チャウ・シンチーのゴーストハッスル(1990/香港)

 『ミラクル7号』のパンフに、星仔のフィルモグラフィーが掲載されている。完璧かどうかは定かではないものの、それを見て改めて確認したのは、星仔が最も活躍したのは1990年から95年にかけてだったということだ。この時代、日本ではかろうじてユンファやレスリー、そしてトニーが紹介されるようになり、95年の『恋する惑星』日本公開をきっかけに香港ブームが始まるのだが、そんな時代でも星仔の作品が大々的に紹介される機会はなきに等しい状態だった(と言っても『0061』や『マッドモンク(魔界ドラゴンファイター)』、『チャイニーズオデッセイ』2部作は小規模公開されている)ことを覚えている。星仔、もといチャウ・シンチーが日本人に認知されるのは、それから『少林サッカー』まで7年待たなければいけなかったのだ。

 ワタシが星仔の名前を初めて知ったのは、1990年の台湾。 
 そのころ、すでにユンファは病気のために休養しており、台湾で公開されていた映画もチャイゴー2を始め、そのパク…もとい類似作品『チェイス・フロム・ビヨンド』などくらいだった。そんな時、街のレンタルビデオショップに貼られたポスターに「周星馳」やら「賭聖」やら「賭侠」という文字が躍っている。さすがに当時は香港電影迷じゃなかったので、広東語どころか北京語にも自信がなかったので手を出さずにいたのだが、帰国してアジア映画関係の資料を調べてみたら、どうやら香港では、チャウ・シンチーというコメディアンが映画界を席巻しているらしいということが改めてわかった。その後、何度か台湾に足を運ぶごとに、その名は大々的になっており、93年の「People」国際中文版では、四大人気俳優にランクインしていたのも覚えている。(あとの3人は成龍さん、ユンファ、アンディだったっけ)そんなふうに名前を知ったのは早かったものの、映画自体は『0061』が初見だったので、…今思えばもったいないことしたな、という気もするのだった。
 その頃に星仔が出演し、香港映画界のマネーメイキングスターへの階段を駆け上り始めた頃の作品が、香港レジェンド・シネマフェスティバルの個人的オーラスとなった『チャウ・シンチーのゴーストハッスル』である。あいかわらず前振り長くてすんません。

 麻薬課の警部ピウ(トン・ピョウ)は、相棒のカム(スタンリー・フォン)と共にパトロール中、麻薬精製工場を発見する。カムを見張りに立てて勇敢にも一人で工場に潜入したピウだが、奮闘も虚しくあっけなく殺されてしまう。
 マルコス大統領(!!)やチャウシェスク大統領(!!!)と並んで霊界の裁判所に行ったピウだが、人間界では自分が殉職したどころか借金苦で自殺したということになっているのに大ショック。自分を殺した犯人が捕まっていないことを知った彼は、真犯人を突き止めるために裁判官を買収して霊体のまま地上に戻る。身体に赤いあざを持つ人間を探せと教えてもらったピウが見つけた自分の協力者は、お調子者の新人警官シン(星仔)。シンは都合のいいことに麻薬課に配属され、相棒を失ったカムとコンビを組むことになる。
 ピウは捜査でドジばかり踏みまくるシンを助けてやり、シンは麻薬課でも頭角を現す(?)。そんなある日、捜査の中でシンはCMタレントのユイ(ビビアン・チェン)と知り合い、彼女に一目惚れする。しかし、運の悪いことに彼女はカムの一人娘。相棒であるシンの軽さを快く思わないカムは、溺愛するユイに彼氏を作らせたくない。そこでピウはシンの恋愛成就を、自分の殉職事件について調べることと条件として手伝ってやることになる。
 シンとユイの交際は順調に進む。しかし、カムは二人の邪魔ばかりする。シンはカムにピウが幽霊になって下界にいることを告げるが、それすらも信じようとしない。先祖信仰に厚く、道士でもあるカムがご先祖に相談すると、先祖は彼に呪符を授けて、ピウを閉じ込めるようにカムに急かす。しかし、それは力のある道士を味方につけた真犯人の罠だった…。

 『ポリス・ストーリー』の署長さん役としても知られるトン・ピョウさんの大活躍(スタントバレバレじゃん!と言いたくなるアクションシーンあり)や、突然道士になってしまう(?)スタンリー・フォンさん、セクスィー度がハンパないエイミー・イップ(イップ・チーメイ)など、味わいのある脇役たちによる80年代ノリを保ちながらも、その後の星仔のハジケっぷりの凄さを充分に感じさせてくれる作品。王晶パパ王天林さんも今よりちょっと若くて、登場場面も楽しかったなー。
 星仔ったらめっちゃ若い!当時28歳のはずなのに、顔がまだ小僧だよー(笑)。個人的には今の銀髪のクール顔星仔の方が好みなので、小僧の星仔にはひかれないんだが、時々横顔がトニーに見えるのに参った(苦笑)。同い歳(&同じ誕生月で5日違い)だし、幼馴染だし、ね~ぇ。

 観客を笑わせようとギュッと凝縮されたギャグに、当時の世界&香港の情況を織り交ぜ、今観てもその当時はこうだったと確認することができるような作り(もちろん、当時はそんなことまで考えてはいなかったんだろうけど)もとっても楽しい。これは大陸や世界を見据えすぎてしまって、自ら自由な作りを制限してしまっているような気もしないでもない今の香港映画にはない魅力なのではないだろうか。
 もちろん、『香港ラバーズ』やこの映画の時代に帰れといっているわけではないけど、例え対象が香港&広東語ローカルであっても、全世界であっても、香港映画のくっだらない面白さ(注・誉め言葉です)は理解してもらえるのだから、そういう流れもあるべきだと思う。…でも、やっぱりそれも過去のものになってしまったのかな。
 それでもワタシは香港映画を見捨てたくないけどね。
 
 あー、すみません、最後はなんかおセンチになっちゃったよ。せっかくの星仔映画なのにね。
 最後に蛇足的意見。先に観たのが『チャウ・シンチーのゴーストバスター』で、これが『チャウ・シンチーのゴーストハッスル』。邦題、思いっきり紛らわしいです!それにいくら90年代黄金期の映画を持ってきたとはいえ、邦題まで90年代ビデオっぽくするってのもいかがなもんなんでしょうか。そのへんがちょっと惜しかったです、はい。生意気言ってすみません。

原題&英題:師兄撞鬼(Look out,officer!)
監督:ラウ・シーユー 撮影:ウォン・マンワン 音楽:チョウ・カムチュン
出演:チャウ・シンチー トン・ピョウ スタンリー・フォン ビビアン・チェン エイミー・イップ ウォン・ティンラム

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香港ラバーズ 男と女(1984/香港)

 先週、休み前最後の中国語教室で、《省港旗兵》のレビューを読んだ。
 日本では、『省港旗兵 九龍の獅子/クーロンズ・ソルジャー』の題名でビデオ化済。

 この映画を観ていなかったので、評論文を読んでいって初めて知った。
 …そうか、広東省から不法入国した犯罪者の話だったのか。80年代前半といえば、84年に中英条約によって香港の中国返還が決まった頃。それでもまだまだ大陸の人々にとって香港は夢をつかめる憧れの地であったのだ、ということを確認させてくれたのが、『香港ラバーズ 男と女』だった。

 マン・シーサン(チェリー)は広東省から不法入国で香港にやって来たが、ちょうど彼女がやって来た時期は、運悪く香港の法律が不法移民の取締りを強化した時だった。頼りにしていた叔母に拒まれ、彼女は仕方なく不法移民達が暮らす郊外のバラック小屋に身を寄せる。仕事にもありつけず、日中は無気力に過ごし、夜は同居する男たちに抱かれていた。
 タイ華僑のコン・ユンサン(アレックス・マン)はギャンブルで日々の生活を立てている。不法移民の経営する賭場でイカサマがばれ、逃げる途中で入浴中のシーサンに匿われる。数日後、不法移民取締り中の警官から質問を受けたシーサンはコンに助けられる。二人はお互いを意識しあうようになる。しかし、シーサンに香港人の占い師クワイ(関海山)との結婚話が持ち上がり、二人は別れることになる。
 クワイと結婚したことで、香港の居住権を取れると信じたシーサン。この結婚は子供を作るための結婚で、二人の間に愛はなかった。しかし、自分の身体と引き換えに、豊かな生活が保障されることになり、しばしの間シーサンは満ち足りた生活を送ることとなり、無事に妊娠もした。
 しかし、クワイに連れて行かれて観に行ったキックボクシングの試合で、シーサンとコンは再会してしまった。シーサンと別れたコンは、飛び入り参加した賭けボクシングで優勝したことがきっかけで、兄貴分のキョン(ロー・リエ)をコーチにつけてプロのキックボクサーとなっていたのだ。シーサンとコンの間に恋の炎が燃え上がる。香港チャンプとなったコンは、環太平洋チャンプになった暁にはアメリカへの移住をシーサンに約束し、彼女もまた子供を産んだ後はクワイと別れて一緒になることを約束したのだが、彼らの許されぬ愛の果てに待ち受けていたのは悲劇だった…。

 星野博美さんの名著『転がる香港に苔は生えない』では、煌びやかな香港の裏でひっそりと生きた、大陸からの不法移民たちの姿も綴られている。それを読んだ時は、自分が香港の一面しか見ていなかったことを知って愕然としたのだが、こういう事実を知った後でこの映画を観ても充分ショッキングであり、また切ない。同じ大陸からの移民が主人公であっても、『ラヴソング』のような軽やかさはもちろんなく、夢を追ってやってきた香港で夢が潰えてしまう悲しみが映画全般を覆っている。これは先にも書いた通り、中国返還を予感させながら、明日がどうなるのかわからないという香港人のゆれる気持ちもまた反映されている映画でもあるんだろうな。

 あどけない少女のようなルックスに、妖艶な女性性を匂わせているようなチェリー。ギラギラとした野獣のようなアレックスさん。洗練されていない泥臭さはあるけど、非常に説得力のある役柄を演じている。この時代はヌードも許されてたんだなぁ…。こういう思い切った演技がなかなかできなくなってきているのは、香港も日本も一緒ではあるか。関海山さん演じる初老のクワイも、一言でいえばスケベジジイであるけど、決して悪役として存在するわけじゃなく、たとえ子供が目的であっても、シーサンには不自由させない程度の暮らしを与えてあげたわけだから、彼もまたかわいそうな人であるよね。
 台湾の金馬奨では最優秀脚本賞を受けているらしい。それも納得。

 ところで、ちょっと前の新聞で見たのだが、とあるアンケート調査によると6割の香港人が「自分は中国人だと思う」と答えているらしい。10年前とは違って大陸の方面を窺いながら映画を作っているような印象も受ける現在の香港を思うと、《省港旗兵》やこれのような社会的テーマをはらんだ映画というのも、もう作られないんだろうな…。

原題&英題:男與女(Hongkong,Hongkong)
監督&脚本:クリフォード・チョイ 製作:モナ・フォン 音楽:ヴァイオレット・ラム
出演:チェリー・チェン アレックス・マン クワン・ホイサン ロー・リエ

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武侠怪盗英雄剣 楚留香(1976/香港)

 ヒーローもの好きであるワタシだが、最近は徹頭徹尾シリアスなものよりも、むしろ軽妙なキャラの主人公が、荒唐無稽な大冒険を繰り広げてくれるものが面白く感じる。日本のマンガで例を挙げれば、御馴染の『ルパン三世』、それから今年再アニメ化されるという『コブラ』といったところか。彼らは世界や銀河を股にかけたお尋ね者だけど、傍らに美女、または信頼のおける仲間と共に大冒険に繰り出す。
 そういうノリを香港に持ってきて、さらに予想不可能なストーリーを展開させ、思わず唖然茫然となり荒唐無稽にもほどがあるだろ!とツッコミたくなるオチの映画が、この『楚留香』だった。
 ちなみに古龍の原作は未読。小説でもこんなノリ…じゃないよね、さすがに。

 楚留香(ティ・ロン)は天下に名を轟かす風流怪盗。3人の美女を従えて、船上で楽しく暮らしてはあちこちを旅している。友人の南宮霊(田青)と無花大師(岳華)を船に招き、宴を催していたところを、神水宮の女剣士宮南燕(ノラ・ミャオ)に襲撃される。巷では、武林に名だたる3人の幇主が神水宮にある毒薬「天一神水」によって殺害されており、その犯人が楚留香であると噂されていたのだ。楚は真相を突き止めるべく動き出す。

 いやさー、これ、最初はパスしようかどうかって悩んでたんだよ。日曜最初の上映だし、『男と女』もパスして星仔の映画だけでもいいか、なんて一時期思ったんだけど、観てよかったわ!楽しかった!
楚留香っていえば古龍が生んだ“東洋のアルセーヌ・ルパン”だもんな、原書で読んだ弟がかなり面白かったって言ってたのを覚えていたので、映画も面白いに違いない!それに若きティ・ロン兄さんも観られるしさ、ってなわけでチケを取ったのだ。旧作群ではこれが一番楽しかったですよ。 

 自由と風流を愛し、自らが親がわりとなって育てた(!)3人の女性と共に、江湖を気ままに闊歩する盗帥楚留香。剣の腕でも立つし、女性にもモテモテ。それを演じるのがいわゆる“一昔前のオトコマエ”であるティ・ロン兄さんなのだが、ちゃんと役柄に見合った軽妙さを出してくれているのが嬉しい。今の兄さんはかなり渋々キャラになってしまったけど、この頃はホントにオトコマエで(一昔、を取ってもね)観ていて楽しい。楚留香以外だと、まるでテンガロンハットをかぶっているように見える(爆)中原一点紅の、いかにも中華の殺し屋的な登場も面白かったなぁ。
 もちろん女子陣もかわいい。ワタシはいわゆる李小龍の“ドラゴン”系作品をほとんどスルーして育ってきたんので(しょうがないだろ、女子だからな)、ノラ・ミャオやベティ・ペイ・ティといった往年の女優の皆さんのノリノリな頃を観たのはこれが初めて。キャピキャピしている“楚留香エンジェル”から敵役っぽい存在感の陰姫公主も、だれもがかわいい。

 …とまぁここまでは絶賛するんだが、しかしあの「うぞーーーーー!」としかいえないラストって、いったいどーよ。そして、ガンガン腕や脚をもいで(脚はもいでないだろ脚は)投げまくるってのもいったいどーよ。ま、それもまたB級映画としての香港映画の魅力には違いなんだろうけど、「それでいいのかよぉーーーーー!」と心の中で叫んで唖然としちまいましたよ。昔の映画だから、仕方ないのだろうけど、さすがに今の香港映画でも、あれはできないよね。

 ティ・ロン主演の“楚留香シリーズ”はこれを含めて3本作られたそうで、12月にこれと一緒にソフト化されるという『多情剣客無情剣』がそのひとつになるのかな?なんとか観る機会を作ろうっと。

英題:Clans of intrigue
監督:チョー・ユン 原作:古龍 脚本:ニー・クワン
出演:ティ・ロン ユエ・ホア ノラ・ミャオ クー・フェン ベティ・ペイ・ティ

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裸足のクンフーファイター(1993/香港)

 『洪拳小子』を元にして作られたという、ジョニーさん監督、アーロン主演の《赤脚小子》こと『裸足のクンフーファイター』。思えば香港映画サークルに所属していた頃、アーロン迷の仲間が「すっごくいい映画だよ、絶対日本公開して欲しい!」と言っていたのだが、結局観る縁に恵まれず、10年経ってしまったなぁ。星仔迷でもあったKちゃん、まだ香港映画観ているかな?

 女社長パク(マギー)が率いる染色工場の四季織に、裸足の少年関豊曜(アーロン)がやってきた。彼の父親の知人である段南(ティ・ロン)がここで働いており、クワンはデュンナンの伝とパクの好意で四季織で働くことになる。
 実はクワンもデュンナンも功夫の使い手。特にデュンナンは自分の功夫の腕前が災いして追われる身となっており、本名も隠して四季織に潜んでいたのだった。そんなデュンナンはパクを密かに愛しており、パクもまた彼を愛していた。
 クワンはある日、男装して街を歩いていた女性シウリン(シンリン)と知り合う。彼女は私塾を開いているワー老師(チョン・プイ)の娘で、父親とともに教師をしていた。字が読めず、学のないクワンはシウリンに自分の名前を教えてもらおうとする。最初はからかったりからかわれたりしていた二人だったが、次第に惹かれあうようになる。
 四季織は花で染め上げる美しい染色により、街で人気の織物を作っていたが、その人気を妬んでいたのが、街の顔役ガク(曾江)が率いるライバル会社の天龍紡。
 ある日、四季織の職人の一人が多大な借金を背負っているといって、借金取りがやってきた。そこでパクは土地権利書を担保に借金を肩代わりしたが、それが天龍紡の手に渡ってしまい、四季織の納入寸前の布に火をつけられる、怒ったクワンは借金取りと戦い、権利書を取り返すのだが、それと一緒に天龍紡の契約書まで持ってきてしまったので、四季織の職人たちは困り果てる。
 自分のやったことが四季織の迷惑になってしまったと感じたクワンは工場を辞めるが、街を去る前に参加したガク社長主催の武術大会で優勝してしまい、天龍紡の職員になってしまう。仕事と新しい靴を得たクワンは大喜びだが、それでも天龍紡は四季織の吸収を諦めていなかった。
 ワー先生はガクの不正に気づくが、それを危ぶんだ天龍紡の人間に殺されてしまう。さらに四季織にお尋ね者のデュンナンがいることに危機を感じたガクは、デュンナンをも罠にかけようとする。デュンナンが天龍紡の刺客に倒れたと知ったクワンは…。

 リメイクといっても、オリジナルとまったく一緒ってわけじゃなく、かなりのアレンジが施されている。これは金庸の作品から『シティーハンター』のような日本のマンガに至るまでの原作のある作品でも同じで、原作に忠実な映画化というのは香港映画ではあまり意識しないものなのかな、とちょっと考えた。つまり、オリジナル(原作)と映像化(新作)はあくまでも別物、という考えがあるんだな、きっと。そんな香港映画界だからこそ、『ディパ』の出来には納得できなかったんじゃないかな?
 ワタシはこの2作品を続けて観たので、どっちが面白かったかと聞かれても選べない。ただ、どちらにもいいところがあればちょっと…なところはあるわけだし、比べるなんて野暮なことをしないで、兄弟みたいな作品だと認識した方がいいと思うアルのよ。
 それであってもストーリーラインには共通するものがあり、敵味方の違いはあるにしろ、主人公が出世するに従ってラストの悲劇性が増すという分は両作とも同じような気がする。その立場の変化が靴の描写で表されるのも同じだしね。
 ラストの死闘の場面、あそこまで完膚なきまでに…と思ったが、それもまた必然的であり、“泣けるクンフー”と呼ばれる所以なのかな。

 ああアーロンかわいいよアーロン(爆)。ここ10年くらいの、濃くてワイルドな姿を見慣れているから、この映画で見せる15年前のアイドルアイドルした姿はホントにカワイイ。動きもキレがあるし、アクションもダンスみたいだしね。まさにハマリ役としかいいようがない。あの童顔なので今でも少年っぽい役柄を演じられる(『柔道龍虎房』のトニーみたいな役だな)彼だけど、若いときの方が断然かわいいなー。とにかく、かかか、かわいい…としか言えなかった。こんな自分でいいのか(笑)。
 『ロアン・リンユィ』で国際的な名声を浴びた直後のマギー。彼女の存在はこの映画のドラマ性を高めていて素晴らしい。無鉄砲なクワンを弟のように見守り、デュンナンとの身分違いの恋に身を焦がす。オリジナルでの女性キャラがほとんど花瓶状態だったことを考えるとなおさらである。ラストの、新たな命を宿した姿も神々しいし。…しかしジョニーさん、ちゃんと女性描写ができるのに、どーしてここ数年の作品では(以下略)と思ったりして。
 香港一の兄貴キャラ、ティ・ロンさんも非常に渋くて凛々しい。彼のキャラがいかにカタギじゃないのかというのは見ての通りなんだが、もしかしたら『挽歌』『挽歌Ⅱ』のホー兄さんよりカッコいいかもしれないいぞ。弁髪もよく似合うしね(それはデコが多少広いからというのとは全く無関係)。
 若くて薄倖さもやや薄めのシンリン(彼女の名を聞いて思い出すのは“薄倖”…すまん)。このキャラもクワンに対して姉のように接しながら、思いを寄せ合うという設定。それを考えればクワンは典型的な弟キャラってことになるのね。
 その他、何でも演じられる曾江さんの見事な悪役っぷり、チョン・プイさんの落ち着いた先生っぷりもよく、非常に安定したキャスティングも嬉しかった。

 ああ、これがまさに香港映画第2の黄金期の作品なのか。安心して観られる映画っていいなぁ。この時期に電影迷にならなかったことをちょっと後悔したくもなる1本だった。

原題:赤脚小子(The barefoot kid)
監督:ジョニー・トー 製作:モナ・フォン 脚本:ヤウ・ナイホイ 撮影:ウォン・ウィンハン アクション指導:ラウ・カーリョン
出演:アーロン・クォック マギー・チャン ティ・ロン ン・シンリン ケネス・ツァン チョン・プイ

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ヒーロー・オブ・クンフー 裸足の洪家拳(1975/香港)

 今年始め、NHKのBSで無間道三部作が放映されたときに、深夜枠でセレスティアル・ピクチャーズとNHKが共同制作したドキュメンタリー『香港映画のすべて』も一緒に放映された(参考としてこの記事を)。4年前の最初の放映を見逃していたので、「ほー、こんなんかぁ。しかし王家衛はともかく、挽歌シリーズが取り上げられずに武侠&功夫片ばかりじゃバランス悪いなー」なんてツッコミつつ見ていたのだが、それは多分、ここで取り上げられた過去の映画のほとんどはショウブラザーズ(以下ショウブラ)作品っぽいと思ったからだろうか。…いや、もちろんそれ以外の作品もあるんだろうけど、張徹監督作品なら、ほとんどショウブラなんだよね?
 うー、自信ないので後で見直して確認します。

 それはともかく、80年代後半からの香港映画はよく観ているのに、いわゆる“香港映画の代名詞”となりえた70年代のショウブラ作品をちゃんと観る機会は少ない。今では旧作DVDも日本で入手することができるので、観ようと思えば観られるのだが、これまで自分が観たのは『インフラマン』『書剣恩仇録』だけ…。確かにこれだけじゃ不十分よね?それに『裸足のクンフーファイター』の元ネタだというので、とりあえずチケを取ったのがこの『裸足の洪家拳』だったのである。

 清代の中国。洪家拳の使い手である少年関風義(フー・シェン)は、兄弟子の黄漢(チー・クアンチュン)を頼って、彼が職人として働く紡績工場の興発隆にやってきた。彼の口添えでクワンは職人見習いとして興発隆で働くことになる。裸足のクワンにホアンは自分の靴を与えてやる。ホアンはクワン以上の功夫の使い手であるのだが、彼はクワンに武術を他人に見せないようにと忠告する。実はホアンは、別の工場で用心棒を勤めていて敵対工場の刺客と死闘を繰り広げたことがあるのだが、自分の主人が功夫の使い手を見下していたことを知って、一職人として生涯を過ごすことにしたのだ。
 質のいい織物を作ることで人気のある興発隆だが、同じ街にもう1軒あるライバル工場の貴連通が興発隆をつぶすことを画策しており、興発隆の職人頭チェンを買収して、職人を狙っていた。チェンとともに職人を束ねる番頭のリーが買収に応じないため、貴連通は興発隆の職人たちを襲撃する。恐ろしさのあまり貴連通に移ろうとした職人たちを止め、貴連通の刺客を撃退したのはクワンだった。
 興発隆のボスはクワンの腕を認め、用心棒を兼ねて失脚したチェンの後釜として職人頭の職を与える。新しい靴と大金も与えられ、クワンは有頂天になる。しかし、ホアンはクワンをたしなめるが、二人は仲違いしてしまう。ますます攻撃が激しくなる貴連通はリーを殺し、クワンはリーを殺した用心棒ルンを倒すと、ボスはクワンに住宅と愛人までも与える。そして、上り詰めたクワンに待ち構えるのは…。

 オープニング、両腕に鉄輪を巻いた上半身裸のフー・シェンが演武する洪家拳。あ、これって『カンフーハッスル』でおネエキャラの仕立て屋さんが構えてた型と一緒だなー、とか、洪家拳といえばワンチャイの黄飛鴻だよな、とか、さすが劉家良の指導だな、なんて自分の持てるだけの(笑)カンフー知識を動員して見入っていた。しかし、原題は《洪拳小子》なのに、英題は“少林の弟子”という意味…。えーと、洪家拳と少林拳って違うんじゃないの?え、同じ?後で調べるか。

 これが初見となるフー・シェン。“クンフーの貴公子”呼ばれるだけあって確かにいい男だったわー。見方によっては某台湾人気男優(これ以上は言えない!これを言ったらおそらく両方の迷にブーイングされる!)と思ったりして。
 しかし、なぜ今まで彼のことを知らなかったのだろう?と思い、検索でたどり着いたキングレコードのショウブラサイトで知野次郎さんが書かれていた評伝を読んだところ…。そうか、25年前に若くして亡くなっていたのか。ジェームズ・ディーンや赤木圭一郎と同じだったんだ(泣)。しかも、この記事を書いている今日が彼の命日だ。今生きていたら54歳か…。それを思うと、この映画で描かれたクワンが駆け抜けた短い青春が、より切なく思えてしまうじゃないか。

 そうそう、彼の流麗なアクションにはもちろん目を見張ったんだけど、個人的に物語は結構痛かったんですよ。靴も買えない貧しさだけど、少年らしい純真さと正義感で真っ直ぐ進むクワンが、自分が戦うことでどんどん出世はしていくけど、そうすることで恵まれていって、どんどん欲も出てくるわけだし、最後にたどり着くのは当然…と思っていたから、なおさらね。普通主人公は死なないじゃないの!でも…(大泣。微妙にネタバレしとるな)と思えば、ねぇ。
 そういう悲しさを吹っ飛ばしたのが、彼を実の弟のように愛して(って語弊があるな)気にかけた兄弟子ホアンが、ラストで見せる怒りの一撃必殺鶴拳だったのだが、そこで終わりかよ!と余韻もなく“劇終”を迎えたのに驚き。ああ、昔の映画らしいよなぁ、こういうアッサリさが。しかし、ホアンを演じたチー・クアンチュン、すごい筋肉美だったな(正直な感想)。

 こういう男性向け功夫アクション作品は、自分から進んで観ることはないだけあって、今回スクリーンで観られたことはよかった。食わず嫌いしないで、他の作品も機会があったらDVDでちゃんと観るか。
 さらに張徹作品もこれで初見。彼の名前だけは香港電影資料館の企画展を見たことで知っていたんだけどね。ウーさんの師匠格に当たるってこともあわせて。

原題&英題:洪拳小子(Disciples of Shaolin)
監督&脚本:チャン・チェー 脚本:ニー・クワン 武術指導:ラウ・カーリョン
出演:アレクサンダー・フー・シュン チー・クアンチュン

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もっともっともーっと!愛とリスペクトと周星馳

 前回書いた『ミラクル7号』の感想に書ききれなかったので、もーちょっと。
『裸足の洪家拳』や『裸足のクンフーファイター』や『楚留香』の感想も早いところ書きたいとは思うんだけどね。

 なんか、人の入りがよくないんだって(泣)?『少林ラクロス』より100倍楽しいのに!
 いやまー実際、ワタシが観たときも平日夕方メンズデーという状況でお客3人だったわけなんですが…。
 まーねー、ライバルがいんぢい先生と翻版流星花園(しかも某航空会社割引@香港便とタイアップしてる…泣)だからってのも不利だけど、もーちょっと人が入ってもいいと思うし、ファミリー向けにもっとアピールしてもいいと思うんだぞ。ワタシもミスドでフルーツシューを買っては「ああ、また当たらなかった…」とガッカリしながら売り上げに貢献しているし、吹替版でも声優経験のない有名タレントなんか出ていないし、そこそこは面白いのだから、「うちの方は吹替版しかやらないから観ない」と言って避けている人も、是非観ましょうよ!

 確かに古くからの星仔迷や星仔作品が好きな人には、彼が完全に大陸にシフトしてしまったのが非常に物足らないというのもわかる(公開当時、香港の批評では「周星馳は死んだ」とまで書かれたらしいけど)。こてこての香港電影迷であるワタシからしても、アレが足りないとかコレが欲しいと言い出したらきりがない。『少林サッカー』や『カンフーハッスル』を抜かしても、90年代作品にあった魅力がどんどんなくなっているというのはよくわかる。…でも、それは彼の映画だけじゃなくて、現在の香港映画全般にも当てはまることではないのかな。数日前の新聞に、「香港人に『自分は中国人である』という意識が強まってきた」というような記事があったけど、それだけ時代が変化してしまったってことになるのか。

 でも、昔の星仔映画はよかった…なんて言っていられない。中国大陸はもとより、世界で勝負するのなら、星仔自身、こうするしかなかったのかという選択をしたんじゃないかと思うもの。そして、昔の“無厘頭”なネタを控えめにする一方で、過去の映画やマンガへの愛とリスペクトを前面に出すようになってきたのが、21世紀に入っての監督作品にそれが表れているんじゃないのだろうか。ちょっと昔の香港映画も好きだし、それに加えて『ドラえもん』や『キャプテン翼』に親しんだマンガ好きとしては、日本のポップカルチャーや世界の映画に敬愛をこめて映画つくりに挑む(この姿勢をオタクとも言う)星仔の姿勢にしびれてしまうのだ。オタクな同業種と言えばクエタラことクエンティン・タランティーノが真っ先にあがるけど、同じオタクでもクエタラと星仔のタイプは違うだろう。むしろ星仔は、この秋に自作の『20世紀少年』が映画化される、漫画家の浦沢直樹氏と似たタイプなんじゃないかと思う。…って異論あったらすみません。単に個人的な印象で言ってますので。

 とまぁ、全体的な感想はこのへんにして、細かいところをあれこれ。
○『少林サッカー』にも見られるボロ靴へのこだわりなんだが、後で感想を書く『裸足の洪家拳』と『裸足のクンフーファイター』もまた、靴にこだわっていたので、なんか通じるところがあるのだろうか、と思ったんだけど…。これ、香港レジェンドシネマでのもにかるさんのトークショーで話題にはならなかったかな?
○ティー親子が見入っていたテレビに映った宇宙人騒ぎレポートで、レポーターを演じていた妙に濃い存在のおじさんが気になっていた。エンドクレジットで確認したら、ここ最近の星仔作品から『狼たちの絆』『上海グランド』『kitchen』『SPIRIT』を撮ったヴェテラン、プーン・ハンサンさんだったらしい。初めてお顔を拝見しましたよ。
○星仔作品での音楽の使い方はなかなか面白い。オリジナルサントラを担当するレイモンド・ウォンが選曲しているかどうかは定かじゃないんだけど、クラシックを使ってみたり(『少林サッカー』ではグリーグの「ソルヴェイグの歌」をムイの場面でアレンジして使っていたのが印象的)、かと思えばコテコテの中華音楽をやったり。今回はナナちゃんとディッキーが踊りまくるボニーMの「Sunny」や、日本では「雨音はショパンの調べ」の題で知られるガゼボの「I like Chopin」が効果的に使われていたのがよい。このへんの曲、もしかして星仔が『E.T.』を観たころによく聴いていたんじゃないのかな?(「Sunny」はもうちょっと古い時代の曲だろうけど)

 この映画、香港電影迷やファミリー層だけじゃなく、もっといろんな人に観てもらいたいなぁ。『少林ラクロス』にガッカリした人とか、ナナちゃんかわいい♪とflash待ち受けをダウンロードしてこの映画の内容をよく知らない人とか、自分が不幸なのは社会のせいだと思っている人とか、子供の給食費を払えるのに払えない人とか、このほか具体的に書いたら各方面からお叱りを受けそうなのでこのへんにしておくけど、ホントにホントに観てもらいたいですよ。

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ミラクル7号(2008/香港・中国)

 『ミラクルマスクマン』の原題じゃないけど、チャウ・シンチー(以下星仔)はまさに“百変星君”な無厘頭コメディアン。21世紀を迎え、本格的に監督としても活動するようになった今は、かつての無厘頭ぶりはおさえめだけど、その分誰にでもわかりやすい、ボーダーレスな作品を作ってくれて、こうして日本でも観られるようになったのだから、それについては喜ばなければ。
 でもね、いくら『少林サッカー』や『カンフーハッスル』が大当たりしたからと言って、どっかの国のテレビ局やまたどっかの国の大手映画会社みたいにドラマの映画版や人気作品の続編で儲けるなんて安全パイをとるほど、星仔は保守的じゃないんだよね。90年代だって、“ゴッド・ギャンブラー”シリーズ以外(参考はこれこれこれ)でも、いろんな物語で笑わせてくれたんだからね。
 だから、『ミラクル7号』で彼が生み出した新たなミラクルにだって、大いに納得したし、大いに楽しませてもらったもんなんだ。

 急激な成長を遂げる中国の寧波。その街に次々と建つ高層ビルの建築現場で働く父ティー(星仔)を持つ小学生のディッキー(徐嬌)は、超ビンボーな生活を送っている。勉強ができなかったことを悔いた父は、ディッキーに最高の教育を受けさせたいと願って、超名門私立小学校に通わせている。ビンボーであるゆえに、ビンボー嫌いのカオ先生(李尚生)には嫌われ、小学生なのに七三分けしている大金持ちの息子ジョニー(黄蕾)とその取り巻きからいじめられてしまう。そんなディッキーをかばってくれるのは、美人のユエン先生(キティ)と、彼に恋するビッグサイズの少女マギー(韓永華)だけだった。
 ある日、ジョニーが最新型ペット型ロボット「ミラクル(長江)1号」を持ってきて、見せびらかしていた。それをうらやましがったディッキーは、おもちゃ屋でティーにロボットをねだる。「嘘はつかず、喧嘩せず、一生懸命に勉強すればビンボーでも尊敬される」といわれて育ってきたディッキーだが、やっぱりビンボーはイヤだったのだ。
 ディッキーの運動靴に穴が開いてしまったので、ティーはゴミ捨て場でせっせと履き古しを漁っていたところ、緑色のボールが落ちているのを見つける。それを拾ったティーはディッキーに与えた。彼はそれを学校に持っていって、「これは最新の“ミラクル7号”だ!」などと調子こくから、またジョニーたちにいじめられる。
 すっかり凹んでしまったディッキーだったが、彼の目の前で突然ボールが変形する。フサフサの頭とスライムみたいに変幻自在なボディを持つその姿はまるで宇宙人のペット。この子に“ナナちゃん(七仔)”と名づけたディッキーは、ナナちゃんのスーパーパワーで大活躍する妄想にふけるが、現実はそんなにうまくいくはずもなくて…。

 なんかねー、星仔って40過ぎてもずーっと子供なんじゃないかって思っていた。
 何かにつけ結婚結婚と言われるトニーと違って、カレン以来浮いた噂がない(爆)ってことや、先日の香港レジェンドで『ゴーストバスター』や『ゴーストハッスル』のような無厘頭コメディを観続けていたからってこともあるし、気難しそうな彼の奥さんになるのは大変そうだな、(自分は確実に無理!)って思ったもんだけど、結婚してなくても父子愛って描けるじゃないか、てゆーか星仔、実は子供好きなんじゃん?なんて改めて思ったのよ。
 息子を愛してやまない愚直なティー。あまりに愛しすぎちゃってそりゃねーだろ?と思わせられることもあるが(超名門校に入れるとかね)、金持ちじゃなくて尊敬される人間になってもらいたいと願うのはどこの親も同じだし、狭すぎる部屋で二人が抱き合って眠る場面に思わず目が潤んでしまったよ…。

 この親にしてこの子ありで、ディッキーもまた愚直な少年。でもビンボーであってもやっぱりみんなと同じものが欲しいし、父親の言いつけを守ってしまう。腕白であって反抗的でもあるこの年代らしい子供だ。そんな子供だから、父親ともつい意地を張り合ってしまう。そのわだかまりがあって、父親がああなってしまったとなれば(以下ネタバレになるので略)、確かにショックは大きいはずだよな…。

 そんな二人の元にやってきたナナちゃん。そりゃさー、宇宙からあんなに派手にやって来れば、大きな期待をかけられちゃうのは仕方ないよね。たとえウン○をひりだそうとも。結局、不思議なものには頼らずに、自分の道は自分で開けってことなんだよね。ま、そんな“使えねー”子であっても、密かに活躍してそれが報われるのだから、存在意義はあるんだけどね。もしかしたら、ナナちゃんは宇宙人が親子に与えた試練なんじゃないか、って思った次第。そのへんが描かれていないから、いろいろ想像を働かせられるよね。
 最初、「なんだこれは?」と思ったナナちゃんの造形なんだが、動くと確かにカワイイ。『喜劇王』からの流用という百面相場面は楽しかったもの。ディッキーの胸に収まったラストの“あの姿”に至ってもかわいらしい。日本でグッズを作らなかったのはもったいないよ。

 若い頃は確かにトニーに似ている…と思った星仔も、年を増すごとにトニーとはタイプの違ったハンサム(自分でイケメンと言ってはいけないよ。苦笑)になってきている。それが嬉しい。それに加えて、今回は労働者の哀愁を漂わせた姿がよい。来年の金像の助演は狙えるかもよ!…って助演かよ!って星仔に怒られるかな。
 もっとも、今回は子役たちが主役。ディッキー役のチャオチャオ始め、メインの男子は女子が演じているわけだけど、こうでもしなければ案外子供らしさが出せなかったんじゃないかな。男子が演じたマギーも思った以上に愛らしくてけなげでしたよ♪
 キティ小姐は『少林ラクロス』よりこっちの方を先に観たかったよ。美人だし、このところの星仔映画のヒロインにしては美味しい役なんだけど、…実質上のヒロインはチャオチャオだもんね(苦笑)。あと、今回初めて例のメガネ君(トレパンを深ばきする体育教師役のフォン・ミンハン。『少林サッカー』のスパナを持って戦うサッカーチームキャプテン&『功夫』での市電の乗客)の名前を知ることができたのは嬉しかった。

 で、今回一番の心配は、吹替版でどこまで楽しめるかってことだったんだが…、まー、9割方は楽しめました♪もーちょっと翻訳考えようよって思ったところが多少あったのが残念だけど(どこだかは言わない)、声優さんも星仔と言えば山ちゃんを始め、ディッキーを演じた野原しんのすけこと矢島晶子さん(実は子役だと思っていた。もちろんしんのすけとも全然違うんだからすごい!)、ジョニーを演じたラピュタのパズーこと田中真弓さんなど、素人タレント抜きで芸達者な皆さんが熱演していたのだから、あんしんできるわけなんだけどね。
 …あー、それでもやっぱり広東語で観たい。仙台に行って字幕版観るかな。
 …それでも、チャオチャオの生声聞きたいから北京語でも観たい。香港でVCD買うかな。

 実はもーちょっと書きたいんだけど、あまり長くなるのもなんなので久々に別記事で。

原題(英題):長江7号(CJ7)
監督&製作&脚本&出演:チャウ・シンチー 製作:ハン・サンピン 共同脚本:ヴィンセント・コック 撮影:プーン・ハンサン 美術デザイン:オリヴァー・ウォン 衣装:ドーラ・ン 編集:アンジー・ラム 音楽:レイモンド・ウォン
出演:シュー・チャオ キティ・チャン ホアン・レイ リー・ションミン フォン・ミンハン ヤオ・ウェンシュエ ハン・ヨンホア ラム・ジーチョン

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チャウ・シンチーのゴーストバスター(1995/香港)

 アジアの喜劇王、周星馳。英語名スティーブン、通称星仔または星爺。
すでに40も半ばを越え(そりゃトニーと同い年だからな)、未婚ではあるものの前途有望な少女の契爺にもなっているのだから、今のシンチーは星爺と呼んであげるにふさわしい立場なのであるが、それでも未だに星仔と呼んでしまう。
 監督も兼ねるようになった『少林サッカー』以降、だれにでもわかりやすいグローバルなコメディを作りながらも、相変わらず我が道を行っている星仔だが、彼の本領発揮は、90年代に大量生産された“無厘頭(ナンセンス)”コメディにあるような気がする。様々なパロディを盛り込み、アドリブも連発して、香港ローカルすぎる笑いのてんこもりに香港&広東語圏では大ヒットになった作品群だが、広東語もろくにわからない身分でこれに向かうとかなり大変。今回の映画祭で登場した星仔作品3作も、字幕翻訳が大変そうで、これを日本語で観られることに感謝せねば、と思った次第。
 そんな無厘頭コメディのひとつが、『ゴーストバスター』である。

 香港のとあるマンションでは、1週間前にレイ夫妻の母親が謎の死を遂げて以来、毎日のように空から物が振ってくるため、警備員たちは戦々恐々としていた。そのマンションに住むオレンジ色の髪の女性クン(カレン)は失恋してやけくそになり、『恋する惑星』のビデオを観ながら暴れていた。クンが外に飛び出すと、黒いロングコートと帽子姿、手に鉢植えを持った若い男が歩いているのを見かけ、こっそり後をつけてみる。
 警備員のもとに、レイ夫妻の一人息子がいなくなったと連絡が入った。息子は戻ってきたのだが、彼には死んだ祖母の霊がとりついていて、レイ夫妻を恐怖に陥れる。そこに現れたのがロングコートと鉢植えの男。この男レオン(星仔)は霊を見る能力があり、電気ショックを使って霊を成仏させた。
 一見プロフェッショナルの除霊師に見えるレオンだったが、実は脱走した精神病院の患者。しかしクンは彼に一目惚れし、『レオン』のヒロイン、マチルダのコスプレをして彼に弟子入りを志願する。
 マンションに戻った二人は、警備員たちが再び悪霊現象に慄いていることに気づく。レイ夫妻の母親は実は息子たちに突き飛ばされたことで墜落死していたので、夫婦を恨んで化けて出ていたのだ。真相をレオンたちに知られた夫妻は彼らと対決するが、追いつめられて夫婦もろとも墜落死。その際、レイ夫人はレオンの処置ミスで悪霊となってしまったので、クンと警備員たちはレオンに悪霊退治の特訓を受ける。
 しかし、その特訓はどれもこれもお下劣でナンセンス。ホントにこれで悪霊退治ができるのか?と警備員たちはレオンに不信感を抱くようになる…。

 ブラックユーモアあり、精神病院ネタあり、『ミラクル7号』にも登場するウ〇コネタあり、李健仁あり、黄一飛ありと、いつもの星仔を知ってる身としては王道中の王道だな、と感じさせられる出来。それに加えて監督が王家衛とは真逆の(笑)ジェフ・ラウなので、王家衛ネタも容赦ない。
 しかーし、いつもの星仔ワールドとはわかっているんだけど、それであってもなんとなく後味が…と思っちゃうのは、ダークなホラー風味が強くて、ブラックなネタも笑い飛ばせなかったからかな。ワタシはホラーが嫌いだし、マンションに幽霊がというシチュエーションといえば、かつて『The EYE』でえらい怖い思いをさせられたもんな。あと、ラストがねぇ…。まーブラックユーモアであるのは間違いないけど、このオチはある意味結構痛いっすよ。
 ま、このへん、あまり深く考えるのはよした方がいいか。だって“無厘頭”なんだから。

 そんな複雑な思いで観ても、決してつまらなかったってわけじゃないのよ。もちろん、笑えるところは大いに笑わされましたからね。黄一飛さんをはじめとする、役に立ってんだか立ってないんだからわからん警備員の皆さんや、『食神』ほどのぶさキャラじゃないけど、スキンヘッドまでご開帳したカレンの根性は楽しい。ナタリー・ポートマンのコスプレ、似合ってたねー。
 先にも挙げたとおり、この映画には『レオン』がネタになっているわけだが(香港でも人気だったんだ)、そのレオンのコスプレで登場している星仔。こっちも出っ歯やらなんやらと捨て身の爆笑演技なんだが、無精ひげは似合ってもジャン・レノみたいなゴーティひげが似合わないことを発見。…なんか、星仔に見えないんだよなー。それも違和感の原因だったのかもしれないな。

 そういえばこの映画祭でワタシが観た星仔作品は、いずれも幽霊ネタだったな。もう一つの幽霊ネタ、『ゴーストハッスル』の感想は書けたらアップいたします。

原題&英題:回魂夜(Out of the dark)
監督&脚本:ジェフ・ラウ 製作:モナ・フォン 音楽:ウィリアム・フー
出演:チャウ・シンチー カレン・モク ウォン・ヤッフェイ リー・リクチー レイ・キンヤン

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ファイヤーライン(1996/香港)

 ジョニーさん&銀河映像の映画には、いわゆる“お仕事もの”と呼べるジャンルがある、ような気がする。代表的なものは『PTU』。ナイホイさんの『アイ・イン・ザ・スカイ』もまた然り。今から12年前(!)に製作された『ファイヤーライン』も、銀河映像お仕事映画系列の一つといえるのかもしれないな。

 九龍北東部にある慈雲山消防署。香港で最年少のチーフ消防士(ラウチン)を擁するこの署は、署の食堂で発生した食中毒のために、弁当持参の新人消防士ホーイン(レイモンド)を除いた全員が救急病院に担ぎ込まれたり、ベテランのフォン署長がエレベーター事故で再起不能になるなど、いつも予測不可能のトラブルに巻き込まれることで、香港中の消防士から“悪運部署”と呼ばれていた。
 フォン署長の後任として、若きエリートの張文傑(中信)が配属される。完璧主義のチョンと、現場第一主義で向こう見ずなチーフはことあるごとに衝突するが、彼らの対立を横に、慈雲山署の面々は日々火災の消火やレスキュー活動に追われている。
 ある日、自殺騒ぎのために出動したチーフは、騒ぎを起こした当人が救急病院の医師アニー・チャン(カルメン)であることに気づく。食中毒とフォン署長の手術のために訪れた病院で彼をアニーを見かけていて、彼女が同僚の医師と恋愛上の揉め事を起こしているのに気づいたからだ。チーフはアニーをなんとか救い、彼女にほのかな感情を抱くようになるが、どうしても気持ちを打ち明けることができない。
 チーフだけでなく、他の隊員もプライベートでそれぞれの事情を抱えている。署長はかつての妻から他の男と再婚するから娘を引き取ってほしいと言われて苦悩する。既婚者のロー隊長(ルビー)は子作り目的のセックスを拒みたいのだが、自らの妊娠を知って動揺する。しかし後日、土中に生き埋めにされた赤ん坊のレスキューを担当したことで、彼女の気持ちに変化が訪れる。
 郊外の古い繊維工場で放火火災が発生した。最大級の大火事に、香港中の消防署に出動要請がかかる。工場内に閉じ込められた人々を救うために、チョン署長、チーフ、ロー、ホーイン他慈雲山署の6名が建物に侵入するが、大爆発が起きて彼ら自身が閉じ込められてしまう…!

 消防士を題材とした映画やドラマといえば、お馴染みの『バックドラフト』や韓国の『リベラ・メ』だったり、日本ではマンガをドラマ化した『め組の大吾』や『火消し屋小町』が思い浮かぶ。主人公は消防士なのに、まったく火事が出てこない『119』って映画もあったっけ。
 消防士たちの公私様々な事情や事件をつなぎ合わせて、クライマックスの大火災へとなだれこんでいくストーリーテリングは、やはりスペシャリストを主人公にしている米国ドラマ『ER』っぽい。後年の作品では一つの事件をじっくり描いているジョニーさんにしては、珍しい構成のような気が…と思ったけど、そうでもないか。無鉄砲な熱血漢、クールなエリート、無邪気な新人、仕事と夫婦生活の板ばさみに悩まされる女性隊員の4人による群像劇の形式もとっているので、それぞれ感情移入しやすくてよい。その物語展開があるからこそ、クライマックスで本物の火をふんだんに使った大火災のエピソードにドキドキしてしまう。確か『バックドラフト』の時にはすでに火災シーンでCGが使われていたと思ったけど、やはりCGの炎だと緊迫感が出ないよな。この場面でスタッフやキャストに火傷を負った人などいなかっただろうか?と心配になってしまうくらい迫力があった。

 キャストについて。…なんかオトコマエなんですけど、ラウチンが!彼によく似ている日本の某歌手よりハンサムに見えるんだけど、気のせいじゃないよね?そのオトコマエが炎に映える。かかかカッコいい…、としか言えない(笑)、いつものジョニー親分映画への賛辞を、今回はラウチンに与えたい。
 たしかラウチンと同い年のはずなのに、ここでは年上で上司を演じている中信さん。相変わらずの三角眉毛がキュートでいかにもな堅物エリートだけど、私服のセンスが全然エリートじゃねーぞ。ジャケットを羽織ったりしなくてもいいんだが、せめて半袖ワイシャツ(カラー可)か白いTシャツにしようよ、昔の彼女と会うときにはさ。
 カルメン、久々に観たなぁ…。華がないのは仕方ないか。それを言ったらルビーもなんだが。女性に華がないのは相変わらずなのね、親分。
 これがデビュー作だというひよっこ消防士を演じたレイモンドくん、父親が大好きな若者っぷりはなかなかかわいい。実際にこんな若者くんいそうだな。

 手に汗握ったり、大いに笑わされたり(一番の笑いどころはあの場面&雑務スタッフとしてクレジットされた林雪でしょ!)、ちょっとしんみりしてみたり。最近すっかりクールになってしまった親分だけど、こういう作品もまた作ってくれないかな、なんて思った。観られてよかったな。

原題&英題:十萬火急(Lifeline)
監督:ジョニー・トー 製作:モナ・フォン 脚本:ヤウ・ナイホイ
出演:ラウ・チンワン アレックス・フォン カルメン・リー ルビー・ウォン レイモンド・ウォン ラム・シュー

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ラウチンに始まり、星仔に終わった2日間

ラウチンに始まり、星仔に終わった2日間
 地下鉄各駅で見かけた『ミラクル7号』ポスター。
 隣でやってたけど、結局観られなかったなぁ。
 右下真ん中の“親子抱擁”ショットがよい。

 香港レジェンドシネマ、7作品鑑賞にて我的全日程終了。忙しかったけど楽しかった〜♪お会いできた皆さんもお疲れ様でした。

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