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『男たちの絆、アジア映画』に思ふ。(その1)

 先週半ばの新聞広告で気になっていた本。それがnancixさんのところで取り上げられ、幾つかの中華電影好きblogでも話題になっていた最中、bk1で頼んでいたのが届いたのでやっとのことで読了。このエントリーはなんだか長くなりそうなので、とりあえず連載方式で(笑)。

『男たちの絆、アジア映画 ホモソーシャルな欲望』四方田犬彦・齊藤綾子編(平凡社)

 小説にしろ映画にしろドラマにしろ恋愛ものやトレンディものは好きではないし、ホラーも嫌いでハリウッドの大味アクションものはいい加減食傷気味。ミステリー小説は濫作気味に感じるので自分の琴線に触れるものしか読まない。こんなふうに基本的に飽きっぽいワタシなのだが、梁朝偉迷と香港映画迷だけはなぜか飽きずに続いている。巷で流行の「萌え」という言葉は「キムタク」という略称と同じくらい(だからなぜこれと比べる?)好きじゃないのであまり使いたくないけど、自分はこれらの何に「萌え」ているのだろう。恋愛ものでも『☆月』よりは『金枝玉葉』や《天下無双》のようなジェンダーパニックもの、それよりは『ブエノスアイレス』や『美少年の恋』のような同性との恋愛から異性愛では見えない恋愛の普遍性を描いたものにひかれるし、(これは日本では『風と木の詩』に見られるというので、ワタシは『ブエノス』を観た際に友人から『風木』を薦められて読んだという、きわめて珍しいパターンを踏んでいる。多分こんなヤツはワタシくらいだ)ムダは殺し合いは嫌いよーとか言いつつも、香港時代のジョン・ウー監督の作品群に現れるアウトローの男たちの熱い友情とそこから生まれる連帯感や友愛には女性であるワタシも胸を熱くしてハマりまくった。(余談・ハリウッドへ行ったウーさんも『フェイス/オフ』まではこのトーンを保っていたものの、某トムクルプロデュース&主演の『M:i-2』以降はすっかりトーンダウン。今年中にクランクイン予定という《華工血涙史》にて、チョウ・ユンファ&ニコラス・ケイジの男の友情が観たいのだが、予定は未定だろうなー)ウーさん不在の今も、ジョニー・トゥやアンドリュー・ラウが“ダーク・トリロジー”や《無間道》3部作でこの路線を継承しており、ワタシの胸を熱くさせてくれる。
 さて、今書いた前者の『ブエノス』『美少年』と後者のウーさんやトゥさん、アンドリューさんの作品群の共通点と相違点は何か?共通点は男たちが物語を引っ張っていくこと。そして相違点は、前者の世界観には恋愛感情のあるホモセクシュアルがあり、後者には基本的に恋愛感情がないホモソーシャルな世界観があるということだ。そして、この本ではアジア映画に見られる「ホモソーシャル」を発見して理解することを学ぶ目的でまとめられている。

 個人的に「ホモソーシャル」という言葉は珍しいものではない。雑誌「文学」や「國文学」ではしばし「文学上のセクシュアリティ」に関する特集が組まれ、その中に登場したので、ワタシは職場で購入していた雑誌を読んでホモソーシャルについて学んだ。適切な日本語がないということなので、強引に説明していけば同質なものだけで構成された集団やそこで結ばれた人間関係のことを言うとか。例としてよく挙げられるのは新選組、大日本帝国軍、男子校などか。もしかしたらプロ野球チームやサッカーチーム、某事務所なども含まれるのか?
 これらの集団はしばし腐女子の「萌え」の対象にされ、同人誌ではホモエロティックな脚色をされる(とか書いたらマジな新選組迷や某事務所タレント迷などに殺されそうかも…)が、腐女子的傾向のあるように感じるもとはしでも、非常に日本的なこれらの集団とそのパロディには全く反応できなかった。(それはワタシが倒幕派好きのアンチ新選組傾向で、かつフィクションでも戦争&軍隊ものが大嫌いだっていう個人的事情があるからなんだが)しかし、『狼』や『ハードボイルド』で登場するユンファと敵対するダニー・リー、あるいはトニーとの間に漂う奇妙な連帯感や『ハードボイルド』でのアンソニー・ウォンたち黒社会の面々がトニーに多大に興味を抱くくだりには妙にエロティックなものを感じた。なぜなのだろう?それは日本的じゃないから?トニーにはそーゆーものがハマるから?いや、それは違うのではないか。…そんなことを思いながら読み始めた。

 この本で取り上げられているのはアジア映画論の大家四方田氏による日活アクション映画論(タイトルの『トニーとジョー』はトニーこと赤木圭一郎の歌にちなんだもので、堤幸彦監督作品『溺れる魚』にて、宍戸錠オタクな刑事役の椎名桔平が相方刑事役のまだ髪のあった窪塚洋介を従えて歌ってた印象が強烈)に始まり、もう一人の編者で映画評論家斉藤綾子氏による東映ヤクザ映画での高倉健論、ホモソーシャルを描いた代表的作品、夏目漱石の『こころ』の映像化作品と鈴木清順監督作品『ツィゴイネルワイゼン』を分析したホモソーシャリティ論、『カル』と『JSA』から探った韓国社会のホモソーシャル論、そして中華電影からは『覇王別姫』と『ホールド・ユー・タイト』等の作家性の強い香港映画、いわゆる“香港ノワール”映画に見られるホモソーシャル論までをとりあげ、東アジア的なホモソーシャルの描かれ方を丁寧に分析し、論じられている。その詳細な分析と考察に、思わずため息が出てしまい、ああ、ワタシも学生だったらこーゆー研究がしたかった…などと今さら役立たずな後悔をしたのだった。

 とまぁ、あまり長くなるのもなんなので、今日はこのへんで。この論文集の中からは当然、中華電影論文について思うことを書きますね。

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