまさに今の香港映画界(てゆーか三級片映画界?)の状況をちょっとシニカルに描き出しているのだろう。米国帰りなのに三級片の助監督、実際はプロデューサーの使いっ走りだ。日本人AV女優阿部美智子(樋口明日嘉。『恋戦』の広東語を駆使した演技のほうがうまかったような…と感じるのは気のせいか?)にひそかに恋しつつも、現場でこき使われる彼には高嶺の花だ。こんな現場も合わせて現在の香港映画界の体質に不満を抱いているようなチュンは、バートと知り合って殺人ビデオの製作の片棒を担がされたことで、自分のやりたいことにこだわりだして生き生きしてくる。おいおいオマエのやってることははっきりいって犯罪だろ!とつっこんでも無駄やね(大笑)。ついでに恋する美智子とも急接近し、しまいには金像奨で最優秀監督賞を受賞するに至る。香港映画を日常的に観ている香港人と香港電影迷から観ればかなり笑えるシチュエーションがてんこ盛りだけど、こういうふうに映画界にツッコミを入れてみても、やっぱり映画を愛していなきゃこういうキャラは作れないよなぁと実感。

後半には『古惑仔』シリーズでお馴染B哥こと呉志雄を始め元本職の皆様演じるヤクザ屋さんまで登場し、殺しのアーティスト合戦に拍車をかける(オーバーな表現だ)。全編大笑いしながらも、話の内容はかなり悪趣味。お子さまにはもちろん見せられません(てゆーか観ません)。だいたい上流階級で勝ち犬(個人的にはこの言葉使いたくないが)のマー夫人の依頼からして悪趣味だもん。でも、社会的に勝っていても人間的にはどーよ?と突っ込みたくなる典型的例としての存在と見ておきましょうか(って何のこっちゃ)。そんな濃いキャラに囲まれつつ、自分らも結構特殊なバートとチュンも、時代の寵児(!!)ともてはやされても、自分が目指したいものになりたい。ドタバタなまま迎えたクライマックスの後、なんのかの言いつつ形はどうであれ自分の願いをしっかりかなえていた二人。それはそれでよかったね、と思ったのであった。

なんかまとまりのない感想になったな。細かいことを言っちゃえば、美智子とチュンが親密になるシーンやクライマックスの大物暗殺シーン追加撮影のとこはちょっともたついてる?という印象を受けたけど、この後に『大丈夫』を撮ったからそれはそれでいいか!ということで相殺しますわ(笑)。今回は新作『ビヨンド・アワ・ケン(公主復仇記)』が観られなかったのが残念だけど、次回香港へ行った時にVCDをチェックしておこうっと。短編『夏休みの宿題』の感想は後日。

原題:買凶拍人
監督:パン・ホーチョン 製作&脚本:ヴィンセント・コック
出演:エリック・コット チョン・ダッミン 樋口明日嘉 ラム・ソンイー ヴィンセント・コック ラム・シュー 

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