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『レスリーの時間(とき)』

 レスリーの死から1年が過ぎ、当時は言えなかったけど今だからこそやっと世に出ることができた逸話は幾つもあると思う。そんな話がいくつか語られているのがこの本。

『レスリーの時間(とき)』志摩千歳著(産業編集センター)

 やっと落ち着いたので、今読んでいる『鹿鼎記』を一時中断して一気読みした。著者はいまやすでに伝説と化した1000人切りサイン会などで知られる、同社出版の2冊の写真集の制作でレスリーに深くかかわった編集者(だと思うのだが…プロフィールくらい載せてほしかったです志摩さん。もしかしたら載せるといろいろとまずいことが起こるのかと思ったのかもしれませんが)。レスリーを尊敬してはいるものの熱烈なファンじゃないワタシだが、最初の写真集制作から彼が自らの人生に幕を引くまでの5年間、日本主体で写真集を発表するなどの活動に力を入れたのはなぜなのかと言うことを疑問に思い、追悼の意味でこの本を買って読んだ。-読んでよかったと思った。

 著者の志摩さんは熱烈なレスリー迷ではないとのことだから、非常に落ち着かれた様子で文章を進めている。これくらい冷静だと安心して読めるが、レスリーの表情の描写は妙にリアル。ファンじゃなくてもドキッとさせられる。一見自由奔放に見えるけど、実はすっごく繊細だったり、そうかといえば自分であれこれブリブリ怒ったり、でもしばらくすればすぐに忘れて宣言撤回してしまうようなお調子者っぷりを見せたりと、レスリーの心はくるくる変わる。その姿は孤高で気高いまさにお嬢な明星レスリー像を勝手に作り上げていた人間から見れば腰が砕けてしまいそうに人間くさい。そんな中でも映画も含めた香港娯楽界に対する失望と自由の国日本に対する憧れを語るくだりでは、そこで言及される香港映画界への絶望が妙に現実的な話だったので電影迷やってるこっちも一緒になって凹むのであった。…でも、この写真集の前に撮影していたあの『☆月』に関してはいったいどう思っていたのだろうか…。あの映画がトラウマなもとはしにとってはそこが気になるし、レスリー自身も『電影双周刊』のインタビューであまりいいこと言ってなかった記憶があるので。
 最初は軽い気持ちで提案された'99年春の東京でのサイン会が、いつのまにかあんな巨大規模なイベントになってしまったこと。日本でも発売されていない写真集の詳細が、香港の新興新聞紙にすっぱ抜かれて香港サイン会が中止寸前まで追い込まれたことはこの本で初めて知った。どの国でもスターのゴシップを面白おかしく報道したり、不必要に持ち上げてはバッシングしたりするのは共通しているが、やはり香港ゴシップ界は恐ろしい。実力がある明星を素直に認めず、ちょっとしたこともへんな方向に曲解してしまう(先日もカンヌ帰還直後のトニーのコメントに「14歳の小影帝に負けた偉仔、『14歳に演技できるの?』と納得いかず」とかキャプションつけたりするのもどーかと思うしな!)から厄介だ。それに加えて2度目の写真集プロモ時には熱狂的なフーリガンのような迷たちの激しい追撃もあったというから(先月の某ぺ様来日の騒ぎもこんなのだったのだろうか?)、レスリーやるのも大変だよな、と思った次第(やや意味不明な述語。なんなんだこの結び方は)。
 ここで個人的な思い出を書いてしまうが、最初のサイン会の時に映画サークルの迷である友人が3人ほど行くと言うので、ワタシを含めた非レスリー迷3人がそれに便乗し、「レスリーサイン会に行く人とそれを見守る東京ツアー」を組んで6人で上京した。先着1000名整理券発行に間に合わせたい迷の3人は前日の夜行バスで上京し、非迷3人は朝イチの新幹線に乗り、整理券をゲットした彼女たちと国際フォーラムで待ち合わせしたのだが、午前10時の丸の内、箱舟型のガラスタワーをぐるりと囲む1000名以上のレスリー迷たちの姿を見て、我々は唖然とするばかりだった…。むむむ、恐るべしレスリー迷の力。それでもなんとか写真集にサインしてもらい、幸せ気分でハイになる友人たちとともに夕食し、ホテルの部屋で写真集をサカナに、みんなで酒(お茶だったかも)を飲んでツッコミまくっていたのはいま思い出してもとても楽しい出来事だった。
 そんなふうに我々が盛り上がっていた同じ東京の空の下で、レスリーは唐さんや志摩さんといろんなことを語り合い、未来を夢見るひとときを過ごしていたようだった。自分の映画を作りたい、映画のメイキング本も作りたい。そんな夢があったのに、その夢を実現できぬまま、4年後の春に彼はこの世から姿を消してしまった。明星迷に電影迷はもちろん、映画の神様や歌の神様からも愛される素質があった(と思う)レスリーは、私たちが愛しても決して理解できない悲しみを抱いていたのだろうか。やはり、自分の心の悲しみは自分にしかわからないのだろう。そんなふうに思うしかない。
 また、レスリーは「香港にはほとんど夢を抱いていない」といったそうだ。その発言は、香港と香港電影に夢中なワタシにはちょっとショックなものだった。それはビジネス面で、という意味合いがあったのだろうけど、文化的にはまた違う考えを持っていたのかもしれない(そのへんはよくわからないけど)。近年では売れ行きが二分化されてしまっている香港電影界の状況を思うたび悲しく感じてしまっていたので、レスリーほど実力があって、状況もよく考えてくれた人だったからこそ、香港映画にカンフル剤を打つような映画を香港で撮ってほしかったのだ。でも、それも見果てぬ夢になってしまったのね。

 ワタシは決して熱狂的迷ではなかったので、今はもう全然悲しくない。でも、時々映画を観たり、この本をチョコチョコ読み返したりして、彼に思いを寄せたい。それがいい供養になるかな。 

 最後に紀平重成さんによるこの記事を。泣かされます。
 

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受信: 2004.05.30 09:19

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