« 『北京故事 藍宇(ランユー)』北京同志 | トップページ | 《生化特警 喪屍任務》(2000/香港) »

《藍宇》(2001/香港)

 前回も書いたように、原作出典は大陸、単行本発行は台湾、映画製作は香港と中華圏をまたにかけた映画になったこの《藍宇》、オリジナルにのっとって舞台は北京、出演俳優も大陸の俳優、台詞も北京語だが、もちろんその内容から大陸映画にはできないので、製作も香港というようになったようだ。

 あらすじは原作のほうで書いたので省略。ここではまず、原作との違いから感想に入ろうかな。
 ストーリーはホントに原作に忠実なのだけど、大きな違いはハントンが彼の性的遍歴からランユーとの出会いから別れまでを詳細に語った原作から、映画は幾つかの場面を抽出し、ハントン(フー・ジュン)とランユー(リュウ・イエ)の行為や会話から省略された部分を想像していくという構成になっている。ハントンとランユーが一夜を過ごした次の場面で月日が矢のように飛んでいったり、ランユーをおいて勝手にロシア語通訳のリンさんと結婚したハントンが、次の場面ではすでに離婚していたりと、かなり大胆な省略が行われている。天安門事件前後の描写はいくらかわかりやすい雰囲気だけど、さすがに直接的には描けなかったみたい。(同時期の出来事を取り上げた『玻璃の城』や『君のいた永遠』もそうだったような)
 過去の中華製ゲイムービーに比べれば、セックス描写はそれほど頻繁に登場するわけじゃないけど、序盤にハントンがランユーを金で買った初めての夜にて、いきなり二人とも全裸さらしたのにビックリ。しかも○○○○…(品格をかなり疑われそうなので以下省略)。俳優キャリアが浅かったリュウイエ君と、ゲイムービーは『東宮西宮(ビデオ題:インペリアルパレス)』で経験済みのフージュンさんの二人が思い切りよすぎるのか、それともスタンリーさんが意図的に演出したのか?

『東宮西宮』ではゲイの青年に誘惑されたフージュンさん、今回はバイセクシュアルのプレイボーイで誘惑する側。タッパはあるし脱いでもいいカラダしてるけど、あんまりゲイっぽくないと思ってしまうのはなぜだろう?「ゲイっぽく見えないけど実はゲイ」という設定が映画としては感情移入に適しているのかな。…またはゲイの皆さんに好まれるタイプなのかフージュンさん?実際どーなんすかスタンリーさん?(こらこら聞くなって)
 この映画が2作目だったというリュウイエ君、あの『山の郵便配達』の純朴な息子の後にこの役を選んだっていうのはみんな驚いたんじゃないか?『小さな中国のお針子』『戀之風景』でも見せた清潔感はここでも生きてて、ハントンとセックスしても妙に童貞っぽい(笑)。結婚を決めたハントンに対して「ボクのこと見捨てるの?」といったように彼を見つめる顔を見て、リュウイエ君もまた子犬系明星なんだと確信。あと、あまり鍛えてなさそうなどんくさい裸体も妙にリアルだなぁ。むちむち気味な太ももとか、毛深くない脚も。
 どんくさいといえば、大陸で作った映画には、なんとなく埃っぽい色合いとか、最新モードでもどこか垢抜けない雰囲気があるんだけど、それを逆手にとりつつ、映画全体に絶妙なスタイリングを施していたのはお馴染のウィリアム・チャン。オシャレとは言い切れないけど、ハントンやランユーのキャラクターを絶妙に表現した衣裳や小道具も印象的だった。

 この映画には社会的な主張はない。あるのはただ、金で買った快楽が愛に変わっていく過程だろう。人を愛するのに性別は関係ない、好きになったのが同性でも、その人と気持ちをわかりあいたい、肉体に触れたい、一つになりたいと願うのは、社会上では禁じられても、感情では止めることができない。しかし、運命がその恋人たちを引き裂くことは止められなかったらしく、ランユーとハントンの愛は社会的に引き裂かれたのではなく、突然の事故によって幕が引かれたのだった。
 社会的な主張はないにしろ、映画の中には北京(中国)の「社会」と二人の愛が交差する瞬間があった。前述した天安門事件の渦中、学生デモに参加したランユーを必死に探すハントンと、軍によるデモ制圧が行われた後、疲れきったハントンの前にシャツを血に染めたランユーが現れた瞬間。抱きしめあいベッドを共にした二人には「世界が血塗られてもオレたちは離れられない」という思いがあったのかもしれない。恋人同士にとっては愛は政治より強い。そう思わされたこのシーンは印象的だった。

 最後はネタバレ気味だったけど、このへんは原作にもあったのであえて書いたりして。こんなところで感想は終わり。これより後は例によって蛇足な独り言なので、読み飛ばしてもいいっす。
 
 ほんの6,7年前までBLもゲイノベルもやおいも苦手なワタシだったのに、『ブエノスアイレス』をいろんなところで熱く語ってしまったのが原因らしく、周囲にBL好きだと思われてしまったらしい。これ以降、「ツァイ・ミンリャンはあまり好きじゃなーい」といいつつも『河』の衝撃のシーンを語りまくり、『美少年の恋』を短期間で8回観たり(ブエノスでさえ半年で6回が限度だった)、《藍宇》の前に撮られたスタンリー・クワンの『異邦人たち』を観て、大沢たかおと半裸のジュリアン・チャン(チョン・チーラム)が一緒にいる場面に「きゃー、チーラムが大沢くんを襲おうとしている~(逆でも可)」とかなんとか言ったくらいだから、やっぱ立派に腐女子の資格があるのかもしれないぞもとはし。トホホー。

 そしてこの映画も、今後きっと何度も見直すんだわ。日本公開なんて決まったら上京して映画館に通いそうだな、というか決まるのか?

英題:Lanyu
監督:スタンリー・クワン 脚本:ジミー・ンガイ 美術&編集:ウィリアム・チャン
出演:フー・ジュン リュウ・イエ

|

« 『北京故事 藍宇(ランユー)』北京同志 | トップページ | 《生化特警 喪屍任務》(2000/香港) »

映画・テレビ」カテゴリの記事

香港映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 『北京故事 藍宇(ランユー)』北京同志 | トップページ | 《生化特警 喪屍任務》(2000/香港) »