春の惑い(2002/中国)
再び中国映画。先に書いた『北京ヴァイオリン』のチェン・カイコー、『英雄』のチャン・イーモウと並んで“中国第5世代”の監督の一人である、ティエン・チュアンチュアン(田壮壮)監督、実に10年ぶりの監督作『春の惑い』。もとはしはこの映画がお初の田監督作品だったりする。『青い凧』観てないんすよ~。
国破れて山河あり 城春にして草木深し。なんかそう言いたくなってしまう(笑)、抗日戦争終結直後の蘇州が舞台のこの映画、よく聞くと中国初のリメイク映画で、オリジナルの『小城之春』は40年代中国映画の傑作と言われているらしい。(中華人民共和国成立前の1948年製作)ちょっと意外。自国映画初のリメイク?でも確かレスリーの『夜半歌聲』はこの頃の中国映画『深夜の歌声』のリメイク…と思ったらあれは香港が返還される前に香港で作られたものだし、かつて別の国で一度映画化されたガルシア=マルケスの『予告された殺人の記録』が中国でもリメイク…と思ったら、同じ原作でも翻案されたものだというし…。まぁそんなことはどーでもいいか。そもそもワタシ自体、この映画のオリジナルなんて全く知らないのだから、全くの新作としてみなければならないと思って、この映画に臨んだ。
突然我が家を訪ねた夫の友人は、ワタシの昔の恋人だった…。
戦争で破壊された街、病に倒れ、心も病んで長く伏せっている夫(ウー・ジュン)との間はなんとなくギクシャクしている妻(フー・ジンファン)。辛い日々が終わり、希望あふれる春を迎えようとしているのに、心は揺らいでいる。そんな時にやってきた章医師(シン・バイチン)。彼はまだ彼女のことを思っている。そんな二人の心は一瞬触れ合うが、思いを遂げることはできない。夫も二人の気持ちはどこかで感じていた。いくつのも想いが交差したまま、医師は上海へ帰っていく…。
ただ、それだけ。不倫にもなっていないような気もする。
ワタシは自分のポリシーとして「不倫なんかしたくない」主義である。「人のものは取っちゃダメ」と厳しく教育されてきたから…というのは軽~い冗談だけど、だから不倫映画や不倫小説が嫌いとかいうわけではない。瀬戸内寂聴尼も「不倫も真剣にすれば純愛になる」と言っていたし。
何がよくて何が悪いというわけではない。夫は自分が病弱なのを妻に申し訳ないと思い、妻の“本音”を見てしまって嫉妬で自暴自棄になる。妻は医師への思いを心に蘇らせるものの、今の自分の状況や世間体を考えれば彼との恋に溺れるわけには行かない。医師は思いがけない再会に驚きつつ、それでも妻に思いをよせる。それが淡々と続く。時代背景もモラルもあるのだが、これを「単なる不倫もの」の一言で終わらせてはいけない。これは一場面ごとに人物を見つめ、心の動きを読み取っていく映画だったような気がする。
妻のまとう禁欲的にもエロティックにも見えるチャイナドレスやハンカチーフの使い方も印象的だった。あと、役者の顔が妙に若いなぁと思ったら主演の3人は1970年年代前半の生まれ。多分、劇中の役の実年齢に合わせたキャスティングを狙ったんだと思うけど、同じ世代の日本や香港の俳優と比べると、皆落ち着いているなぁ。
原題:小城之春(springtime in a small town)
監督/ティエン・チュアンチュアン(田壮壮) 撮影/リー・ピンピン(李屏賓)
出演/フー・ジンファン(胡靖[金凡]) ウー・ジュン(呉軍) シン・バイチン(辛柏青)
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