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北京ヴァイオリン(2002/中国)

 前回、レスリーについて書いたときに、ああ、『覇王別姫』はやっぱりレスリーの最高傑作だったけど、あれは同時に、チェン・カイコーの代表作でもあるんだよなぁってしみじみ思ったものだった。個人的には最高傑作と断言できないのだけど(『黄色い大地』があるからね)、あの時のカイコーは輝いていたんじゃないかな(?)だって、『覇王別姫』以降のカイコー作品といえば、いったいどうしたんだカイコー?と言いたくなった『花の影』、大作ってことはわかるが地味ーな印象しかない『始皇帝暗殺』、そしてハリウッドで撮った『キリング・ミー・ソフトリー』に至っては、あまりの評判の悪さに観に行くのをやめたくらい。ああカイコーよ、キミはどこへ行くんだ?と心配していたら、いつの間にか中国に戻ってきて、こーんな小品『北京ヴァイオリン』を作っていたんだ。しかも、自分も出演している!!…なんてこったい、カイコー。

 ヴァイオリニストを目指す息子チュン(タン・ユン)の才能を信じ、彼に尽くしてきた父親(リウ・ペイチー)。やや無口な息子は思春期まっさかり、ヴァイオリンも好きだが女性にも興味津々。そんな二人が住みなれた街を離れて、北京で出会うさまざまな人々。現在の音楽教育に嫌気が差し、無気力に生きていたチアン先生(ワン・チーウェン)。奔放な恋に生き、チュンがほのかな恋心を寄せるリリ(チェン・ホン)。そして、世界的に称賛された新進ヴァイオリニストを育て上げた音楽教育界の権威ユイ教授(カイコー)と、やがて彼の弟子となるチュンに猛烈なライバル心を抱く少女リン(チャン・チン)。そして、父がチュンに傾ける過大な情熱の裏には、チュンの出生の秘密が隠されていた…。

 いやー、ええ話や~。いや、特にヘンな意味はなしで、ストレートで。この話は中国で放映されたクラシック演奏家のTVドキュメンタリーを基にしているそうだけど、親子一緒に共通の夢を見るということは、一昔前の高度成長期の日本でも起こりえたことじゃないかな。それを考えると、現在の中国はその頃の日本に似ているのではないだろうかという気がする。カイコーやチャン・イーモウは過去の作品で、地方の小都市や豊かではない村を舞台にそこに生きる人々を描いてきたけど、イーモウも『英雄』の前作『至福のとき』で現代の大都市を舞台にしたこともあるので、ある程度キャリアを積み、中国内外でも確実な評価を得た彼らは今、歴史映画から現代映画に題材を移すことによって、中国のいまとこれからを映し出し、この国の未来とこれからの問題点を語っていくのかな。
 類まれな才能を持つチュンと、彼を温かく見守る人々の優しさが心地よい。時々「おとさんそれはやりすぎっ」とツッコミたくなるほど情熱的な父の愛、全く正反対の教育方針を持つチアンとユイの教え、自由奔放な中にもチュンを暖かく包み込むリリの母性愛。それを受け止めながら、チュンは自分の歩く道を自分で決めていく。世界的名誉ではなく愛を選び、父のもとに帰っていくが、それはまた彼の人生の新たな始まりである。これから、チュンがどう生きて、ヴァイオリンを愛し、人を愛していくのか。それが観たくなる終わり方だった。  

 チュン役のタンユン君は実際にヴァイオリニストの卵だとか。うん、いかにも中国の芸術少年という感じ。まるで少年のような父役のペイチーさん、これまたよかった。どこか仙人ぽい印象もある“ネコおじさん”なチアン先生、ああ、ホントに北京でもこういうふうにネコと暮らす人はいるかもしれない、と感じさせられたりして。(ネコの面倒を見なけりゃ、のくだりが好きだ)殺風景な広いアパートをあれこれ飾り立てるリリさん、え~、カイコーの奥さんなの!とビックリ。そして、こんな素敵なキャラクターを揃えておきながら、話の一番おいしいところを全部かっさらっていったのが、他でもない、監督であるカイコー自身である!ああ、なんておいしすぎるんだ、カイコーよ!全くアンタはぁ~とかあきれてしまったけど、それもまたイヤミじゃないから、まいっかぁ~(爆)。

 そんなカイコーの次回作は武侠ものらしい。キャスト候補にはヒロこと真田広之氏や郵便配達のリウ・イエ君が上がっているのだが…、あー、もしかしてカイコー、盟友にしてライバルのイーモウを意識してる?なんてね。

原題:和[イ尓]在一起(Together) 監督/チェン・カイコー(陳凱歌) 出演/タン・ユン(唐 韻) リウ・ペイチー(劉佩奇) チェン・ホン(陳 紅) ワン・チーウェン(王志文) チェン・カイコー

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