五月天 Mayday 「Re:DNA 〜2017 復刻版〜 」@日本武道館

 予告する暇もなく行ってしまいました、アジアのスーパーバンド(とあえてこのコピーをそのまま使う)五月天の2年ぶりの武道館ライヴ「Re:DNA ~2017 復刻版~」へ!

 デビューして今年で18年。これまでGLAYのLIVE EXPOに参加したり、ライヴハウスでの来日ライヴも何度か敢行し、日本ではアミューズ所属となってレーベルメイトのflumpoolともコラボ、さらには日本語曲も発表するようになってドラマの主題歌に…などと今さら説明することじゃないのだろうけど、ええすみません、ワタシは今までなかなかフォローできませんでした。知ってる歌も『星空』主題歌とこれ↓くらいですよ。 


 2年前の夏の終わり、彼らは敬愛するビートルズも演奏した同じステージに立ち、華人バンド初の武道館ライヴを成功させるものの、その時は重要な仕事と重なっていたので上京を断念。だからこそ、今度また武道館で歌ってくれるのなら、必ず行きたいと思っていたのである。しかーし、チケットはゲットできたものの、忙しくて予習する暇は全くなし(苦笑)。


 最新アルバム「自伝 History of Tomorrow」日本限定盤も買わぬまま(でもライヴ後に武道館限定版を購入)、spotifyや某ちうぶのMV等だけを聴いたりして、当日に臨んだワタシをどうか許して下さい。

 参加したのは2月4日(土)の2日目。
当日は午前中に仕事があったので昼からの上京となり、間に合うかどうかヒヤヒヤしながら日本武道館へ。9年前ジェイ演唱會以来。
 蛍光棒とリストバンドを購入して入場したら、オープニング前の熱気がムンムン。席の前後は台湾人客で気分は一足早い台湾。スクリーンでは2月に公開される石頭主演の百日草こと『百日告別』の予告も流れてグッとくる。汗を拭き拭き、蛍光棒のスイッチを入れてスタンバイ。
 客電が落ち、ポルノグラフィティの新藤くんが詞を書いた「Buzzin'」のリリックビデオを、ブレードランナーの2019年LAのネオンにありそうな書体だーなどと思いながら眺めていたら、メインモニターにショートフィルムが流れ出していよいよライヴの開幕。ゴリッゴリのロックナンバー「モーター・ロック」に続いて「Do You Ever Shine?」が来たので、テンションはたちまち上がって歌いまくり蛍光棒振りまくり。この蛍光棒、普段は白色なんだけど、館内の電子制御によって様々な色に変化するすごい機能があって、これはすごかった!買っておいてよかった。
 今回のライヴは、2009年から翌年にかけて44公演が行われた(日本でもZepp Tokyoで公演があった)「D.N.A創造世界巡廻演唱會」の復刻版。高雄ライヴでは動員新記録を作り、ライヴドキュメントは3D映画として公開されたという様々な伝説を残したとか。それもあって、前半は代表曲を中心とした旧作で構成されていたけど、サイドモニターには中国語と日本語の歌詞が併記されていたので、初めて聴いた曲でも一緒に歌えるのが嬉しい。阿信の熱唱、瑪莎のクールさ、冠佑の鬼のようなドラムさばきも惚れ惚れしたけど、実はギタリスト好きなので、怪獣&石頭のダブルギタリストのプレイには見入っちゃいましたねー。二人ともカッコえぐで、ああ眼福眼福。

「あなたしか、自分のDNAを創造することができない」というコンセプトに基づき、前半から中盤にかけてはインターミッションでメンバー主演によるショートフィルムが上映。サラリーマンやタクシードライバー、クリーニング店主として現代の台北に平凡に生きる五月天の5人が、ジョン・レノンのDNAがある施設に保管されていると知ってそれを入手しようと奮闘するという筋書き。その内容とシンクロさせた曲目も面白かった。
 惜しかったのはスマートフォンのライトを小道具としてかざす「満ち足りた思い出(知足)」のお約束を知らなかったので、それに参加できなかったことかしら。わ~スマホライトきれい、で、どーやってこれつけたらよかんべさ?とか見とれていたアホウがここにいました(笑)。あと、MCコーナーでの自動翻訳機を駆使したアホっぽい(注・褒めてます)トークの字幕が小さくて、よく理解できなかったのも残念。でも「チイサイトリトリ」は後で意味を教えてもらって、レスリーの「スケベェさん」と双璧をなす名言じゃん!と笑ったけどね。

 警察とのチェイスの末、DNAを守り通したメンバーはある少年にそれを託す。すると、レノンのみならず、さまざまな世界の偉人のDNAがそれに反応し、それらを手にした複数の少年たちが現れる。そして意外な結末を迎えてショートフィルムは終わるけど、その後に演奏された「ジョン・レノン」から「僕(我)」という、初めて聴く曲に思わず涙がこぼれてしまった。なんでだったんだろう?自分でも初めての経験だったのでビックリした。その後、SNSの感想で「音楽は言語の壁を超える」というのを複数見かけて、ああこれだったのか、と確信。

 アンコールでは先ほどの「Buzzin'」や梁家輝さん主演のMVが話題になった「頑固」など新作中心。ここで当日限定のゲストとしてポルノの岡野くんが登場し、彼が詞を書いて阿信とデュエットした「Song for you」を共に披露。ポルノも来月初の台北公演を控えているそうで、お互いにエールを送っていたのが好印象。その後のダブルアンコールでも2曲歌い、新譜からの「最高の一日」がフィナーレ。

 この初心者がいきなり飛び込んで生で聴いた五月天ライヴの感想は、「うわー、すっごくバンドだった」(笑)。なんて言うと失礼に聞こえてしまってファンの皆さんには申し訳ないけど、これまで聴いてきた中華ポップスのライヴはソロが多く、しかもみんな揃いも揃って個性の強く派手っ派手なステージを展開してくれる人ばかりだったので(レスリーとか學友さんとかアーロンとか宏くんとかジェイなんだけど)、それと比べたらいくらスタジアム級の演出であっても…ではある。
 でも、近年はJ-POPのライヴに行くことが多いし、数々のJ-POPアーティストとのコラボや、メンバーが影響を多大に受けたビートルズやオアシズなどのブリティッシュポップとJ-POP的なサウンドがうまく融合しているので、ボーダーレスなロックとして非常に魅力的に思えた。生命感に溢れ、人生を肯定して前向きに進めるような阿信による歌詞もいい。(ついでにポルノの二人やGLAYのTERUやflumpoolによる日本語詞も、各アーティストの個性を理解して歌い上げているように思えるのも興味深い)なによりも聴いて楽しいし、口ずさむこともできる。
 そしてやっぱり何においても、ナマの破壊力半端ねー>結局落ちるのはそこか(^_^;)

 そんなわけで翌週からの台湾行きには、BGMとして「自伝」を連れていき、すっかりハマってしまったにわかファンが一人誕生したのでした。いやーもーすいませんホントに。
 ラストは2年前のライヴの映像でしめます。


 この流れで次回更新は台南旅行記。
再び浪漫的逃亡な日々がやってきましたよ。Don't miss it!(こらこら)

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2016funkin'for HONGKONG的十大電影

恭喜發財 萬事如意!
というわけで、まずはお約束のこれを。
去年のヴァージョンなのは、去年の記事に載せ忘れたので…というよりも、事故に遭ったアンディ先生の快復を心から願っております。


 さて、昨年は中華電影を15本しか観てなかったのでした。うち地元鑑賞は昨年2位に選んだ刺客を含めてたったの4本、そのうち中国映画『見えない目撃者』を見逃しました。当然香港映画は昨年にひき続いて上映なし(成龍作品はすでに中国映画ですしね)はあ…。
 だから選ぶのは楽でしたね、というか、必然的に映画祭作品が上位に来るのは致し方無いですね。てなわけで、今年は久々に1位からご紹介しますよ。

1 侠女(デジタル修復版)

 ああすみませんすみません、今回クラシック作品を初めて1位にしちゃいました。もうこの本数だからしょうがないと思って下さい。これ観たおかげでるろけん観ても守り人観ても、「あーこれ侠女リスペクトじゃん!」という日々を送っています。それくらい重要です、はい。

2 大樹は風を招く

 昨年つくづく残念だったのは、香港で話題を呼んだ問題作《十年》を観る機会に恵まれなかったこと。一般公開があるとしてもあの映画をあまり政治的に捉えてほしくないなーと思っているんだけど、その《十年》のいい影響を受けていて、まさに今の時代だからこそ返還時を客観的に観ることができるとも言えた映画でした。

3 シェッド・スキン・パパ

 めでたく今年4月の香港公開が決まって何より。演劇と映画とジャンユーと古天楽の幸せな出会いが、香港のポップカルチャーに繁栄をもたらしますように。

4 ゴッドスピード

 サイト「銀幕閑話」では見事昨年のアジア映画第1位に選出。マイケル・ホイさんの好演もあいまって、ユーモアと過激さが共存するなんとも言えない不思議な味わいのロードムービーは、やはりインパクト大きかった。

5 山河ノスタルジア

 ジャンクーが初めて描いた愛についての物語。利便性や欲望を求める人々も、愛には心を掴まれているといった具合だけど、それに希望を託すのも悪くない。

6 メコン大作戦

 次回作もポンちゃん主演のオペレーションものになるという話。ますます過酷なシチュエーションを設定する鬼ダンテっぷりが加速するんでしょうねー。ああそれもまた楽しみである。

7 タイペイ・ストーリー

 やっとヤンちゃん再評価の時がきた。もうこの世にいらっしゃらないのが切ないけど、おかげで噂だけ聞いていて観られなかった作品がやっと観られる。ホウちゃん、かわいかったよなあ。

8 台湾新電影時代 

 ホウちゃんやヤンちゃんの旧作がリマスタリングされていま観られるのも、台湾ニューシネマの再評価があってこそなのだろう。映画が消費されてきている今だからこそ、アジア映画史の重要な位置にある映画たちは、日本の古い邦画と同じように観られる頻度が上がってくれたらいい。

9 私の少女時代

 近年の若者向けの壁ドン系邦画がどうも苦手で、お願いだからこういうのばっかで選択の幅を狭めないでーって思っているんだが、あの頃とかこれのような、中高生以上も楽しめるちょっと時代設定の古い青春映画がもっと増えてくれてもいいんだけどね。

10 最愛の子

 このところアクションものが多かったピーターさんが、久々に人間ドラマに戻ってきた。もともと国境を股にかけて活躍してきた人だけど、今後中国で活動するのなら、あまりドメスティックにならないで、過去作品のような洗練されたものが観たいかなと思う。勝手な意見ですが。

次は個人賞ですよ。いつものごとく、賞に決まっても特に何も与えられませんが。

主演俳優賞:ン・ジャンユー(シェッド・スキン・パパ)マイケル・ホイ(ゴッドスピード)
ジャンユーは久々に香港映画での主演と、何役も演じ分ける無双っぷりが楽しかった。ホイさんも久々の主演、そしてユーモアとペーソスをたたえた安心感が面白かったので両雄受賞。

主演女優賞:チャオ・タオ(山河ノスタルジア)
いつも幸薄い印象の涛さんだけど、今回が一番役としては幸せに見えた感がある。おばちゃんの役も演じたけど、まだそこそこ若いんだよね。ジャンクーとお幸せに。

助演男優賞:レオン・ダイ(ゴッドスピード)
踏んだり蹴ったりだったというか、まさに「ままならない人生」を体現したような雰囲気が面白かった。そういえばまだ監督作を観たことないので、いつかその機会に恵まれますように。

助演女優賞:シルヴィア・チャン(山河ノスタルジア)
孫ほどの年齢の少年も恋に落ちる程の魅力とは!美魔女とかアンチエイジングなどを超えて、こういう60代を目指したいものです。

新人監督賞:ロイ・シートウ(シェッド・スキン・パパ)
あの『夜半歌聲』のキモいボンボンが、今や香港演劇界の大御所とは…(微笑)。役者としてはまだまだスクリーンで観る機会があるけど(パンちゃん最新作《春嬌救志明》にも端役で出るみたいだし)、また監督作も近いうちに。

最優秀アクション賞:シュー・フェン(侠女)
本当は最優秀女優賞にしようかと思ったのだけど、今はプロデューサー専業だしなあ、というわけで(そんな理由でいいのか?)まさに歴史に残るあの鮮烈なアクションを体現した中華電影史の重要人物として、この特別賞を。

心から尊敬しますで賞:キン・フー(侠女)
20年近く中華電影迷やってきて、やっとこの歳になって侠女が観られたのは遅かったかも…とも思ったけど、香港のアキラ黒澤とも称される名匠の作品を大きなスクリーンで観られたのは本当にいい映画体験だったし、中華電影を好きで本当によかった。というわけで、敬意を込めての特別賞。

 自分の昨年の中華電影鑑賞の低調ぶりは、武蔵野館の改装や日記blogでも愚痴っているような事情があるにしろ、それでも旧作をTV放映やソフトでフォローできなかったので惜しかったよなーとも思います。仕事も忙しく、中華以外の映画もガンガン観ている中でも、今後もやっぱりどういう形ででもちゃんと観ていかなきゃならんなあ。
 そんなわけで、この旧正月で何作か録画を観たので、暇のあるときに感想をアップしていきますね。

 最後に、今後地元で観られる中華電影の話も。
この年明けに東京で大量の中華電影が公開され、なんでそんなにいっぺんに、とか、どうせこんな田舎には来ないんでしょ?とか相変わらずやさぐれていましたが、なんと『人魚姫』は3月に観られます。ありがとう中劇さん!
 後は、年末年始に観られなかった『湾生回家』が2月に、そして『牯嶺街少年殺人事件』が4月にルミエールで上映です。この機会に、多くの人達が中華電影に楽しみ、今後もいろんな作品が盛岡までやってきてくることを願うばかりです。

 では、今年も中華電影迷の皆様にとっても良い年でありますように…。

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『キン・フー 武俠電影作法』キン・フー/山田宏一/宇田川幸洋

 昨年フィルメックスで『侠女』を観て大興奮したのは記憶に新しいところだが、ちょうど20年前に出版されたこの本が職場に入っているのを思い出したので、先の記事を書くときには大いに参考になった。そんなわけで、今回は改めてこの本の感想を。


 今から20年以上前、東京国際映画祭やゆうばりファンタで来日されたキン・フー監督(以下カタカタ表記します)への三度のインタビューをまとめたのがこの本。その頃のワタシは香港映画ファンを始めたばかりではあったけど、返還がきっかけで起こった香港映画ブームにより次から次へと公開される新作映画に夢中だったので、こういう方面には全く目を留めなかった。今思えばとても残念なことをしたと思うが、当時はもちろん若かったし、香港映画にもここまで深く長くハマるとは自分でも思ってなかったもので。
 だから、刊行当時にこの本を読まれた方からすれば、かなり遅い読者にしてピントのズレた感想を書くことになるかもしれませんが、そのへんはどうかお許しくださいませ。

 一般的な香港映画のイメージとして、成龍さんや李小龍さんのカンフーものを挙げるのは今に始まったことではないのだが、実は彼らの登場より少し前の60年代後半に、香港映画は第1の黄金期を迎えていた。
 それを確立した映画人の一人がキン・フーさん。1932年に北京で生まれ、1949年に香港に移住し、50年代に映画の世界に入ってからは美術や俳優を務めていたという。本の第1章では大陸で過ごした幼少期について語っているが、その話が非常にスケールが大きくて面白かった。民国期の都会の典型的な大家族に生まれ育ったのだけど、両親や親戚、多くの兄姉の背景まで事細かに語られているので、この時期だけでも映画になりそうと思った次第。

 第2章からは香港に出てから映画に関わりだす話になるのだが、戦後10代で香港に行ったのは特に政治的な理由ではなく、海外進学を目指していたからというのが意外だった。得意の絵画がもととなって美術助手となり、それから俳優となるのは、オールマイティでできる香港映画人らしいキャリア。第3章からはショウブラに行き、いよいよ映画監督としてデビューを果たし、チェン・ペイペイの『大酔侠』(3章)台湾に渡って作った『龍門客棧』(4章)そして『侠女』(5章)と各作品を詳細に語っている。
 キン・フー作品で実際に観たのは、未だに侠女だけという情けなさなのだけど、昨年初めて大画面で観て疑問に思ったことや気がつかなかったことが多かったので、この本を後から読んで知識を補充できるのはよかった。連続掲載された侠女の例の竹林での闘いなど写真も多いのはわかりやすくていい。
 そして、最後のインタビューで語られていたある構想にあっと言ったのは言うまでもない。
そこでは、彼が亡くなった後にウーさんがハリウッドで撮影を切望していた《華工血涙史》について語られていたからだ。これは話を聞いてはいたものの、ワタシもすっかり忘れていたので、なぜか申し訳なく思ったなあ。

 案の定、文章を書いても自分の勉強不足を思い知ったので恥ずかしいところですが、以前も侠女で書いたように、キン・フーさんがもしいなければ、その後の香港映画の隆盛はなかったといえるだろうし、武侠映画や武侠小説に興味を持ったら、これを読んでさらに作品を観るとより理解が深まるので、良い教科書だなというのが総じての感想。また、60年代当時は香港と台湾が映画製作の基盤は別であっても、人が互いに行き合って映画をどう作っていったかという状況もわかるので、本当に貴重な記録である。
 草思社のサイトにはまだ掲載されていて、絶版にはなっていないようなので、まもなく東京で始まる侠女&残酷ドラゴン(龍門客棧)デジタル修復版上映に合わせて、書籍が動けばいいなと思っている。特に中華電影を観始めた若い観客には張り切ってオススメしたい。


…と、ここで不勉強丸出しな感想を書いたので、最後にダメ押しで自分の馬鹿さをさらけ出します。
 そういえばキン・フーさんについては、昔中国語の授業で読んだ《香港電影類型論》でもちゃんと論文が掲載されていたんですよ。でもすっかり落ちていたのでした。
ああもうほんとにすみません、そっちもきちんと読み返しておかないとなあ…。

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ストームブレイカーズ 妖魔大戦(2015/中国)

 新宿武蔵野館が復活して中華電影の上映が徐々に増加しつつありますが、この年末年始の帰省期間は、ちょうど新作公開の谷間にあたってしまい、残念ながら湾生回家(2月に地元公開予定)も小さな園も見逃しました。でもなぜかこれは観ました。
『ストームブレイカーズ 妖魔大戦』という壮大な邦題に反して、原題は《万万没想到》。なんだそれは。 

Surprise

ジャパンプレミアは広島国際映画祭だったようです。

 天竺に向かう唐僧(ボーリン)と悟空一行が巻き込まれた大ピンチはおいといて(笑)、主人公はなぜか人間界で暮らすアホな下級妖怪の王大錘(白客)は自分を大物だと思っているけど、周りの人間にはバカにされてる。今日も雇い主の小美(楊子珊)にこき使われながら焼餅を売っている。そんな彼が霊力を失って人間になった悟空と出会ったことから始まる大騒動。

 元ネタの《万万没想到》というのは、監督も務めるネットクリエイターの叫魯易小星が2013年から製作したネットドラマ(現在4シリーズまで製作。某ちうぶでも観られるのでリンク貼っとく)だとか。主人公の名前は常に王大錘で、この映画同様白客が演じているとのこと。検索したら日本語の紹介記事もあったのでリンク貼っておくけど、中国実写版ギャグマンガ日和ですか、はあそうですか、としかリアクション取れなくてすみませぬ。

 ああ、これを知って大いに納得したわ。映画を観た時に感じた軽さと安さとおバカさと大味さに。でもね、それでも嫌いにはなれないんだよねー。かえってそれを逆手に取って楽しく作ってる感があって。日本でも同じようなノリの安いドラマや映画はあるけど、あまり安いとこっちも腹が経つからね(笑)。むしろ、人気があることによって、スケールアップした中で安さを武器に自由にやっちゃってる感が楽しいとは思った。

 メインキャストは若手、ゲストにボーリンとエリックとっつぁんを迎えていても、あまり大作感が出てないのも悪くない。近年の大陸映画は監督や俳優を大陸以外から迎えて台湾や香港の力を借りる感を覚えてそこで多少もにょるところもあったんだけど、これは完全に大陸オリジナルだし、そのへんの感覚は以前書いたモンスター・ハントにも通ずるところもあるかな。なによりも健全で、頭空っぽにして楽しめるのはいいんじゃないの?

 それでも煩悩まみれの唐僧はもっといじめてよかったんじゃないのとか、王大錘の村を治める呪術師の慕容白(馬天宇)が、全員アホアホキャラが揃っている中で唯一最初から最後までどシリアスだったのはもっとなんとかしてもいいかも、なんて多少思ったけどね。あ、そうそう、スペシャルゲストはまだいた、この慕容白の先祖を演じていたのが、孫文または中華な五郎ちゃんことウィンストン・チャオだったのですが、うっかり流してしまいました。ははははは。

 しかし、一番謎なのは、なぜこの映画が日本で買われて公開されたかなんだよな。それが知りたい。元ネタのネットドラマも結構な現代中国語スラングの勉強になるというので、ちょっと観てみたくはあるんだけど…。 

原題(&英題):万万没想到(surprise)
監督:ジョシュア・イ・シャオシン 製作:ホアン・ジエンシン ジェフリー・チャン 美術:ハン・ハン 音楽:高梨康治
出演:バイ・クー ヤン・ズーシャン マー・ティエンユー チェン・ボーリン エリック・ツァン ウィンストン・チャオ

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『台南 「日本」に出会える街』一青 妙

新年快樂   萬事如意

 昨年は劇場で中華電影をそれほど観ていなかったこともあり、あまり更新できませんでした。
今年は劇場のみならず、ソフトやTV放映等で未見作を押さえつつ、できるだけ劇場で観られるように頑張っていきますので、今後ともよろしくお願いいたします。
 とりあえず、近日中には年末に観た『ストームブレイカーズ・妖魔大戦(万万没想到)』の感想を書きますね。

 で、年明け初の記事は台湾ネタです。

 相変わらず続く書籍界での台湾ブーム。
一時期の猫も杓子も的「おいしーい、かわいーい、ほっこりー」なトーンはだんだん鳴りを潜めているようだけど、それでも先月はHanakoやCREAで特集が組まれたりで、まだまだこの流れは終わらない感じ。
 そんな中、昨年は東海岸をとりあげた『わたしの台湾・東海岸』を出版した妙姉さんこと一青妙さんがもう1冊出した台南本を読みました。


 前著『わたしの台南』から発展し、見どころの多い台南の中でも、日本統治時代に建てられて、リノベートされた建物を中心に、かなりディープに紹介されているおもしろい本。新潮社の美術グラフ「とんぼの本」のシリーズの1冊なので、建築メインになるのは納得できる。
 雑誌の台南特集でも取り上げられるリノベカフェももちろんあるけど、國華街と西門路に挟まれた西市場や、現地でもパンフレットをもらった昭和天皇が皇太子の時に行幸したルートなど、面白い話が多い。中でも目を引いたのが、新渡戸稲造が関わり、ワタシ自身も昨年足を運んだ台糖の糖業博物館も含む台南に多く残る製糖工場跡と、安平にもある塩田跡。ここはそれぞれ統治時代に発展した産業であるので、これらを回るだけでも南部の産業もわかるのかもしれないなあ。
 もちろん、八田與一の功績は欠かせない。あとはやはり昨年行った新化のさらに先にあるマンゴーの名産地・玉井(統治時代最後の漢人による大規模武装蜂起抗日反乱と言われるタバニー事件があった場所でもある)も紹介されていたのがよかった。

 おいしさや可愛さを求めるのはもちろんアリだけど、もっとつっこんだ旅をしたいと思うのなら、こういう旅も面白い。ここ最近、職場で新渡戸や後藤新平などの岩手の先人と台湾との関わりを調べる機会が増えてきたので、これらを参考にして歴史をたどって行きたいものである。

 そうそう、その調べ物も兼ねて、来月11ヵ月ぶりに台南へ行ってきます。
書店や古書店、図書館で資料を探しながら、まだ行ってない面白い場所へ行くのが楽しみです。あーでも一応旧正月シーズンにかかっているから、《健忘村》《52Hz, I Love You》も観られたらいいんだけど。

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名もなきならず者たち、銀河に新たなる希望をつなぐ。

 2016年もあともう少しで終わり。
 中華電影の上映が減ったり、個人的にもHP本館がなくなったりとここに書けないこともいろいろありすぎて、blog記事も例年になく書けませんでしたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。これが今年最後の記事ですが、予約投稿かけているので、それまでに目標だった今年観た映画の感想が全部書けているかどうかは果てしなく不安です(苦笑)。

 さて、映画界でのこの冬最大の話題といえば、一代宗師以来3年ぶりの出演となるトニー・レオン主演、共演に金城くん、イーソン、angelababyが揃い、王家衛がプロデュースした《擺渡人》!…と言いたいところなんだけど、残念ながらまだ観る機会に恵まれません(泣)。この冬香港や台湾に行くことができないからです。
 と言うのはあくまでも中華圏の話題で、全世界的な話題に目を向ければ、昨年より製作が再開した20世紀が誇る宇宙ファンタジー映画の金字塔、スター・ウォーズ(以下SW)シリーズの初スピンオフ、『ローグ・ワン』が全世界的にヒットしていること。これにアジア人初のSWメインキャストとして、ド兄さんことドニー・イェンと姜文が出演すると1年ちょっと前に発表されたときには、中華電影迷の間に大きな反響を呼んだのは言うまでもない。

 そんなわけで今年最後の記事は、ローグ・ワンについてです。
SWシリーズはエピソード4から6をTVで何度も観て、昨年公開された7(フォースの覚醒)を劇場で観ているけど、熱心なファンでもないし、まさかこのblogで書こうなんて昔の自分なら信じられなかっただろうな…^^;



 エピソード4『新たなる希望』(いわゆる第1作ですな)の開幕に流れる「反乱軍ゲリラが帝国軍から惑星破壊兵器デス・スターの設計図を入手し…」のエピソードを、2年前のハリウッド版ゴジラを手がけたギャレス・エドワーズ監督によって映画化。 

 デス・スター設計を手掛けた父親を持つ札付きのならず者ジン・アーソ(フェリシティ・ジョーンズ)を中心として結成された愚連隊(これが題名の由来)が敵陣に切り込む物語だけど、このローグ・ワンの中心メンバーとなっているのが、ド兄さん演じる盲目の僧兵チアルート・イムウェと、姜文演じる相棒のベイズ・マルバス。



 SWシリーズと言えば、35年以上昔からも全く変わらないクラシカルな宇宙空間に展開する激しいバトルがお約束だけど、今回はそれに加え、緑豊かな惑星を舞台にした激烈なゲリラ戦も繰り広げられる。その共存は実に現代的だし、見ごたえがある。
 そんな中でひと際目を引いたのが、やはりチアルート。
いやもうこっちがどーのこーの言わなくても、とにかく観ればわかるとしか言えないあのアクション。宇宙最強が決して伊達じゃないのがわかる(笑)。そもそもはクロサワリスペクトと言われるSWシリーズに初めて出演したアジア人俳優が日本人じゃないのが残念だとか、今や米国に次ぐ第2の市場となった中国狙いのキャスティングかとかの雑音が多少聞こえてきたけど、ドニーさんのインタビューを基にしたこの記事を読むと、そんなことは決してないことがわかる。ギャレスもまた、ド兄さんを起用したのはアクションだけでなく俳優として見込んだからというのも嬉しい。

 チアルートはただの強者ではない。人をつなぐ力として語られるフォースが消え去ってしまった時代に、その力は持てないものの、存在を信じて限りなくジェダイに近づこうとしている。加えてユーモアも持っていて、若きジンの可能性もフォースと同じくらい信じている。そういうキャラクターができていて、それでいてのあのアクションなのだから説得力があっていい。ホントに嬉しいものである。
 彼の相棒となる姜文のベイズも、思った以上にいいヤツだったのが嬉しい。アジア映画によく見られる(含む日本な)男同士の熱い絆で結ばれている二人なので、なんか一部がザワザワしちゃってるけど(笑)、とかく一匹狼タイプな姜文がこういう無骨な男を演じるわけだし、そーいえばこの二人は関羽の映画こと『三国志英雄伝 関羽』(すいません残念ながら未見です)でも共演しているし、ド兄さんも監督兼任したことがあるから、きっと気は合うんだろうなって思ったりして。

 そんな“ならず者”たちが果たすミッションとその運命は…ってのはここでは言えないけど、一つ言うとなれば、これが見事に『新たなる希望』につながっていくというのも素晴らしい。これが初SWなら、これからエピソード4がどう展開するかという楽しみが味わえるし、ヘヴィなファンもまた楽しめるのがいいよね。
 そして、この映画でド兄さんを初めて知った人もまた幸せだと思う。2月には再びのハリウッド出演作『トリプルX:再起動』もあるし、何と言っても4月には当たり役である『葉問3』がある!もちろん、過去作品もたくさんある。これがきっかけで、アジアンアクションにハマれる楽しさがあるからね。

 というわけで、来年は『葉問3』を始め、たくさんの香港映画が日本でも上映され、たくさん観られますように。
 そして皆様、どうか良いお年を…。May the force be with us! 

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侠女(1971/台湾)

 映画好き(シネフィルに非ず)と言っておきながら、実はワタシは意外なほどクラシックを押さえていない。学生時代に『ローマの休日』や『カサブランカ』や『用心棒』などは観ているにせよ、午前10時の映画祭は覇王別姫や宋家のように、かつて自分が好きで観ていた作品が来たくらいしか行ってないし(ちなみに年明けからは『山の郵便配達』と『初恋のきた道』が続けて上映されるが、繁忙期のためパス)BSやCSでの放映もチェックしていない。それ故に不勉強なところはたくさんある。
 それは中華電影でも然り。そもそも香港映画には90年代中盤からハマったのだから、第2次黄金期であるTVでしか観たことのない成龍作品も、李小龍作品も後から観直して感想を書いてきた。

 今年の東京フィルメックスでは、武侠映画の巨匠と言われたキン・フー(1932-1997)監督の2本の代表作『残酷ドラゴン 血斗龍門の宿』とこの『侠女』のデジタル修復版が上映された。キン・フー監督は1950年代から香港で映画製作に取り組み、60年代には台湾にも活動を広げ、これらの作品で両岸三地に名を轟かせ、第1次香港映画黄金期を築いたと言っても過言ではない、武侠映画のパイオニアとも言える人物。前者は時間の都合で観られなかったものの、後者はタイミングよく映画祭の最終上映作品になったので、それじゃ観に行かなきゃ!と多いに張り切ってチケットを取ったのであった。


なお、今回は『キン・フー武侠電影作法』(キン・フー/山田宏一/宇田川幸洋)を参考としました。この本全体の感想も、年明け以降にアップいたします。


 オリジナルは2部構成で台湾では1970年と71年に連続公開、香港では1本にまとめて公開された188分の大長編。
 東廠や錦衣衛など、この映画この映画でお馴染みの人たちが暗躍する明代が舞台。東廠の宦官に陥れられて処刑された父の敵を討つために武術を身につけた楊慧貞(徐楓)と、彼女にひかれた田舎町の30過ぎの書生顧省斎(石雋)を中心に繰り広げられる壮絶な復讐劇…と一応言えるのだが、3時間全編に渡って激しいアクションが展開するわけではない。
 初めは非常にゆっくりと田舎町の枯れた初冬(多分)の情景を見せ、そこから顧が登場してくる。頭はよさそうなのに科挙にはなかなか合格せず、書画を描いたり手紙の代筆や春聯の作成をする商売をしている顧は母親と2人暮らしで、一族が絶えるから嫁をとれと散々言われるトホホ君。石雋さんといえば、『楽日』で苗天さんと共に台北の映画館で『血斗竜門の宿』を観ていたり、3年前にNHK広島が製作したドキュメンタリードラマ『基町アパート』(リンクは出演されていた中村梅雀さんのblog記事)に出演されたり、『黒衣の刺客』にも出るはず…というか撮影はしたけどカットになったのか、とあれこれ思い出す。武侠映画のスターであるけど、顧はショウブラ作品の主人公のようなマッチョではなく、頭脳を使って楊をサポートするタイプ。彼のようなタイプは女性が主人公となる武侠映画では珍しくないけど、その原型なのかもしれない。
 その彼の村の廃寺に住み着いたのが楊。徐楓さんが演じる彼女は登場時からキリッとした表情を見せ、あまり表情を崩すことがない。彼女はデビュー2作目でこの作品の主演を果たしているのだけど、もともとアクション女優ではなかったというのが意外。デビューしたてでキャリアの浅さをカバーするためにセリフをあえて少なくしたとも聞くけど、新人であることを感じさせないアクションの凄さには驚かされた。

 そう、この映画について語るのに欠かせないのが、武侠映画の最高傑作ということ。それは本当であって、ここから香港のアクション映画にもつながっていったというのはまさにその通りだと感じた。『グリーン・デスティニー』がオマージュを捧げた(他の映画にも多少あるけど)第1部クライマックスでの竹林での激闘や、楊たちが逃亡中に敵と戦い、慧圓大師(ロイ・チャオ)に助けられる場面、第2部クライマックスの錦衣衛との対決など、見ごたえがある場面は次々と登場する。最初の場面から顧と楊が出会い、彼女たちの周囲に東廠の密偵・歐陽年(田鵬)が現れて暗躍するまでがえらくゆったりしているので、多少戸惑ったりもしたのだけど、物語が戦いへと向かうと一気にシフトチェンジして止まらなくなり、興奮すること限りなしであった。しかし、アクション以外の場面にも力が入っているから、ゆったり…というより、ここまで時間をかけて描いているのかな?とも一方で思った。第2部中盤で顧が立てた作戦で東廠をおびき出して全滅させるというくだりでは、戦いの虚しさまでも描いてしまっていて、普通はこういう描写しないよなーなんて思うところもあったので。
 そして、ついつい楊の強さに気を取られていたので、彼女と顧が一瞬の恋に落ちたのをうっかり見落としてしまい、一緒にはなれないけど彼の子孫を絶やすまいと一緒に寝て、産んだ子供を託したくだりに「えー、ヤッたのかキミたち!」と思わず言っちゃったこと(汗)。予習してなかったのがいけなかったんですね、すみません。

 てなかんじでダラダラ書きそうなのでこのへんで締めますが、先にも書いたようにこの映画が李小龍や成龍やショウブラ作品につながり、後の古装片ブームにもつながり、一代宗師や黒衣の刺客、さらにはるろけんにもつながっていくと思えば、大きなスクリーンで観られたことは嬉しかったし、今後も語り継いでいかれるだろうし、まだ知らない多くの人に観られてほしいと思ったのであった。
 この映画祭で上映された2本のキン・フー作品は、来年1月からの一般公開が決まっているそうで、これをいい機会に、ぜひとも全国津津浦浦で上映されてほしいものです。
 もちろん我が地元でも観たいなあ。せっせとリクエスト出さねば。


英題:A Touch of Zen
監督&脚本:キン・フー 撮影:ホア・ホイイン 音楽:ウー・ダーチアン 武術指導:ハン・インチエ
出演:シュー・フォン シー・チュン バイ・イン ティエン・ポン ハン・インチエ サモ・ハン・キンポー ミャオ・ティエン ロイ・チャオ

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タイペイ・ストーリー(1985/台湾)

 本題に入る前に、まずはこれを言わせて下さい。

祝!『牯嶺街少年殺人事件』日本再上映!

 ワタシ自身も1回しか観ていない4時間版の上映。配給がしっかりしたところなので、地元でも上映してくれるだろうと固く信じてます。

 閑話休題。長年日本再上映が望まれていた代表作がやっと決まった来年は、ヤンちゃんことエドワード・ヤン監督の生誕70年にして、没後10年。昨年は『恐怖分子』がリバイバル上映され、やっと再評価が始まったとホッとしている。
 それに先立つ1年前に、監督第2作として撮りあげた『タイペイ・ストーリー』がデジタル・リマスタリングされてフィルメックスで上映。主演はホウちゃんこと侯孝賢、相手役にヤンちゃんの奥方でもあった歌手の蔡琴さん、脇には柯一正さんに呉念眞さん(蒼蝿師と愚人師…とか今回は言っちゃいけない)と、なんとも豪華な面々が登場。

 米国帰りの阿隆(ホウちゃん)と建築事務所で秘書をしている阿貞(蔡琴)は恋人同士ではあるけど、どことなくそう見えない。時には兄妹のように濃密に見えるときもあれば、他人のようによそよそしく振る舞うこともある。題名の《青梅竹馬》は中国語で幼馴染の意味だけど、お互いを知り尽くし、かなり近い位置にいるから先に進めないでいるもどかしさを表しているみたいだ。
 かつては少年野球のエースだったが、輝かしい過去を思いながら米国行きに期待をかけたい阿隆。仕事を持ち自立していたが、勤めていた会社からリストラされてしまった阿貞。お互いにすれ違い、気持ちは離れていくけど、それでも相手を求めている。


もしかしたらすぐ消えちゃうかもしれないけど、今年の金馬からの動画を。

 上映前のインタビューでホウちゃんは「この映画は決して成功作とはいえない」というようなことを語っていた。脚本家としても参加していたこの映画のために彼は家を抵当に入れて出資したものの、公開期間はたった4日だったそうだ…ああ。まあ、確かに出演しているのは、有名な歌手の蔡琴だけど、ホウちゃんもルンルンパパ(柯一正さん)も念眞さんもあくまでも映画人だから、当時の観客はどう思ったのだろうかな。
 この次の『恐怖分子』で高い評価を得たそうだけど、テーマとしては実はほとんど変わっていない。急激に発展する台北で揺れ動き、一緒にいるのに幸せではない男女の孤独。それはミンリャンの描く孤独とは全く違うタイプのものだと思うけど、ウェットではなくとことんドライなのは、ヤンちゃん自身も一度台湾を出ていて、米国で学んだ影響もあるのかな、などと思ったりする。でも、やはり米国で暮らしてた李安さんとも全く違う個性でもあるし。一度ご本人にお会いして、そのへんを聞いてみたかったな。もう、叶えられないことなんだけど。
 幼馴染ならぬ、同い年だったホウちゃんとも個性は違うのはもちろんのこと。彼は一般的には郷土電影の名手と言われているらしいしね。

 そんなホウちゃんが参加した数少ない出演作というのも見もの。数えてみたら、38歳の頃に撮られていたそうで、あー、今の自分より若いんだホウちゃん、うわーかわいいなー、とか柄にもなく思ってしまった(笑)。若々しくて、髪が長くて、意外にも直情径行なキャラクター。時に暴力的で荒々しく、まだまだ青春の香りを残しているような好演を見せていた。
 蔡琴さんといえばなんといっても、我々にとっては馴染み深いこの歌の人。ワタシもそれ以外の曲は90年代台湾でよく耳にしていたけど、女優としての演技は知らなかったので、興味深く観た。この映画の後ヤンちゃんと恋に落ちて結婚し、ちょうど10年後に離婚したらしい。(その後ヤンちゃんはピアニストと再婚し、彼女も再婚)ルンルンパパも多少今の面影はあるかなとか思いつつ見たし、念眞さんもこの頃は若かったなー。

 まあ、そんなアホなことくらいしかかけてませんが、今はもうない町並みの中でも、後半に登場していた闇に時折照らし出される迪化街の場面には、あれだけ街が変わってしまっても、老街はあまり変わっていないことに、なんとも言えない不思議な気持ちになったのでした。
 また繰り返すけど、ヤンちゃんからはいろいろな話を聞きたかったなあ。
 それはかなわないことだから、他の作品もどんどん再上映してもらって、彼の思いを知りたいよ。

原題:青梅竹馬
監督&脚本:エドワード・ヤン 脚本:ホウ・シャオシェン&ジュー・ティエンウェン
出演:ホウ・シャオシェン ツァイ・チン クー・イーシェン ウー・ニエンジェン メイ・ファン ヤン・リーイン

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大樹は風を招く(2016/香港)

 今年は本当に香港映画を観ていない。そもそも勉強してたのに広東語も聞けてない。なんとなくストレスが溜まってる感がある。そんなわけで、フィルメックスの閉会式で上映される『大樹は風を招く』は楽しみにしていた。

 この映画は11年前から香港で実施されている「鮮浪潮國際短片展」の歴代コンペで受賞した3人の監督を起用し、トーさんとヤウ・ナイホイさんのプロデュースによって撮られた作品。今年の金像奨では、最優秀脚本賞と編集賞を受賞。3人の監督のうち、ジェヴォンズ・アウ(歐文傑)さんは今年の金像奨作品賞受賞作《十年》の一編「方言」を監督。
 1997年、返還直前の香港を舞台に、実在した3人のギャング―季炳雄、葉繼歡、そして張子強をモデルにした、季正雄(カートン)、葉國歡(リッチー)、卓子強(小春)の運命を描いた作品。ユニークなのは、3人の監督がそれぞれ主人公3人のパートを演出していること。


 警官を射殺して大陸に逃亡したが、再び香港に戻っては小規模な犯罪に手を染めている季。強盗事件を起こした後にやはり大陸に逃げたものの、身分を隠して家電製品の密輸に携わる葉。彼らとは対照的に、誘拐と脅迫を繰り返しては派手に暴れている卓。香港と大陸とを行き来するも、出会うことはなかった3人だが、ある日どこからか「あの3人が協力して、何か香港でやらかすらしい」という噂が流れてくる。

 それぞれの事情を抱え、それぞれの思惑を抱いて動く3人。返還も控え、黒社会も落ち着かない。名を残す大物たちも、どこで生き残り、どこで躓くかわからない。主題歌として使われるのが、「時の過ぎゆくままに」の広東語カバー、《讓一切隨風》。香港では阿Bを始め、多くの歌手に歌われている名曲。


 トーさん製作で主人公たちが黒社会の大物とは言え、トーさん色が出ているところはキャスティングくらいだし(林雪もしっかり出てるしね!)、そのへんを期待した人には結構ハズレっぽく思われるかもしれない。現にワタシも劇場で「イマイチだった」という声を聞いたし。
でも、3人のパートをそれぞれ3人の監督が撮ったとはとても思えず、バランスが取れていた。寡黙だけど狂犬のような季、一見してギャングには思えない葉、とにかく派手でうるさい卓と、それぞれのパートを分けても無問題なんだろうけど、あえて分けなかったのだろう。
 3人のうち、一番面白かったのが葉のパートで、堅実に行くかと思いつつ結局腰をあげることになり、そこから香港に戻った時にあるハプニングが起きるわけだが、この時にすでに香港人の大陸へのある種の偏見が見えるようだったし、それがかつて香港を拠点にしていた葉の逆鱗に触れたのもわからなくはない。そして、このパートを演出していたのがジェヴォンズさんと聞いて、そう意図したのもなんとなく納得したものだった。(ネタバレ回避してかなりボカしてますが、まあだいたい想像つきやすいんじゃないかと思って)

 香港返還から来年で20年が経とうとしているが、やはり20年という歳月はいろいろとモノを変える。返還当時に渦巻いたいろいろな感情が今はどうなっているかはこれまた人それぞれだろうけど、政治的な面でここまで変わるとは思えなかった現在なら、返還の頃を振り返るとまたいろいろな感情が沸き起こるのだろう、と少し真面目に思ってしまったのだった。 

 とかなんとか言ってますけど、面白かったですよ。ユーモアも効いていたし、カートンもリッチーも小春も渋くてカッコええし、広東語もガンガン聞けて嬉しかったし。
 後はね、題名にある通り、風の使い方が印象的だった。屋上に干した洗濯物をゆっくり揺らしたり、人影が写ったりとよくある演出なんだけど、こういうベタさ(と言い切っていいのか?)がうまく効いているのがやっぱり映画だよなって思うからね。

原題&英題:樹大招風(Trivisa)
製作:ジョニー・トー&ヤウ・ナイホイ 監督:フランク・ホイ&ジェヴォンズ・アウ&ヴィッキー・ウォン
出演:ラム・カートン リッチー・レン チャン・シウチョン(ジョーダン・チャン) ラム・シュー フィリップ・キョン ユエ・ワー ヴィンセント・イン ン・チーホン ホン・ヤンヤン 

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私の少女時代(2015/台湾)

 ここ15年ほど、台湾映画の代名詞は青春映画のようになっている。このblogで真っ先に感想を書いた『藍色夏恋』がまさにそうであるけど、その青春路線で一番稼いだのが『あの頃、君を追いかけた』ってことは言うまでもない。台湾だけでなく香港でも公開時に大ヒットし、今年『寒戦2』に抜かれるまで、香港公開の華語電影歴代興収1位の座に君臨していたわけだしね。

 で、昨年公開され、これまた台湾では大ヒットした『私の少女時代』も例に漏れず青春映画。監督は日本でも放映された多くの華流ドラマを手がけてきたフランキー・チェン(注:女性です)で、我らが大プロデューサーにしてスアーパースター(このネタいつまで通じるんだろう?)アンディ・ラウ先生が製作総指揮に名前を連ねている。その理由は後述。


 一流企業で働くお疲れ気味のアラフォー(ジョー・チェン)が振り返る、林真心(ヴィヴィアン・ソン)の女子高生時代は90年代前半。ボサボサ髪で冴えない真心が、学校一の不良で転校生の徐太宇(ダレン・ワン)と出会ったことから始まる、いかにーも少女マンガ的なスクールデイズ。真心がほのかな想いを寄せる学校一の優等生歐陽非凡(この名前どうよ!ディノ・リー)、真心のご近所で学校のマドンナ陶敏敏(デヴィ・チェン)、男勝りとふくよかちゃんという真心の親友2人など、これまたいかにもーなキャラが揃っている。学校一の嫌われ者太宇のパシリにされたり、敏敏に思いを寄せる太宇のために奔走したり、そしてやっと非凡に心が通じたかと思えば、自分のほんとうの思いを自覚してしまう真心など、もうものすごくベタで甘々で一体いつの時代の少女マンガだよ!とツッコミを入れずにはいられない。

日本初上映は今年の大阪アジアン映画祭だけど、配給会社が仙台で実施したこの映画祭で初見。

 しかし、このもろに少女マンガな演出はおそらく計算されたもの。監督の実体験も多分に含まれていて、しかも彼女と同じアラフォー女子なら思わず頷いてしまったり、懐かしさを呼び起こすような仕掛けがあちこちに施されていて、彼女たちより少し年長で、なおかつ90年代初頭に台湾にいた自分としては思わずにやりとしてしまった。
 特に芸能ネタに懐かしさを覚えた人は、香港映画&芸能好きなら少なくないはず。真心はアンディ先生と星仔の大ファンで、親友はアーロンと金城くんの大ファン。真心と太宇たちが遊びに繰り出すとき、流れるのは当時バリバリのアイドルだったグラスホッパーのこの曲。

 当時の香港芸能にハマった人なら、他にもニヤリとさせられるネタはたくさんあるらしいけど、ワタシにわかったのはこれくらい。そして、こういう素地があるからこそ、日本の少女マンガを原作に台湾に舞台を移した『流星花園』シリーズを始めとした華流ドラマの成功があるのだな、と思いっきり納得した。ほとんどのあらほー台湾女子が、こんな少女時代を過ごしていたのかなあ。

 まあ、少女マンガ的展開と書いたけど、それはいい意味でもあり悪い意味でもある。そんな点で引っかかりがある人もいそうだし、実際ワタシもものすごいムカつく不良として登場した太宇は実は…な設定があまりにもご都合っぽく感じてちょっとなって思ったりしたんだけど、まあそこまでひねっていたのもご愛嬌と思えばいいか(苦笑)。

 この映画を語る際には、どうしても『あの頃』を引き合いに出されてしまうし、二番煎じと言われちゃうのもわからなくはないけど、シモネタと妄想が前編を引っ張ったあの頃に対して、あえて女子の現実ではなく夢見る時代をそのまま映像にした潔さがこの映画の強みである。けして同じではないし、せめて映画の中だけでは夢を実現させてもいいよね?という目配せも感じられる。青春映画に厳しい態度をとっても、たまにはその目配せを尊重しないと、ね。それがあるから、少女時代の予想外の顛末から、現代に戻ってアンディの台北コンサートで起こるラストのミラクルが効いてくるのだろうから…。
 とか言いつつも、あの流れにはもう爆笑するしかなかったぞ。どうしてくれる(こらこら)



なお、この映画には単館系映画には珍しく日本語吹替版も作られております。
声優さんファンが多く観に来ているとのことです。それを受けたかどうかわからないけど、上の画像は映画祭で見かけたアニメ風アレンジポスター。でもごめんなさい、これを最初に見て思ったのは、今年めっちゃ流行ったあのアニメからのインスパイア?ってことでした。すいませんすいません本当にすいません。

原題&英題:我的少女時代(Our Times)
監督:フランキー・チェン 製作:イエ・ルーフェン 製作総指揮:アンディ・ラウ
出演:ヴィヴィアン・ソン ダレン・ワン ディノ・リー デヴィ・チェン ジェリー・イェン アンディ・ラウ

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